レビュー

Bjorkやカニエ・ウェストも惚れ込んだ24歳の大型ルーキーARCAとは何者か?

加藤直宏
2014/10/29
Bjorkやカニエ・ウェストも惚れ込んだ24歳の大型ルーキーARCAとは何者か?

Aphex Twin以来の衝撃とも名高い、若干24歳の超大型ルーキー

ARCA(アルカ)。まだその名にピンとこないという読者もいるかもしれない。方舟、中世のスペインやイタリアで用いられた貴重品箱、あるいは貝の名前などの意味を持つ(実際にはそのどの意味でもないかもしれないが)ARCAを名乗るのは、ベネズエラはカラカス出身、現在はロンドンを拠点に活動する若干24歳のトラックメイカー、アレハンドロ・ゲルシ。今エレクトロニックミュージック界隈において、最も注目を集めている「超大型」のルーキーだ。プレス資料には「Aphex Twin以来の衝撃!」というコピーが書かれているが、彼はこれまで正式なデビューアルバムすら発表していなかったのだから、名前を知らない人がいても仕方がない。しかし、特にここ2年ほどの彼の驚くべき躍進と現在の注目度を知れば、件のコピーがそうそう大袈裟なものにも思えないはずだ。

ARCA
ARCA

インターネットで瞬く間にシーンの最前線へ、カニエ・ウェスト、Bjorkらと共演

当時……といってもそんなに昔の話ではない。彼の名を世に広めたのは、2012年にNYのレーベルUNOよりリリースされた『Baron Libre』『Stretch 1』『Stretch 2』のEP3部作、そして2013年にフリーダウンロードで世にばらまかれた自主制作のミックステープ『&&&&&』だ。インダストリアル、ヒップホップ、ノイズ、アンビエント、ジューク、エレクトロニカ、ダブ、ニューエイジ、ドローン、エレクトロ……。多彩な音楽を雑食的に吸収したARCAのサウンドは、しかしそのどれにもぴったりと収まるものではなく、なんとも形容のし難い、ホラーじみた、ダークでメタリックで荒涼としたムードがある。何万年も宇宙を孤独に旅してきた鉱物の塊のような、生半可な生命を受け付けない深海に生息する名も無き生命体の発光のような……。ともかくこの強力な引力を持つサウンドは、たちまち世界中のコアな音楽リスナーたちを魅了し、インターネットの力を借りて世に拡散されていった。


この奇妙なサウンドの虜になったのはリスナーたちだけではなかった。カニエ・ウェストが、Atoms For Peaceが、FKA twigsが、この真新しい才能に惚れ込み、プロデュースやライブでの共演をオファーし始めたのだ。さらに、つい先日のことだが、Bjorkが次のアルバムをARCAと一緒に作っているというニュースまで飛び込んできた。瞬く間に、シーンの最前線に立つことになったこの24歳は、熾烈な各社の契約争奪戦の末、名門にして現在最も注目すべきレーベル「MUTE」と契約を交わし、10月29日、ついにデビューアルバム『Xen(ゼン)』を発表するに至る。

ARCA『Xen』ジャケット
ARCA『Xen』ジャケット

MoMAでのライブも成功、オーディオ+ビジュアルの密接な関係

ARCAのブレイクの背景を語るうえで、忘れてはいけないのが、ARCAが14歳の頃にオンラインコミュニティーで知り合い、その頃からの仲であるというビジュアルコラボレーターのジェシー・カンダの存在だ。「何か疑問点があったとして、僕が音楽面でその疑問点をそのままにしていると、ジェシーがビジュアルでその答えを出してくるんだ。ジェシーがそのままその疑問に映像で答えを出してなかった時は、それは音楽で答えを出すべきだ、という事だと思うんだ」とARCAが語るように、ARCAの音楽とジェシーの手掛けるビジュアルは、相互に深く関係し合っており、またこの2つの奇妙な才能が絡み合ったからこそ、より鮮烈に世に印象を与えたのだろう。ときにAphex Twinとクリス・カニンガムの関係とも比較される彼らは、2013年の10月、MoMA (ニューヨーク近代美術館)においてオーディオ+ビジュアルのパフォーマンス『&&&&&』も成功させている。このコンビによるライブパフォーマンスはぜひ日本でもおこなって欲しいものだ。


なぜ今、世界がARCAに注目するのか? その理由は『Xen』を聴くことで明らかになるだろう。このアルバムが見せてくれる光景は、これまでに誰も見たことがないものである。10万年後の未来について想像することが難しいように、我々の想像力のはるか向こう側からやってきたようなこの真新しいサウンドを既存のジャンルや語彙で説明するのは容易ではない。アレハンドロは本作について、「これは僕がみんなに『これが僕自身だよ』と自信を持って言える初めての作品なんだ。僕は自分自身にフィルターをかけたくないから」と語る。『Xen』とはARCAそのものである。『Xen』という作品を通して、ぜひ多くの人たちに、この素晴らしく新しい才能に出会っていただきたい。

リリース情報

ARCA
『Xen』日本盤(CD)

2014年10月29日(水)発売
価格:2,268円(税込)
TRCP-178

1. Now You Know
2. Held Apart
3. Xen
4. Sad Bitch
5. Sisters
6. Slit Thru
7. Failed
8. Family Violence
9. Thievery
10. Lonely Thugg
11. Fish
12. Wound
13. Bullet Chained
14. Tongue
15. Promise
16. Boyfriend(Bonus Track for Japan)

プロフィール

ARCA(あるか)

アルカ(ARCA)ことアレハンドロ・ゲルシはベネズエラ出身の24歳。現在はロンドン在住。2012年にNYのレーベルUNOよりリリースされた『Baron Libre』,『Stretch 1』と『Stretch 2』のEP三部作、2013年に自主リリースされたミックステープ『&&&&&』は、世界中で話題となる。2013年、カニエ・ウェストの『イールズ』に5曲参加(プロデュース:4曲 / プログラミング:1曲)。またアルカのヴィジュアル面は全てヴィジュアル・コラボレーターのジェシー・カンダによるもので、2013年、MoMA現代美術館でのアルカの『&&&&&』を映像化した作品上映は大きな話題を呼んだ。FKAツイッグスのプロデューサーとしても名高く、『EP2』(2013年)、デビュー・アルバム『LP1』(2014年)をプロデュース、またそのヴィジュアルをジェシー・カンダが担当した。2014年、契約争奪戦の上MUTEと契約し、10月デビュー・アルバム『ゼン』 (“Xen”)をリリース。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

PAELLAS“Orange”

1stデジタルシングルから“Orange”のMVが公開。Spikey Johnが監督を務め、研ぎ澄まされたクールな表現で楽曲を彩る。次第に日が落ちていく情景はどこかメランコリックで、いつの間にか私たちは彼らに物語を見出そうとしてしまっていた。過ぎ去った夏に思いを馳せながら、映画のように濃密な4分間をゆったりと味わえるはず。(野々村)

  1. サニーデイ・サービスの生き急ぐような2年間の真相。5人が綴る 1

    サニーデイ・サービスの生き急ぐような2年間の真相。5人が綴る

  2. Chim↑Pomが、「ロボット」でなく「人間」レストランを開く理由 2

    Chim↑Pomが、「ロボット」でなく「人間」レストランを開く理由

  3. あいみょん新曲が新垣結衣×松田龍平『獣になれない私たち』主題歌に起用 3

    あいみょん新曲が新垣結衣×松田龍平『獣になれない私たち』主題歌に起用

  4. 岡崎京子原作×門脇麦主演『チワワちゃん』特報公開 主題歌はハバナイ 4

    岡崎京子原作×門脇麦主演『チワワちゃん』特報公開 主題歌はハバナイ

  5. S・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』、2週間限定でIMAX劇場上映 5

    S・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』、2週間限定でIMAX劇場上映

  6. TWICEドームツアー来年開催 東京ドーム2DAYS&ナゴヤドーム&京セラドーム 6

    TWICEドームツアー来年開催 東京ドーム2DAYS&ナゴヤドーム&京セラドーム

  7. 『魔法少年☆ワイルドバージン』に田中真琴、濱津隆之、斎藤工が出演 7

    『魔法少年☆ワイルドバージン』に田中真琴、濱津隆之、斎藤工が出演

  8. 松岡茉優が初主演作『勝手にふるえてろ』からの1年を振り返る 8

    松岡茉優が初主演作『勝手にふるえてろ』からの1年を振り返る

  9. のんが中原淳一の世界を表現するカレンダー、表紙は「完コピを目指した」 9

    のんが中原淳一の世界を表現するカレンダー、表紙は「完コピを目指した」

  10. 「西洋」から見た日本写真 書籍『日本写真史 1945-2017』に写真家25人登場 10

    「西洋」から見た日本写真 書籍『日本写真史 1945-2017』に写真家25人登場