レビュー

斉藤和義と中村達也がロックンロールユニット「MANNISH BOYS」で目指すものとは?

小野田雄
2014/11/14
斉藤和義と中村達也がロックンロールユニット「MANNISH BOYS」で目指すものとは?

MANNISH BOY=男らしい少年

シカゴブルースの代表的なアーティストであるマディ・ウォーターズが、ボ・ディドリーの“I'm A Man”に対するアンサーソングとして、1955年に発表した“Mannish Boy”。「俺は男なんだ! スゲェんだ!」と歌われるこの曲は、ヒップホップでいうところのセルフボースティングの先駆けにあたるものだ。ただし、声高にそう言いたくなる心情というのは、裏を返すと、そう思われていない現状があるからこそ。つまり、この歌は大人として成熟しきっていない主人公から発せられているものであることが推測される。

2011年に結成。2013年にデビュー20周年を迎えた48歳のシンガーソングライター、斉藤和義と来年アニバーサリーを迎えるドラマー、中村達也の二人からなるMANNISH BOYSは果たしてどうなのか? 十分に大人である彼らだが、初の単独ツアー最終日であるZepp Tokyoでのライブにおける二人は、ロックンロールというエバーグリーンな音楽に少年性を託し、無邪気さを四方八方に飛び散らせていた。

MANNISH BOYS『GO! GO! MANNISH BOYS!!! 2014ワンマンライブツアー!!!』2014年10月29日のZepp Tokyoより
MANNISH BOYS『GO! GO! MANNISH BOYS!!! 2014ワンマンライブツアー!!!』2014年10月29日のZepp Tokyoより

二人の大人たちが「MANNISH BOYS」として組んだ目的とは?

思えば、BLANKEY JET CITY以前以降、様々なバンドやセッションの場でドラムを叩いてきた中村達也に対して、斉藤和義の活動はシンガーソングライター一筋。ただし、斉藤は最初のブレイク作品『ジレンマ』から2年後の1999年にもベースの伊藤広規、ドラムスの小田原豊とのバンド「SEVEN」で、Latin Playboysを彷彿とさせるマジックリアリズムとサイケデリアが溶け合ったオルタナティブな作品を発表している。そして、ソロ名義で発売したシングル“やぁ 無情”が『日本レコード大賞』の優秀作品賞に選ばれた2008年以降、さらなるブレイクスルーを果たした先で、出来上がった音楽性をスクラップ&ビルドする場として、MANNISH BOYSという場が必要だったのだろう。

The Black KeysやThe White Stripesを想起させるギターとドラムからなるミニマムな編成や、キーボーディスト、ギタリストであるサポートの堀江博久にベースをプレイさせていたところからも、はたまた、セッション色の強い演奏からも、彼らがイレギュラーな要素や高い自由度を求めていたことはよく分かった。ただし、この日のライブは、無邪気に興じたセッションではなく、入念に行われたであろうリハーサルの強固な土台があっての音遊びであった。斉藤は曲タイトルからしてヘビーメタリックな“CRAZY NURSE”で持ち出したフライングVをはじめ、曲ごとにギターを持ち変え、中村はライブごとにドラムセットを変えたり、向きや位置を変えたりと、キャリアミュージシャンならではの興味深い試行錯誤が行われていたようだ。そう考えると、日本のMANNISH BOYたちは、大人になりたい子供ではなく、子供になりたい大人である。

MANNISH BOYS

MANNISH BOYS

二人の柱となっているのは、ロックンロールへの確固たる愛情だった

2012年発売のファーストアルバム『Ma! Ma! Ma! MANNISH BOYS!!』と今年9月にリリースされたばかりのセカンド『Mu? Mu? Mu? MANNISH BOYS!!!』から、計19曲が演奏された。斉藤がドラム、中村がポエトリーリーディングとベースをプレイした“本を捨てるなら雨降りの日に”から始まり、パンクロックナンバー“GO! GO! Cherry Boy!”やニューウェイブダンスロック“The time has come”、はてはトリッピーなダブ“Oh Amy”や“ざまみふぁそらしど”のようなカントリーまで、その大きな振れ幅からロックンロールに対する尽きない愛情を強く感じさせてくれた彼らは、MANNISH BOYSを経て、またそれぞれの活動に戻っていくのだろう。そして、大人である彼らは、この経験を新たなる作品や演奏に結実させることになるはずだ。

イベント情報

『GO! GO! MANNISH BOYS!!! 2014ワンマンライブツアー!!!』

2014年10月29日(水)
会場:東京都 Zepp Tokyo

『GO! GO! MANNISH BOYS!!! 2014ワンマンライブツアー!!!』

2015年1月10日(土)21:00~22:30
フジテレビNEXT/フジテレビNEXTsmartで放送

リリース情報

MANNISH BOYS『Mu? Mu? Mu? MANNISH BOYS!!!』通常盤
MANNISH BOYS
『Mu? Mu? Mu? MANNISH BOYS!!!』通常盤(CD)

2014年9月17日(水)発売
価格:3,024円(税込)
VICL-64969

1. GS750
2. GO! GO! Cherry Boy!
3. いとしのジェニー
4. ボンクラゲ
5. The time has come
6. 本を捨てるなら雨降りの日に
7. 天使とサボテン
8. 週末のファンファーレ
9. I am Dandy
10. CRAZY NURSE(Album ver.)
11. ブルースおじさん
12. SWEET LITTLE MOON CHILD

プロフィール

MANNISH BOYS
MANNISH BOYS(まにっしゅ ぼーいず)

昨年、デビュー20周年を迎えてなお精力的に活動を続けている斉藤和義と、稀代のドラマー中村達也(LOSALIOS)によるロックンロールユニット。2011年の夏に急遽結成されると、勢いそのままにJOIN ALIVE '11、ARABAKI ROCK FEST.'11、FUJI ROCK FESTIVAL '11に出演。その圧巻のライブパフォーマンスにより各会場を席巻の渦に巻きこんだステージングもさることながら、予想だにしなかった意外な二人による異色の顔合わせに多くのロックファンたちが期待を寄せ、この年のミュージックシーンを賑やかせた。各々のソロ活動が多忙を極めているなかにおいても"MANNISH BOYS"として、精力的な展開を打ち出している。

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