レビュー

斉藤和義と中村達也によるMANNISH BOYSが4年目突入。ユーモアと批評精神は大事な原点

今井智子
2015/06/25
斉藤和義と中村達也によるMANNISH BOYSが4年目突入。ユーモアと批評精神は大事な原点

シンガーソングライター斉藤和義と、稀代のドラマー中村達也が、スカビートを鳴らす

斉藤和義と中村達也が組んだユニット、MANNISH BOYSが、3rdシングル『曲がれない』を6月24日にリリースした。軽やかなスカビートで<失敗なんてしらねーよ 正解なんて知らねーよ>と痛快に歌い放つ“曲がれない”をメイントラックに、カップリングには斉藤らしいセンチメンタリズムを漂わせながら、迫力のある演奏で圧倒するバラード“レモネード”を収録。3曲目でシーナ&ロケッツの“ユー・メイ・ドリーム”をカバーしているのは、2月14日に亡くなったシーナへの追悼を込めてだろう。

そもそも二人が共鳴し合って、ユニットを組んだ理由とは?

“やさしくなりたい”など多くのヒット曲を持つシンガーソングライター斉藤和義はご存知だろう。BLANKEY JET CITY(以下ブランキー)解散後もドラマーとして幅広く活動している中村達也は、布袋寅泰やSuperflyのレコーディングやライブにも参加、またその存在感を買われて映画やドラマにも出演している。今年頭に中村は50歳を記念して、自身の関わる9バンド(それでも参加している全てのグループではない)の日替わりライブを行ったのだが、その中にMANNISH BOYSが含まれていたことは言うまでもない。

このユニットのスタートは2011年。意気投合した斉藤と中村が、北海道で行なわれた『JOIN ALIVE』を皮切りに『フジロック』などの夏フェスに出演、話題をさらった。短期間限定のプロジェクトだと思っていたら、翌年も夏フェスに出演し、以降シングルとアルバムを2作ずつリリース、全国ツアーも3度行っている。

数々の名曲が共感を呼び、広く大衆の支持を受けている斉藤だが、実は健全な批評精神の持ち主であることも知られている。自身の作品にも“社会生活不適合者”“Bitch!”など反骨的な曲もあるし、東日本大震災で露呈した原発問題への関心を喚起して物議を醸したことを記憶の方も多いだろう。中村もまた、ブランキー以前にもthe 原爆オナニーズやザ・スターリンといった気概のあるパンクバンドに在籍していただけに、斉藤と波長が合ったのは想像に難くない。

MANNISH BOYS
MANNISH BOYS

MANNISH BOYSでも引き継がれている批評精神。それを良きバランスでエンタメ化

そんな姿勢を引き継いだのがMANNISH BOYSだ。冗談めかして原発再稼働への批判を歌う“ないない!”、<BYE BYE 死の商人>と繰り返す“カーニヴァル”など痛快な曲を織り込みながら、遊び心たっぷりの戯れ言めいた“ざまみふぁそらしど”や、バイクをモチーフにした無頼派ぶりが炸裂する“GS750”といった曲で楽しませる。“あいされたいやつらのひとりごと~青春名古屋篇~”は中村の出身地である名古屋でのヤンチャぶりがモチーフだ。その一方で、“天使とサボテン”“Oh Amy”、そして新曲“レモネード”などの柔らかなラブソングでは斉藤の持ち味が発揮されていて、全体的にバランスの取れたユニットになっているところが憎いばかりだ。

一人でアルバムを作れるほど各種楽器に堪能な斉藤が腕を発揮しているために、MANNISH BOYSの曲のスタイルは実に多彩である。ロックンロールやブルースに留まらず、ヘヴィメタルやテクノもこなしてみせる。それはオマージュであったりパロディーであったりもするのだが、演奏も含め自らの主張を尖ったエンターテイメントとして成立させることに、斉藤はソロとは違った楽しみを見出しているのではないだろうか。中村も自由度の高い演奏を楽しんでいるのは間違いない。

そもそもMANNISH BOYSというユニット名は、彼らのライブの幕開けに流れる伝説的ブルース歌手、マディ・ウォーターズの代表曲“Mannish Boy”に由来するものだ。<I'm a Man><No Boy>と力強く歌う曲だが、アメリカで奴隷制度があった時代に、黒人奴隷は成人でも「boy」と呼ばれ、一人前の男を指す「man」と言われることはなかったそう。この曲がヒットした1955年当時は、奴隷制度こそないものの人種差別法が施行されていた。この名曲でも用いられているような「ダブルミーニング」が含まれた歌詞は、ブルースやロックにおいては伝統技。それは斉藤が得意とするところでもあり、この曲名を冠することでブルースやロックの歴史への敬愛を示しているのである。

二人が今の時代に提示するのは、ブルースやロックの「原点」

新シングルのリリース直後に、全国13か所を回るツアーが始まる。ライブでは基本的には斉藤がボーカルとギター、中村がボーカルとドラムという編成で、斉藤がエフェクターなどを駆使してギターとは思えない音作りで聴かせる。二人の演奏もより多彩なものになっている。とはいえ、それでは物足りないところもあるようで、最近は堀江博久がキーボードやベースでサポートすることが多くなってきた。今回のツアーは、前半を斉藤と中村だけの「2ケツ」シリーズ、後半を堀江も加わる「3ケツ」シリーズで行われる。その間に『フジロック』など恒例の夏フェスへの出演もあり、各地でMANNISH BOYSを堪能できる夏となる。斉藤のニックネームを呼ぶ「せっちゃん!」の歓声と屈強な男子がダイブする姿が入り交じるのも、このユニットのライブならではの光景だ。


二人とも、これが活動のメインではないからという気楽さもあるのだろう。だからこそ軽やかに本筋を通す屈強さが小気味いい。誰よりもMANNISH BOYSを楽しんでいるのは斉藤と中村なのだが、彼らの痛快な作品やライブは、身近なユーモアやシリアスな重荷を共有し楽しむ音楽であるブルースやロックの原点を、この時代に提示しているようにも思えるのである。

リリース情報

『曲がれない』
MANNISH BOYS
『曲がれない』(CD)

2015年6月24日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,944円(税込)
NZS-777 / Speedstar

1.曲がれない
2.レモネード
3.ユー・メイ・ドリーム
※曲がれないバッグ付き

リリース情報

『曲がれない』
MANNISH BOYS
『曲がれない』(CD)

2015年6月24日(水)タワーレコード限定発売
価格:1,296円(税込)
NCS-10100 / Speedstar

1.曲がれない
2.レモネード
3.ユー・メイ・ドリーム

イベント情報

MANNISH BOYS
『MANNISH BOYS 2ケツversion(斉藤和義×中村達也)』

2015年6月25日(木)
会場:静岡県 Live House 浜松 窓枠

2015年6月26日(金)
会場:京都府 磔磔

2015年6月28日(日)
会場:神奈川県 横浜 BAY HALL

2015年7月2日(木)
会場:岩手県 宮古 KLUB COUNTER ACTION

2015年7月4日(土)
会場:青森県 青森 Quarter

2015年7月5日(日)
会場:秋田県 秋田 Club SWINDLE

MANNISH BOYS
『MANNISH BOYS 3ケツversion(斉藤和義×中村達也)&堀江博久』

2015年7月11日(土)
会場:長崎県 長崎DRUM Be-7

2015年7月12日(日)
会場:熊本県 熊本B.9 V1

2015年7月14日(火)
会場:香川県 高松MONSTER

2015年7月20日(月)
会場:長野県 長野CLUB JUNK BOX

2015年7月22日(水)
会場:大阪府 Zepp Namba

2015年7月27日(月)
会場:愛知県 Zepp Nagoya

2015年7月28日(火)
会場:東京都 Zepp DiverCity

プロフィール

MANNISH BOYS(まにっしゅ ぼーいず)

斉藤和義と中村達也(LOSALIOS)による無類の2ピースバンド。2011年の夏に急遽結成されると、勢いそのままにJOIN ALIVE '11、ARABAKI ROCK FEST.'11、FUJI ROCK FESTIVAL '11に出演。その圧巻のライブパフォーマンスにより各会場を席巻の渦に巻きこんだステージングもさることながら、予想だにしなかった意外な二人による異色の顔合わせに多くのロックファンたちが期待を寄せ、この年のミュージックシーンを賑やかせた。各々のソロ活動が多忙を極めているなかにおいても「MANNISH BOYS」として、精力的な展開を打ち出している。

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