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祖父江慎、黒猫チェルシーのCDをあえて「中途半端」にデザイン

黒猫チェルシー『青のララバイ』
テキスト
小田部仁
インタビュー・編集:矢島由佳子
祖父江慎、黒猫チェルシーのCDをあえて「中途半端」にデザイン

黒猫チェルシー、祖父江慎、佐内正史の結束、再び

黒猫チェルシーのニューシングル『青のララバイ』が6月1日にリリースされた。CINRAでは、レーベル移籍後の1stシングル『グッバイ』(2016年2月3日発売)リリース時に、ジャケットの制作を行ったアートディレクター・祖父江慎と写真家・佐内正史、そして黒猫チェルシーのボーカル・渡辺大知の鼎談を実施。黒猫チェルシーが5年ぶりのシングルに込めた想いを、名匠二人がどのように具現化したかを紐解いた。

そして『青のララバイ』でも、引き続き祖父江・佐内のコンビがジャケットや告知用のポスターを担当。表題曲“青のララバイ”で歌う、何度転んでも疾走していく決意を、丹念かつ丁寧にパッケージに落とし込んでいる。

黒猫チェルシー『青のララバイ』ジャケット
黒猫チェルシー『青のララバイ』ジャケット

前作の鼎談で、祖父江は「バンドとリスナーのあいだに会社が入った感じではなくて、直接『へいへいー!』って渡す感じ」をイメージしてアートディレクションを手がけたと語っていたが、今作においても、実際に作品を手に持ったときにまず感じるのは、その「温かみ」だ。前を向いて進み続ける決意に満ちた表情の写真は、ボール紙にそのままラフに糊付けされたように配置され、それを黒猫チェルシーのメンバーが手書きした猫や車、電車、ビルなどの絵が彩る。作為的にこの感じを目指したというのではなく、聴いてくれる他でもないリスナー一人ひとりに届けたいという想いの発露がこのような形に帰結したという印象を受ける。

あえて「中途半端」なデザインを目指した意図とは? 祖父江に訊いた

本作のリリースに際して、祖父江に電話インタビューを行ったところ、以下のように語ってくれた。

祖父江:手渡しで受け取るような感じや、完成されていない感じは、今回も重視しました。前作よりもあえて「中途半端な感じ」になるように進めましたね。やっぱり黒猫さん(黒猫チェルシー)には、技術よりも大事なハートがあると思っているんです。企画性を優先してエンジニアがパーフェクトな商品に作り変えていくという音楽が多い中、黒猫さんは、ただ素のまま叫んでいるような快感がある。途中経過のような状態でも、躊躇しない感じがかっこいいなと思うんです。うまくいかない想いをそのまま外に発散させていく。そういうヤングパワーがおじさんは羨ましいゾ!

祖父江の言う「うまくいかない想い」は、まさに前作“グッバイ”に引き続き、今作においても通底するテーマである。“青のララバイ”だけでなく、カップリング曲“情熱のDancin’”、そして“抱きしめさせて~美登里の部屋ver.~”も、サウンドはスカやハワイアンというそこはかとなく夏っぽいアプローチを取りながらも、湿気った甘苦い空回り感に満ちている。やったってどうにもならないかもしれないけれど、やらずにはいられない――これが祖父江の言う、「ヤングパワー」というやつなのだろう。

曲名に「青」が入っているからこそ、深く悩んだパッケージデザインの色使い

ジャケット制作の過程では、祖父江と佐内の間で様々なやり取りがあったようだ。

祖父江:デザインは、佐内さんとだいぶもめたんですよ(笑)。黒猫チェルシーの「ストレートな途中感」ってなんだろうって。最終的に青一色にしたのは、前作と繋がりつつ、さらにイメージを強めてみようと考えていたからです。前作のイメージカラーが青だったので、デザイナーの小川とも打ち合わせて、青一色にしてみようということになりました。ただ、タイトルが“青のララバイ”だったんですね。佐内さんとの深夜の打ち合わせで“青のララバイ”を青一色にするっていうのはどうだろう、逆に赤でも面白いんじゃないか? とか、逆に“青のララバイ”を青でいくほうが、その直球感が黒猫さんらしいかもとか、話しました。ジャケット用の写真はカラーで撮られていたんですが、佐内さんにお願いして青いプリントでも何枚か焼いていただき、それに直接文字を入れたりしてテストしてみたんです。撮ったままのカラーもいいけど、一色でいったほうが素直に途中っぽいし、赤や黒より青がなじむよねって。やったほうが「やってない感じ」が伝わってくるんです。それで、青一色のジャケットに決まったんですよ。……そもそも、僕の中では佐内さんの写真って、やさしい青のイメージがあったんですけれどね。

前作『グッバイ』ジャケット
前作『グッバイ』ジャケット

販促用ポスターには、あえて色褪せしやすい印刷方法を使用

今回はCDショップなどに掲示するための告知用ポスターにも、新たなこだわりがある。本作のポスターは「青焼き印刷」という、本来は販促用の印刷物には用いられない手法を使ってプリントされた。これをポスターに使いたいと提案したのは、祖父江が率いるコズフィッシュのデザイナー・小川あずさ。「ちょっと照れが入ったり、一歩踏み出せないところをスルッとやってしまう、黒猫チェルシーのそういうチャーミングなところと、作品を深く掘り下げて形にしていくメンバーみなさんのかっこよさを、デザインにも落とし込みたいなと思いました」。

「青焼き印刷」は、本来、建築の図面や写真の確認に使用されるものだとか。「青焼き印刷は、紫外線を浴びると数週間で退色してしまうので、本来販促物には向かないんですね。でも、告知物としての効果がなくなる頃にポスター自体も色褪せるっていうのが面白いなと思って」と、小川が語ってくれた。

青焼き印刷された、告知用ポスター
青焼き印刷された、告知用ポスター

青焼き印刷は現在、限られた印刷所でしかプリントすることができないそうだ。「全部で100枚ほど作ったのですが、職人の方が一枚一枚手作業で印刷してくれました。前から面白い手法だとは思っていたんですけど、コズフィッシュとしても初めての試みで、ここで挑戦することができてよかったです」。天候や湿度によっても、仕上がりが変わるという「青焼き」。まさに手作りの温かみを表現するには最適の手法だったと言えるだろう。

青焼き印刷の様子(大生印刷株式会社にて)
青焼き印刷の様子(大生印刷株式会社にて)

青焼き印刷の様子(大生印刷株式会社にて)
青焼き印刷の様子(大生印刷株式会社にて)

青焼き印刷の様子(大生印刷株式会社にて)
青焼き印刷の様子(大生印刷株式会社にて)

今年に入ってから立て続けにリリースされた、黒猫チェルシー、祖父江慎、佐内正史による2作品を手に取っていて改めて思うのは、どんな音楽にでもこのような幸運な出会いが訪れるわけではないのだということ。滅菌消毒されたものではなく、作り手の笑い顔や泣き顔が見えるチャーミングな音楽だからこそ、人肌の温もりを感じさせるデザインや写真の必然性が生まれる。黒猫チェルシーから「へいへいー!」と届けられる、我々、リスナー一人ひとりに宛てられた手紙をまた楽しみに待ちたい。

リリース情報

黒猫チェルシー『青のララバイ』初回限定盤
黒猫チェルシー
『青のララバイ』初回限定盤(CD+DVD)

2016年6月1日(水)発売
価格:1,944円(税込)
SRCL-9074/5

[CD]
1. 青のララバイ
2. 情熱のDancin'
3. 抱きしめさせて~美登里の部屋ver.~
[DVD]
1. “青のララバイ”PV
2. 『黒猫チェルシー“2016全国7都市「グッバイ」リリースツアー”2016.3.27@新代田FEVER ダイジェストライブ映像』

黒猫チェルシー『青のララバイ』初回限定盤通常盤
黒猫チェルシー
『青のララバイ』通常盤(CD)

2016年6月1日(水)発売
価格:1,296円(税込)
SRCL-9076

1. 青のララバイ
2. 情熱のDancin'
3. 抱きしめさせて~美登里の部屋ver.~
4. 青のララバイ-アニメedit-
※初回仕様は『NARUTO』描き下ろしアニメ絵柄ポスター付属

黒猫チェルシー with チャラン・ポ・ランタン もも
『抱きしめさせて~THE HEAD WINDS ver.~』

2016年6月1日(水)から配信リリース

イベント情報

『2016「青のララバイ」リリース 東名阪ワンマン ~眠らぬ街に黒猫のララバイを~』

2016年6月26日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:東京都 下北沢 GARDEN
出演:黒猫チェルシー
ゲスト:ORESKA HORNS(SAKI、HAYAMI、ADD)

2016年7月9日(土)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE
出演:黒猫チェルシー
ゲスト:もも(チャラン・ポ・ランタン)

2016年7月10日(日)OPEN 17:00 / START 17:30
会場:大阪府 心斎橋 MUSE
出演:黒猫チェルシー
ゲスト:もも(チャラン・ポ・ランタン)

料金:各公演 前売3,000円

『2016「青のララバイ」リリース 岡山福岡編 ~オワリカラ&ふくろうずと黒猫のララバイを~』

2016年7月3日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:岡山県 PEPPER LAND
出演:
黒猫チェルシー
オワリカラ
ふくろうず

2016年7月4日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡県 LIVE HOUSE Queblick
出演:
黒猫チェルシー
オワリカラ
ふくろうず

料金:各公演 前売2,500円 当日3,000円

プロフィール

黒猫チェルシー
黒猫チェルシー(くろねこちぇるしー)

渡辺大知(Vo)、澤竜次(Gt)、宮田岳(Ba)、岡本啓佑(Dr)。2007年に地元神戸にて結成。2010年『猫Pack』でメジャーデビュー。精力的にライブやツアーを行い、2014年には初のベストアルバム『Cans Of Freak Hits』をリリース。その演奏力とライブパフォーマンスを武器に、大きな支持を集める。2015年8月には渡辺大知が出演した、NHKドラマ『まれ』から飛び出したバンド「little voice(リトルボイス)」としても、シングル発売&全国ツアーを敢行。2016年2月にレーベル移籍後初となるシングル『グッバイ』をリリース。さらに6月1日に『青のララバイ』を発売し、6月末より東名阪のワンマンツアーが決定している。渡辺大知は俳優として、TBSドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』、ドラマ『火花』、舞台『かもめ』などに出演。

祖父江慎(そぶえ しん)

グラフィックデザイナー。コズフィッシュ代表。1959年愛知県生まれ。多摩美術大学中退。1990年コズフィッシュ設立。人文書、小説、漫画などの書籍の装丁やデザインを幅広く手がける。吉田戦車の漫画本をはじめとして、意図的な乱丁や斜めの断裁など、装丁の常識を覆すデザインで注目を集める。現在は六本木のスヌーピーミュージアムなど展覧会のグラフィックや、グッズのアートディレクションを手がけることも多い。著書にいままでの仕事をまとめた『祖父江慎+コズフィッシュ』(パイ インターナショナル刊)がある。

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