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Eveが『Smile』で果たした変化と独白。クロスレビューで探る

Eve『Smile』
2020/02/14
Eveが『Smile』で果たした変化と独白。クロスレビューで探る

Eveのニューアルバム『Smile』が2月12日にリリースされた。JR SKI SKI、ガーナ チョコレートのバレンタインデーキャンペーンなど、お茶の間で鳴り響くタイアップソングを次々に放つ一方、本作はこれまでよりも深い内省と孤独が綴られているアルバムでもある。

ネット発の歌い手からシンガーソングライターへ変化を果たし、パーソナリティーをヴェールに包んだままでいながら、信頼するクリエイターとともに作り上げてきた物語性に富むMVも含めた総合芸術として存在感を発揮してきたEve。認知の拡大が急激に進む中、彼が「泣きながら笑う」アルバムジャケットに託したものと、心の内を吐露した歌に込めた願いとはなんなのか。音楽的な刷新も多くうかがえる作品を通じ、クロスレビューでEveの今を探求する。

Eve(いぶ)<br>2枚の自主制作アルバムを経て、2016年に全国流通盤『OFFICIAL NUMBER』をリリース。2017年に発表したアルバム『文化』は初めて全曲自作となり、収録曲“ドラマツルギー”はYoutubeで5,000万再生を突破。2018年~2019年は、12,000人を動員したワンマンツアー『winter tour 2019-2020 胡乱な食卓』を含めて全公演が即完。2019年2月発売の『おとぎ』はオリコンデイリー2位を獲得した。2020年2月12日にニューアルバム『Smile』を発売し、5月23日にはアリーナワンマンライブ『Eve Live Smile』を予定している。
Eve(いぶ)
2枚の自主制作アルバムを経て、2016年に全国流通盤『OFFICIAL NUMBER』をリリース。2017年に発表したアルバム『文化』は初めて全曲自作となり、収録曲“ドラマツルギー”はYoutubeで5,000万再生を突破。2018年~2019年は、12,000人を動員したワンマンツアー『winter tour 2019-2020 胡乱な食卓』を含めて全公演が即完。2019年2月発売の『おとぎ』はオリコンデイリー2位を獲得した。2020年2月12日にニューアルバム『Smile』を発売し、5月23日にはアリーナワンマンライブ『Eve Live Smile』を予定している。

成長痛のアルバムから透けて見える、「僕らの音楽」の行方
テキスト:金子厚武

2018年末の米津玄師とDAOKOの『NHK紅白歌合戦』出場を経て、自身も含めたネット出身のアーティストが数多くメジャーデビューを果たす中、なぜ当時のEveは“僕らまだアンダーグラウンド”と歌う必要があったのか? その答えは、自身を取り巻く環境の急激な変化を予感したタイミングだったからこそ、ネットカルチャーが自分を救い、アイデンティティとなっていることを、彼なりの表現で示す必要があったということだと思う。かつて『NHK紅白歌合戦』に出場したサカナクションが、自らの立ち位置を「マジョリティの中のマイノリティ」と定義したことを思い出したりもした。

新作『Smile』は、オーバーグラウンドの世界に一歩足を踏み入れたという意味でも、音楽家としてのさらなる挑戦という意味でも、Eveにとって重要な「成長痛」のアルバムだと感じた。これまでのEveの作風は、ギターフレーズの反復、言葉を詰め込んだ歌詞、アップテンポの4つ打ちなど、日本のボカロ/バンドカルチャーとの接点を明確に感じさせるものだったが、本作では“レーゾンデートル”や“心予報”などで従来の路線をさらに伸長させると同時に、その枠から脱却し、より世界の流れも意識したような、現代的なプロダクションにチャレンジ。トラップビート、ストリングス、さらにはボーカルの大胆な加工によって、ドラマチックな楽曲に仕上げた“LEO”は、本作における最大の収穫である。

ただ、あえて意地悪なことを言わせてもらうと、バンドサウンドからクラブミュージック的なプロダクションへと移行すること自体は既定路線で、彼にとっては明確な新境地だが、他の誰もやっていない新境地を見せた、というわけではない。「オリジナリティ」ということで言えば、まだまだ先があるように思う。しかし、実質的なオープニング曲である“LEO”で「もう一人の自分」に対する困惑が痛切に綴られているように、重要なのは『Smile』の通奏低音となっているのが「状況の急激な変化による引き裂かれるような想い」であるということだ。この心境を表現するために最も適していたのが現代のR&B的なプロダクションだったからこそ、“LEO”の強度が生まれたのだと考えられる。

SpotifyでEve“LEO”を聴く(Apple Musicはこちら

過去作『おとぎ』と『文化』はインストで締め括られていたが、今回はそうではなく、最もダークな“胡乱な食卓”で締め括られていて、それが何を意味するのかまではわからない。ただ、この曲は「本作は一作では完結しない」という印象を与えるもので、それはアレンジの面において、Eveがまだ現在の路線に伸び代を感じているからこそなのかもしれない。

SpotifyでEve『文化』を聴く(Apple Musicはこちら

Eveはここ数年でシンガーソングライターとして急成長して見せたわけだが、アレンジは自分よりもキャリアの長いNumaこと沼能友樹をパートナーとしている。“僕らまだアンダーグラウンド”で「僕ら」という言葉を使ったのは、「歌い手として、つまりはファンとしてキャリアをスタートさせている自分は、現在Eveの音楽を愛してくれているリスナーと何も変わらない」という意識の表れであると同時に、映像作家も含めたチーム的なもの作りの表れでもあるはずで、ここで僕が連想したのがamazarashiの存在だ。

秋田ひろむもシンガーソングライターとして、詩人として、非凡な才能を見せつつ、アレンジに関しては出羽良彰をパートナーとし、匿名性や、ビジュアルも含めたもの作りなど、両者には共通する部分が多い。また、青森出身の秋田は過去に東京で成功できずに地元に戻った経験があり、「都市」に対する「地方」を自らのアイデンティティとしている。それはEveが「アンダーグラウンド」という言葉で表現したネットカルチャーというアイデンティティと通じるものがあり、つまり、彼らには「反骨精神」という共通点もある。

1から10までを自分一人で作れるスーパーマンではないし、きらびやかな衣装に身を包んでポーズを決めることもない。それでも、そんな自分にできることがあるなら、それに対して真摯に取り組むことで、自分の可能性を知りたいし、広げたい。そして願わくば、多くの人と関わりながら、それを実現していきたい。そんな姿勢があるからこそ、彼らの音楽は「僕らの音楽」なのであり、多くのリスナーの共感を生んでいるのではないかと思う。

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リリース情報

Eve『Smile』初回盤
Eve
『Smile』初回盤(CD+DVD)

2020年2月12日(水)発売
価格:4,180円(税込)
TFCC-86702

1. doublet
2. LEO
3. レーゾンデートル
4. 虚の記憶
5. いのちの食べ方
6. 闇夜
7. 朝が降る
8. 心予報
9. 白銀
10. バウムクーヘンエンド
11. mellow
12. ognanje
13. 胡乱な食卓

※特製ボックス仕様

Eve『Smile』通常盤
Eve
『Smile』通常盤(CD)

2020年2月12日(水)発売
価格:3,080円(税込)
TFCC-86703

1. doublet
2. LEO
3. レーゾンデートル
4. 虚の記憶
5. いのちの食べ方
6. 闇夜
7. 朝が降る
8. 心予報
9. 白銀
10. バウムクーヘンエンド
11. mellow
12. ognanje
13. 胡乱な食卓

イベント情報

『Eve Live Smile』

2020年5月23日(土)
会場:神奈川県 ぴあアリーナMM

プロフィール

Eve
Eve(いぶ)

2枚の自主制作アルバムを経て、2016年に全国流通盤『OFFICIAL NUMBER』をリリース。2017年に発表したアルバム『文化』は初めて全曲自作となり、収録曲“ドラマツルギー”はYoutubeで5,000万再生を突破。2018年~2019年は、12,000人を動員したワンマンツアー『winter tour 2019-2020 胡乱な食卓』を含めて全公演が即完。2019年2月発売の『おとぎ』はオリコンデイリー2位を獲得した。2020年2月12日にニューアルバム『Smile』を発売し、5月23日にはアリーナワンマンライブ『Eve Live Smile』を予定している。

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