TWICEとBLACKPINK、韓流ブーム再燃を担うK-POP大型新人とは

ブームを起こすのはガールズグループ?

この夏、韓国から2組の大型ガールズグループが日本に上陸する。2PMやWonder Girlsを生んだJYPエンターテイメントが送り出すTWICEと、BIGBANGが所属するYGエンターテイメントが2NE1以来、7年ぶりに誕生させたガールズグループBLACKPINKだ。TWICEは6月28日にベストアルバム『#TWICE』で日本デビューし、7月2日には東京体育館で初の単独ライブを開催。BLACKPINKは7月20日に日本武道館で初来日公演となる単独ライブを行い、8月20日にミニアルバムで日本デビューを飾る。共に日本での初の単独公演が1万人規模の会場で行われることや、すでに地上波の情報番組や音楽番組に取り上げられるなど、事務所の力の入り具合が窺える。韓流ブームが終焉したと言われて久しい日本において、韓国エンタメにまつわる久しぶりの大きなトピックだ。

2003年の『冬のソナタ』、「ヨン様」の流行をきっかけに発生した韓流ブームは、少女時代やKARAが日本デビューした2010年頃からK-POPを中心とした第2次ブームを迎えた。少女時代の“Gee”、KARAの“ミスター”など、真似したくなる振付とキャッチーな楽曲がお茶の間に浸透。彼女たちは共に2011年に『NHK紅白歌合戦』に初出場している。もちろんK-POP人気の立役者として、現在も日本で高い人気を誇る東方神起の功績は計り知れないが、ブームを形成する上で老若男女の支持を得やすいガールズグループの存在は大きい。

「TT」ポーズで大衆の心をつかむTWICE

TWICE(上段左:ダヒョン、上段右:ジョンヨン、中段左から:モモ、チェヨン、ミナ、ナヨン、サナ、下段左:ツウィ、下段右:ジヒョ)
TWICE(上段左:ダヒョン、上段右:ジョンヨン、中段左から:モモ、チェヨン、ミナ、ナヨン、サナ、下段左:ツウィ、下段右:ジヒョ)

そんなかつての“Gee”や“ミスター”になり得る楽曲がTWICEの“TT”だ。TWICEは、サバイバル形式のオーディション番組『SIXTEEN』を経て2015年にデビューした平均年齢19歳の9人組。韓国国内だけでなくアジアを視野にいれた活動を行うK-POP界において、多国籍なグループというのはもはや珍しくなく、TWICEも韓国人メンバー5人に加えて、台湾出身のツウィと、日本出身のミナ、サナ、モモの3人から構成。先述した“TT”と、“Like OOH-AHH”“CHEER UP”の3曲のPVのYouTubeでの合計再生回数が4億回に達するなど、デビュー1年強にして数々の記録を打ち立てている。

TWICEの日本デビューアルバム『#TWICE』初回限定盤Aジャケット
TWICEの日本デビューアルバム『#TWICE』初回限定盤Aジャケット

顔文字「(T_T)」のようなポーズが韓国でも人気を集めた“TT”のダンスは、日本でもすでに女子中高生を中心に多数の「踊ってみた」動画が投稿されるなどブームの兆しを見せている。泣き顔で「TT」ポーズをするメンバーのキュートさはもちろん、韓国語ながら口ずさみたくなるキャッチーなフレーズと軽快なメロディーや、大所帯のグループであることを活かしたフォーメーションダンスも魅力。“TT”の約半年前にリリースされた“CHEER UP”のPVではチアリーダーに扮した彼女たちだが、見るものを元気づけてくれるようなはつらつとした親しみやすいキャラクター、ポップな楽曲群に真似したくなる振付と、K-POPに馴染みのない大衆にもアピールできるポテンシャルを十分に備えている。

同性が憧れる「ガールクラッシュグループ」BLACKPINK

BLACKPINK(左から:ロゼ、ジェニー、ジス、リサ)
BLACKPINK(左から:ロゼ、ジェニー、ジス、リサ)

一方のBLACKPINKは昨年惜しくも解散した先輩グループ2NE1の路線を踏襲した、クールでカッコいい姿が印象的。昨年本国でのデビュー前に公開されたダンス映像では、揃って黒い衣装に身を包んだ4人がキレのある動きを披露して期待をあおり、2週間でYouTube再生回数400万回を突破した。

メンバーはニュージーランドに留学経験のあるラップ担当のジェニー、彼女と同じく韓国出身のボーカリスト・ジス、タイ出身のラッパー・リサ、オーストラリア出身のボーカル・ロゼとこちらも多国籍。オーディション番組を通してデビュー前からメンバーが知名度を獲得していたTWICEとは異なるが、BIGBANGのメンバーのソロ曲のPVに出演していたり、モデルとして広告に出演したりと、デビュー前から顔が知られていたメンバーもいる。日本デビュー作にはこれまで本国で発表されていた楽曲全てが日本語バージョンで収録される予定だが、本国でのデビュー曲“BOOMBAYAH”“WHISTLEは、共にBIGBANGや2NE1を手掛けたYGエンターテイメントのプロデューサーTEDDYがプロデュースした楽曲で、前者はダンスホールやEDMを取り入れたアッパーなトラック、後者は口笛の音が印象的な音数の少ないヒップホップになっている。

異性に媚びず、にらみをきかせて<I hate you>と歌った2NE1ほどの力強さはないものの、クールさとキュートさを兼ね備えているBLACKPINK。まさに「BLACK」と「PINK」のカラーをあわせもったグループだ。ファッション界からの視線も熱く、昨年11月に発売された雑誌『NYLON JAPAN』では日本デビュー前にもかかわらず表紙に抜擢。9月には『東京ガールズコレクション 2017 AUTUMN/WINTER』『神戸コレクション 2017 AUTUMN/WINTER』への出演も控える。日本デビューにあたり「次世代ガールクラッシュグループ」をキャッチコピーに掲げている彼女たちだが、若い女性が憧れの眼差しを向けるファッションアイコンへと名乗りを上げている。

K-POP「冬の時代」は本当か? EXOや防弾少年団―アジアを越えて海外シーンと共鳴するアクトたち

新たなブームを担い得るK-POPアーティストは女性グループだけでない。韓流ブームは日韓関係の悪化や日本での反韓感情の高まりなどによって、2013年~2014年頃に終焉したと言われているが、果たしてブームの終わりから今まで、忘れられた存在だったのだろうか?

ブームが沈静化してから日本デビューしたグループに目を向けると、東方神起やSHINeeの後輩であるEXOは2015年に日本デビューし、同年、翌年と2年連続で東京ドーム単独公演を実施。音楽ライブ情報サービス「LiveFans」が発表した2016年の日本におけるライブ観客動員ランキングでは、1位のBIGBANG、6位のSHINeeと並び、15位にランクインした(もっともこのランキングは各公演の動員数の合計で順位付けられているため、公演数が多いほど上位になる可能性が高い。BIGBANGの年間公演数が60であるのに対し、2位の嵐は32公演である)。

EXO
EXO

また2014年に日本デビューした防弾少年団は今年に入ってユニバーサルミュージックに移籍し、第1弾シングル『血、汗、涙』でオリコン週間シングルチャート初登場1位を獲得。現在は日本公演を含む40万人動員のワールドツアーの真っ最中だ。同作のカップリング曲“NOT TODAY”に代表される攻撃的なヒップホップサウンドが武器の彼らは、先日アメリカの『Billboard Music Awards 2017』トップ・ソーシャル・アーティスト部門でジャスティン・ビーバーを抑えて受賞。同賞は創設以来、昨年まで6年連続でジャスティンが受賞してきたと言えばその勢いが伝わるだろうか。

防弾少年団。『Billboard Music Awards 2017』授賞式より(写真:ロイター/アフロ)
防弾少年団。『Billboard Music Awards 2017』授賞式より(写真:ロイター/アフロ)

韓国でもまさに脂の乗った状態であるEXOや防弾少年団は、メンバーのルックスもさることながら作品ごとに作り込まれたコンセプトと、そのコンセプトを形にしてみせる高いパフォーマンス力が持ち味。また彼らをはじめとする多くのK-POPアーティストが同時代の海外シーンの流行を取り入れる素早さはすさまじく、ある意味で節操がないとも言えるが、外に目が向いている作り手の姿勢が窺える。またEXOのラッパー・チャンヨルは、Tinasheらと共にFar East Movementの楽曲にフィーチャーされているほか、防弾少年団のリーダーRAP MONSTERは今年3月にアメリカのラッパーWaleとのコラボ曲を発表。ガールズグループ4MinuteがSkrillexとコラボしたり、SHINeeのメンバー・テミンのソロ作にブルーノ・マーズが参加したりと、海外の大物とのコラボレーションも少なくない。

まだまだいる日本未デビューのアーティストたち。TWICEとBLACKPINKは新潮流の旗手となるか?

5~6年前のように韓国のアーティストを地上波のゴールデン番組で見かけることはほとんどなくなったが、それでも東京ドームで単独公演を成功させたEXOや、オリコン1位に輝く防弾少年団のようなグループがいるというのは、もはやテレビの力に頼ることなく、インターネットを中心に強大なファンダムが築き上げられているということだろう。現在のK-POPファンには、かつての韓流ブームなど知らず、インターネットで彼らを発見してファンになったという若いリスナーも多いはず。日本のメディアでの露出が激減したのは事実だが、メディアに登場しなくなっただけで、実はブームは終わっていなかったのかもしれない。あるいは、ブームというのはピークを迎えてやがて収束するものだが、もはや1つの音楽のカテゴリとして日本の音楽シーンの中に定着しようとしているのだろうか。

TWICEやBLACKPINKの日本活動での結果にかかわらず、今後も多くのK-POPアーティストが日本デビューを果たすだろう。東方神起や少女時代の後輩グループであるRed VelvetやNCT、2015年に本国でデビューした13人組のSEVENTEENなど、韓国で高い人気を獲得している日本未デビューの若手グループはまだまだいる。また先日The InternetのSydとのコラボ曲を発表したDEANや、元2PMのメンバーでヒップホップレーベルAOMG率いるJay Parkといったシンガーたち、2年連続で『SUMMER SONIC』に出演するHyukohをはじめとするインディーバンドなど、アイドル畑ではないアーティストたちが日本で紹介される機会も増えてきているようだ。

そもそも「日本デビュー」というのはK-POPと日本の音楽シーンの複雑な関係を表しているシステムに過ぎず、韓国のアーティストが日本語で歌う日本オリジナルアルバムがリリースされたり、本国で発表された楽曲の日本語バージョンが作られたり、いわゆる「洋楽」が日本に入ってくるのとは異なる「J-K-POP」特有の展開が起こる。日本デビューという手続きを踏まずとも、配信や輸入盤で彼らの音楽に触れることはできる。しかし日本デビューによってメディアの露出が増え、J-POPのシーンに食い込むことができるのは、その音楽がより多くの人々に聴かれるようになることを意味するのもまた事実だ。同時期に日本上陸を果たすこととなったTWICEとBLACKPINKという2組の大型新人によって、K-POPが新たなリスナーを獲得することを期待したい。この夏は日本におけるK-POP受容史の転換点になるかもしれない。



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