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ラーメンズ・片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2015』展

ラーメンズ・片桐仁と行く『アーティスト・ファイル2015』展

野路千晶
撮影:相良博昭
2015/08/26
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六本木の国立新美術館にて2008年からシリーズで開催されている『アーティスト・ファイル』展。同展では、めまぐるしく様相を変える現代に対峙して活動を行う、国内外の旬のアーティストを数多く紹介してきました。2年ぶり6回目の開催となる今年は、サブタイトルを『隣の部屋――日本と韓国の作家たち』とし、韓国国立現代美術館との共同企画で、綿密なリサーチによって選ばれた日本と韓国の現代アーティストを紹介します。そして、展覧会をレポートしてくれるのは、2011年、2013年の『アーティスト・ファイル』展でもご登場いただいた、ラーメンズの片桐仁さん。2つの国、同時代の多種多様な表現がならぶ展示は、片桐さんの目にどのような景色として見えたのでしょうか?

いきなり木製の巨大なピタゴラ装置? で幕開け

さっそく最初の展示室からは、なにやら美術館らしからぬ、不思議な物音が聴こえます。それは、ヤン・ジョンウクによる木製の巨大な構造体が発している音。「動く彫刻」とも言えるその作品は、リズミカルな動作音を発しながら、複雑な動きを繰り返しています。思わず片桐さんも息を呑みます。

片桐仁
片桐仁

片桐:なんだこれー? いきなりすごい(笑)。めちゃくちゃ巨大だけど、すごく繊細な動きをしていますね。オランダの彫刻家テオ・ヤンセンの作品、風で動く『ストランドビースト』を思い出しましたが、もっと詩的な感じがします。この細かい動き、きっと調整に次ぐ調整でものすごく時間がかかっていますよね。ピタゴラスイッチにも出てきそう。この人は21世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチだ!

本展のために制作されたこの新作のタイトルは『あなたと私の心は誰かの考え』。アーティストがキュレーター同士の会話を眺めている様子が表現されているといいます。ヤン・ジョンウクさんは、日常の出来事や人をテーマに、動く作品を手がけるのが得意なアーティストなのです。

ヤン・ジョンウクの展示室
ヤン・ジョンウクの展示室

片桐:作品の中を動いている「ひも」は、人と人がコミュニケーションをしているときの、意志の疎通をイメージしているんでしょうか。『あなたと私の心は誰かの考え』か……、もしかしたら登場人物は3人いるのかもしれないですね。「誰か」っていうのが一番のポイントかも。でも「私」は一体どれなんでしょう? 観ていても全然わからないなあ……。あと現代音楽みたいな動作音も印象的で、CDで聴いたら面白そう。大竹伸朗さんとのコラボでノイジーな演奏をするとかどうですか?

テントと絵画道具一式を持って、いろいろな場所から世界を描く

強烈な先制パンチを食らった興奮も冷めやらぬまま、次の展示室へ。広い壁面に所狭しと並んだたくさんの絵画と、床上にぽつりと置かれた小さなテントが現れました。

イ・ヘインの展示室
イ・ヘインの展示室

片桐:あ、この空間、なんか安心する。絵がめっちゃ上手い人ですね。

韓国を拠点にさまざまな場所を移動しつつ、テントの中から風景を写生するイ・ヘインさんによる作品です。展示室に設置されたテントの中にはモニターがあり、イさんが移動しながら絵を描き続けたプロセスを収めた映像が流れています。

片桐:テントも可愛い。でも、このアーティストさんは女性だから外で襲われたりしないのかな。大丈夫かなあ? 親が知ったらきっと心配しますよね。

片桐さんが懸念するように、実際見知らぬ男性に突然叱られるなどのハプニングもあったといいます。壁面に展示される絵画作品の中には、その場面が描かれた1枚もありました。

イ・ヘインの展示室
イ・ヘインの展示室

片桐:え? 超危ないじゃないですか! 変わってる人だなあ……。でもすごく強い人なんでしょうね。絵の中に表されたテントの部分は白いまま残されていたり、作品自体にもドキュメンタリー感がありますね。

棒を立てかけるだけでもアート? おばちゃんの声を聞いてみたい、何でもアリな現代美術

そして日本人アーティストによる作品も登場します。画家の南川史門さんの展示室は、イ・ヘインさんの広い展示空間とは対照的な細長い通路状で、真っ先に目に飛び込んでくるのは、街角の掲示板を思わせる形状の作品『4つの絵画と自立するための脚』。これもれっきとしたした絵画作品です。

南川史門の展示室
南川史門の展示室

片桐:この蛍光ピンク、キツすぎて発光しているみたいに見えますね。目がチカチカして、残像がすごい……。

そして、このピンクの作品は、同展示室の最後にある「もの」と対になっているといいます。その「もの」とは、アーティストの南川さんの注文によって美術館が制作した、『4つの絵画と自立するための脚』とまったく同様のかたちをした立体物(ダミー)です。

南川史門の展示室
南川史門の展示室

片桐:つまり「美術作品とはなんだろう?」という問いかけですよね。このダミーに作家がサインをしちゃったら、それは作品になるのかどうかという……。現代アートっぽいですねえ。そういえば、少し前に東京都現代美術館で観たガブリエル・オロスコの作品は、壁にカップ麺の「どん兵衛」を貼り付けていました(笑)。現代アートってホントなんでもありですよね。この作品を観たおばちゃんの声を聞いてみたいですよねえ。

南川さんは人物の肖像画と、カラフルな色彩によるストライプ、ドットなどのパターンを拮抗させた作品で知られています。今展では、都市をテーマにした絵画に混ざって、壁に斜めに立てかけられた棒状の作品など、実験的な試みも見られます。

南川史門の展示室
南川史門の展示室

片桐:キタキタキター! この棒、なんなんでしょうね? やっぱり『アーティスト・ファイル』はこうでなくっちゃ。本当に何でもありな現代美術ならではですよね。ここまではどこか「ちゃんとしてるなぁ」「わかりやすいなあ」と思っていたんですよ(笑)。

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イベント情報

『アーティスト・ファイル2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち』

2015年7月29日(水)~10月12日(月・祝)
会場:東京都 六本木 国立新美術館 企画展示室2E
時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで開館、入場は閉館の30分前まで)
参加作家:
イム・フンスン
キ・スルギ
小林耕平
イ・ヘイン
イ・ソンミ
イ・ウォノ
南川史門
百瀬文
手塚愛子
冨井大裕
ヤン・ジョンウク
横溝静
休館日:火曜(9月22日は開館)
料金:一般1,000円 大学生500円
※高校生、18歳未満の方(学生証または年齢のわかるものが必要)および障害者手帳を持参の方(付添者1名含む)は入場無料

プロフィール

片桐仁(かたぎり じん)

1973年生まれ。コメディアン、俳優、彫刻家。多摩美術大学卒業。在学中に小林賢太郎とラーメンズを結成、『シャキーン!』(NHK教育)などのテレビ番組や映画、舞台など多彩に活躍。その独特の感性と存在感が人気を博している。

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