
3.11を経て、舞台芸術は何を語ることができるのか? Vol.3 仏の振付家ジェローム・ベルが、誰もが知る名曲から描く「今」の身体
- 文:萩原雄太
- (2011/11/02)
「ノン・ダンス」(踊らないダンス)とも呼ばれる、野心的な作品を次々と発表し続けるコンテンポラリーダンス界の奇才、ジェローム・ベル。彼の代表作ともいえる作品『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』が11月12日、13日に彩の国さいたま芸術劇場にて上演される。2001年の初演以来、全世界50カ国以上で上演されている今作は、世界中の優れた舞台芸術が一同に会する『フェスティバル/トーキョー11』のクロージングを飾るのにふさわしい。では、世界的に知られるポップミュージックが鳴り響くこの作品は、いったいどのような経緯から誕生したのだろうか? 公演を間近に控えたジェローム本人や公募で集まった出演者たちに話を伺い、作品の見どころにせまった。
ジェローム・ベル
フランス人演出家・振付家。92年、アルベールビルオリンピックにて開会式・閉会式を演出したフィリップ・ドゥクフレの助手を務める。94年に振付家としての第一作を発表。04年にパリ・オペラ座バレエ団に招かれ制作した作品『ヴェロニク・ドワノー』が絶賛される。日本においては、05年にタイを代表する古典舞踊の名手ピチェ・クランチェンとのコラボレーションで創作した『ピチェ・クランチェンと私』を、08年横浜トリエンナーレに出品。10年、ローザスのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルと共同制作した『3Abschiedドライアップシート(3つの別れ)』を愛知・静岡・埼玉にて上演している。
デヴィッド・ボウイ、クイーンで踊る人々
「コンテンポラリーダンス」といえば、アンビエントやエレクトロニカといった、無機的で抽象度の高い音楽が流れ、ダンサーたちはダンスなのかすらも判然としない動きをみせる、といった一般的なイメージがあるのではないだろうか。そのような抽象的な作品へのファンは多いものの、バレエのようなストーリー性や、高いジャンプや美しいピルエット(回転)といった技術はほとんど見ることができず、どことなく「とっつきにくい」というイメージを持つ人も多いかもしれない。

『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』 撮影:Mussacchio Laniello
しかし、11月12日、13日、彩の国さいたま芸術劇場に鳴り響くのはデヴィッド・ボウイの"Let's Dance"やロス・デル・リオの"Macarena"など世界的にヒットした、誰もが一度は聞いたことがあるナンバー。作品中時々挿入されるユーモラスな動きによって、観客席からは笑い声が上がり、コンテンポラリーダンスに対する一般的なイメージを打ち破る。そもそも、この作品『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』のタイトルも、クイーンが1991年に発表した同名曲に由来している。
この舞台を創作したのは、コンテンポラリーダンス界において異彩を放っているジェローム・ベルという男だ。1994年に振付家としてデビューして以来、「ノン・ダンス」と称されるジャンルを確立した彼は、野心的な姿勢でフランスはおろか世界中のコンテンポラリーダンスシーンに新たな潮流を生み出し続けている。ダンサー自身が自分とダンスの関わりを説明していく『セドリック・アンドリュー』や、現代音楽アンサンブルとのコラボレーションによって創作された『3Abschied ドライアップシート(3つの別れ)』など、踊りの概念を覆す作品の数々を発表し、その劇評ではいつも賛否両論を巻き起こしてきた。時に、その作品は「ダンスではない」として、受け入れられないことすらもあるという。

『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』 撮影:Mussacchio Laniello
『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』の初演は2001年のパリ。発表当初こそ物議を醸したものの、現在では世界50都市以上でツアーを重ね、リヨン・オペラ座バレエ団のレパートリーにも組み込まれている名作だ。「誰もがパフォーマーになることができ、誰もが理解できるように」というコンセプトのもとに創作されたこの作品。過去の上演映像を見ても、いわゆる「ダンス」に見られるようなテクニックを用いた動きやキレのある動きをすることはない。というのも、この作品に登場するのは、ダンサーだけでなく一般公募によって集められた人々なのだ。
萩原雄太
83年、茨城県出身。演出家・劇作家。2007年より自身の演劇カンパニー「かもめマシーン」を主宰する。チェーホフの「かもめ」に着想を得た翻案劇「かもめ/マシーン」で、シアターX国際舞台芸術祭参加。また、他劇団への脚本提供など各種。主な受賞歴に「浅草キッド『本業』読書感想文コンクール」優秀賞。


































