
染谷将太と行く東京都写真美術館『操上和美 時のポートレイト』展
- 文:内田有佳
- 撮影:西田香織
- (2012/10/12)
コマーシャルフォトの巨人として知られる写真家の操上和美。その仕事は誰もが一度は目にしたことがあるはずです。大江健三郎や井上陽水をはじめ著名人の印象的なポートレイト。サントリー「オールド」や木村拓哉出演のJRA、コメ兵のモデル絶叫シリーズなど記憶に残るCMの数々。写真だけでなく映像も駆使しながら、時代ごとに新しい表現を切り開いてきました。
そんな操上さんが、満を持して東京都写真美術館で行う展覧会に、ご自身もプライベートで本格的に写真を撮るという若手俳優、染谷将太さんをお誘いしました。映画『ヒミズ』での鮮烈な演技で、「第68回ベネチア国際映画祭最優秀新人賞」を受賞。数多くの映画、ドラマで活躍されるスケジュールの中で、展覧会に訪れる日を楽しみにしていたという染谷さん。繊細で落ち着いた彼独自の視線から、この展覧会の魅力をレポートします。
染谷将太
1992年、東京都生まれ。7歳より子役の仕事をはじめる。映画『ヒミズ』の住田祐一役で第68回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。映画『恋に至る病』が10月13日から公開。続けて、11月10日からは映画『悪の教典』、2013年には『ストロベリーナイト』『インターミッション』『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』など出演映画が続々公開される。自身のブログ「六曜日」では、フィルムカメラで撮った写真を定期的に公開。写真は中学2年生頃からはじめ、祖父から譲り受けたPENTAX SuperAなど数機種を使用している。
染谷将太 オフィシャルブログ 「六曜日」
おもちゃのカメラが映し出す写真家のダイレクトな感性
「前に来たのは『写真新世紀 東京展 2011』だったかな」と、東京都写真美術館を約1年ぶりに訪れた染谷さん。気負いのない自然な足取りで展示室内へ進むと、スーッと開いた扉の向こう側には、予想外の巨大な展示空間が待っていました。展示室内を仕切る壁はたったひとつしかなく、中央には青く輝く大きな柱が2本。入口から展示室全体がほぼ一望できるという、とても珍しい空間構成。少し驚いた表情でぐるりと空間を見渡した染谷さんは、まずじっくりと挨拶文を読み、それから左の壁に沿って歩きはじめました。

展示のはじまりは、操上さんが70年代初頭から撮り始めた『陽と骨』シリーズです。操上さんが展示空間を見たうえで、大きく引き伸ばしてプリントし直したという、粒子の荒いモノクロ写真がずらりと並んでいます。それぞれハレーションが起こっていたり、黒く潰れていたり、フィルムの傷が入っていたりと被写体は判然としませんが、様々な土地や街の風景が写し出されているようです。染谷さんは顔を近づけたり、半歩下がったりしながら、目を凝らして順に写真を眺めていきます。

染谷:普段は写真を見ていて気にもしないのですが、このシリーズの作品は撮られている場所はどこなんだろう、と気になりました。明らかに海外で撮られたものもあるけど、下手したらどっちなんだろう、という作品もあります。ほとんどがどこで撮られたのかわからない不思議な感じがします……。

『無題』シリーズ『陽と骨』より
染谷さんがそう感じたのは、もしかするとこれらの写真が現実の風景を撮っているにもかかわらず、なぜか匿名性を持っているからなのかもしれません。知らない風景のような、どこかで見たことがあるような。プリントを眺めれば眺めるほど、そんな感覚に襲われます。

染谷将太
実はこのシリーズは、手のひらに収まるほど小さなトイカメラで撮影されました。70年代に友人からそのカメラをプレゼントされた操上さんは、自分の意図しないハレーションや効果が起こるそのカメラを非常に気に入り、壊れてもいいようにと同じカメラを大量に入手。「つたないものだからこそ、自分が何に反応してシャッターを切ったのかがダイレクトに残る」と常にポケットに忍ばせて街を歩いていたといいます。撮影場所はニューヨーク、ロサンゼルス、アラスカ、日本など。撮られた年代、時間もバラバラです。これは時間軸に沿っていない空間を楽しんでほしい、という操上さん本人の今回の展覧会への想いも表しているのです。
内田有佳
編集者・ライター。大阪生まれ、横浜育ち、大学で大阪に戻って、今は東京。第二の故郷だと思っているのはイタリアです。マガジンハウス『Casa BRUTUS』などでお仕事させてもらっています。













































