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boid 樋口泰人 × 冨永昌敬監督 対談 爆音上映でつくられる、映画とぼくらの新たな関係

MOVIE

boid 樋口泰人 × 冨永昌敬監督 対談

『爆音映画祭』と聞いてもイマイチぴんと来ない。だって、映画館で観る映画ってもともと爆音だし・・・と思って聞いてみれば、どうやら爆音上映とは、普段の音響システムではなくライブの音響システムで映画を観る、という試みのようだ。その魅力とは何なのか? そこで、5月17日からはじまる吉祥寺バウスシアターでの『爆音映画祭2008』を前に、主宰であるboidの樋口泰人氏と、オダギリ・ジョー・香椎由宇主演の『パビリオン山椒魚』で劇場デビューを果たした冨永昌敬監督の対談が実現した。

(インタビュー&テキスト:早川すみれ)

同映画祭の招待券を抽選で5組10名様にプレゼント!!
詳細はインタビューの末尾で!

PROFILE

樋口泰人
映画評論家、音楽ロック評論家。主催する「boid」の多岐にわたる活動は、映画や音楽のジャンルに留まらず幅広いファンと注目を集めている。また、04年より東京・吉祥寺バウスシアターにおいて、ライブ用音響システムを使って映画を上映する「爆音上映」イベントを開催。その独自の音使いは、観る側はもちろん多くの監督からも絶大な支持と信頼を得ている。
boid

冨永昌敬
映画監督。細部にわたる映像と音の巧妙なバランスや、笑いも含むポップな作品に熱烈なファンも多い。代表作は『ビクーニャ』『亀虫』など。06年に待望の長編作品『パビリオン山椒魚』、07年には最新作『コンナオトナノオンナノコ』が劇場公開された。現在は3本目の長編作品を準備しながら、連作シリーズ『シャーリー・テンプル・ジャポン』の続編(今秋公開予定)を制作中。
STJP

爆音上映って、ネットシネマとか携帯映画の対極にあるものだと思う。

─来月はいよいよ爆音映画祭ですね。今日はお二人に、爆音上映のおもしろさを、あえて「爆音」という言葉をなるべく使わないでお話していただきたいんですが。

冨永:その前に、まず「爆音」の定義をはっきりさせましょうよ。おそらく大多数の人が爆発的な音量、大音声をイメージすると思いますけども、樋口さんはどういう定義付けで「爆音」と名付けたんでしょうか。

樋口:まぁ、単純にでかい音だよね(笑)。特に意味はないんだけど。そもそも爆音上映のきっかけとなった映画が、ニール・ヤングだった。ニール・ヤングの『イヤー・オブ・ザ・ホース(97/米)』と『デッドマン(95/米)』をロードショーで観た時に、なんかまだ足りない、こんなもんじゃないって感じて、それで、この作品をでかい音で観たいと思ったんですよ。ニール・ヤングと言えば、「爆音」。だから「爆音」なんだよね。

冨永:まあ樋口さんは普段からでかい音を偏愛してるそうですからね。樋口さんが一階の仕事場でヘッドフォンで音楽を聴いてると、奥様に三階から苦情を言われたと聞きましたよ。音漏れが三階まで届くとは(笑)。

boid 樋口泰人 × 冨永昌敬監督 対談

樋口:アハハ。これは僕だけかもしれないんだけど、小さい音を聴いてる時とでかい音を聴いている時って音の受け取り方が全く違うんだよね。どっちがいいとかっていうことではなくて、単に違う。その「違い」が面白い。でかい音で聴くと、単にうるさく聞こえる音と、身体に入って来る音とに分かれるんです。

僕としては音楽をでかい音で聴いた時に、ただうるさい音楽はフィットしないんですよ。普段からそういう音楽の聴き方をしていたから、これを映画に置き換えたらどうだろうと思ったんです。それで、さっき話したニール・ヤングをバウスシアターのライヴ用音響システムで音量を上げて上映してみようと。

冨永:ところが個人や家庭では逆のことが起こってますよね。家でDVDなんかを観ると、音にせよ画面にせよ映画館に比べると当然小さいですけど、今やネットシネマやケータイシネマというものが登場して、テレビ画面すら大きく感じられる。今後ますます手近な受像機が小さくなってゆくと、ロングショット(カメラが引いているカット。クローズアップの反対)なんて撮られなくなるんじゃないかと心配になってきますよね。

だって携帯の画面だと、ロングショットじゃ何が起こってるのかわからないから。そうするとアップばっかりになる。例えば、会話をする2人をロングショットで撮ったとすると、その距離感を出すために基本的にはセリフの声は小さくします。それが小さいサイズの画面では見にくいし聞こえにくいってことになると、ロングショットは禁じ手になってしまう。そうなるとクローズアップとミディアムショットのシーンばっかりで、且つイヤフォンで聴いてちょうどいい一定の音しか許されなくなる。

─それはかなり寂しいですね。似たような撮り方や一定の音量ばかりになって画面も音もどんどん均質化したら、映画の表現の幅自体が減ってしまう。

樋口:爆音上映の時にポイントになるのが、映画の中に小さい音がどう入っているかなんですよ。普段の劇場だと聞こえるか聞こえないかの音が、たくさん入っているかそうでないかで音の世界が決まってくる。その小さい音っていうのが、おそらく冨永が言うロングショットのシーンのかすかな音なんだと思う。それが、ネットムービーとか小さい画面のものになると、聞こえない音は排除してわかりやすい音だけ付けることになるだろうし、説明セリフも増えるだろうね。そういう映画は爆音上映には全然向かないと思う。だって、そんなのでかい音で聴きたくないでしょ。爆音上映は、そういう現状と対極にあるんです。

スピーカー

─普通の映画館の音響システムで大音量にすることと、ライヴ用の音響システムで大音量にすることって何が違うんですか?

樋口:映画館ってスクリーンの後ろにいくつかスピーカーが並んでいて、セリフが聞こえる真ん中のスピーカーと環境音が聞こえる両サイドのスピーカー、それに両壁のスピーカー。5.1チャンネルってだいだいがそんな作りです。で、爆音上映の場合は両サイドのスピーカーがスクリーンの前に出ていて、さらにそのスピーカーはライヴ用の大きなものを使用しています。

だから普通の5.1チャンネルの映画を爆音上映のセッティングで上映すると、左右のスピーカーだけが単純に大きくなるから環境音だけ、ガンと大きくなるんです。そうすると当然セリフが聞こえなくなったりするので、爆音上映でやるには音のバランスを調節する必要があって、これが大変なんですね。バウス(会場の吉祥寺バウスシアター)の場合はミキサーとイコライザーがあるから、普通の映画館ではできない音の調整ができるんです。

2/2ページ:冒涜かもって思うくらい、物語が違って見える。

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