
![]()
創作の渦に巻き込まれた男 ズボンズインタビュー
インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作(2012/07/03)
「誰もが困難で困った世界の住民である。その事実は生きることよりもシステムに生かされることを選んでしまう方が楽なのではないかと甘く誘う。それは魂を萎えさせ、持っているエネルギーを見失わせてしまうけれど、音楽や文学やアートという人間の『創造』が再度光をあててくれる」
活動歴17年を超える日本ロック界の至宝、ズボンズの実に6年振りとなるオリジナルアルバム『The Sweet Passion』の発表に合わせ、ドン・マツオはこんなコメントを寄せている(一部抜粋)。そう、なぜ今もズボンズはロックバンドであり続け、一度ステージに上がったドンは無我の境地に至ったかのようにギターをかきむしり、シャウトを繰り返すのか。それはロックを鳴らすことが、ドンにとっての光であるからに他ならない。もちろん、それを続けることは非常に困難な作業であることは言うまでもないが、それでもドンは自由を愛し、学ぶ姿勢を崩すことなく、創作の渦中を全身全霊で楽しんでいる。だからこそ、彼のひとつひとつの言葉は重く、僕らの胸にずっしりと響いてくるのだ。
Zoobombs(ズボンズ)
1994年9月、満月の夜に東京にて結成されたオルタナティブ・ロックバンド。Rolling Stonesの"正統的"なRockサウンドを基礎に持ち、James BrownのFunk、Miles DavisのElectric Jazz、Stoogesのサイケデリック&アバンギャルド感覚をミックス。Hip Hop以降、オルタナティブ・ロック以降の感性で演奏する。18年目にして、オリジナル・アルバムとしては10枚目、6年振りの「The Sweet Passion」(日本盤)を6/6にリリース。8月〜10月とWorld Release & World Tour(Japan/Australia/Canada/USA)が予定されている。ZOOBOMBS are DON Matsuo(vo,gu)/Matta(key)/Moonstop(ba)/Pitt(dr)
The Zoobombs(ズボンズ)
常に創作の渦中にあるっていうのが好きだから、外から出来たものを眺めるっていうことが、あまり得意じゃないんだな、きっと。
―『The Sweet Passion』はオリジナルアルバムとしては実に6年ぶりの作品になるわけですが、2009年に新録のベスト盤が出ていて、当時のインタビューでドンさんは「次のアルバムもできつつある」っていうことを話していらっしゃったと思うんですね。ただ、実際にはそのさらに2年後、昨年末にEP『AGITATION』が自主という形で発表されています。まずは、このあたりの経緯から話していただけますか?
ドン:ずっと作り続けてはいるんだけど、リリースしないでいると、作ったやつをどんどん忘れていっちゃう(笑)。レコード会社とか事務所が予定を立ててくれて、「ここまでにアルバムを」というのが決まってれば、それに合わせて完成させるのだけど、今はインディペントだから全部自分で決めることになる。そうなると、いつまでも締め切りが来ない状態なんですね。『AGITATION』は、去年そろそろ年内のスケジュールを決めなきゃという時期に、「あれ、米ツアーはやったのに、今年国内ツアーやってないんじゃない?」って話が出てきて、だったら「そのとき売る為のCDがないとダメなんじゃない?」、前に作った曲を引っ張り出してまとめたわけです。
―では、『The Sweet Passion』のリリースが決まるまでの経緯は?
ドン:昨年の米ツアー終わりの1週間でアルバム1枚分を録音したんです。でも例によっていつリリースするかは考えてなかったので1年近く放っておいたんですね。それでズボンズを今回はスペースシャワーがレーベルとして力を入れて一緒にやってくれることになったので、「じゃああれを」と聴き返したら、「あれ? 今やってることとずいぶん違ってるんじゃない?」と思って、慌てて東京で追加録音して、最終的にはアメリカ録音のものと半々になりました。

ドン・マツオ
―じゃあ、今は「早く作品をリリースしたい」っていう気持ちはあまりないわけですか?
ドン:「出す」と決まらないと、完成させたくないようなところもあるんじゃないかな。完成させちゃうと、終わっちゃうから放ったらかしにしていることが多いです。曲はものすごくいっぱい作るのだけどね。
―資料にも「ギターを弾き始めた瞬間からそれは作られていき、終わったときに完成している」っていうコメントがありました。
ドン:そう。曲はいくらでもあるというか、インターネットの世界につながってるような感じで、自分が作っているというよりも、どこかにあるような感じかな?
―常時接続で、パッと開けば、すぐに何かが出てくる?
ドン:何か巨大なデータベースに繋がっているみたいな、何となくそんな感じですかね。それが自分の創作のスタイルなんでしょう。だから家でフォークギターを鳴らして試行錯誤して作ることは、滅多にないです。
―つまり、作品を完成させることよりも、自然に曲作りを続けることに喜びがあると。
ドン:うん、常に作ってる途中の状態が好きなんだと思うんですよ。だから最終的に「出来た」ものにはあまり興味がなくて、全然聴き返したりしない。だから、今回みたいに過去のPV集制作に立ち会ったときに、ものすごく久しぶりに昔のを聴き返して…「案外悪くないな」と思いました(笑)。作った直後は「どうも上手く出来なかったなぁ」と感じるから、「2度と聴きたくない」と思っていたのだけど。
―それって、「もっとよくなるはずだった」みたいなことなんでしょうか?
ドン:基本的に自分を過大評価してるんでしょうね。だから、何を作っても「こんなはずじゃない、こんな程度じゃないんだけどな」って感じる。客観性にすごく欠けてると思う。常に創作の渦中にあるっていうのが好きだから、外から出来たものを眺めるっていうことが、あまり得意じゃないんだな、きっと。
―古い曲を聴いて「悪くない」と思えたのは、やっと客観視ができるようになったっていうことかもしれないですね。
ドン:10年くらいたって、ようやく。でもそう思うことで、自分に満足を覚えてしまうと、まだまだもっといいものを作らなきゃっていう意識やモチベーションが、その分薄弱になってしまう気もします。何しろ過去にもう10枚もアルバムを作っていて、曲もふんだんにあるし、例えばライブのセットに「お気に入りの昔の曲」を入れ始めると、そればっかりで新しいことをやる隙間がなくなっちゃう。だから、結局のとこはあんまり振り返らない方がいいんじゃないかと思っているのだけど。
2/4ページ:THE DOORSのファーストとか、THE ROLLING STONESの『STICKY FINGERS』とか、そういうのが雲の上の手に届かない存在とは思えないです。















































