「月刊CINRA」連載 あの雑誌の特集、予想します。まとめ 雑誌が売れないのは、君が雑誌を買わないからだ。

雑誌が売れないのは、君が雑誌を買わないからだ。

どうして雑誌が売れないのかという議論が、お約束のように繰り返されている。議論をふっかけるその人は、その事実をとても憂いでいる。雑誌は文化だ、それなのに全く困ったものだよ、という立場を終始崩さないのだけれども、ところで最近雑誌買ってますかと直球でその人を攻めてみれば、おっとっと、と戸惑った挙句、そんなに買ってないねえと漏らす。しかし、雑誌が売れない原因はそこにもある。いや、そこにしかない。文化とか経済状況ではなくて、コンビニや書店に入った貴方が、雑誌を摘まずに店を出てしまうから、雑誌が売れなくなる。とても簡単でとても難しいシステムだ。売れないから、ダメになる。買わないから、続かない。雑誌に変わるモノが沢山出てきたからという言い訳は、その変わるモノの持ち上げには機能するが、雑誌そのものの解説にはならない。

広告が入らねえ、同じテーマのポータルサイトが出来てしまった、エロはもう動画がいくらでも……、要するに、肉体の出来不出来ではなく、飾る衣装の代替物に責任を押し付けている。雑誌を乱読する自分から言わせてもらうと、今もなお、雑誌は相当に面白い。雑誌という媒体は厳しくとも、雑誌という肉体はジューシーなままだ。どうやったって、インスタントラーメンが、継ぎ足しで作り続けるラーメン屋のスープに適わないのと同じだ。

しかしまあ、雑誌は面白い、と返した所で、雑誌は面白くない、と言われた相手には何も響かない。古臭いワタシと新しいアナタで、そういう会話を2カ月に1回くらいの頻度でどっぷりと語らってしまう。その度に考え込んだ。雑誌は今、どのように体感されているのだろうかと。その体感を探るために、普段読まない雑誌を中心に広げて、次号の特集予想でも勝手にやってみようかという話になった。雑誌があって、読者がいて、その読者に向かって編集部が何を叩き付けてくるのかを予想するという下世話は、なかなか思考の問われる邪推の連続だった。書店や図書館に出向き、しっかりとバックナッバーを当たって、次号はどうくるだろうかと推敲した。17回やってみた。書き終えてこうしてまとめてみる段階になって、実際どうだったのか、各回の巻末に結果報告をつけてみた。平均値を試算したら、的中率48.5%と出た。自己採点なので甘さたっぷりだが、なんとなく半分くらい、当たったとしておく。

結構当たったんじゃないかと思っている。ここで早速、噓をバラす。「書店や図書館に出向き、しっかりとバックナッバーを当たって、次号はどうくるだろうかと推敲した」と書いたが、そんなことは一切していない。HPから適当にバックナンバーを探って、鼻歌まじりに次号を考えていただけだ。そしたら、会議室で練りまくったオフィシャルと、思いつきのアンオフィシャルが、割と内容的に寄り添ってしまった。

雑誌を作っていらっしゃる皆さんにだって、オフィシャルな発案などあるわけもなく、思いつきの集積で雑誌が編まれていくのだから、こちらの予想がそれと合っていても、それは特に素晴らしいことではない。ただ、どうやら、「あの雑誌はこういう雑誌」という印象を瞬時に握られてしまっている、という危険は感じる。雑誌を買わない人に、あの雑誌はこういう雑誌でしょハイハイ、と簡単に思わせてしまう。それが、雑誌という肉体を外に晒してからの認知ならばまだしも、媒体としてのザックリとした易い認知によって簡素な理解をされてしまっている、そのことが悔しい。

予想をするのは、なかなか面白い。また続きをやってみたいが、その為には雑誌が生き残らなければ、ネタも尽きる。君が雑誌を買わないと、雑誌が無くなってしまう。この邪推の連鎖に少しでも面白みを感じていただいたなら、本屋に行って雑誌を買って欲しい。当たり前だけど、こんな連載より、雑誌は面白い。



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