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2012年の菊地成孔

2012年の菊地成孔

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2012/08/14
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2012年後半の菊地成孔は、とにかく精力的だ。8月には、一昨年のテストランを経て、昨年から開催されているダンス・パーティー『HOT HOUSE』の初地方公演が神戸と名古屋で行われ、9月にはダブセクステットに女性トロンボーン奏者を加えたダブ・セプテットのデビューライブをブルーノートで開催。同じ月に、アニメ『ルパン三世』のオープニングテーマを担当したことが話題を呼んだペペ・トルメント・アスカラールのライブもあるし、 10月には2010年の再始動ライブと同じ時期・同じ場所、10月8日に日比谷野音でDCPRGのライブが行われる。それぞれの音楽的な面白味を味わうことはもちろん、彼の活動は様々なカルチャーを独自の視点で切り取ったものでもあるだけに、その多彩な活動を追うことは、2012年という年の空気を体験することにもなるはずだ。また、その幅広い見識の一方で、この日の取材では「演奏をすること」に対する菊地の強い想いを改めて確認できたことも、実に印象的だった。

今って『フジロック』みたいなものが発達して、若い人が「何でもアリだ」って言うじゃないですか? でも実際には全然なんでもアリじゃない。

―まずは8月に初の地方公演が行われる『HOT HOUSE』(菊地成孔と大谷能生がMCを務めるダンスパーティー)について、改めて、始めた理由を教えてください。

菊地:そもそもは、ジャズのダンスイベントがやりたかったんです。今カジュアルにジャズで踊るイベントっていうと、クラブジャズみたいなバンドが出てきて、ハウスみたいなお客さんが踊るというようなものが定着していて。それはそれでいいと思うんですけど、もうちょっとアコースティックなものでダンスパーティーができないかなって、何十年越しで考えてたことだったんです。

菊地成孔

―「ビーバップで踊る」というのが、ひとつのコンセプトになっているわけですよね?

菊地:一般的にはビーバップって、ジャズを踊れなくしてしまった、座って聴かせることにしてしまった音楽だということになってるんですけど、DJカルチャーの中では、ビーバップは普通に踊れる音楽なんです。でもビーバップが、スウィングで気持ちよく踊ってた人を座らせてしまったというのは一面の事実ではあるし、きれいな話なので、定着しちゃってる。だけど実際には、ビーバップは構造的に全然ダンスミュージックに成り得るし、主にイギリスですけど、ビーバップを流して踊る、そのまま「ビーバップ」ってダンスの名前があって、これはほとんど日本では紹介されてないんです。

―その根拠の上で、「ビーバップで踊る」というパーティーを開催しようと。

菊地:数は少ないけど、ビーバップのレコードで踊る人も日本にはいるし、あとはリンディホッパーっていうカップルのダンスを踊る人たちがいて、これはアメリカでは日本に比べると遥かに認知されている。その2つとビーバップを演奏する人たちを加えた3者は、よくあるカルチャーの溝みたいな感じで、日本では絶対に交わらない状態にあったんです。今って『フジロック』みたいなものが発達して、若い人が「何でもアリだ」ってすごい言うじゃないですか?

―はい、よく聞きますね。オールジャンルだと。

菊地:確かにひとつのパーティーに行くと、いろんな音楽が流れて、いろんな人が踊ってるけど、でも実際には全然なんでもアリじゃないわけですよ。Twitterで何でも発言できるって言っても、「原発推進」とは言えないし、フェスに行ってもフェスみたいな格好をしなくちゃいけないし、まったく何でもアリなんてことはなくて。絶対交わらないものを交わらせなければ、何でもアリにはならないっていう風にハードコアに考えているんです。

―非常にハードコアな考え方ですね(笑)。

菊地:だから『HOT HOUSE』のステージの上には、(新宿の)ピットインなんかに出てるビーバップを演奏する人たちがいるんだけど、この人たちは客が自分たちの演奏で踊るってことは生まれて初めてで、ステージの下には今までレコードで踊ってた人たちがいて、この人たちは生のなんちゃってクラブジャズじゃない、ちゃんとしたメインストリーマーのビーバップで踊ることは初めてで、リンディホッパーはそもそもビーバップで踊ることが初めて。それを一気にやることで、硬直しているパーティーカルチャー、ジャズカルチャーを何とか…まあ、そのふたつを何とか頑張ってつなげたのが今のクラブジャズなんだけど、そこにはジャズの生々しい4ビートの感じっていうのはないので、それをやりたいっていうのが、言ってしまえば僕と大谷能生君の夢だったんですよ。だから何でもアリですここは。

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イベント情報

『具象の時代』

2012年9月29日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 すみだトリフォニーホール
出演:菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
ゲスト:林正子
料金:前売5,500円

チケット情報

Ron Zacapa presents『DCPRG YAON 2012』

2012年10月8日(月・祝)OPEN 15:30 / START 16:30
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂
出演:DCPRG
ゲスト:SIMI LAB、toe
料金:前売5,500円

菊地成孔ダブセプテット ブルーノート東京公演

2012年9月13日(木)
[1st]OPEN17:30 / START 19:00
[2nd]OPEN 20:45 / START 21:30
会場:東京都 ブルーノート東京
出演:菊地成孔ダブセプテット
料金:前売6,500円

『菊地成孔プレゼンツ“HOT HOUSE”』

2012年8月23日(木)
会場:兵庫県 神戸 Live Hall クラブ月世界

2012年8月24日(金)
会場 : 愛知県 名古屋 Live & Lounge

TBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』 Presents 『キラー・スメルズ復活祭!渚のハードコアラテン』

2012年9月1日(土)
会場:神奈川県 逗子海岸 海の家PILEQUINHO(ピレキーニョ)
出演:KILLER SMELLS

CINRA.STOREで取扱中の商品

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール<br>
『皆殺しの天使/El Angel Exterminador 2012年7月23日 東京グローブ座公演』[MP3]
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価格:400円(税込)
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『闘争のエチカ(上巻)』[USB]
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価格:10,500円(税込)
菊地成孔の過去の作品などをまとめた初のベストワークス

『菊地成孔のポップアナリーゼ 少女時代“GENIE”は何故いい曲なのか?』[MP3]
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価格:630円(税込)
菊地成孔が少女時代を語り尽くす!

プロフィール

菊地成孔

1963年6月14日、千葉県出身。音楽家、文筆家、音楽講師。 アバンギャルド・ジャズからクラブシーンを熱狂させるダンス・ミュージックまでをカバーする鬼才。1984 年プロデビュー後、山下洋輔グループなどを経て、「デートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン」「スパンクハッピー」といったプロジェクトを立ち上げるも、2004 年にジャズ回帰宣言をし、ソロ・アルバム『デギュスタシオン・ア・ジャズ』、『南米のエリザベス・テイラー』を発表。2006 年7月にUA×菊地成孔名義で発表したスタンダード・ジャズ・アルバム『cure jazz』が大ヒット。2007年12月には初のBunkamuraオーチャードホール公演を成功させ、2008 年からは菊地成孔ダブ・セクステット、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールで活動中。2010年10月にはDCPRG(DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN)を再始動させた。

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Suchmos“PINKVIBES”

Suchmosがアルバム『THE KIDS』より“PINKVIBES”のPVを公開。山田健人(dutch_tokyo)との久々のタッグとなるこの映像。余裕すら感じるシュアな演奏シーンやふとした表情が絶妙なバランスで映し出される。燃え盛るピンクの炎と、それに向けるメンバーの強い眼差しを見ると、Suchmosがこれからどんな風景を見せてくれるのか期待が高まる。(飯嶋)