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クウチュウ戦のアジトに潜入。「もの作り」に適した場所とは?

クウチュウ戦のアジトに潜入。「もの作り」に適した場所とは?

クウチュウ戦『超能力セレナーデ』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西田香織 編集:矢島由佳子
2016/07/28
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今年1月にリリースされた『Sukoshi Fushigi』から約半年、早くもクウチュウ戦から3枚目のミニアルバム『超能力セレナーデ』が届いた。素晴らしい作品だ。これまでの彼らを特徴づけていたプログレッシブロック的なフリーキーな曲展開は、皆無。むしろ、端正なソングライティング、美しいメロディー、幻想的でロマンチックな歌詞世界……そんな、バンドが本質的に持つクラシカルな魅力で聴かせる名曲集に仕上がっている。

そして何より、この作品には、失われていく記憶を閉じ込めようとする――そんな刹那と普遍が入り混じった甘美な質感がある。人も、文明も、すべてが死滅し破壊しつくされたディストピアのなか、たったひとり生き残った男が、恋人の写真を見つめながら最後の眠りにつく瞬間のような、悲しみと安堵に彩られた世界。過去最高に綿密に作り込まれた、1音1音が密度高く重なり合ったバンドのサウンドプロダクションが、そんな美しい世界を見事に描き出している。

前回の取材では、大学でドラッグカルチャーを学び、SFを愛し、唐突に単身インドへ向かうフロントマン・リヨの「外」への志向性に着目したが、今回は、むしろ「内側」へと向かうマインドトリップ的志向性を追求すべく、取材はメンバーが「アジト」と呼ぶ、リヨの自宅で行った。

切ない場所ですよね。人の思い出が沁みついている。(リヨ)

―今日はリヨさんのご自宅にお邪魔しているんですが、一軒家に一人暮らしなんですね。

リヨ(Vo,Gt):元々はじーちゃん家だったんですよ。3年前くらいにじーちゃんが茨城の実家に引っ越したから空いたんだけど、住まないと家ってダメになっちゃうじゃないですか。だから、家族に「お前、住め」って言われて。

―今は2階にお邪魔しているんですけど、バンドの機材が見事にセッティングされていますね。

リヨ:ここで曲を作ったり、リハをやったりしています。せっかく、こういうスペースがあるのでね。前のドラマーが買ったエレドラも置いたままだし。

左から:リヨ、ニシヒラユミコ、ベントラーカオル、アバシリ
左から:リヨ、ニシヒラユミコ、ベントラーカオル、アバシリ

―前回の取材(クウチュウ戦の警告。左脳ばかりを動かす現代日本人を刺激する)で、リヨさんは「東京には、物事と物事の間や、人と人との間など、至るところに境界線がある」という話をしてくれたじゃないですか。家って、人間が持つ根源的な境界線のひとつだと思うんですけど、リヨさんにとって「家」とは、どんな場所ですか?

リヨ:切ない場所ですよね。ここに貼ってあるカレンダーも、1997年で止まっているし……人の思い出が沁みついている場所。とにかく切ない。

2階のリハスペースに貼ってあるカレンダー
2階のリハスペースに貼ってあるカレンダー

階段の壁には、井上陽水のポスターが貼ってある
階段の壁には、井上陽水のポスターが貼ってある

―どうして、カレンダーは剥がさないんですか?

リヨ:なんか、剥がせないんですよね。「じじいがここにいた」っていう感じが残っているものには、なるべく手はつけていないんです。1階に行くと、俺が幼稚園の頃に書いて渡した「おじいちゃん、長生きしてね」という紙もいまだに貼ってありますから。

この家は、ちょっと特殊かもしれないですね。俺がこの家に住み始めたときに、ゼロから始まったわけじゃなくて、元々じいちゃんが生きてきた家に俺が住んでいるわけだから。変に変えたくないんですよ。俺の色で染め上げたくない。

リヨが幼稚園の頃に、祖父母に宛てたもの
リヨが幼稚園の頃に、祖父母に宛てたもの

―カオルさんにとって、この家はどんな場所ですか?

カオル(Key):曲を作りながらダラダラ過ごす、めっちゃ遠い場所です。とにかく、僕の家からは遠いんですよね。なので、ここに来ると交通費と移動時間が憂鬱なんですけど、逆に、「ここに来るからには曲を形にしないと」という意識を強く持てる。

リヨ:嘘だろ、『ボンバーマン』ばっかりやってるじゃん!

カオル:いやまぁ……そりゃ、『ボンバーマン』はやりたいじゃん。

―ははは(笑)。曲作りの空間としてこの家があることは、クウチュウ戦にとっていい要素になっていますか?

リヨ:そうですね。チルできるので。スタジオだと時間が決まっているから、どうしても体育会系になるじゃないですか。それに比べて、ここではダラッとできるのがいいなって思います。『コンパクト』(2015年5月発売、1stミニアルバム)以降はここで作っていて、曲も段々とキャッチーになっているんですよね。

カオル:『コンパクト』以降っていうと、僕がクウチュウ戦のために曲を作ったり、曲作りに積極的に口出しするようになったタイミングでもありますね。

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リリース情報

クウチュウ戦『超能力セレナーデ』
クウチュウ戦
『超能力セレナーデ』(CD)

2016年8月3日(水)発売
価格:1,000円(税込)
CTCJ-20044

1. ぼくのことすき
2. インドのタクシー
3. アーバン
4. フルート
5. お願いUFO
6. 魔法が解ける

イベント情報

『クウチュウ戦presents「クウヂュウの戦~ikusa~Vol.2」』

2016年9月10日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 六本木Varit.
出演:
クウチュウ戦
曽我部恵一
haikarahakuti
料金:前売2,500円(ドリンク別)

プロフィール

クウチュウ戦
クウチュウ戦(くうちゅうせん)

1990年生まれのロックカルテット。2008年、大学1年のリヨ(Vo,Gt)とニシヒラユミコ(Ba)が原型バンドを結成。2011年1月、ベントラーカオル(Key)加入。同年7月にリヨが突然ペルーに飛び、アマゾンのジャングルの奥で行われる神秘的な儀式に参加。その後、2012年3月までイギリス/オランダなど、ヨーロッパを放浪。2014年5月、アバシリ(Dr)が正式加入。新体制のクウチュウ戦が誕生。その高度な演奏力、プログレッシブな音楽性が同世代の客/バンド/ライブハウス関係者などに絶賛されるが、そこにあった本当に重要なものは、夏のオリオンのように美しいメロディー、日常の風景を少し不思議な空間に異化させるリリック、そして光線のように天空を突き抜ける歌心だった。2015年5月に1stミニアルバム『コンパクト』、2016年1月に2ndミニアルバム『Sukoshi Fushigi』をリリース。そして8月3日に3rdミニアルバム『超能力セレナーデ』をリリースする。

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