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クウチュウ戦のアジトに潜入。「もの作り」に適した場所とは?

クウチュウ戦のアジトに潜入。「もの作り」に適した場所とは?

クウチュウ戦『超能力セレナーデ』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西田香織 編集:矢島由佳子

夢で曲が聴こえてきたんですよ。だから、曲を自分で作った感覚すらない。(リヨ)

―今回は、“インドのタクシー”以外はユートピアを求める意志が強いと言えますか? 歌詞もロマンチックだし、サウンドも、今までのようなプログレ的な過剰な展開で聴かせるのではなく、端正なメロディーで聴かせる曲ばかりですよね。

リヨ:あんまり意識してはないんですけど……ただ、曲を作っていた当時、恋愛していたんですよね。今はこの家で、ひとり寂しく暮らしていますけど、その辺のガラスとか、割れていますからね(笑)。

―あ、ほんとだ。

リヨ:この家にストームブリンガー(マイケル・ムアコックの小説『エルリック・サーガ』に登場する架空の剣)みたいな女性が出入りしていて、二人で暴れたりしていたから、リアルな感情の起伏が曲に出ていると思います。フルート奏者の女の子だったんですけど、フルートの音が迷惑だったから、「川に捨ててやろう」とか「土に埋めてやろう」っていう気持ちで曲を書いたし(笑)。

左から:リヨ、ベントラーカオル

―4曲目の“フルート”って、そういう曲なんですね(笑)。<フルートなんてこの世に必要ない>と歌っていますね。

リヨ:“お願いUFO”も、二人の関係がもう「勘弁してくれよ」っていう状態になっていたときに、「誰か迎えに来てくれないかな」っていう逃げ出したい気持ちを書いたし。

“ぼくのことすき”は、去年の夏にその子と滅茶苦茶喧嘩したときに書いたんですよ。家中ぐちゃぐちゃになるぐらいの大喧嘩をして。そしたら外から花火の音が聴こえてきて。「ちょっと、花火見に行こうよ」みたいになって……。

―喧嘩の途中に。いいですね。

リヨ:二人で少年と少女のように家を飛び出して、花火に向かって駆け出していったんです。そうしたら、その辺の雑居ビルからおじさんが顔を出して、「家からだとよく見えるよ~」とか言ってきて(笑)。それで、そのおじさんと一緒に花火見て。しっちゃかめっちゃかだけど、ちょっとロマンチックな夜があったんです。

で、その夜ここで寝ていたら、夢のなかでこの曲が聴こえてきたんですよ。だから、この曲は僕が作っていないんです。自分で作った感覚すらない曲だから、<ぼくのことすき>っていう言葉の意味が何なのかわからない。<ぼくのことすき>の後に続くのが「!」なのか「?」なのかもわからないんです。

地球上の歴史を振り返ったとき、僕たちの先祖が途絶えたことがなかったから、俺はここにいるわけですよね。それは、俺で途絶えさせちゃいけない。(リヨ)

―話を聞くと、この『超能力セレナーデ』は、ある意味では、リヨさんの過ぎ去った恋愛の記憶が閉じ込められた作品でもあるということですよね。この家も、リヨさんのおじいさんの記憶が閉じ込められていると言えますけど、ノスタルジーとか、何かが終わることに魅了される感覚って、リヨさんにはありますか?

リヨ:う~ん、あんまり考えたことなかったな……。でも、終わった出来事を思い出していることは多いかもしれない。最近、先のことを考えるより、ずっと昔のことを思い出しているんですよ。ただただ、老人のように昔起きたいいことを反芻して、切ない気持ちになってる。

―カオルさんも、6曲目の“魔法が解ける”で何かが終わっていく瞬間を描いていますよね。

カオル:“魔法が解ける”に関しては、自分のなかではまったく意味のない歌詞なんです。「魔法」とは何なのか、「解ける」とはどういう状態なのか……歌詞のなかで歌われる各シチュエーションは、明確に何かを思っていたわけではないんですよね。

ただ、何かしら感じているのは間違いないんです。これまでずっと続いていた何かが、もうなくなってしまうっていう……そういう切実でどうしようもない寂しさを、日常のなかで何の脈絡もなく感じることがあるから。

メンバーがよく釣りをして遊んでいる荒川にて
メンバーがよく釣りをして遊んでいる荒川にて

―なるほど。では、リヨさんもカオルさんも、「何かが終わってしまう」ことに切なさを感じ、思いを馳せる感覚があるわけですよね。それは、自分にとっては幸せなことだと思います?

リヨ:悲観的な気持ちではないんですよね。未来に希望を持っていないわけではないんですよ。

カオル:最近、よく「子どもが欲しい」って言っているもんね。

リヨ:ふふふ(笑)。この愛の連鎖を途絶えさせちゃいけないですからね。ちゃんとネクストジェネレーションに繋げていかないと、すべてが途絶えちゃうから。

クウチュウ戦

―この家然り、今回の作品然り、リヨさんが「記憶」を形あるもののなかに閉じ込めようとするのは、ノスタルジーに浸るためというよりは、「過去と今は続いている」という感覚を持っているが故なのかもしれないですね。

リヨ:そうですね……そもそも、地球上の歴史を振り返ったとき、僕たちの先祖が途絶えたことがなかったから、俺はここにいるわけですよね。奇跡が積み重なって、今の僕たちがいる。 最初はプランクトンで、魚になって、魚が陸に上がって哺乳類になって、猿になって……どこを取っても、俺らの先祖はいたわけじゃないですか。途絶えたことなんてなかった。それは、俺で途絶えさせちゃいけないって思いますよね。

クウチュウ戦

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リリース情報

クウチュウ戦『超能力セレナーデ』
クウチュウ戦
『超能力セレナーデ』(CD)

2016年8月3日(水)発売
価格:1,000円(税込)
CTCJ-20044

1. ぼくのことすき
2. インドのタクシー
3. アーバン
4. フルート
5. お願いUFO
6. 魔法が解ける

イベント情報

『クウチュウ戦presents「クウヂュウの戦~ikusa~Vol.2」』

2016年9月10日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 六本木Varit.
出演:
クウチュウ戦
曽我部恵一
haikarahakuti
料金:前売2,500円(ドリンク別)

プロフィール

クウチュウ戦
クウチュウ戦(くうちゅうせん)

1990年生まれのロックカルテット。2008年、大学1年のリヨ(Vo,Gt)とニシヒラユミコ(Ba)が原型バンドを結成。2011年1月、ベントラーカオル(Key)加入。同年7月にリヨが突然ペルーに飛び、アマゾンのジャングルの奥で行われる神秘的な儀式に参加。その後、2012年3月までイギリス/オランダなど、ヨーロッパを放浪。2014年5月、アバシリ(Dr)が正式加入。新体制のクウチュウ戦が誕生。その高度な演奏力、プログレッシブな音楽性が同世代の客/バンド/ライブハウス関係者などに絶賛されるが、そこにあった本当に重要なものは、夏のオリオンのように美しいメロディー、日常の風景を少し不思議な空間に異化させるリリック、そして光線のように天空を突き抜ける歌心だった。2015年5月に1stミニアルバム『コンパクト』、2016年1月に2ndミニアルバム『Sukoshi Fushigi』をリリース。そして8月3日に3rdミニアルバム『超能力セレナーデ』をリリースする。

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一聴・一見すると繊細に織られたアンサンブルに柔和な印象を抱く。が、極太のベースがリズムとメロディの両方を引っ張っていく様は超アグレッシヴでもある。観客も含めて会場に漂う空気は一貫して緩やかなものでありながら、なによりも3音の鋭い合気道を存分に楽しめるライブ映像だ。ビルドアップした低音に歌心を置くスタイルはまさに今だし、音の余白も心地いい。ポップとエッジィの両極をあくまで愛嬌たっぷりに鳴らす台湾出身の3ピースバンド、その魅力を1カット1カットが十二分に伝えている。(矢島大地)

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