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GOMA、事故からの7年を赤裸々に綴った日記をいま出版する意味

GOMA、事故からの7年を赤裸々に綴った日記をいま出版する意味

GOMA『失った記憶 ひかりはじめた僕の世界』
インタビュー・テキスト
九龍ジョー
撮影:田中一人 編集:飯嶋藍子
2016/08/26
  • 21

ディジュリドゥ奏者のGOMAが初の書籍『失った記憶 ひかりはじめた僕の世界――高次脳機能障害と生きるディジュリドゥ奏者の軌跡』を刊行した。2009年に交通事故により高次脳機能障害を負った彼は、過去10年間の記憶の多くを失い、アーティスト活動の休止も余儀なくされた。本書には、彼の日記を中心に、妻・純恵の日記、事故後に描きはじめた点描画も収められ、事故直後の絶望の淵から、懸命なリハビリや周囲の人間のサポートによって、日常を取り戻し、音楽活動を再開させていくまでの模様が赤裸々に綴られている。「これで一つの区切りにしたかった」というGOMAが本書に込めた想いを、これまでの道のりを振り返りながら語ってもらった。

たとえ昨日、一昨日の記憶が消えてしまうとしても、明日の自分を前向きにしてくれる言葉を日記に殴り書いてたんです。

―GOMAさんのInstagramを拝見したのですが、更新頻度も多くて、最近の充実した活動が伝わってきますね。

GOMA:ありがとうございます。ウェブ上で記録を残そうと思ったときに、いろんなSNSのなかで、Instagramが一番シンプルだし覚えやすいって教えてもらって。楽しかったことを写真ごと記録できるので、いいですね。

―Instagramに限らず、交通事故で「記憶障害」を含む高次脳機能障害を抱えてしまったGOMAさんにとって、記録ツールというのはすごく重要なものだと思います。今回、事故後からつけ始めた日記をまとめて本にされましたけど、その時々の気持ちがストレートに綴られていて、とくに事故直後の記述は生々しいですね。

GOMA:本当の病気を見つけてもらえるまで半年以上かかり、そこが苦しみのスタート地点だったんです。救急搬送先のお医者さんに頭部打撲だから大丈夫だって言われて家に帰されたんだけど、何かおかしい。自分でも「お医者さんが言ってるし、大丈夫なのかな?」と思うんだけど、やっぱり周囲からもおかしいと言われ続ける。その繰り返しが自分を追い込んでいったんです。そのうち、だんだん自分に自信がなくなってきて、家に閉じこもるようになってしまったんです。

GOMA
GOMA

―その後もいろんな病院で検査を受け続ける日々が続きます。何かがおかしいけど、その理由がわからないという状況はかなり苦しいですよね。医者に診断されたら、それを疑うのは難しいですし。

GOMA:自分の症状を言っても伝わらないし、受け入れてもらえなかったのは大きかったですね。それから別の病院の検査で「脳に怪我をしたから、こういうことが起きている」っていう理由が分かってきて、それからは少しずつ状況を受け入れられるようになっていくんですけど。でも、最初から「なんか違うぞ」っていう直感だけはずっとあったんです。精神科のお医者さんに薬を処方されても、「この薬、オレには違うんちゃうかな?」って。その直感が僕自身を引っ張っていってくれました。

だから、日記の最初のほうを読み返してみてもわかるんですけど、受け入れてもらえないことで行き場がなくなって、自分で自分を奮い立たせるしかなかったんです。そういう言葉がすごく多い。たとえ昨日、一昨日の記憶が消えてしまうとしても、明日の自分を前向きにしてくれる言葉を日記に殴り書いてたんですよね。

GOMA

―要所要所で奥さんの純恵さんの日記も挟まれます。こちらもかなり赤裸々に書かれていますね。GOMAさんが家の壁に穴を開けるような修羅場も出てきて。

GOMA:そういう攻撃的な状態になっているときって、僕自身は全く覚えていないんです。完全に神経が切れちゃっているというか。

―発作で意識を失ったまま、気がついたら3日間経っていたという記述もありました。

GOMA:なんていうか、「意識の向こうの世界」にいってしまっていることがあるんです。「向こうの世界」では全然違うことが見えたり、聞こえるようになったり、例えばコンピューターのメモリがまるまる入れ替わったような、全く違った感覚がある。それで、意識が「こっちの世界」に戻ってくるときは、いつもまぶしい光が見えるんです。ホントに毎回見るので、たぶん脳の何かと関係してるんじゃないかと思うんですよ。

GOMAが「こっちの世界」に戻ってくる時に見えるという光を描いた『ひかり BLUE』
GOMAが「こっちの世界」に戻ってくる時に見えるという光を描いた『ひかり BLUE』

―興味深いですね。絵も、事故前にはまったく描いたことがなかったのに、急に描けるようになったんですもんね。

GOMA:事故のあと、どうやって絵を描き始めたのか、自分でも覚えていないんです。最初の1、2か月は日記も書けるような状況じゃなかったのに、気づいたらものすごい数の絵を描き上げていた。当時は、絵が自分を鼓舞したり、安心させる手段でもあったんでしょうね。

―誰かに見せるために描いた絵ではなかったわけですね。

GOMA:そうなんです。だから、友達や家族が、僕の絵で個展をやってみようと言ってくれたときも、初めは「僕が描いた絵なんて誰が見にくるんやろ?」と思ってました。でも、やってみたら、来てくれた人が「感動した」とか「元気をもらった」と言ってくれたので、そこで初めて「いまの自分にもできることがあるんだ」と思えたんです。いまもこうして新しいチャレンジをしようと思えるのは、やっぱり応援してくれる人たちや、家族やスタッフの存在が大きいですね。

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書籍情報

『失った記憶 ひかりはじめた僕の世界』
『失った記憶 ひかりはじめた僕の世界』

2016年7月末発売
著者:GOMA
価格:1,728円(税込)
発行:中央法規出版

イベント情報

『JUNGLE MUSIC presents. GOMA初書籍出版記念 GOMA & The Jungle Rhythm Section LIVE 2016「事故にサヨナラ!」』

2016年9月9日(金)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 WWW X
出演:GOMA & The Jungle Rhythm Section
ゲスト:中村達也、AFRA
料金:前売4,000円 当日4,500円 25歳以下2,500円

2016年10月30日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 NOON+CAFÉ
出演:GOMA & The Jungle Rhythm Section
料金:前売4,000円 当日4,500円(共にドリンク別)

※前売ご購入者には公演当日に会場にてGOMA未発表アルバム『Brain Dancer』(9曲入)をもれなくプレゼント

プロフィール

GOMA
GOMA(ごま)

オーストラリア先住民族アボリジニーの伝統楽器ディジュリドゥの奏者・画家。98年アボリジニーの聖地アーネムランドにて開催された「バルンガディジュリドゥコンペティション」にて準優勝。ノンアボリジニープレイヤーとして初受賞という快挙を果たす。帰国後全国の野外フェスティバルや海外にも活動の幅を拡げ勢いに乗っていた09年交通事故に遭い「外傷性脳損傷による高次脳機能障害」と診断され活動を休止。事故後間もなく描き始めた点描画が評判となり、全国各地で展覧会を開催。11年には再起不能と言われた音楽活動も苦難を乗り越え再開した。GOMAの復帰を描いた映画「フラッシュバックメモリーズ3D」が第25回東京国際映画祭にて観客賞を受賞。現在は音楽、絵画、講演会と多岐に渡り活動中。

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