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スカパラとコラボする上妻宏光の「伝統」に安住しない三味線道

スカパラとコラボする上妻宏光の「伝統」に安住しない三味線道

上妻宏光『Newest Best「粋-sui-」』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:高見知香 編集:山元翔一

「伝統」と「革新」の間を行き来しながら、津軽三味線の持つ可能性を追求し続けてきたトッププレイヤー・上妻宏光が、自身のキャリアを網羅したベストアルバム『Newest Best「粋-sui-」』をリリースする。ロック、ポップス、ジャズそしてクラシックと、ジャンルの垣根を越え、国内外の様々なアーティストとコラボレーションし続ける彼の足跡が刻まれた本作を聴けば、津軽三味線の持つ計り知れないポテンシャルの高さと、それを自在にコントロールする上妻のバイタリティーに、ただただ圧倒されることだろう。

父の影響で三味線を始め、伝統民謡の世界から世界の音楽シーンへと飛び立った上妻。今でこそ日本を代表する存在として確固たる地位を築いた彼だが、そこに至る道のりには様々な葛藤や苦悩があったという。“津軽じょんから節”との出会い、ロックバンド「六三四Musashi」への加入を経て、唯一無二のスタイルを獲得するまで。その道のりを、ソロデビュー16年目を迎える今のタイミングで振り返ってもらった。

津軽三味線は、極端なことを言えば、ジミ・ヘンドリックスの有名なリフの一部を持ってきたりするのも許される。基本的に「定義」はないんですよね。

―そもそも上妻さんは、なぜ三味線をやろうと思ったのでしょうか。

上妻:父親が趣味で三味線を弾いていたのですが、三味線の持つ音色や、リズム感に興味を持ったんです。6歳のころに自分から「やりたい」と言ったのがきっかけで、その後「津軽三味線」に夢中になっていきました。津軽三味線は、インプロビゼーション(即興)でフレーズを作っていけるので、自分のカラーが出しやすいんです。

―それ以外の三味線は違うのですか?

上妻:長唄(三味線音楽のジャンルの1つ)などもそうですが、基本的に全部「手元」(手の動き)が決まっていて、「ここはこうしなければならない」という制約が多いんですね。でも津軽三味線は、誰かのフレーズを引っ張ってきたり、極端なことを言えば、ジミ・ヘンドリックスの有名なリフの一部を持ってきたりするのも許される。基本的に「定義」はないんですよね。

上妻宏光
上妻宏光

―何故そんなに自由なのでしょう。

上妻:津軽三味線は、もともと目の不自由な方が、誰かの家の玄関先で演奏する「門付け」(日本の大道芸の一種で、門口で金品を受け取る形式の芸能の総称)で生計を立てるための楽器だったんですよ。今で言う、ストリートミュージシャン的な存在の人たちですね。

となると、他のプレイヤーとの違いをどんどんアピールしていかないと、注目も集められないし生き残っていけないわけですね。もっと人と違うフレーズを弾いたり、わざと大きな音を出したり。そうやって注目を集めていたわけです。

―「ストリートミュージシャン的」という見方は面白いですね。

上妻:スペインのフラメンコも同じなんですよね。いわゆる旅芸人の音楽だから、色んな地方の音楽を取り入れ、非常にパーカッシブな演奏をする。あと、津軽三味線の独特の旋律はインドの「ラーガ」(インド古典音楽の音楽理論の旋法)が発祥なんじゃないかとも言われていて。インドの古典音楽というのも、独特の拍子の取り方があったりと非常にユニークなシステムを持っていますよね。

―シタールを中心とする北インドの古典音楽は、元をたどれば宮廷音楽であり、対してフラメンコや三味線はいわゆる大衆音楽ですよね。日本にも、限られた階級の人しか聴けない音楽があります。

上妻:ええ。世界最古のオーケストラと言われる雅楽は神楽ですので、一般人は聴くことのない音楽でした。尺八も元々は虚無僧しか吹いてはいけなかったし、能楽も武家の文化で当時の殿様たちが娯楽として楽しんでいたものです。それに対して三味線は、一般の人も演奏することができた。宴会やお座敷で芸者さんが演奏するのは三味線でしたし。

上妻宏光

―それを考えると、当時は「大衆音楽」とされていたものでも、時の洗礼を受ければ「伝統音楽」になっていくこともあり得るわけですよね。

上妻:そうなんです。当時の人たちにとっては大衆的だったり革新的だったりした演奏が、時を経て伝統になっていったことを考えると、僕がやっていることが100年経ったらクラシックになっていることもありえますよね。

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リリース情報

上妻宏光『Newest Best「粋-sui-」』
上妻宏光
『Newest Best「粋-sui-」』(CD)

2016年10月19日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCQ-85304

1. 游
2. 獅子の風
3. 月夜の影~石川五右衛門のテーマ~
4. Fun
5. 風 2015ver.
6. 田原坂
7. 津軽じょんから節
8. 荒獅子
9. 越天楽弦奏曲
10. Paradise Has No Border -三味線Ver.-
11. YOSARE
12. 三味線とオーケストラのための幻想曲「飛燕」ピアノ連弾Ver.
13. 津軽よされ節

イベント情報

東京国際フォーラム開館20周年記念事業「J-CULTURE FEST/ にっぽん・和心・初詣」
『上妻宏光 日本流伝心祭 クサビ 其ノ五―伝統と革新―“頂ITADAKI”』

2017年1月1日(日・祝)
会場:東京都 有楽町 東京国際フォーラム ホールA
出演:
上妻宏光
市川九團次
DAZZLE
田中傳次郎
林英哲
MIYAVI
山井綱雄
由紀さおり
料金:料金:3,900円(1ドリンク付)

プロフィール

上妻宏光
上妻宏光(あがつま ひろみつ)

茨城県出身。6歳より津軽三味線を始め、幼少の頃より数々の津軽三味線大会で優勝するなど、純邦楽界で高い評価を得る。ジャンルを超えた国内外アーティストとのセッションは各方面から注目を集め、世界各国で公演を行う。2013年安倍内閣総理大臣主催の「TOKYO2020公式夕食会」、「第5回アフリカ開発会議 公式首脳晩餐会」では日本を代表して演奏を披露。2014年津軽三味線奏者としては初めて、市川海老蔵の本公演に作曲、演奏にて参加。新世代津軽三味線奏者の第一人者である。唯一の愛弟子である志村けんの三味線指導を行い、2016年7月より「キリン氷結®」TVCMに出演中。

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