プロスケーターSHIMONに聞く衆議院選挙。世の中は少しずつ変えることができる

10月31日に迫った衆議院選挙。新型コロナウイルス対策、ジェンダー、ダイバーシティ、気候変動などの問題が山積みのなか、選挙のたびに毎回話題になるのが、投票率の低さだ。

とくに20代、30代の若者層の投票率は、近年約35%まで落ち込んでおり、未来の日本に対して「自分ごと」として実感を得ることができない若者たちの正直な思いが透けて見えてくる。

どうすれば、私たちはいまの世の中に対して「自分ごと」としての実感を得ることができるのか?

そのヒントを模索したいと考え、プロスケーター / 人気YouTuberでありながら、発展途上国の貧困問題やスケボー業界の構造悪などの社会課題にもアプローチするSHIMONに連絡をとってみた。

この春に大学を卒業したばかりのSHIMONは、大阪生まれの、ハンガリー、ドイツ、大阪育ち。上記の活動のほかにも行政と協働し、スケートパークの建設やスケートボードコンテストの開催など、領域を横断しながら多岐にわたる活動を行っている。

いったい彼は、世の中に対してどのような実感を感じているのだろうか? 今回の衆院選への関心とともに聞いてみた。

日本社会との断絶。スケートボードは社会の「悪」なのか?

―『東京オリンピック』で大人気のスケートボードですが、いまだに反社会的なイメージも残っており、メディアなどでネガティブに扱われることも少なくありません。SHIMONさんは、現状をどのように感じていますか。

SHIMON:中学生のときにはじめて警察官に声をかけられてから、いまでも月に1回は必ず職質されるので、あまり状況は変わっていないと思います。ちなみにスケートボードを持っていないときに職質されたことは一度もありません(笑)。

捕まりました。

―そんなに明確に差別されてしまうんですね……! なぜ、警察官はスケーターを目の敵にしているのでしょうか?

SHIMON:難しいですね……いろんな要因があると思います。警察だけでなく、世間からの視線も同じようなものですし。

たとえば、ある公園ではブレイブボードやサッカーボールは問題ないのに、スケートボードだけが禁止されていたりするんです。周りに人がいない広い場所で、こっそり一人で静かに練習していても、通りがかりの人に通報されてしまったり……。

―めちゃくちゃですね。

SHIMON:一言では言えませんが「世代」もあると思います。もともとスケートボードはアメリカのカウンターカルチャーとして発祥した経緯があって、1990年代の日本で大きなブームになった際、当時の不良カルチャーと強く結びついていたそうなんです。

そのときを知る世代が、いまある程度の社会的地位についていたりするので、当時のイメージが強く残っているのかな、と感じることはあります。

SHIMON

―実際、いまのスケーターに反社会的な人は多いと感じますか?

SHIMON:まったく感じません(苦笑)。どちらかというと、シャイでおとなしい人が多い印象です。あといまは子どものスケーターも多くて、しかもめちゃくちゃ上手なんです。

スケートボードに乗ったことがある人ならわかると思いますが、スケボーって、シビアなバランス感覚や繊細な動作を求められるので、コツコツ練習しないと絶対にうまくならない。しかも怪我をするリスクも高いので、生半可な気持ちでは続かない。だからスケーターって、真面目で忍耐力のある人が多いんです。

もちろんどんな世界にも問題を起こす人はいると思いますが、ぼくは小学生のときから10年以上スケートボードをやっていて、一度も怖いと思う人に出会ったことはありません。

スケートボードの環境を良くするために、行政や企業と向き合った

―SHIMONさんの活動が面白いのは、ストリートカルチャーであるスケートボードと犬猿の仲に見える行政、その両方と協働してスケートパークをつくるなどのプロジェクトをされているところです。どういうきっかけで行政とコラボレーションすることになったのでしょうか。

SHIMON:うーん……最初から行政とコラボレーションしようとしていたわけではなくて、自然にそうなっていった感じです。

友人たちとスケボーで遊んだり、毎月のように職質されてうんざりしたり、プロスケーターが食べていけない状況や、スケボー業界の構造的な問題を目にしたりするなかで、単純にスケートボードの環境を良くしたいって思ったんです。

そのためには、スケーターのコミュニティーに閉じこもっていても何も変わらない。自分たちからも世間に歩み寄って、行政や企業の方たちと向き合って、古いイメージとは違う本当のスケーターの姿を理解してもらえれば、結果的にスケートボードができる場所が増えたり、スケーターにとってもいい環境をつくれると思ったんです。

YouTubeが、社会に対してのはじめてのアクションだった

―自分の周囲や社会に対してそういった課題意識を抱き、具体的なアクションを起こした最初のきっかけを覚えていますか?

SHIMON:たぶんYouTubeだと思います。YouTubeを見はじめた当時は小学6年生で、スケボー初心者だったのですが、周りに教えてくれる人がほとんどいなかったんです。YouTubeも日本ではほとんど知られておらず、いまみたいにスケボーのチュートリアル動画も全然なかった。

ぼくは英語がわかるので、YouTubeで海外のチュートリアル動画を見ながら一人で練習していたのですが、同じように一人で練習している日本のスケーターは、動画もなくて困っているかもしれない。

そう思って、自分でチュートリアル動画を撮ってYouTubeにアップしてみたんです。そしたらいろんな人から反応が返ってきて、すごくうれしかった。人の役に立てた実感がありました。

SHIMONさんが7年前に投稿したスケボーのチュートリアル動画「HOW TO OLLIE オーリー 初心者用&高くする方法 Trick-Tip#1」

―そうやってYouTubeでスケートボードの魅力を伝えるさまざまなコンテンツを発信し続けるなかで、登録者数も少しずつ増え、スケーターコミュニティー以外との接点も生まれていったというわけですね。

SHIMON:そうですね。あとは中学生の頃からのスケボー友達である伊崎遼太郎くんと、行政や企業が主催するピッチコンテストやアクセラレーションプログラムに大学の頃から定期的に参加していたのですが、そこから生まれたプロジェクトもあります。

大阪市港区さんに協賛いただいているスケート動画コンテンスト『RIDERS GAME』は、ピッチコンテストからはじまったプロジェクトで、これまでに9回開催させていただきました。そのつながりからいま、大阪市港区の地域経済活性化のためのスケートパークプロジェクトにも関わせてもらっています。

―行政の方と仕事をするなかで、大変なことはありますか?

SHIMON:いまのところスケートボードに理解のある人が多く、とても助かっています。ただ、新しいスケートパークがつくられるときに、ユーザーであるスケーターの声が届かないままつくられてしまったりするので、お互いの距離をもっと縮めていきたいなと思っています。

スケボー界の闇について話します

―SHIMONさんのYouTubeチャンネルは、スケートボードのさまざまな魅力を伝えるだけでなく、「スケボー界の闇について話します」など、スケートボード業界を取り巻く課題に踏み込んだコンテンツも特徴のひとつです。

SHIMON:日本のスケートボード業界はすごく狭くて、プロスケーターの立場も弱いので、なにか疑問を感じても声を上げづらい状況だったりするんです。だけど、ぼくにはそういったしがらみもない。だから違和感を感じたときに、ちゃんと声を上げる役割を担いたいなとは思っています。

10月31日の衆院選、スケーターの関心はどこに?

―今週末、衆議院議員選挙がありますが、SHIMONさんは、投票に行かれる予定はありますか?

SHIMON:行こうと思っています。普段から政治について特別興味があるわけではないのですが、18歳で選挙権を得てからは、すべての選挙で投票しています。

―同世代の友人と選挙について話すことはありますか?

SHIMON:あまりないですが、選挙に行く人とほとんど行かない人に分かれている気はします。通っていた中学校、高校が帰国子女の多い学校で、政治や社会問題についてディベートする文化があったので、そのときの友人たちとは、たまに社会問題について話したりすることはあります。

―投票にするにあたって、何を判断基準にしていますか?

SHIMON:毎回、誰に投票すればいいのか迷うのですが、選挙が近づいてきたら、各政党の主張をまとめたウェブサイトなどで、自分の考えや問題意識となるべく近い政党、議員を調べるようにしています。

同性婚などのジェンダー問題、スケーターや外国人などに対するダイバーシティの問題に関心があるので、そのあたりを調べることが多いですね。

―日本の選挙においては、若者の投票率の低さが大きな問題となっています。同世代のSHIMONさんから見て、なにが原因だと思いますか?

SHIMON:うーん……若い人だけに限らないですが、やっぱりイシューと実生活につながりを感じにくいのはあるのかもしれません。いろんな国の人と話していても、日本って良くも悪くも安定しているなって思いますし。

イギリス人の友人と話していると、Brexitの話になったりするのですが、結果ひとつで自分たちの国や生活が大きく変わるとなったら、やっぱり選挙を無視することはできないですし。

© Yohei Hirano

―そういう意味では、2年近くにおよぶコロナウイルスの問題、それに対する政府の対応など、今回の衆院選は多くの日本人にとって「実生活とのつながり」を感じやすい選挙なのかもしれませんね。

SHIMON:そうですね。ぼくも選挙のときだけでなく、ふだんからもう少し政治や社会問題に興味を持っていきたいとは思っています。

8月に「PoliPoli」という誰でも政策を提案できるウェブプラットフォームで、「スケートパーク不足解消で、スケーターと社会がもっと共生できる環境を!」という提案をしたところトレンドランキング1位になり、参議院議員の音喜多駿さんや、前衆議院議員の小倉まさのぶさんと意見交換させていただく機会に恵まれました。

YouTubeにしても、PoliPoliにしても、いまはSNSなどを使って、ちょっとしたアクションを起こすだけで、いろんな人とのつながりが生まれやすい時代です。議員の方々とも今後地道にコミュニケーションしていきたいですね。

―今後はどのような活動をされる予定でしょうか?

SHIMON:「スケボーで社会を変える」をテーマに、これからもスケートボードとそのライフスタイルを、多くの人に伝える活動をしていきたいと思っています。

そのひとつとして、貧困問題などで自由に遊ぶことができない国の子どもたちにスケートボードを伝える「SkateAid プロジェクト」を2017年から行っています。

スケボーを知らない国。スリランカで滑る!【SkateAid プロジェクト】

SHIMON:これまでに、ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム、カンボジア、インド、ネパール、スリランカの小学校や孤児院など30施設以上を訪れ、子どもたちにスケートボードの楽しみ方を伝えてきました。

新型コロナウイルスの影響で2年くらいストップしていたのですが、今年ネパールのブトワルという街に、ドイツのNPOと協働でスケートパークを建設するプロジェクトをスタートします。

今回のプロジェクトがこれまでと大きく違う点は、誰でも参加できるコミュニティー / サードプレイスであるスケートパークを新しくつくるところにあります。

ぼくは小学生のときに、帰国子女やハーフということでいじめられて不登校になりました。そのときに多様性を認めてくれるスケートボードやコミュニティーに出会い、大きく人生が変わりました。

スケートボードがぼくを救ってくれたように、孤児院の子どもたちがもし何らかの逆境にある場合、彼らにとってスケートボードが一つの光になればいいなと考えています。

ウェブサイト情報
SkateAid プロジェクト「ネパールにスケートパークを作って子供たちに笑顔と夢を与えたい!」
書籍情報
『僕に居場所をくれたスケートボードが、これからの世界のためにできること。』

2021年7月28日(木)発売
著者:SHIMON
価格:1,650円(税込)
発行:ぴあ
プロフィール
SHIMON(岩澤史文) (しもん(いわざわしもん))

大阪生まれ、ハンガリー、ドイツ、大阪育ち。中央大学商学部卒。プロスケーターであり、YouTuberとして「MDAskater」を運営。ハウツー動画から始まり、スケートボードの楽しさや、深度のあるカルチャー、スケーターの自由で平和なライフスタイルなどをリアルかつクリーンに発信。また、スケートカルチャーのない発展途上国などに、スケートボードの魅力を伝える活動「SkateAidプロジェクト」も行うほか、オリジナルアパレルブランド「SHIMON」も運営している。



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