ニュースから2分で読み解く、環境問題

気候変動へのアクションを「お金に換える」ブロックチェーン。その仕組みとは?

テックの祭典『SXSW』の主要テーマ「気候変動」。ブロックチェーンとの意外な関係とは

3月20日まで開催されている世界最大級のテクノロジーと文化の祭典『サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)』。今年も音楽祭や映画祭をはじめ、パネルトーク、製品発表会、ピッチイベントなどなど、多種多様なイベントが一挙に繰り広げられています。

2022年、2年越しのオフライン開催を遂げた『SXSW』では、「気候変動」も主要テーマのひとつ。目玉イベントの「カンファレンス」では、のべ53時間が気候変動に傾けられている計算になります。

『SXSW』はある意味、世の中の「いま」を映し出す鏡。気候変動が世界ではいかにホットなトピックであるか、ここからうかがえます。

一口に「気候変動」といってもその範囲はとても広く、カンファレンスでは、「気候変動×食」「×ファッション」「×エネルギー」「×モビリティー」……さまざまなテーマでのディスカッションが行なわれました。

ぼくのようにしばらく環境の分野にいる身からすると、まぁ、どこかで見たことのある感じの内容が多くはあるのですが、そんななかでも「お! きたか!」とワクワクさせてくれたのが——「気候変動×ブロックチェーン」。

ん? そのふたつって関係してるの? と思う方がほとんどかもしれません。今日はそのつながりをふたつ紹介したいと思います。

中国国内のビットコイン取引だけで、2年後には毎年1億トン以上のCO2が排出されるように

ひとつ目は「負」のつながり。

日本でも、ブロックチェーン技術を基礎とした「暗号通貨」の取引は人気。諸外国と比較しても、個人が暗号資産を保有している割合が高い、という結果が報告されています(*1)。

しかし、そんな暗号通貨には、ある不都合な真実が。それは、その取引が莫大なエネルギーを使い、CO2を大量に排出していることです。

ある調査によれば、このままいくと、中国国内におけるビットコインの取引だけで、2024年には毎年約1億3,050万トンものCO2が排出されるようになるそう(*2)。

1億3,050万トンといえば、例えば日本全体のCO2排出量の約11%、スペインの52%、フィリピンならじつに103%に匹敵する、巨大な排出量!(*3)この甚大な環境への影響を受けて、暗号通貨に反対する動きも一部では出てきています。

エコなブロックチェーンを使って、温暖化へのアクションが「お金になる」仕組みも

ふたつ目は「正」のつながり。

ブロックチェーンは、構築する方法次第で、エネルギーの使用とCO2の排出を著しく下げることができるんです。この方法を使って、環境へのインパクトを低く抑えた「エコ」なブロックチェーンに、いま注目が集まっています。

そのひとつが「Tezos」。同社のウェブサイトによれば、Tezosのエネルギー使用量はビットコインのじつに10万分の1以下。格段に低い数字です。

そしていま、Tezosなどの環境負荷の低いブロックチェーンプラットフォームを使って気候変動へのアクションに取り組むプロジェクトが乱立しているんです。

例えば、ぼくも関わっている「The Angry Teenagers(編集部訳:怒れるティーンたち)」では、こうしたエコなブロックチェーンプラットフォーム上で「NFTアート」を販売し、それによって集まった資金を使って植林を行なっています。購入者はアートとともに、木を植えた証もNFTという形で所有できます。

これまでも存在した「寄付」という枠組みの場合、リターンといえば満足感など主に抽象的なものでした。それに対して、NFTを活用すれば、購入者は直接的なリターンをNFTという形で得ることができます。

ポイントは、NFTは売買もできるということ。自分が木を植えた証となるNFTを、欲しい人には転売できる——つまり、うまいこと高く売れれば「お金になる」ということ。ブロックチェーンの技術を応用して、温暖化を防止する行為に経済的な価値を与えようとする取り組みが生まれてきているわけです。

注意しないといけないのは、「環境にいい」とうたっているのに、じつは従来の環境に悪いブロックチェーンを使用しているために、負の側面が大きいプロジェクトもなかにはあること。

「気候変動×ブロックチェーン」の接続によって、人にも地球にも良い取り組みがさらに広まっていくことに期待したいです。

*1:ドイツのデータリサーチ会社「Dalia Research」による調査

*2:オンラインジャーナル「Nature Communications」に掲載の論文「Policy assessments for the carbon emission flows and sustainability of Bitcoin blockchain operation in China」より

*3:世界各国から研究者やエンジニアが集まって運営している非営利サイト「Worldometer」のデータ(2016年)より
日本:https://www.worldometers.info/co2-emissions/japan-co2-emissions/
スペイン:https://www.worldometers.info/co2-emissions/spain-co2-emissions/
フィリピン:https://www.worldometers.info/co2-emissions/philippines-co2-emissions/

プロフィール
清水イアン (しみず いあん)

環境アクティビスト。2030までに新たな森林伐採 ZEROを目指す国際環境 NPO 「weMORI」代表。世界中の創造力と10代をつなぐEdTechプログラム「Inspire High」ナビゲーター環境・気候変動に関する先端情報と仲間が集まるオンライン・コミュニティ「GREEN DAIGAKU」を最近スタート(仲間募集中です!)。世界に森を、教育にインスピレーションを、次世代に美しい地球を。



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