だから私は声をあげる。気候変動問題に取り組む世界の8人【後編】

世界のさまざまな場所で暮らす人々に、気候変動を止めるためのアクションに立ち上がったきっかけや、行動を起こしてからの変化、未来への希望などを訊くメールインタビュー。後編では、イギリス、日本、ジンバブエから4人の声を紹介する。

気候変動問題に取り組もうと思ったパーソナルな体験や、活動するなかで感じた不安とその対処法、いま行動するのをためらっている人へのメッセージなど、それぞれの視点で述べてくれた。(前編はこちら

トルメイア・グレゴリー
市川咲優理
チド・ニャルワタ

「気候変動が自分の好きなものにどんな影響を与えるのか。それを話すことは、とても大事」(トルメイア・グレゴリー / イギリス在住)

イギリス出身のトルメイア・グレゴリーさんは、より良い未来を想像するためのポッドキャスト「Idealistically」のホストも務めるアーティスト / アクティビスト。

ファッションが好きで、ファッションデザイナーを目指していた彼女だからこそ、ファッション業界の温暖化への影響を知ってショックを受けた。自分が好きなものがどんなふうに生み出され、どうやって手元に届いているのか。それを知ることは、行動を起こすためのきっかけになる。

トルメイア・グレゴリー
アーティスト / 気候正義アクティビスト、イギリス・ストラウド出身、同国チェルトナム在住、21歳

─なにがきっかけで気候変動問題に興味を持ち、どんな活動を始めましたか?

グレゴリー:私は子どものころからファッションデザイナーになりたいと思っていたのですが、2013年のラナ・プラザ崩落事故(バングラデシュの縫製工場が入った商業施設「ラナ・プラザ」が突如崩落し、1,000人以上の死者を出した事故。世界の有名ブランドの縫製も請け負っていた工場で、危険を知りながら劣悪な環境で働かされていた多くの労働者が犠牲に。ファストファッションビジネスのさまざまな問題点が広く知られるきっかけとなった)のことを学んだあと、ファッション業界が気候危機の原因になっているのだと気づきました。

それからは、オンラインのプラットフォームを使い、私のアートやアクティビズムを通して気候危機への関心を喚起するような活動を行なっています。それだけじゃなく、直接的なアクションもオーガナイズしたり、参加したりしています。

─活動を始めるとき、周囲の目が気になったり、恐いと思ったりしませんでしたか?

グレゴリー:これは結局のところ自分たちの暮らしのための戦いなので、そんなに気になりませんでした。より良い未来のために戦うこと以上に大事なことはないですし、他の人の目を気にしている暇はありません。

─環境に配慮してライフスタイルを変えたとき、負担は感じませんでしたか? 感じたとしたら、その気持ちをどう払拭しましたか?

グレゴリー:仲間がいないとエコ不安(Eco Anxiety)に対処するのは難しいですね。コミュニティーの組織化に関わったり、抗議運動に参加したりすることは、自分は一人じゃないんだと感じられて、大きな助けになると思います。

─気候変動問題について周囲の人と話しますか? 誰とどんな内容で話すのでしょうか?

グレゴリー:もともと私のファッションへの愛情がきっかけで活動を始めたので、家族はどこで服を買っているかとか、セカンドハンドでなにを買ったかとか、よく話してくれます。気候変動が自分の好きなものにどんな影響を与えるのか。それを話すのはとても大事なことだと思います。

─行動を始めてから、どんな変化がありましたか?

グレゴリー:買い物が減りました。本当に必要なものしか買わないし、そうすることで自分の持っている洋服に対する見方も変わりました。もっと物を大切にするようになりました。

ロンドンの百貨店「Selfridge」の前で行なわれた、化石燃料とファッション業界の関係性を訴える抗議運動にて

─声を上げることに無力感を感じるときはありますか? どんなときにそう感じ、どのようにその気持ちと対峙しましたか?

グレゴリー:気候災害についてのニュースが延々繰り返されているときに、いちばん無力感を感じますね。私がそのとき被害を受けている人たちのためにできることは、そんなに多くないからです。私がすべてを背負ってるわけではないということを忘れないことが大事ですね。必要なのはシステムの変革です。

─10年後はどんな未来であってほしいと思いますか?

グレゴリー:私はただ、住むのに適した世界のために私たちができることすべてをやったのだと感じたいです。本当にできることすべてを試したのだと。どんな未来になるかはわからないけど、それを感じられたら良いですね。

─気候変動問題に関心はあるけれど、行動を起こすことをためらっている人がいたら、なんと声をかけますか?

グレゴリー:私は、たとえばアクティビズムの会合でお茶を入れたりするだけでも「アクティブ」だと言えるんだということを伝えたり、見せたりするようにしています。

会計担当としてグループのお金の管理を手助けしたり、建築家として道路をふさぐためのブロックの構造を知っている、というようなことも同じです。自分がすでに持っているスキルを使って、システムに立ち向かって戦っている人の助けになることができるんです。

トルメイアさんがホストを務めるポッドキャスト「Idealistically」(Spotifyを開く

「小さな行動が近くの数人に強く響けば、その先にまた動きが広がっていく」(市川咲優理 / 神奈川在住)

環境問題への取り組みに力を入れている企業に勤めながら、個人でも気候アクションを行っている市川咲優理さん。逗子で暮らし、地球に優しいライフスタイルを実践する市川さんは、環境問題について周囲の人と話す際に身近な話題から話し始めることを大切にしているという。カフェで使い捨てカップを使わない、友人も見ているSNSで積極的に情報を発信する。そうした実践の積み重ねが、周りの人の心も動かし、変化につながっていく。

市川咲優理
東京出身、神奈川・逗子在住、26歳

─なにがきっかけで気候変動問題に興味を持ち、どんな活動を始めましたか?

市川:大きく意識が変わったのは環境問題に積極的に取り組んでいるいまの職場に入社したとき。Instagramでの暮らし方の発信、気候マーチへの参加、気候変動に詳しい方を招いたオンライン勉強会の開催、友達との会話のなかで素朴な疑問を共有する、などの活動を始めました。「通販で頼んだものが過剰包装だった」とかよくある会話です。あはは。

─活動を始めるとき、周囲の目が気になったり、恐いと思ったりしませんでしたか?

市川:気になりました! 全然完璧にできているわけではないので、揚げ足取られたら嫌だなあと思うし、実際に「二酸化炭素が悪だというのは利権だ」という意見をもらったりしました。でも、意見をもらうことで、いろんな側面から気候変動を見る勉強にもなりましたし、慎重に情報を選ぶようになりました。

─環境に配慮してライフスタイルを変えたとき、負担は感じませんでしたか? 感じたとしたら、その気持ちをどう払拭しましたか?

市川:ライフスタイルを変えていくのはむしろ心地の良いことでした。ただ調味料一つ選ぶにしてもプラスチックではないものや材料にこだわっているものは値段も高くなるので、金銭的に負担を感じました。

ですが同時に、それが本当の必要経費なんだと感じています。大きなことをいうと地球で生かしてもらっている責任、小さくいうときちんとしたもので体をつくることで、長い目で見たときに自分自身の健康につながっていると思っています。

─気候変動問題について周囲の人と話しますか? 誰とどんな内容で話すのでしょうか?

市川:話します。小さなポイントですが、一緒にカフェに入ったときに使い捨てカップではなくマグでお願いしたり、買い物をするときに選び方が友人とは違ったりすると興味を持ってもらえます。

スーパーなど、物の流れが見えないシステムのなかで買い物をすることに慣れている人とは、選ぶもの一つで自然に配慮できるということについて話したり、一緒に買うものを選んだりもしますね。

いきなり話し出したり、押し付けるのではなく、生活のなかで自然と出てくる話題を大切にすると相手も受け入れやすいのかもしれません。話す内容については、身近で起きている災害や、予測されている数値を具体的に話すようにしています。

─行動を始めてから、どんな変化がありましたか?

市川:「じつは気になっていた」という声をよく聞くようになりました。発信することで昔の友人から連絡がきて、同じ想いを持っていたことから再びつながることができたり、「環境問題って大きすぎて、気にはなるけど私に何ができるかわからない」という素直な声も聞くようになりました。きっと発信を始めなかったらつながることのなかった仲間たちの存在に支えられています。

─声を上げることに無力感を感じるときはありますか? どんなときにそう感じ、どのようにその気持ちと対峙しましたか?

市川:感じていました。しかし、私が環境問題のことを積極的に学ぶようになった2年前より、確実に周囲の人の感覚が変わっていると実感しています。いままで情報源が主にネットニュースやテレビだった人たちにも、SNSの普及によって個人の声がより目に入りやすくなりましたし、大きなムーブメントとなって変化を起こせる可能性を感じています。

─10年後はどんな未来であってほしいと思いますか?

市川:国の政策、企業努力、個人の意識、科学の進歩、いろんなことが変化していて、そのさらに10年後の未来を安心して見られるようになっていてほしいです。

─気候変動問題に関心はあるけれど、行動を起こすことをためらっている人がいたら、なんと声をかけますか?

市川:偉そうにアンケートに答えてみましたが本当のところ私の行動もとても小さなものです。でも、その小さな行動が、小さな声が、近くの数人に強く響けば、その先にまた小さな動きが広がっていきます。

いまはもう国や企業レベルで変化をしていかないと間に合わないと言われていますが、たくさんの人が気づき始めているいまこそ、一人ひとりが国民として消費者として小さくでも声を上げれば必ず国や企業レベルでの変化もあるはずです。

「政治的行動や、ジェンダー、人種および社会的平等なくしては、気候変動の解決策は不十分」(チド・ニャルワタ / ジンバブエ在住)

アフリカは、世界で気候変動の影響にもっとも脆弱な地域といわれている。ジンバブエでは近年洪水や干ばつが起き、水不足や食糧不足の危機にも直面している。

チド・ニャルワタさんは同国で女性の権利や気候正義の運動を行なうアクティビストだ。「発展というのは個人と環境の『ウェルビーイング』に根差すもの」。気候変動は、社会のさまざまな不公正が複合的に絡み合った、構造的な問題として認識しなくてはいけない。

チド・ニャルワタ
アフロフェミニストリサーチャー / コンサルタント / デジタルストーリーテラー / 気候正義アクティビスト、ジンバブエ出身、同国ハラレ在住、28歳

─なにがきっかけで気候変動問題に興味を持ち、どんな活動を?

ニャルワタ:水の確保や干ばつ、廃棄物管理の不備などの問題がジンバブエで増えてきたことがきっかけでした。私の気候アクションは家でのゴミの分別から始まりました。有機物や生ゴミは、コンポストとして家の菜園で使っています。

家の外では、私のリサーチや執筆、ストーリーテリング(物語を語って伝える手法)を、気候変動の関心喚起のために使っています。生態系や気候の危機の最前線に暮らしている私には、気候変動が私たちの生活に与えるさまざまな影響について周囲の人々に情報を提供し、支援する義務があると考えています。

─活動を始めるとき、周囲の目が気になったり、恐いと思ったりしませんでしたか?

ニャルワタ:私はアフリカのフェミニストとしての意識が芽生えてから、世界の気候危機を生み出している力関係や不公正について知るようになりました。そのときは周りになにを言われるかは気にしていませんでしたね。代替えの地球は存在しないわけですから。

世界の温室効果ガス排出量の2~3%くらいしか排出していない国や地域が、気候変動の影響をより深刻に受けているのはおかしいですよね。人間と環境が共生できる、より良い、持続可能な未来をつくりたいという私の情熱は、こういった現実からきています。

UN Womenの企画にメッセージを寄せた

─気候変動問題について周囲の人と話しますか? 誰とどんな内容で話すのでしょうか?

ニャルワタ:インターネット上での会話のときもありますし、友人や家族、見知らぬ人とも話します。

学校や大手メディアから気候変動について学ぼうとすると、だいたい氷の融解やシロクマについて知らされますが、アフリカ大陸にあるジンバブエに住んでいる私の現実とはあまりにもかけ離れているんです。

私の周りの人たちは、アフリカの気候変動における、ジェンダー化された環境的・社会経済的影響について話すほうが興味を持ってくれますし、自分の経験を話してくれると感じます。

私は権力分析にもとづいて気候変動問題について話します。なぜなら政治的行動や、ジェンダー、人種および社会的平等なくしては、気候変動の解決策は不十分だからです。

気候変動はシステムの変革が必要な、構造的な不平等の問題であるということを、社会が認識しなくてはいけません。この事実は、私が行なっている女性の権利運動や気候正義アクティビズムにつながっています。

私たちは、政府にもっと政治的なアクションを起こすよう要求し、リーダーシップや政策決定のプロセスにもっと女性を含めるよう求めていかなくてはいけないと考えています。

─行動を始めてから、どんな変化がありましたか?

ニャルワタ:私の食べているものがどこでどんな方法で育ったのかを知りたいという考えが、とても大きくなりました。小さいころは有機栽培の意義がわかっていませんでした。歳を重ねて、母と一緒に庭で過ごす時間が増えてから、自然の資源を守るサステナブルな農法の重要性を理解しました。

また、持続可能な農業を行ない、環境と共存してきた私たちの伝統的な知識や食のシステムを誇りに思う気持ちが増しました。植民地化、新植民地化、採取主義によって、アフリカ社会のこうしたシステムは崩壊しました。

─10年後はどんな未来であってほしいと思いますか?

ニャルワタ:信頼できる、より環境に優しい、社会的に公正なグローバル社会を期待しています!

クリーンで再生可能なエネルギーに移行し、採取主義から脱却して、私たちのコミュニティーにも地球の健康にも害のない未来になってほしいです。

発展というのは個人と環境の「ウェルビーイング」に根差すものだと、みんなが理解していたら良いですね。ジェンダー平等を達成し、女性や少女、多様なジェンダーの人々が気候変動の影響の矢面に立つことがなくなっていたら良いです。

─気候変動問題に関心はあるけれど、行動を起こすことをためらっている人がいたら、なんと声をかけますか?

ニャルワタ:いまあなたがいる場所から始めよう。一番すぐできる気候アクションは、気候変動やその影響が自分の住んでいる地域や国、そして世界にどんな影響を与えるかを学ぶことです。

学ぶための資料はたくさんありますからね! オンラインにも学校や地域の図書館にもあるでしょうし、年上の人や仲間に聞いてみるのも良いでしょう。問題に対する意識を身近に持つために、意図的に情報を探すということです。

ビニール袋を再利用可能な布の袋にする、自分の地域の環境に自生している木を植える、ということも、簡単にできるアクションかもしれません。友達と一緒に行動を起こしてみる、というのもやりやすい方法の一つでしょう。

こういったアクションを行なったら、政治のリーダーや政府に行動を起こすよう声を上げてください。気候アクションのやり方は一つじゃなくて、いろんなかたちがあると思います。どのやり方が自分にあっているかは、あなた次第です。

「とにかく淡々と、できる範囲でできることを」(清水イアン / 東京在住)

東京を拠点に国内外さまざまな場所で活動する環境アクティビストの清水イアンさん。森林の再生や保護に貢献できるアプリ「weMORI」を手がけるなど多様な角度から環境問題に取り組んでいるが、問題をすべて自分で背負おうとしないことも大切だと語る。大切にしているのは、「自分がどう生きたいかを考え、できることをやる」というマインドだ。

清水イアン
weMORI代表 / Inspire Highナビゲーター 、大阪出身、東京在住、29歳

─なにがきっかけで気候変動問題に興味を持ち、どんな活動を始めましたか?

清水:大学生のころ、『緑の世界史』という本を読んで、地球環境がいかに凄まじい速度で破壊されてきたのかを知りました。

僕は子どものころから海や森などが大好きだったので、際限ない自然破壊の上にいまの世界が構築されてきたことに深い悲しみを覚え、しばらく気分が落ちました。でもなにもしなかったら状況は悪化するだけだし、まずは地球環境問題に関してより深く「知ろう」と決意し、そのなかで気候変動の深刻さを学びました。

気候変動が悪化すると自然環境や温度が変わるだけではなく、貧困や紛争の問題など、さまざまな問題が悪化することを知り、とにかく「これはやばいぞ」と思ったのを覚えています。急にシャープになった危機感を最初はどこに向ければいいかもわからなかったので、まずは先生に話したり、記事を読み漁ったりしていました。

─活動を始めるとき、周囲の目が気になったり、恐いと思ったりしませんでしたか?

清水:最初は行動することに対してというよりも、社会のあり方や身の回りの人の無関心に恐怖を覚えました。

気候危機や環境問題という巨大津波が確実に迫ってきているにもかかわらず(環境問題は他の問題と違ってタイムリミットがある)、知人・家族・社会・政治・経済・教育機関などにおけるプライオリティーは低いまま。それどころか考えたり、扱うことを拒んでいる、という状況に愕然とし、世の中や未来に対して恐怖を感じました。

その後、行動するなかで恐怖を感じたことは多々ありました。ぼくが大学生の時代、自分のように強い問題意識を持っている人は圧倒的にマイノリティーだったので、そのときの恐怖や孤立感はなかなか強かったです。

清水さんが代表を務めるweMORIのInstagram

─環境に配慮してライフスタイルを変えたとき、負担は感じませんでしたか? 感じたとしたら、その気持ちをどう払拭しましたか?

清水:ぼくの場合、負担に感じたのはライフスタイルを変えたときではなく、世の中に対する視点が変化したときでした。

今日と同じ明日がずっとつづく、「持続性」という前提のうえに「安心」「安全」といった意識・状態が築かれていると思うのですが、「いまの世の中は持続可能じゃない」という事実に気づいてから、どうすればいいかわからなくなりました。

でも結局は行動しなきゃ、というところに行き着きます。気持ちが楽になって、いい方向に転がり始めたのは、環境問題に意識のある他の人と出会えてからでした。

自分と似た問題意識を持った人に相談する、そういった人たちと他愛もない時間を過ごし笑う(別にすべてが真面目である必要は一切ない)、学びを深める、一緒に活動する。そんな経験をとおして培われたつながりが、ぼくの気持ちをふっと楽にしてくれました。辛いと感じている人には、「まずは既存のコミュニティーに参加しな!」と必ず勧めています。

─行動を始めてから、どんな変化がありましたか?

清水:ぼくは本当に強い問題意識を持っていて、どうにかしたいと思って行動しつづけています。この問題がなくなればいいのに、と思っているいっぽうで、この問題がぼくのアイデンティティーの大きな一部であることもまた事実です。

これは変化……かわかりませんが、問題意識を軸に自分に偽りなく生きることをなによりも優先してきたため、すごく豊かな日々と交友関係に恵まれています。自信を持って他のどの生き方もしたくないといえます。

清水さんもメンバーの一人に名を連ねるコミュニティー「Spiral Club」Instagram。「Let's Talk About Environment!(環境について話そう!)」をテーマに活動する

─声を上げることに無力感を感じるときはありますか? どんなときにそう感じ、どのようにその気持ちと対峙しましたか?

清水:もちろんあります。いまだって自分の無力感に笑いたくなるぐらいです。なにかの変化を目標にいまを選択することは大事です。「未来がこうなってほしいから、ぼくはこうする」。これは全然アリです。理想なくして生きるのはクソだと思います(笑)。

でも、理想を追い求めつづけていると辛くなるときがあります。なぜなら、やっぱり自分は1人の人間にすぎないから。目標とする変化まで社会を変えることができないかもしれないからです。

例えば、ぼくは海と珊瑚が本当に好きなので、珊瑚が元気に生きつづけられる海を残すことが理想です。でも、地球がいまより1.5度温暖化した世界では、分布が確認されている珊瑚の70~90%が死滅するといわれています。そして、最近出たIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、「1.5度まであと10年」という結論が出ました。ぼくは理想を諦めなくてはいけないのかもしれません。これはとても辛いことです。

そういう辛さを感じたとき、ぼくはその辛さと真正面から対峙します。辛さと睨み合うと、泣いたりします(笑)。でも、友達に相談したり、泣いたりしてとにかく辛い気持ちを外に出すと楽になります。そして最終的には、「本当に大切なのは、『どう生きたいか』だ」というところに辿り着きます。

このまま物事がただ悪化しようと、自分にできることがある限りは、死ぬときに後悔がないようそれをやりつづけようと思います。身を粉にして無理をして、というわけではなく、とにかく淡々とできる範囲でできることを、という感じで。

─10年後はどんな未来であってほしいと思いますか?

清水:意識的・無意識的に人や地球を傷つける人が減り、自分もそういった行動から身を切り離し、周りにいる人に幸せであってほしいと思います。

─気候変動問題に関心はあるけれど、行動を起こすことをためらっている人がいたら、なんと声をかけますか?

清水:世界や問題の全部を自分の肩には背負わず、自分がどう生きたいか考え、できることをやればいい、と伝えます。



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