「サブスクは儲からない」言説へのFRIENDSHIP.からの回答。Web3は音楽の未来に何をもたらすか?

ストリーミングサービスが普及し、音楽ビジネスのエコシステムは大きく変わりつつある。

CD時代の旧弊がいまだに残る日本の音楽業界においては「サブスクは儲かるか、儲からないか」といった議論が起こっているのが現状だが、すでにストリーミングが大半を占め、数年前から市場の急速な拡大が続いている海外においては、その回答は自明のもの。むしろ、グローバルな音楽業界においては、インディペンデントなアーティストやレーベルが主導する次のフェーズへと構造変化が生まれているのが実情だ。

そんななか、音楽プロダクションのHIP LAND MUSICが2019年に立ち上げたレーベルサービス「FRIENDSHIP.」は、新たなプロジェクト「FRIENDSHIP.DAO」を始動した。DAO(ダオ)とは「Decentralized Autonomous Organization」の頭文字を取った言葉で、日本語にすると「分散型自律組織」という意味。ブロックチェーン技術の浸透によって可能となる「Web3」時代を象徴するキーワードとして、NFTとともに注目を集めている。

FRIENDSHIP.は、アーティストや音楽関係者などのキュレーターがセレクトしたアーティストをセレクトし、ディストリビューションに加えてプロモーションなどそれぞれに最適化したサポートをするサービスだ。なぜそこが「日本初の音楽DAO」をスタートさせようと考えたのか? 「音楽×Web3=MUSIC3」を標榜する未来像はどういったものなのか。

FRIENDSHIP.を運営するHIP LAND MUSICの山崎和人、そして山崎がマネージャーを務めるThe fin.のフロントマンであり、FRIENDSHIP.のキュレーターでもあるYuto Uchinoに、その狙いを語ってもらった。

現状ではまだまだ広まっていない概念だが、Web3やDAOといった考え方が音楽のあり方をどうアップデートしていくのか、その先にどんな社会が訪れるのかを占う、非常に刺激に満ちた話になったのではないかと思う。

サブスクは儲からないのか? 音楽ビジネスの現場から見たその実態

―ここ最近、サブスクがアーティストにとって儲からない、利益が少ないという意見が話題になりました。Yutoさんは当事者としてどう思いますか?

Yuto:まず、ぼくは完全にサブスクで食っている人間なんですよね。「サブスクは儲からない」っていうのは厳密にいうと間違っていて、CDベースの時代とサブスクの時代を比較すると、お金の流れ方が変わったんです。そのことによって、これまで稼げていた人が稼げなくなった。それによって「サブスクでは稼げない」という言論が生まれていると思います。

山崎:CDの売上で生活していた人が打撃を受けた、ってことはありますけれど、恩恵を受けているアーティストも当然います。

いまのインディーのアーティストはレーベルに所属せずとも楽曲を配信でリリースすることができるし、そこで聴かれた分の売上が直接アーティストへ入ってくる。そういうことを考えると「サブスクがお金にならない」とか「稼げない」という意見は極端で、実態はちょっと違うのかもしれないなと思います。

Yuto:ただ一方で、お金の流れが変わったことによって、インディペンデントで活動していたミュージシャンにお金が流れなくなった側面もあると思います。

たとえば全国ツアーをやって会場で直接CDを売っていたようなパンクバンドが、Apple MusicとかSpotifyで音源を出しちゃうと、以前のやり方で入ってきた分のお金は絶対に回収できない。

そうなると、小さな規模でやっていたアーティストは消滅して、ポップミュージック自体も階層の薄っぺらいものになってしまうかもしれない。ポップミュージックって、アンダーグラウンドのシーンから脈々と積み重なってかたちづくられているものだと思うので。

The fin.『Days With Uncertainty』(2014年)収録曲。2022年10月、YouTube上で現在420万回以上再生されている

―単に儲かる、儲からないではなく、インディペンデントなミュージシャン、小さな規模のアーティストにとって、ストリーミングサービスが自分の活動を支えていけるだけの収益を得られるものになっているかどうかに課題がある。

山崎:そうですね。CDの時代はパッケージを売って得たお金が利益としてすぐに入ってきたんですけれど、ストリーミングは再生回数あたりのロイヤリティーが低いので、長い年月をかけてペイしていく必要があるんですよね。

短期的な視点で見ると、ストリーミングは儲からないっていうのは、いま世間で言われているとおりだと思います。ただ、長期的に見ると、それも変わってくる。どこの視点から見るかによって見え方が違ってくると思います。

Yuto:あとは単純にシステムの問題な気もします。日本のメジャーなレコード会社は未だにCDの時代を引きずった契約をしている場合もあるので。

販売形態も、業界自体もまったく違うものになってきているのに、アーティストと契約している事務所やレーベルが古いシステムのまま動いているからおかしなことになっている。それもひとつの要因かもしれない。

ストリーミング時代の音楽サービスに求められているもの。FRIENDSHIP.の成り立ち

―CD時代とは音楽業界の構造自体が変わっているわけですね。この前提を共有したうえで、ようやく「なぜFRIENDSHIP.を立ち上げたのか」という話ができるんじゃないかと思います。

Yuto:そうですね。

―FRIENDSHIP.のローンチは約3年前の2019年でしたが、日本の音楽業界のシステムをアップデートしなければいけないという考え方はありましたか?

山崎:ぼくらは海外で活動する機会が多いからこそ感じていたことですが、たとえばロンドンでは、日本ではSpotifyがローンチしていなかった時期からストリーミングでリリースすることが当たり前になっていたんです。

日本ではパッケージがまだまだ残っていたけれど、海外では完全にデジタルになっていて、CDを渡しても「聴けないから」と言われて突き返されたりする。日本と海外の両方に足を置いて活動しているぼくらとしては、とても大きなギャップを抱えていました。

でも、やっぱり海外の流れのほうが主流になっていくだろうと思いましたし、デジタルには国境を超える可能性がある。

山崎:パッケージだと物理的な流通もあるのでリリースするには各国のレーベルと話をしなければいけないけれど、デジタルだったらディストリビューターと契約するだけで全世界に楽曲を配信リリースできるんですよね。

それはいい話だと思ったし、日本でもこの流れに対応したサービスが必要だろうと考えてFRIENDSHIP.をスタートしたという経緯があります。

―実際、3〜4年前の時点ではデジタル・ディストリビューションサービスと言われるものは、日本にはほとんどなかったですよね。

山崎:そうですね。TuneCore Japanくらいだったと思います。

―現在では、そのTuneCore Japanに加え、The Orchard JapanやBIG UP!、ArtLed、SPACESHOWER FUGAなど、さまざまなディストリビューションサービスがあります。そんななかでFRIENDSHIP.の特徴やユニークさはどういうところにあるんでしょうか。

山崎:そもそもFRIENDSHIP.はディストリビューションサービスというよりも、レーベルサービスとして機能するような仕組みを備えていると思います。

単に配信するための仕組みを提供するデジタル・ディストリビューターというよりは、アーティストに寄り添って、一緒にいろんなことをやっていこうとしているところが、ほかと違うのかなと思います。

Yuto:やっぱりデモテープ会議で選ばれた音楽をリリースしているというのが大きいですよね。音源を配信するあいだにひとつハードルがあることによって個性が生まれている。

ディストリビューションサービスを介せば誰でも出せるということになったら、リスナーは逆にどれを聴いたらいいかわからなくなると思うんですよ。だからこそ、曲を出したあとにちゃんと人に聴いてもらえる道をつくれるかどうかが大事になる。

Yuto:実際、FRIENDSHIP.からリリースされた曲はApple MusicとかSpotifyのプレイリストにも入りやすいし、それはひとつハードルを挟むからこそのFRIENDSHIP.の特徴だと思います。

―キュレーターの会議は、実際どんなことをやっているんですか。

Yuto:シンプルに、曲を延々と聴くんです。送られてきたデモをひたすら聴いて、みんなで投票して、話し合って、このアーティストを出すか、出さないかを決めるという。

―それはオフラインで集まっているんですか?

Yuto:ほぼオフラインです。前はオンラインでもやっていたんですけど、やっぱり実際に顔を合わせて話し合わないとちょっと難しいですよね。

FRIENDSHIP.は「人と人とのつながり」に価値を置く

―FRIENDSHIP.ははじまってから約3年経ちましたが、振り返って現時点での手応えはどんな感じでしょうか。

山崎:コロナ前からスタートしているので、世界情勢も音楽業界自体もだいぶ変わって、予想外なことはたくさん起こりましたけれど、思い描いた方向には進んでいると思います。リリースするタイトルやアーティストの数も、サービスとしての需要も増えていますね。

当初とイメージが違うところとしては、思っていた以上にアーティストとの一体感が生まれていることで。いまFRIENDSHIP.はアーティストの数だけレーベルがあるような状態で、そのレーベルの集合体のようになってきています。ただのディストリビューションの仕組みというより、どんどんコミュニティーのようになってきているというのが、いまのぼくの印象です。

Yuto:やっぱり、いわゆるディストリビューションサービスからはだんだん離れてきているなと思います。

一般的なディストリビューションサービスだと、数を出せば出すほど儲かるシステムなんですけど、それだと音楽そのものはよくなっていかないんですよ。一方で、FRIENDSHIP.は当初の理念どおり、システムそのものよりも、人と人とのつながりのほうに価値が出てきている。

FRIENDSHIP.が運営している[FS.]。ライブ配信や映像収録、あるいは取材など、FRIENDSHIP.を通じてリリースしているアーティストが自由に使えるような場所として活用されている。山崎は取材で「今後はアーティスト同士のコミュニティーにつながる場所としても活用できたら」と語った。

Yuto:これはずっと言っているんですけど、欧米に比べると、日本はコミュニケーションの量がすごく少ないんです。ロンドンにいたときはスタジオで作業してたときも、隣でやっているプロデューサーと飲みに行ったりして新しい人と出会っていって、面白いものが生まれていくのを体感していた。

それに比べて日本だと横のつながりがないなって感じます。だからこそアーティスト同士のコミュニケーションが生まれて、新しい音楽につながるような場所が必要だと思っていて、交流会とか勉強会みたいなのもやっているんですよ。

―勉強会って、どんな感じなんですか?

山崎:たとえばSNSの会社の人を招いて、アーティスト自身がどうやって効率的にSNSを使ったプロモーションができるかを教えてもらったり、著作権を管理している人間がアーティストに向けて権利関係のレクチャーをしたり、そういうことを毎月やっているんです。そのあとにアーティストやキュレーターも交えた交流会もやっていますね。

―なるほど。キュレーターもアーティストも定期的に顔を突き合わせる関係性になってきている。だからこそコミュニティーになっていくわけですね。

Yuto:そうです。そこがほかのディストリビューションサービスに比べたらだいぶ違いますね。

山崎:異色だと思います。ひょっとしたら根本的に何かが違うかもしれない。

NFTは音楽と相性が悪い。Web3に音楽はどう向き合っていくべきか?

―これまでの話を踏まえて、ようやくDAOについての話ができるんじゃないかと思います。そもそもFRIENDSHIP.がDAOをはじめようということになったきっかけは?

山崎:1〜2年くらい前、NFTとかWeb3というワードが世の中に出はじめたとき、外部から詳しい方を会社へ招いてNFTについてみんなでレクチャーを受けたんです。

でも、ひととおり話を聞いて、ぼくらとしてはNFTに対してあんまり引っかからなかったんですよ。すごい技術だなと思いつつ、音楽との相性もそんなによくないように感じたんです。

山崎:そのWeb3の話の流れで、ブロックチェーンの技術を組織に用いたDAOという仕組みが海外ではどんどん生まれてきているという話を聞いて。その説明を受けたら、それがしっくりきたというか、FRIENDSHIP.の目指すかたちと重なった部分があったんです。そこが「FRIENDSHIP.DAO」のスタート地点でした。

―YutoさんはNFTやDAOにはどんな印象を持ちましたか?

Yuto:NFTは身近な話としてあまり抵抗はなかったです。ただ、NFTが注目されているのは「お金が動いていること」に対してであって、それが音楽をよくするとは思わないなって感じたんですね。でもDAOはまさしくFRIENDSHIP.の目指すものに近いというか、共鳴する部分があるなと思いましたね。

FRIENDSHIP.DAOの紹介動画。DAO(ダオ)とは「Decentralized Autonomous Organization」(自律分散型組織)の頭文字を父った言葉で、ブロックチェーンを利用して世界中の人々が協力して管理・運営される組織のことを指す(サイトを開く

―ぼくもお二人と同じようなことを思っています。NFTと音楽って、本質的にあんまり相性がよくないと思っているんですよね。アート作品だったら稀少性が価値になるからNFTを上手く使えると思うんですけれど、特にポップミュージックはたくさんの人に広く聴かれること自体に価値があるわけだから、NFTで唯一性を担保できたとしても、はたしてそこに意味があるんだろうかと。そのあたりはどうですか?

Yuto:まさにそのとおりです。まず言いたいのは、DAOとNFTって全然違うんですよね。どっちもWeb3として括られるから誤解を招くことが多いんですけど。

ぼくもずっと、「NFTはあんまり音楽的じゃない」「音楽とは相性が悪い」って言っているんです。音楽は聴かれたときに価値が生じるもので、シェアされることによって価値が増していくものなので。

壁とか、国とか、人種とか、そういうものを全部通り越していくのが音楽の力なのに、それをひとりが何億円出して所有するって、真逆のことをしているような感じがする。だから、音楽とNFTをまっすぐに結びつけちゃうと、相性が悪いと思うんです。

いまは単なるグッズとして考えるのが健全だと思うんですけど、どういうふうに音楽活動とNFTを結びつけたらいいかは慎重に考えないといけないなって思っています。

山崎:楽曲とNFTを結びつけてしまうと相性がよくないとは思うんですけど、一概にNFTがダメだということではなく、使われ方がどんどん変わっていくんじゃないかと思っています。アーティストの表現方法のひとつの仕組みとして向き合っていくのがいいんだろうなと。

DAOが音楽文化にもたらす可能性とは?

―DAOについてはどうでしょう? FRIENDSHIP.の理念や考え方に共通するという話もありましたが、DAOというもの自体、まだまだ世の中にはあまり理解されていない概念だと思います。お二人はDAOをどういうものとしてとらえているんでしょうか。

Yuto:DAOを説明するのが一番難しいんですけれど、ぼくとしては問題を解決する手段としてとらえています。

Web2.0の時代に大きなパワーのある企業が握っていた情報や、さまざまなものが個人に戻ってくるのがWeb3だというのはよく言われていますよね。でも、Web2.0の時代に成し遂げたことって、社会的にもシステム的にもたくさんあると思うんです。DAOはWeb2.0で成し遂げられなかった問題を解決する新しい組織体だと思っています。

たとえば、SoundCloudは最初すごく盛り上がったけれど、結局、会社組織だから株主たちの言うことに従わないといけなくなって音楽を大事にしなくなってしまった。株主たちはお金を稼ぐことが大事で、音楽のことはどうでもいいわけですから。

そういうようなことが、Web2.0の問題の象徴だと思っています。便利になった反面、新しい問題が生まれたりする。最初に話したストリーミングの問題もそうかもしれないし。そういうことに対して、DAOというこれまでにないシステムを使うことで、新しい問題解決のかたちをつくっていくということが、基本として考えていることですね。

―なるほど。言葉どおりDAOは「Decentralized」、つまり、中央集権的でなく、分散型の組織であるということがもっとも大きなポイントであると思うんですが、そのあたりに関してはどうでしょうか。

Yuto:これまでは株式会社というシステムがすごく長い年月をかけて進んできて、そのうえで資本主義が成長してきたじゃないですか。そこにはいろんなノウハウがあると思うんですけど、情報とかパワーとかを分散させていくことは、あんまりまだ経験してないんですよね。

FRIENDSHIP.DAOもまだこれからはじまるサービスなので、はたしてどうなっていくかもちょっとわからないです。ただ、簡単なイメージでいくと、いままでは1個のCPUでやってきたことをたくさんのCPUでやるようになるみたいなイメージですね。

―山崎さんとしては、DAOの理念とか考え方を聞いて自分たちがやってきたことに通じ合うものがあると考えたのは、どういうところなんでしょうか。

山崎:「DAOという仕組みを使って何かをやろう」っていうスタートラインではなかったのが一番大きいと思います。やっぱり発想は問題解決なんですよね。使う側はNFTだろうとDAOだろうと、便利だったら何でもいい。FRIENDSHIP.という自分たちがやっているサービスがよりよくなるんだったら、それを取り入れていこうという考え方です。

人とのつながりという資産、作品に携わる関係者情報という知的財産の価値を最大化することで、音楽業界の土壌改善を行なう

―FRIENDSHIP.をやってきて、未だ解決されていないと感じる課題や、DAOを使ってアプローチできる問題にはどんなものがあるんでしょうか。

山崎:ストリーミングサービスでも作詞作曲のクレジットは表示されると思うんですけれど、たとえばどこのスタジオでレコーディングしたか、誰がプロデュースして、どのミュージシャンが参加して、マスタリングはどこで、アートワークは誰がデザインしてみたいな、そんな情報が抜け落ちているんですよね。

以前だったらCDのブックレットに書いてあったりもしたんですけれど、作品に関わっているさまざまな人たちを可視化してちゃんとFRIENDSHIP.を通じて表現できるようにしたい、というのがひとつあります。

もうひとつは、アーティスト同士がもっと自由につながれるような仕組みをつくることも考えています。いまFRIENDSHIP.にあるそれぞれのコミュニティーを全部つないでいくようなイメージを、DAOでつくろうとしています。

山崎:そのうえでクレジットがなぜ重要になってくるかというと、たとえばAというアーティストがBというアーティストの作品を好きで、そのプロデューサーにアプローチしたいと思っても、直接の関係性がないとなかなかできないんですね。DAOを用いてそこをちゃんとつながるようにしたい。アーティストだけでなく、音楽に関わる仕事をしているすべての人たちも入れるような仕組みにしようと考えているんですね。

たとえばAというアーティストが海外でライブをやっていて、Cというアーティストがそのエージェントにコンタクトをとろうと思ったら、これまではAやそのスタッフに紹介してもらわないといけなかった。けれど、みんながDAO上に存在していたら、それぞれが直接コンタクトを取れる。そういう仕組みをつくろうとしているんです。

Yuto:クリエイティブ的な面でいうと、CDの時代ってクレジットという知的財産がちゃんと受け継がれていたと思うんですよね。でも、ストリーミングの時代になって、そこがある種ブラックボックス化してしまった。そこをオープンにすることによって、これからのアーティストも音楽をつくりやすくなると思うんですね。

Yuto:たとえば、すごくいいソングライティングなのに、録音がしょぼいせいで失敗している、みたいなことが防げるようになる。この人にリーチすればこういう音がつくれるってことがオープンになって、アーティストとエンジニアがつながることで、最初からクオリティーの高い音で制作できるようになる。

音楽は知的な財産の積み重ねなんで、先人たちが積み重ねてきた技術や情報を下の世代が使っていくことによって、さらにいい音楽が生まれていく。土壌改善ってよく言っているんですけど、そういう音楽の土壌をつくっていきたいというのはすごく思っています。

―なるほど。これまでの社会常識だと、いわゆる人脈というものはクローズドなものであるのが当たり前だったわけですよね。会社組織のなかにあるものだったり、いわゆる有力者が握っているようなものだった。DAOを使うことで、それをオープンにしていくことができるというイメージがある。

Yuto:そうですね。つながりがなかったせいで腐っていく才能っていっぱいあると思うんですよ。

ぼくがアーティストとしてFRIENDSHIP.DAOでやろうとしていることは、そういう才能が腐らずに、もっといい音楽が生まれる世界線をつくりたいっていうことなんです。そのためには実力を持った人たちにリーチできるというのが必須で。だから、実力がある人がちゃんと認められる世界にしたいというのは大きいですね。

―具体的にFRIENDSHIP.DAOでやれることとしては、どんなことを考えていますか。

山崎:まずは10月末にα版をローンチして、そこから何段階かのレイヤーに分かれて、徐々にかたちをつくっていこうと思っています。

最初の第1フェーズとしては、まずFRIENDSHIP.でリリースしているアーティストと直接オンライン、オフラインで話しながら説明してFRIENDSHIP.DAOに参加してもらう作業からスタートします。

具体的な機能としては、作品をつくったアーティストや参加したクレジットの人たちをトークングラフという図で視覚化できるようなものをつくっています。FRIENDSHIP.でリリースしているアーティストはそれを見て、そこからコミュニティーを形成していく。それが第1段階ですね。

Yuto:アーティスト側からしたら、FRIENDSHIP.を通じて作品をリリースしているだけで、たとえばミックスエンジニアの人とかカメラマンの人とか、ほかのアーティストに関わっている人の情報をマップのように見ることができる。だから使えば使うほど、だんだん大きくなっていく感じです。

山崎:人とのつながりって、まさに資産なんですよね。これまではクローズドだったその情報をみんなで共有することによって、大きくしていく。これまで個々でやっていたものをコミュニティーにしていくことによって、お互いにコラボレーションしやすくなるし、持っているものを共有して自分たちの活動に役立てることができるという。

―それこそ、音楽業界はプロフェッショナルな個人事業主と小企業の集まりですからね。たとえばひとつのライブをつくるにあたっても、音響、照明、舞台など、いろんなスタッフがチームになって集まっている。たとえばサカナクションのように「チームサカナクション」としてそれをファンにも伝わるかたちで提示するようなバンドもいる。でも、レコーディング音源だとそれがわかりづらい。そこが課題のひとつだった。

Yuto:そうなんですよ。その辺、欧米はわりとしっかりしているんですけどね。これまでのシステムじゃスポットライトがあたらなかった人にあたることもあると思うし、そのうえで生まれてくる音楽もあるんじゃないかと思います。

Web3が実装された社会で、音楽はどのような未来を思い描けるか?

―その先にはどんなビジョンがありますか?

Yuto:走りながら機能が増えていくサービスだと思うし、どんどん新しいことが起こってくると思います。たとえば、FRIENDSHIP.で出しているアーティストや関わっている人たち全体で投票して、DAOの仕組みを決めていくことができるようになったりするかもしれない。

あとは、これはまだ日本の法律が変わってなくて無理なんですけど、DAO上でポイントも発生して、それが完全に仮想通貨として活用できるようになると海外の人たちと仕事しやすくなって、一気にグローバルに広がってくる。

特にThe fin.の活動でいうと、海外でライブを組むにしてもアジアとヨーロッパでは別々の人と組んでいて、それぞれつながりがないんです。そういう人たちとも同じDAO上でやりとりができるようになっていけば、よりグローバルなつながりも見えてくるようになる。

―お話を聞いていて、NFTと音楽は相性悪いけど、DAOと音楽の相性がいいというのは、感覚的にわかりました。いろんな場所で仕事をしている個人が人脈によってつながっていくなかで生まれていくものとして音楽をとらえていて、そのあり方がDAOに近いものであるという。

Yuto:そうなんですよ。もしかしたらこれは、いま普通にある音楽業界というものをWeb3上に再展開していくサービスなのかもしれないなと思います。新しい仕組みが生まれたら、そのなかで働き方が変わっていくみたいなことなのかなとは感じてます。

―最後に聞かせてください。先を見据えて、FRIENDSHIP.DAOの未来像にはどんなものがありますか?

山崎:DAOはあくまで問題解決の仕組みであったらいいなと思っているので、いまはそのかたちでつくっていますけど、そこからどんどん発展していくイメージはあります。

まずは作品に関わった人、その次にリスナーも入ってくるべきだと思いますし、そこでつくっている側と聴く側のコミュニティーになったらいいなと思っています。

あとは、最初の話に戻りますけど、ストリーミングの再生単価がどうしても低いので、まだ知られてないアーティストが音楽だけで生活していく難しさも解決されるといいなと思っています。

Yuto:いまはAppleみたいな大きな組織が全部の音楽を管理していて、リスナーがそこにお金を払うことによって音楽が聴けるようになっているというシステムですよね。

でももうちょっとアーティストにファンの気持ちが届くような世界がくればいいなと思うんです。やっぱり自分が聴いた音楽をつくった人にお金を払いたいじゃないですか。そういう世界が来たら生まれてくる音楽も変わってくると思う。

大きな話をすると、DAOとかNFTとかって話は、たぶん、人類全体のチョイスなんですよね。FRIENDSHIP.が何もしなくても、それがメインストリームになるか、メインストリームにならないかが決まってくると思う。で、もしDAOが当たり前になってきたら、世の中も変わってくると思うんですね。人と人のつながり方が変わってくるというか。

そうなったときに、きっと音楽も変わってくると思うんですよ。自分が音楽をつくるときも、いろんな人にDAOでリーチできる世界になったら面白いと思いますし。そうやって音楽業界が広がっていくことによって新しい音楽が生まれることに興味がある。DAOによって変わっていく世界をいつか実感できたらいいなって感じですね。

―いまおっしゃった「人類全体のチョイス」という話はとても面白いですよね。ぼくは持論として、音楽が世の中の変化の突端にあると思っているんです。たとえば20年前だったら、音楽がほかの何より簡単に複製ができたことで最初にインターネットによって打撃を受けたということがあった。それと同じように、20年後、30年後に、いろんな会社組織がDAOのようなものに置き換わった未来を想像して、そのときに「もともと音楽はDAO的につくられるものだった」と言える可能性もある。きっとYutoさんはそういう予感を持っているんじゃないかなと思います。

Yuto:そうですね。

―音楽に関係ない話として、そうなったときに、どんな未来があり得ると思いますか?

Yuto:音楽に関係なくいえば、ある種、厳しい世の中になるかもしれないなと思っていますね。できる人はできるけど、できない人はできないという個人の能力がもっと評価される時代になると思う。

これまで埋もれていた素晴らしい才能にスポットライトがあたることによってどんどん新しいことが生み出されていくと思うんですけど、逆に、それでもスポットライトがあたらない人にはあたらないということなんですよね。そうなってきたら、一部の人たちだけがDAOのなかで人気も仕事も集中して、ほかの人たちは暇になっちゃうかもしれない。

いまだって、普通に月曜日から金曜日まで会社に行って、机に座って、言われたことをやっているだけの人って、たぶんいっぱいいると思う。そういう人たちにやることがなくなったり、食べていくことが難しくなる可能性もDAOははらんでいる。

DAOが進んでいくことによって解決できる問題があるって信じているからぼくはこのプロジェクトにいるんですけど、正直、DAO自体が生み出してしまう問題もあるなって感じています。だから、このシステムがうまく走りはじめたら、そのさらに先の問題を考えたらいいんだろうなと。気が早すぎるんですけど(笑)。

サービス情報
FRIENDSHIP.DAO

“アーティストと音楽をサポートする全ての人”がダイレクトにアクセスすることができる、音楽のエコシステムを共に作り上げていく、ブロックチェーンを使ったコラボレーションツール
※令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成
イベント情報
『MUSIC NFT DAY 2022 -TALK SESSION & LIVE-』

2022年11月5日(土)
会場;東京都 日本橋アナーキー文化センター
時間:13:00-18:00
入場料:エントランスフリー

[LIVE ACT]
Shimon Hoshino
Shum

[TALK SESSION 1]
音楽NFTの日の概要 音楽NFTとは?

出演:
鈴木貴歩 (ParadeAll / MetaTokyo)

[TALK SESSION 2]
NFTを活用した次世代アーティスト発掘&育成プロジェクト「MAP」とは?

出演:
小向国靖(J-WAVE)
赤澤直樹(Fracton Ventures)

[TALK SESSION 3]
音楽NFTによる新しいアーティストの表現

出演:
武田信幸(LITE/Fake Creators)
キツネDJ
『“SSR (SHIBUYA SOUND RIVERSE) Presents FRIENDSHIP. DAO PARTY”』

2022年11月5日(土)
会場:東京都 恵比寿LIQUIDROOM
OPEN / START 23:30

LIVE:
Fake Creators (LITE, DÉ DÉ MOUSE)
The fin.
saccharin
bed

DJ:
DÉ DÉ MOUSE
Wez Atlas (BOOTH LIVE)
MONJOE
プロフィール
Yuto Uchino (ユウト ウチノ)

神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。

山崎和人 (やまざき かずと)

1978年生まれ。2000年、株式会社ハーフトーンミュージック入社、2003年よりライブハウス「新宿MARZ」店長 / ブッキングマネージャーを経て、2009年に株式会社ヒップランドミュージック・コーポレーション入社。The fin.、LITEのA&R / マネージャーとして、作品リリースやアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど数々の海外ツアーの制作を担当。2019年5月より、デジタル・ディストリビューションとPRが一体となったレーベルサービス「FRIENDSHIP.」をスタートさせる。



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