幾田りら×あのが大切にする、「自分と向き合う時間」。映画『デデデデ』インタビューで語る

アニメーション映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』前章が3月22日、後章が5月24日に劇場公開される。

浅野いにおの同名漫画をアニメ化した同作は、東京上空に巨大な宇宙船(通称「母艦」)が突如襲来した終末感が漂う世界で、日々の青春を謳歌する少女たちの物語だ。

幾田りらとあのが声優としてダブル主演を務め、幾田が小山門出役、あのが中川凰蘭(通称・おんたん)役を演じている。主題歌は前章がano feat. 幾田りらの“絶絶絶絶対聖域”、後章が幾田りら feat. anoの“青春謳歌”。

今回の記事では、主演声優に加えて主題歌を担当した幾田りらとあのにインタビュー。

ともにアーティストとして活動する二人がお互いに抱いている印象や、声の演技を通して感じた音楽との違い、活躍を広げるなかで感じるプレッシャーや不安との向き合いかたについて話を聞いた。

映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』本予告
あらすじ:東京でハイテンション女子高生ライフを送る、小山門出(こやま かどで)と"おんたん“こと中川凰蘭(なかがわ おうらん)。学校や受験勉強に追われつつも毎晩オンラインゲームで盛り上がる2人が暮らす街の上空には、3年前の8月31日、突如宇宙から出現し未曽有の事態を引き起こした巨大な〈母艦〉が浮かんでいた。非日常が日常に溶け込んでしまった東京で、ある夜、悲劇は起こった。2人と世界は加速度的に破滅へと向かっていく。

幾田りらとあのが抱く、お互いの音楽への印象

─お互いのアーティストとしての第一印象と、共演して変化した部分を教えてください。

幾田:あのちゃんの音楽活動を見させてもらっているなかで、本当に表現力がすごいなとずっと思っていました。

人間的な弱い部分をさらけ出して全身全霊で歌って、周りの目線を取っ払ってでも自分の生きざまを見せてくれるような強さがすごいと思っていて、お会いして実際に楽曲を一緒にやらせてもらったり、アフレコの現場へ行ったりしたときも、実際に頭で考えていることを表現に落とし込む伝達能力がすごい人だと感じました。

あの:完璧で100点を出す人みたいなイメージがありました。

実際にお会いしてみて、アフレコをする過程でも、曲をつくる過程でも絶対的で完璧でした。いろんなことに向き合うのが上手だなという印象もあって、一つ一つに対してしっかり時間をかけて向き合っているからこそ表現できているんだと感じました。

─主題歌で幾田さんが作詞作曲した“青春謳歌”とあのさんが作詞した“絶絶絶絶対聖域”を聴いて、どう感じましたか?

あの:映画がどんな結末を迎えてほしいか、原作ファンの方にも色々な思いがあるなかで、“青春謳歌”はそういうファンの方にも寄り添ってくれている曲だと思うし、僕自身も門出とおんたんの日常が続いていってくれると嬉しいという気持ちもあったので、それをぶれずに表現してくれたのがあらためてすごいと思いました。

普段も口ずさんじゃうようなメロディの、日常に溶け込むような温かい気持ちになれる曲で、僕がいつもアーティスト活動でやっている曲とは違う新しい面も引き出してくれたのでさすがだなと思いました。

幾田:“絶絶絶絶対聖域”は、この作品の主題歌をやるにあたって、あのちゃんがあのちゃんとして120%のエネルギーを放出したんだなと思うような歌詞だったので、これは「無敵だな」と思いました。

あのちゃんならではの楽曲と歌詞の鋭さや詩の紡ぎ方によって自分も思い切り歌をのせることができて、どんどん自分を突破して殻を破っていかないとこの楽曲には真摯に向き合えないなと思わせてもらったので、新しい自分を引き出してもらえましたし、「無敵になれる曲」だと思いました。

声の演技を通して感じた「音楽をやっているもの同士の共鳴」

─幾田さんが演じた門出と、あのさんが演じたおんたんは、小学生以来の親友です。二人とも愛嬌のあるキャラクターですが、お互いの役に対して感じる魅力を教えてください。

幾田:あのちゃんが演じたおんたんは、すごくはちゃめちゃですよね。でも、根底に溢れんばかりの優しさがあったうえでのああいう人柄なんだなと理解していくと、本当に人情に厚くて温かい人なんだということを感じます。おんたんを見ていると、自分の大切な人を守るために生きたいと思うし、そのためには思いやりとか優しさを出し惜しみせず振る舞っていられるような人でありたいです。

あと、コミカルでよくわからないことを口癖で言っているとんでもない感じも、あんなお友達がほしいとすごく思います。いつも同じテンションで明るい気持ちにさせてくれる人がいるのはすごく素敵なことだし、変わらないでいることが一番難しいことだと思うので、ずっとそうやっていてくれる人がそばにいてほしいと思いました。

あの:おんたんにも共感できるところがあるけど、(幾田さん演じる)門出にも共感しました。愛嬌がある可愛らしいキャラクターだなと思うんですが、前章の終盤に登場する幼少期のシーンで、門出にとっておんたんが「絶対」すぎるがあまり、周りの人から否定されかねない門出なりの「正義」を振りかざす瞬間があります。

それはある人からしたらすごく悪いように見えるけれど、僕は何か「かっこいいな」って思うし、味方でいたくなるというか。それが門出の魅力だと思ったし、自分もすごく共感しました。

─声優としての経験を通して、歌うことと声の演技に似ている部分はありましたか?

あの:リズム感や言葉の置き方、強弱の付け方、感情の入れ方は歌っているときとかなり似ているとやってみて気付きました。それが正解かわからないけど、自然とそれをやっていて、完成したものを見ても「それでよかったな」って思うから、似ているんだと思います。

幾田:あのちゃんが言っていたように、セリフにリズム感などを装飾することによって聞きやすくなったり、感情が乗るところは感じました。

掛け合いの激しいシーンのちょっとした温度感や間合いのチューニングを合わせるのが早く、「音楽をやっているもの同士の共鳴」みたいなものはあったのかなと感じました。

─特に苦戦したシーンはありますか?

あの:走ってる声や息遣い、ものを投げているところ、取っ組み合いなどの声だけの演技が難しかったです。現場では「走ってる感じで」と演出があって、たくさんの方がいるなかで、どうしたらいいかわかんないままやりましたが、それもすごくチャレンジだったので楽しかったです。

幾田:喧嘩のシーンでは、喧嘩したときに出る息遣いや、殴られたときの音を声だけで演技する部分だったので、「もっとこうした方が自然に喧嘩してる感じが出るよ」と演出してもらいながら進めました。

どっちかが噛んじゃったりすると撮り直しなので、1テイクで撮り切るのは大変でしたが、すごく楽しくて挑戦のしがいがありました。

二人が大切にする、「自分と向き合う時間」

─本作では、暗い世界のなかでも日常の小さな幸せを紡いでいく門出とおんたんの姿が印象的でした。お二人は、漠然と不安に感じたり、暗い気持ちになることはありますか?不安になったときの自分との向き合いかたや、お忙しい中での時間の取り方を教えていただきたいです。

あの:漠然とした不安みたいなものはありますね。理由はあんまりないけど落ち込むということは小さい頃からあって、いまも続いている感じです。

ただ、それを解消するために映画を観たり何か食べたりっていうのは僕はなくて、自分と向き合うことで自分がわかるというか。自分と向き合うことで自分のことを知ったり、まわりの考えに向き合っていくと、ふとしたときに自然とストンと落ちる瞬間があって。向き合う時間は正直しんどいですけど、それしか方法はないなと思います。

そのなかで、曲にしたいなと思ったときは曲にする感じです。

幾田:私も不安にかられたりとか、どこに向かって生きているんだろうみたいに感じる瞬間もあるんですけど、私のいまの生きがいはやっぱり歌を歌うことだし曲をつくるという音楽活動の中にあります。

大きなステージの前にプレッシャーやいろんな感情に襲われて、足がすくんでしまうときもあるんですが、そういうときに一度自分と向き合う時間をつくって、お風呂の中で自分とずっと対話したり、ライブの前に瞑想したり…。

自分と向き合う時間を設けられてないときは、何をしたらいいかわからなくなっちゃうときだなという指標が自分の中にあります。なので、しっかり自分と向き合って、「音楽活動が広がっていく中で、その根源として自分が歌うことが好きだから歌っているんだ」というところに立ち返れると、無敵状態になります。

生活をしていくなかで、身のまわりの人や環境の引力に引っ張られて自分の軸がグラグラしちゃうときもあるんですが、そういうときこそ自分と向き合う時間をつくって、軸をちゃんと元に戻してこられれば、大丈夫かなって思うようにしています。

「どんなに忙しくても自分と向き合う時間をつくるようにしています」

─自分と向き合う時間というのはすごく大切ですよね。多忙な生活のなかでそういった時間をつくることは難しいと思うのですが、普段、お二人が意識されていることを教えていただきたいです。

あの:曲をつくったりとか、本当にひたすら家でじっとして考えるとかですかね……。曲をつくるのは、自分と向き合わないとできないことなので。

ライブも感情を出していくという意味では自分と向き合ってる感じがしてすごくいいなと思うし、お客さんとの言葉はないけど会話できている感じが自己満かもしれないけどあって、そういう時間も自分と向き合いつつ、すごくいい時間にできているかなっていう感覚です。

幾田:私はどんなに忙しくても自分と向き合う時間をつくるようにしています。

曲をつくるときもそういう時間になりますし、お風呂に入っているときとか、ただボーッと座っているときに「なんで自分がここにいるのか」とか、「生きること死ぬこと」とか、そういう思考を深めていく。そうすると、ある程度のところにたどり着くと、揺れていた自分の軸が定まる感覚があります。それでも自分でどうにもできないときには、信頼する人と話して、他者と意見交換をしながら自分の軸をまた戻していく作業をするので、誰かとの対話も大事にしています。

作品情報
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

前章:3/22(金) 後章:5/24(金)公開

幾田りら あの
種﨑敦美 島袋美由利 大木咲絵子 和氣あず未 白石涼子
入野自由 内山昂輝 坂 泰斗 諏訪部順一 津田健次郎

原作:浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)

アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ

©浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
プロフィール
幾田りら (いくた りら)

シンガーソングライターとして活動する幾田りら。2023年3月に1stアルバム『Sketch』をリリースし、自身初の全国ワンマンツアー『SKETCH』を成功させる。同年10月には、映画『アナログ』のインスパイアソングとして新曲「With」をリリース。映画・ドラマ主題歌やCMソングも多数手がけ、音楽家として幅広い活躍を見せている。

あの

2020年より“ano”名義でソロアーティストとして音楽活動を始め、TVアニメ「チェンソーマン」第7話エンディング・テーマに抜擢された「ちゅ、多様性」が“Billboard Japan Hot 100”で 4 週連続 1 位を記録、さらにパワーパフボーイズの振り付けによる「ゲロチューダンス」が話題となり、TikTok での楽曲総再生回数が 28.6億回を突破(2023年8月時点)するなど、大きな注目を浴びた。



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