手帖をちょっと覗くように、クリエイターの作品世界にお邪魔します——。
フォトグラファーはじめ、イラストレーターや美術作家ら、若くして活躍しているクリエイターの人々を、作品画像とともに紹介するコラム連載。第2回目は、写真家の山口こすもにフォーカスする。
会社員、カメラマンの直属アシスタントを経て独立したという山口は、ファッションやポートレート撮影、映像撮影も行なっている。CINRAでもたびたび撮影をしてもらっていて、山口の写真は、対象と空間の境界線がゆっくり溶けていくような、または対象が静かに発光しているような、あえて言葉にするならば、そんな魅力を感じるものだ。
今回この連載への出演を依頼したところ「昔つくった作品でもよければ」と、引き受けてもらえた。だから今回は、山口が10年ほど前に台湾や韓国に通ってつくったというZINEのエピソードと、当時の作品をたどっていく。いまだからこそかたちがはっきりしてきた、当時の気持ち。そこからにじみ出す、写真という媒体と人間への興味……。ありのままの言葉とともに、その作品を全身で感じたい。
その人と、その人が暮らす風景に惹かれて

2016年に、友人たち何人かで韓国のアートブックフェアに参加することになり、そのためにZINEをつくりました(ただ韓国に遊びに行きたいという理由に、イベントもくっついたらいいなというくらいだったけれど、すごく貴重な機会でした)。
その頃、SNSで気になって撮影したいと思った方は、たまたま韓国や台湾の方が多く、日本に住んでいる方でも、韓国にルーツがある人が多かったです。
興味を持った方たちを撮影する目的と、韓国の友人が企画する音楽ライブ、服をつくっている友人の作品撮りなど、行く目的が重なったのもあり、韓国と台湾に行く機会が増えた時期でした。

でもなんでそこまで、韓国とか台湾に興味があったのかなと考えてみると。
2015年に『Party 51』(2013年製作)というドキュメンタリー映画を観たことが少しきっかけになっている気がします。映画にも登場し、製作にも関わっている友人がいたので観に行きました。当時韓国ソウル、弘大地区の都市開発によって、弘大にあったライブハウスを失ったミュージシャン、立ち退きにあう食堂を営む夫婦が、食堂に集まりみんなで立てこもりをし、連日音楽ライブをする。電気をとめられても警察が来ても、行政に立ち向かう様子が、記録されています。
あらすじ:再開発の止まらないソウル。音楽家たちのユーモアが、ちょっぴり社会を動かした。韓国ソウル、ホンデ(弘大)。とある食堂オーナーとインディー音楽家たちが、自分たちの場と都市を守るために起こしたユーモア溢れる行動を記録したドキュメンタリー映画。
当時、自分も20代半ばだったときはお金もないし豊かではなかったけれど、日本に住んでいても、日本の情勢と自分の生活が地続きであるということは、あまりそこまで感じることなく、当時は過ごせていたのかなと思います(いまは全然違いますが!)。
『Party 51』に出てくる同世代のアーティストは、自分たちの場所であったライブハウスがなくなるとか、明らかに賃金が低いとか、置かれている環境下で、社会と向き合わざるをえないということ、向き合い行動に移していることに、衝撃を受けました。

当時は、その人物にただ興味があって撮影をしに行ったけれど、その人が暮らす背景(環境)も同じく、興味があったのだと思います。
その人の後ろにある風景も含め、惹かれるものがあり、それがたまたま近くにある国に暮らす友人だったのだと思います。
大学時代やZINEをつくっていたころは、自分の内側にばかり目を向けていた気がしますが、いまは、特にインタビューでのポートレート撮影をしていると、自分のことというよりも、被写体をじっくり見て観察するようになりました。
短時間で相手を知ることは難しいですが、少しでも私のことを信用してもらうことと、安心して撮影させてもらうこと、楽しんでもらう、ということに努めています。
撮影する姿勢としては変わっていないと思いますが、昔よりはもっとシンプルに考えて撮影できるようになった気がします。
編集後記——見知らぬ人の生活を想像すること
たまたま、近くの国に暮らす人に惹かれて。時間が経ってから振り返ると、おそらく無意識のうちに、その人のことはもちろん、その人が生活する環境まるごとに興味があったのだろう、という気づきを記した山口。それをふまえて今回掲載した写真を見返すと、暮らしの断片が見えるようで、違う国の、見知らぬ人の、生活を想像してしまう。

山口こすも(やまぐち こすも)
1986年 生まれ。2010年、東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。会社員、アシスタントを経て、フリーとして活動を開始。ファッションやポートレート撮影、 映像撮影も担当。
それから10年後の山口の写真も、その視点と興味は息づいているように感じる。空間に溶け出すような印象は、その人の背景——そこにいること、ここで暮らしていること、その場で何かをしていること——に興味が向いていたからかもしれない、とも思った。ひといきれに流され、ときに自分も相手も「個」であったことを忘れそうになることがあるけれど、山口の写真を見るとたしかに、誰もが「ひとり」として生きていることを思い出す。
ぜひ今回のコラムと一緒に、これまでCINRAに掲載された山口の写真も見てほしい。
- プロフィール
-
- 山口こすも (やまぐち こすも)
-
1986年 生まれ。2010年 東京工芸大学芸術学部写真学科 卒業。会社員、アシスタントを経て、フリーとして活動を開始。ファッションやポートレート撮影、 映像撮影も担当。
- フィードバック 0
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-