テレビCM起用の新山詩織によるカバー、KANの“愛は勝つ”を探る

テレビCMに起用された、KANの名曲“愛は勝つ”のカバー

「歌は世につれ、世は歌につれ」と言うけれど、ときに「歌」は、「世」の括りから解き放たれ、新たな意味をまといながら、時代を超えて歌い継がれ、聴き継がれてゆくものなのだ。21歳のシンガーソングライター、新山詩織が弾き語る“愛は勝つ”を聴いて、改めてそんなことを考えた。

1990年にリリースされ、ダブルミリオンの大ヒットを記録した、KANの“愛は勝つ”。それは、ひとつの「時代を刻む歌」として、当時を知る多くの人の心に記憶されている。けれども今回、日本財団「子どもサポートプロジェクト」のテレビCMに起用されたこの曲のカバーは、新山詩織の歌の初々しい「表情」もあいまって、何か新しい意味をもって心に響いてくるのだった。

たとえば、あまりにもストレート過ぎるそのタイトルから、ときに誤解されがちなこの曲の<君の勇気が誰かにとどく明日はきっとある>というサビのフレーズ。それが、いわゆるラブソングの一節としてではなく、何か子どもたちの未来を祝福する、希望の一節のように響いてくるように思えるのだ。

自身のラジオ番組から始まった、親密さに溢れる「弾き語りカバー」

その歌を取り巻く「文脈」を解き放ち、その歌が本来的に持つメロディーの良さや歌詞の滋味を取り出しながら、そこに新たな意味と魅力を生み出してみせること。そんな「カバーの醍醐味」とも言えるような試みを彼女がやってのけるのは、何もこれが初めてではない。

今をさかぼること約4年半前、高校3年生の頃に、シングル曲“ゆれるユレル”でメジャーデビューを果たした新山詩織。そのカップリングに収録されたのは、THE GROOVERSの“現在地”だった。以降、自らの知られざる「ロックなルーツ」を開陳すべく、シングル曲のカップリングには、THEATRE BROOKの“ありったけの愛”、奥田民生の“イージュー★ライダー”、The Birthdayの“ピアノ”など、その見た目や年齢とは不釣り合いのように思える「渋い」ロックの楽曲のカバーを積極的に収録していた。

新山詩織
新山詩織

そんな彼女のカバー遍歴において、ひとつ大きな転機となったのは、2014年7月にスタートしたNACK5のラジオ番組『新山詩織のふたりごと』だった。30歳以上も年の離れたメインパーソナリティーとの共通点を探るべく、ある「お題」のもと、古今東西のさまざま楽曲から一曲をセレクトするという番組。その番組の中で新山が月に一回、弾き語りでカバーするコーナーをスタートさせたのだ。

本人の思い入れの強い曲はもとより、リスナーやスタッフからのリクエスト(ときには自身の母親のリクエスト)を受けて、それを自らアレンジして披露するこのコーナー。そこには、彼女が生まれる前の曲……そのコーナーがきっかけで、彼女自身も知ったという曲も数多くあったという。

2017年の3月に番組自体は終了したものの、番組内で好評を博したカバー曲のショートバージョンは、現在も自身のホームページ及びYouTubeチャンネルに15曲ほどアップされている。なかでも、忌野清志郎によるユニット、ザ・タイマーズの“デイ・ドリーム・ビリバー”、近年はコトリンゴによるカバーでも知られているザ・フォーク・クルセダーズの“悲しくてやりきれない”、アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の主題歌として再び注目を集めたZONEの“secret base~君がくれたもの~”などはネット上でも好評を博し、いずれも10万回以上視聴されるなど、密かな人気を誇っている。

その他にも、buck numberの“stay with me”、ハルカトミユキの“マゼンタ”など比較的最近の楽曲のカバーや、のちにサウンドプロデュースを依頼することになるCharaの“ミルク”など、貴重な弾き語り風景の映像がランナップされているこの企画。

それらを改めてひと通り眺めて驚くのは、原曲のメロディーと言葉を活かしつつも、それらがすべて「新山詩織の曲」として成立している点である。その大きな瞳で空を見つめながら、歌うことそのものを楽しむように、時折微笑を浮かべながらマイクに向かう新山詩織。ややハスキーで繊細なその歌声は、たとえどんな歌であろうとも、瞬く間にリスナーとパーソナルな関係を取り結んでしまうような、そんな彼女ならではの親密さに溢れているのだった。

新山詩織

これまでを振り返りながら、さらなる変化と成長のときを迎えようとしている、新山詩織

デビュー当初より、その若きシンガーソングライターとしての才能が注目を集めた彼女だけれど、その何よりの魅力は、細やかに表情を変える、その歌声の無垢な「表情」なのかもしれない。今回の“愛は勝つ”を含め、テレビなどではその歌を耳にする機会はあっても、音源のリリースとしては、Charaがサウンドプロデュースを担当し、岩井俊二がミュージックビデオを担当したことが話題を呼んだシングル『さよなら私の恋心』のみとなった、新山詩織の2017年。

新山詩織『さよなら私の恋心』ジャケット
新山詩織『さよなら私の恋心』ジャケット(Amazonで見る

しかし、デビュー5周年となる2018年の1月31日には、その5年の軌跡をまとめたベスト盤『しおりごと‐BEST-』のリリースが予定されている。そう、高校在学中にデビューして以降、めまぐるしく活動を展開してきた彼女は今、これまで形にしてきたものを振り返りながら、さらなる変化と成長のときを迎えようとしているのだ。

果たして今後、彼女はどんな「歌」を紡ぎ上げていくのだろうか。それはまだわからない。しかし、そんな新しい新山詩織の歌には、これまで自身が生み出してきた楽曲はもちろん、彼女がこの5年間で弾き語ってきた、数々のカバー曲のエッセンスが活かされていくのではないだろうか。そのポテンシャルには、まだまだ計り知れないものがある。

リリース情報
新山詩織
『さよなら私の恋心』初回限定盤(CD+DVD)

2017年9月6日(水)発売
価格:1,620円(税込)
JBCZ-6064

[CD]
1. さよなら私の恋心
2. らくがきちょう
3. さよなら私の恋心 -instrumental-
[DVD]
・“さよなら私の恋”Music Vodeo+Making

新山詩織
『さよなら私の恋心』LIVE盤(CD+DVD)

2017年9月6日(水)発売
価格:1,836円(税込)
JBCZ-6065

[CD]
1. さよなら私の恋心
2. らくがきちょう
3. さよなら私の恋心 -instrumental-
[DVD]
『新山詩織 全国ツアー2016-2017「ファインダーの向こう」』から5曲収録

新山詩織
『さよなら私の恋心』通常盤(CD)

2017年9月6日(水)発売
価格:1,080円(税込)
JBCZ-6066

1. さよなら私の恋心
2. らくがきちょう
3. さよなら私の恋心 -instrumental-

プロフィール
新山詩織
新山詩織 (にいやま しおり)

小学生の頃から、父親の影響で、70年~80年代のブルース・パンク・ロックを中心とした洋楽・邦楽を聴いて育つ。中学卒業直前のある日、手に入れたばかりのアコースティックギターを手に、「もやもやした気持ちのやり場がなくて、衝動的に作った」という初オリジナル曲(作詞、作曲)“だからさ”が完成。高校2年生(16歳)の春、『Treasure Hunt~ビーイングオーディション2012~』に応募。最終審査で、オリジナル曲“だからさ”、椎名林檎“丸の内サディスティック”を弾き語りで演奏し、グランプリ獲得。2013年4月17日に、1stシングル『ゆれるユレル』でメジャーデビュー。2016年4月期よりフジテレビ系月9ドラマ『ラヴソング』に宍戸春乃役で出演。劇中歌で“恋の中”(作詞作曲:福山雅治)が起用された。2017年9月6日、ニューシングル『さよなら私の恋心』を発売。



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