建築賞『プリツカー賞』発表。アイルランドの女性建築家2人組

(メイン画像:Yvonne Farrell and Shelley McNamara, photo courtesy of Alice Clancy)

アイルランド初の受賞者、イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラ

2020年の『プリツカー賞』受賞者が発表された。

「建築界のノーベル賞」とも言われる『プリツカー賞』。アメリカのハイアット財団が現地時間の3月3日に発表した。

今年の受賞者となったのは、アイルランド出身のイボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラ。彼女たちは47人目、48人目の『プリツカー賞』受賞者であり、アイルランドからは初の受賞者となった。

大学など多数の教育機関や文化施設を手掛ける。『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』総合ディレクターも

1951年生まれのファレルと1952年生まれのマクナマラは、他の3人と共に1978年にアイルランドのダブリンでグラフトン・アーキテクツを設立。現在までに約40年間にわたってアイルランドをはじめ、イギリス、フランス、イタリア、ペルーなどで多数のプロジェクトを手掛けてきた。

ペルー・リマの工科大学「Universidad de Ingeniería y Tecnología」(2015年)で、2016年に王立英国建築家協会(RIBA)のインターナショナル賞を受賞。その土地ならではの文脈に敬意を払いながら、様々な地域の教育機関や、文化施設、住宅などで設計を担当してきた。2018年には『ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展』の総合ディレクターを2人で務め、テーマを「FREESPACE」とした。

University Campus UTEC Lima, photo courtesy of Iwan Baan
University Campus UTEC Lima, photo courtesy of Iwan Baan

「この受賞は私たちの建築に対する信念への素晴らしい支持」

『プリツカー賞』の受賞に際してファレルは、「建築は地球上で最も複雑で大切な文化的活動の一つだと言えると思います」「建築家であるということはとても光栄なことであり、この受賞は私たちの建築に対する信念への素晴らしい支持だと思います。この大きな名誉に感謝します」とコメント。

審査員は授賞理由について「建物と彼女たちのやり方を実践していく手法に対する誠実なアプローチ、共同作業における信頼、2018年の『ヴェネチア・ビエンナーレ』などで見せた同業者への寛容さ、素晴らしい建築のための絶え間ない取り組み、環境に対する責任ある姿勢、それぞれの作品において場所ごとの特性と取り込みながら国際的な視点を持ち続ける能力」などを挙げている。

London School of Economics and Political Science, photo courtesy of Grafton Architects
Town House Building, Kingston University, photo courtesy of Ed Reeves

過去の女性受賞者はわずか3人。単独受賞者はザハ・ハディドのみ

またファレルとマクナマラは、女性として4人目、5人目の『プリツカー賞』受賞者となる。

審査員は講評で2人を「伝統的に、そしていまも男性優位の職業であるこの分野においてパイオニアであり、この職業の模範的な道を示す指針でもある」とも評したが、41年の歴史を持つ同賞における女性受賞者の少なさを考えると、この賞自体がその伝統を象徴しているようでもある。

『プリツカー賞』で女性が初の受賞者となったのは、ザハ・ハディドが受賞した2004年。2010年に妹島和世がSANAAとして、2017年にカルメ・ピジェムがRCRアーキテクツとして受賞しているが、単独で受賞した女性建築家は未だザハ・ハディドのみだ。ファレルとマクナマラは女性のみで構成された建築家ユニットとしては初の受賞者となった。



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