櫻坂46への道を照らした欅坂46ラストライブと、新たな物語の始まり

欅坂46の終幕。六本木の「けやき坂」に隣接する「さくら坂」が由来の櫻坂46へ

欅坂46の活動を追っていくなかで、シングルリリースや、主催ライブ、『NHK紅白歌合戦』など大きな出来事のたびに「集大成」「節目」といった言葉が浮かんだのは、欅坂46のパフォーマンスを含む活動が、たとえば、2018年の幕張メッセ公演の“ガラスを割れ!”で平手友梨奈がアドリブで花道を駆けたように、どこか危なっかしくジェットコースターのようにスリリングで、他方、移ろう四季の煌めきを歌った“二人セゾン”のように儚く、どちらの場合も、常にこれが最後で一瞬一瞬を目に焼き付けておきたいと感じさせる刹那性を帯びていたからである。2020年10月7日にリリースされた欅坂46のベストアルバム『永遠より長い一瞬 ~あの頃、確かに存在した私たち~』には、そうした刹那=一瞬が「永遠より長い」ものとして収められている。

欅坂46“ガラスを割れ!”

欅坂46“二人セゾン”

2015年の結成から5年、2020年10月12日と13日に配信されたラストライブ『欅坂46 THE LAST LIVE』をもって、欅坂46はその歴史に幕を閉じ、かつて欅坂46と呼ばれたメンバーたちは翌日の10月14日から、六本木の「けやき坂」に隣接する「さくら坂」が由来の櫻坂46として新たな坂を登り始め、12月9日には1stシングル『Nobody's fault』をリリースする。

欅坂46のベストアルバム『永遠より長い一瞬 ~あの頃、確かに存在した私たち~』を聴く(Apple Musicはこちら

パブリックイメージとしての「欅っぽさ」と、欅坂46のダンスパフォーマンスにおいて伝達されていたもの

欅坂46の楽曲は、デビュー曲“サイレントマジョリティー”や“不協和音”に代表されるように、社会への反抗や、大人への不信を歌っているという側面がとかく強調されがちである。それ自体は否定しないし、そうした楽曲群がパブリックイメージとしての「欅っぽさ」を担ってきたのもたしかであるが、個々の楽曲の内でもやもやと蠢く様々な感情 / メッセージを引き受け、それを原動力としながら一丸となって表現しようとする欅坂46のダンスパフォーマンスにおいて伝達されていたのは、突き詰めると、反抗することそれ自体というよりも、2019年の東京ドーム公演のTシャツにも書かれていた「Be yourself.(自分らしく)」であったように思う。

個々の楽曲が持つ具体的なメッセージの違いこそあれ、「Be yourself.」を貫くことは決して簡単なことではないけれども、そうすることを寄り添うように肯定してくれる、そういう姿が「欅坂に救われた」というあまたの声を溢れさせたのだと思う。

欅坂46“サイレントマジョリティー”

欅坂46“不協和音”

メンバーは色々な場所で、楽曲に込められたメッセージをパフォーマンスを通じて伝えたい、ということを語ってきたが、本来「伝えようとすること」と、実際に「伝わること」の間には大きな隔たりがあり、両者の邂逅はほとんど「奇跡」のような出来事のはずである――届けようとしても思い通り届かないこともあれば、ある日突然雷に打たれたように届くこともあるし、こちらから、あるいは互いに向き合うことで届けられることもあるように。だから「欅坂に救われた」という出来事は、欅坂46のパフォーマンスがたしかに届いたこと、つまり「奇跡」の証である。

櫻坂46への道を照らし出す「静」と「動」のラストライブ

「“静”と“動”とも言えるまったく別のセットリスト」と予告されていたラストライブは、両日共に、ルキノ・ヴィスコンティの映画『ベニスに死す』でも知られるグスタフ・マーラーの“交響曲第5番”第4楽章――“キミガイナイ”の歌詞にある「マーラーの憂鬱な交響曲」とはこの曲だったのかもしれない――と共にステージへの入場行進が執り行なわれ、初日1曲目の“サイレントマジョリティー”に始まり、2日目、27人全員での“サイレントマジョリティー”で欅坂46としての終幕を迎えた。

「静」と「動」について言えば、“不協和音”“避雷針”、欅坂46のシングルのフィジカルリリースとしては最後のタイトル曲となった“黒い羊”などクール、ダーク寄りな楽曲を披露した初日が欅坂46の活動休止への「静」、“二人セゾン”“手を繋いで帰ろうか”“ガラスを割れ!”など多様性に富んだ楽曲に加えて、櫻坂46の1stシングルのタイトル曲“Nobody's fault”が並んだ2日目が、欅坂46から櫻坂46への「動」ということであるのだろう。

これまで連続公演においてセットリストを大きく変えてくることはなかったが、2日間で「静」と「動」という異なるセットリストを組むことができるのも欅坂46の楽曲がタイトル曲からカップリング曲まで充実していることを示している。また床一面に映し出されたプロジェクションマッピングや、水、炎、レーザービーム、スモーク、ワイヤーアクション、様々な舞台セットを駆使して楽曲ごとに表情を変えていく会場の使い方は、配信ライブの新たな地平を切り拓くものであった。

欅坂46“黒い羊”

欅坂46“手を繋いで帰ろうか”

欅坂46の楽曲の今後については、2期生の大沼晶保のブログに「このライブでどの曲も最後の披露になると思います」と綴られているが、ほぼMCなしで駆け抜けたラストライブは、欅坂46を大切に締めくくり、櫻坂46への道を照らし出していた。

櫻坂46の新たな歩み。1stシングルで掲げる「誰のせいでもねえ」

ラストライブ2日目のエンドロールが流れた後、「その角を曲がると、新しい坂道が続いてた」という、欅坂46、さらに言うと平手友梨奈の欅坂46時代のソロ曲“角を曲がる”を連想させる小林由依の語りに導かれ、櫻坂46のグループカラーとなった「白」を基調に裾が桜色に染まったロングスカートで披露された“Nobody's fault”は、吸い込まれそうな瞳と、身体の隅々まで使ったダイナミックなダンスで人目を引く2期生の森田ひかるがセンターを務めた。

声質や歌い方、表情も印象的な森田ひかるは、2019年末の『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ 2019 → 2020』での“黒い羊”と、ベストアルバムに未発表曲として収録された“10月のプールに飛び込んだ”でもセンターを務めているが、「誰のせいでもねえ」という意味の“Nobody's fault”は、“黒い羊”の「全部僕のせいだ」に対する応答になっているようにも響く。

「No! No! No! 他人のせいにするな」「鏡に映ったおまえは誰だ?」「勝手に絶望してるのは / 信念がないからだってもう気づけ」など挑発するような言葉が、「自惚れてんじゃねえよ」「知らぬ間に汚れちまった空は」「締め切った窓は曇ってるぜ」といったべらんめえ口調と共に連なる“Nobody's fault”の歌詞、そこから広がる楽曲の世界は、「精神の美」「優美な女性」という花言葉を持つ「櫻」に漠然と抱いていたイメージを拡張させ、その多彩さを、「櫻坂46の櫻はこうだ」と突き付けてくるようで頼もしい。胸のところで手を三角形にした「櫻坂ポーズ」や、作曲を手掛けたデレク・ターナーという人物にも注目が集まっている。

櫻坂46『Nobody’s fault』のアーティスト写真

“Nobody's fault”は、1期生11人から7人、2期生15人から7人の計14人という少人数で披露された。櫻坂46のオフィシャルサイトと、新番組『そこ曲がったら、櫻坂?』によると1stシングルには全7曲が収録され、全曲14人編成でのパフォーマンスとなる。さらに1列目2列目の8人は「櫻エイト」として全楽曲の1列目2列目に参加し、3列目の6人は楽曲によってメンバーが変わる。“Nobody's fault”以外のセンターは、楽曲によって森田ひかる、同じく2期生の藤吉夏鈴と山﨑天の3人がそれぞれ務める。乃木坂46、欅坂46、日向坂46にはなかった新たなシステムの導入は櫻坂46にとって最も大きな試みのひとつと言える。

タイトル曲“Nobody's fault”が他の収録曲と共鳴し、どのような1stシングルの世界を形作っていくのか、そして「グループとして強くなるために」改名を決断した櫻坂46が、「私たちは、私たちらしく、自由に。全員で、輝ける、未来へ。」と向かって、やがてどのように花咲いていくのか期待が膨らむ。



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