デジタルコミュニケーションが社会を変える

『デジタルコミュニケーションが社会を変える』 Vol.10 学生とともに学ぶ、的確なビジュアルセンスの磨き方

デジタルコミュニケーションが社会を変える Vol.10 学生とともに学ぶ、的確なビジュアルセンスの磨き方

デジタルメディア、ソーシャルメディアの進化に伴う「デジタルコミュニケーションの未来型」を、最前線で活躍するキーパーソンへの取材を通じてご紹介してきた本連載。これまでの取材でも端々に感じられたことですが、デジタル&ソーシャルメディアを、人々がより身近に感じたり、自分自身の生活へと引き寄せて親しむ&親しませるには、ビジュアルが持つ吸引力が必要ではないでしょうか?

それは、みなさんに今読んでいただいているCINRA.NETのようなウェブメディアでも、ソーシャルメディアでも同じです。人から人へ――伝えたいことをより正確に、よりスマートに伝えるためのビジュアル表現、ビジュアルセンスは、「的確に表現するため」に身につけておきたいスキルのひとつと言えます。

そこで今回は、「人に伝えるビジュアルセンス」と実践を学ぶ、デジタルハリウッド「専科グラフィックデザイナー専攻」の社会人学生・小西祥子さんに密着。小西さんは今事務職に就きながら、子どものころから大好きだった「絵を描くことや「デザイン」を仕事にしようと奮闘中。彼女の日ごろの取り組みから、最近行ったという映画『ヘルベチカ』のポスター作りやインフォグラフィックス、ヴィレッジヴァンガードお茶の水店とのコラボレーションといった、さまざまな課題のお話を通じて、ビジュアルセンスの磨き方を探っていきましょう。

勤めながらの忙しい日々も、同じ夢を持つ仲間となら充実したものに。
小西祥子さん

今回、お話を聞かせていただいた小西祥子さんは、週1日、毎週日曜日に開講されているデジタルハリウッド「専科グラフィックデザイナー専攻」に通う会社員です。都内の大学法学部を卒業し、大手企業に就職して約5年。現在は事務職として働いている小西さんが、デジタルハリウッドに通うようになったのは、ある考えがあったからでした。

小西:私が会社勤めをしながらデザインを学ぼうと思ったきっかけは、将来のことを考えたからなんです。今は独身なのでフルタイムで会社勤めができていますが、将来、結婚して子どもを育てるようになったら、忙しい時には夜10時ごろまで残業がある今の仕事を続けるのは少し難しい。でも、自分が子どものころから好きだった、絵やデザインにまつわる「手に職」があれば、自宅でも仕事ができるんじゃないかと思ったんです。

実に、働く女性らしい建設的な目標を持っていたんですね。お話をしていても、とても柔らかで癒し系の雰囲気が漂う小西さん。絵が大好きだというのも、佇まいからして納得です。とはいえ社会人5年目に差し掛かろうという時期に、突然「デザインを学びたい!」と宣言したのは、やはり家族や親しい友達からも「なぜ今さら?」と驚かれたとか。でも、女性としての将来を見据えた選択であることを伝えると、みなさん、すっかり応援してくれたそうです。

小西祥子さん

小西:転職したいとか、どんな風に活躍したい、といった具体的な目標は、まだこれからです。まずは「ここで学ぶことで何が自分に向いているか」「これをやりたい!」と思えるものは何かを探している最中で。今の会社でデザインスキルを活かせる部署への異動も、もちろん視野に入れています。何かしら絵に関わる仕事、デザインに関われる仕事ができたらうれしいですね。まだ授業は半年残っていますし、後期からはウェブデザインの授業も始まります。私にとっては未知の世界なので、新しいスキルを身につけると同時に、自分に向いた方向性もそれからちゃんと決めたいな、と思っています。

昔から、絵を描いたり可愛いデザインを見たりといったことは大好きで、高校時代は絵画教室にも通っていた小西さん。でも絵やデザインに関して、特別な勉強をしてきたわけではなかったそう。

小西:実はここに入るまで、デザイナーとアーティストの違いすらよく知らなかったんです(苦笑)。デザイナーにはクライアントから依頼があり、作るものには目的があって、その範囲で可能な限り自分で考えて作っていくもの。自分だけが「これは良い」と思うだけじゃなく、いろいろな人の意見を聞いて、誰にとっても分りやすく、良いと思ってもらえるデザインを作っていくことが、人に何かを伝える時には大切になるんですよね。

初心者だった小西さんは、グラフィックツールの使い方もデジタルハリウッドに通ってから知ったのだとか。

小西祥子さん

小西:パソコンは仕事でも使っていましたが、Adobe IllustratorやPhotoshopの使い方は、デジタルハリウッドで初めて教わりました。また私は、先入観を持ちたくなかったので、具体的にどんな勉強をするのかもよくは調べずに入学したんです。そしたらタイポグラフィの歴史や「なぜここにスペースが必要なのか?」といった紙の上での空間の取り方など、デザインを作る上での知識や考え方、理論的な基礎から教えてもらえたので、毎週の授業はとても充実してます。毎回が「なるほど!」と思うことばかりなんです。

ちなみに、小西さんが通う「専科グラフィックデザイナー専攻」は現在4クラスがあり、小西さんと同じクラスの13人の学生は、全員が社会人なのだそう。小西さんに限らず、平日は会社で仕事、週末はデジタルハリウッドで授業を受けながら課題を仕上げていく生活は、かなり忙しいのでは? と尋ねると……。

小西祥子さん

小西:私は、個人でAdobe Illustratorなどのツールをまだ持っていないので、課題が立て込んできたら、週に3日ほど会社帰りにデジタルハリウッドに通っています。ちょうど会社と自宅の中間に学校があるのもラッキーなんですけど(笑)。PCのある教室は24時間開いているので、仕事が終わってから終電まで作業して帰ったり。今年の夏は、映画『ヘルベチカ』を題材に、タイポグラフィーをメインにして作った課題ポスターと、中間課題発表会で発表したインフォグラフィックス課題のポスターと、ヴィレッジヴァンガードのお茶の水店さんとデジタルハリウッドがコラボレートしたプロモーション企画のポスター制作が重なってしまい、とても忙しい思いをしました。

と、苦しんだ思い出を語っている時でも、小西さんの表情はとても楽しそう。その理由ははっきりしています。彼女が先ほども語っていたように、授業での新しい発見と好きな絵に関わる作品作りに浸れる生活は、いくら忙しくても充実の毎日だから。小西さんと同じように社会人を続けながらデジタルハリウッドに通うクラスメイトたちも同年代が多く、「デジタルハリウッドに通ってから、同じ夢を持っている友達と交流ができて、本当に楽しいです。作品を作るモチベーションも上がりますし、いろいろ話し合いながら、切磋琢磨できるのがいいですね!」。小西さんにとって、デジタルハリウッドに通うと決めた選択は、彼女の暮らしにも考え方にも、さまざまに影響を与えているようですね。

小西祥子さん
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