次世代の登竜門イベント『スペースシャワー列伝』の熱気

日本最大の音楽チャンネル「スペースシャワーTV」イチオシの新人アーティストが一堂に会する音楽イベント『スペースシャワー列伝』。これまで、9mm Parabellum Bullet、NICO Touches the Walls、the telephones、andymoriといったアーティストが出演し、その後彼らがこの国の音楽シーンを牽引する存在となっているのは、音楽ファンならずともご承知の通り。つまり、この『スペシャ列伝』に出演するということは、それだけで「次世代を作っていく」と期待され、その実力があるバンドであるということを示す。音楽業界も、耳の肥えたオーディエンスも、この『スペシャ列伝』に注目しているのは、そういう理由からなのだ。

さて、その『スペシャ列伝』のツアーが2月23日の札幌公演を皮切りに行われている。その名も『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2012』。出演アーティストは、アルカラ、クリープハイプ、Over The Dogs、The SALOVERS。札幌、仙台、新潟、名古屋、大阪、福岡、広島、東京…と、全公演でチケットがソールドアウトになった超人気イベントの第2夜、仙台公演に潜入した。

震災を乗り越え再スタートを切った仙台MA.CA.NAで開催された『スペシャ列伝』

会場は、「仙台MA.CA.NA」。ご存知の方もいるとは思うが、MA.CA.NAは震災以降、入居ビルの建て壊しもあって、一時休業。2011年10月に、場所を移転して再スタートを切った。その新生MA.CA.NAで行われる『スペシャ列伝』ということで、東北の音楽関係者はもちろん、ファンも感無量といったところ。かく言う私も、この場所で、また音楽を楽しめることに胸をいっぱいにしているひとりなのだ。

夕方5時半の開場を前に、MA.CA.NAの前には長蛇の列。その中のひと組、福島から来たという姉妹に声をかけてみた。お目当ては、アルカラとOver The Dogsだという。「Over The Dogsの歌詞の世界観が好き」という姉と、「前から好きだったアルカラを初めて生で見られるので、ドキドキ!」と興奮気味の妹。午前中にたっぷり降った雪の影響で、まるで冷凍庫の中にいるような気温の中、それをもろともせず、2人の目は熱気を帯びていた。

そのころ、ステージでは最終のリハーサルが終了したと聞いて、出演者が勢ぞろいしている楽屋を訪ねてみた。すると、底抜けに明るい関西弁が聞えてくる。アルカラの稲村太佑(Vo,Gt)だ。「クリープハイプって、もっと年下なんやと思っとったわ〜」、そんな風に、クリープハイプの尾崎世界観(Vo,Gt)に話しかける。稲村の周りには、いつの間にか人が集まり、雑談の和が出来上がっていった。

この『スペシャ列伝』が面白いのは、2002年に結成して、海外でのライブ経験を持つアルカラのようなベテランと、2008年に結成して、昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL』「ROOKIE A GOGO」で注目を集めた若干20歳のThe SALOVERSのようなルーキーが肩を並べるところ。音楽性も、キャラも実にバラバラなのだが、それぞれが確固たる世界観を持っていて、際立っている。パキッとした原色の絵具を使って、キャンバスの上に絵を描いていくような、実験的な面白さがあるのだ。

「日本のロックシーンを変えに来ました」と言い放ったトップバッター

さて、楽屋を後にして、いざフロアへ。6時の開演を前に、すでにオーディエンスで埋め尽くされ、すごい熱気だ。―と、そこで照明が落ちる。トップバッター、クリープハイプの登場だ。「日本のロックシーンを変えに来ました」。のっけから、尾崎(Vo,Gt)の宣戦布告。ゾクゾクする。

クリープハイプ
クリープハイプ

クリープハイプは、2001年、尾崎が高校の同級生と結成したバンド。紆余曲折を経て、2009年に現メンバーとなり、本格的な活動をスタートさせた。扇情的なハイトーンボイスで感情をむき出しにして歌うそのパフォーマンスが話題となり、2011年10月には渋谷クラブクアトロのワンマンをソールドアウトに。今年、2012年4月には、メジャー1stアルバムのリリースも決定しているという。

クリープハイプ
クリープハイプ

もうすでにライブのキラーチューンとなっている“HE IS MINE”では、尾崎が「サビ前の大事な歌詞、忘れちゃったから、みんなが歌って」との「お約束」にオーディエンスが一体となって「セックスしよう!」コールで応える。この一体感は、ライブならでは。本当に気持ちがいい。パフォーマンスを締めくくったのは、名曲“イノチミジカシ コイセヨオトメ”。だが、ここでおっ? っと思った人も多かったに違いない。歌詞が、震災後のこの国を意識した内容になっていたのだ。この粋な計らいに、この地に暮らすひとりの人間として、ただただ感動。そのことをライブ後の楽屋で尾崎に告げると「余計なことをしてスミマセン」と謙虚に頭をかいた。センシティブにして、マッド。クリープハイプの魅力を十分に堪能できたステージだった。

タクトを振るようにマイクを操る恒吉豊(Over The Dogs)が描き出した世界

続いては、オバ犬(ケン)ことOver The Dogsの登場。オバ犬は、昨年1stアルバム『トケメグル』でメジャーシーンに躍り出て、瞬く間に全国のロックキッズを魅了。iTunes Storeの「今年ブレイクが期待できる新人アーティスト10組」に選出されるなど、今まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドだ。

Over The Dogs
Over The Dogs

恒吉豊(Vo,Gt)のピュアなハイトーンボイスが描く世界は、楽曲ごと実にさまざま。ライブでは、まるでタクトを振るようにマイクを操り、私たちに「ここにはない映像」を見せてくれる。特に、幼い子を持った父親の目線で描かれる“メクルの本”といったら、まるで平和な日曜日の午後のリビングルームが目の前に現れたかのような錯覚にさえ陥ってしまったから参った。「いつか僕に子どもが生まれたら…」そんな思いだけで、この作品を作ってしまった恒吉の、なんと想像力のたくましいことだろう。ライブを締めくくったのは“本当の未来は”。「君と未来を見ていたいだけ」、そんなリリックに、震災を経験した自分自身を投影したオーディエンスは、私だけではなかったはずだ。

恒吉豊(Vo,Gt/Over The Dogs)
恒吉豊(Vo,Gt/Over The Dogs)

アルカラの、音源とは劇的に違う、激しく、奔放で、エロティックなサウンド

3番目の登場は、ツアー初日の札幌ではトップバッターを飾ったというアルカラ。「ロック界の奇行師」を自称するアルカラは、2002年に神戸で結成。アメリカでもライブを敢行して話題になったほか、2010年にリリースしたアルバム『フィクションを科学する』で一躍全国にその名をとどろかせた。

Over The Dogs
アルカラ

今回の『スペシャ列伝』出演の4バンドのうち、一番のキャリアを誇る彼らがステージに登場すると、フロアは一気にヒートアップ! 1曲目の“Aカップ巨乳”から、みぞおちあたりをズンズンと突き上げられてくるような感覚にとらわれ、ニューEP『おかわりください』からの“ヤバいヤバいヤバい”では脳ミソが完全に絡めとられてしまった。音源とは劇的に違う、激しく、奔放で、エロティックな音は、「ヤバい」なんて言葉では表しきれない。完全にやられた。溺れてしまった。私は、完全にアルカラの音楽に激しく恋してしまった。パフォーマンスの最後を締めくくったのは、まさかのセツナ系“秘密基地”。これもまた、いろいろな思いを去来させる絶妙な選曲。

稲村太佑(Vo,Gt/アルカラ)
稲村太佑(Vo,Gt/アルカラ)

まさに新旧おりまぜてのセットリストに、大満足! ライブ終了後、稲村は「全会場に来てるお客さんがいると信じてるから。だから、セットリストも会場ごとに変えてますよ。だって、アイツらいっつも同じやなって、思われたくないしね」と。ライブはオーディエンスがあってのもの。そんなあたりまえのことを、あたりまえにやってしまうアルカラは、やっぱりカッコイイ。

トリを飾った若干20歳の期待の新星、The SALOVERS

The SALOVERS
The SALOVERS

そして、『スペシャ列伝』第2夜、仙台公演を締めくくるのは、The SALOVERS。2010年に『FUJI ROCK FESTIVAL』「ROOKIE A GOGO」に出演し、1stアルバム『C'mon Dresden』をリリース。全員若干20歳という若さがゆえの青さ、焦燥を持つだけでなく、アメリカナイズされたプリミティブなサウンドとUKロックのような影のあるサウンドで、とにかく美しいロックを聴かせてくれる期待のニューカマーなのだ。

暗幕が上がり、青白い光が4人を照らしだす。すると、爆音とともに“狭斜の街”でスタート。名曲と名高い“サリンジャー”では、エモーショナルなギターに、心がグラグラ揺り動かされる。続く“ペンシルフィッシュ”は、恋を失った苦しみにもがく男の姿を目の前に見ているようで、切なくなる。古舘佑太郎(Vo,Gt)はMCで「『スペシャ列伝』のトリって、ものすごく緊張するんですよ」と、ボソリと言っていたが、なかなかどうして。

古舘佑太郎(Vo,Gt/The SALOVERS)
古舘佑太郎(Vo,Gt/The SALOVERS)

アンコールで披露した新曲“愛しておくれ”は、ポップなオープニングとキャッチーなサビが印象的だが、どこかヒリヒリとした痛みを伴うラブソング。古舘が「自分的に気に入っている曲。まだCDとかにはなっていないけど、ライブでだけでも聴かせたくて」と言ったこの曲は、きっとThe SALOVERSを代表するような楽曲へと成長していくだろう。クールな中に熱いものをもったThe SALOVERSも、きっとこの国のロックシーンを引っ張っていく存在になるのだろう。そう確信した。

こうして、集まったオーディエンスを魅了した、卓越の4バンドによる『スペシャ列伝』仙台ナイトは、幕を閉じた。改めて、音楽が身近にあることの喜びを、すべての人に与えながら。

まだまだツアー中の『スペシャ列伝』。冒頭でも申し上げた通り、全会場チケットはソールドアウトとなっているため、残念ながら会場に足を運べなかった人は、4月にスペースシャワーTVでオンエアが予定されているという特別番組を、ぜひチェックしてほしい。

イベント情報
『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2012』

2012年2月23日(木)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:北海道 札幌 CUBE GARDEN

2012年2月25日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:宮城県 仙台 MA.CA.NA.

2012年2月26日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:新潟県 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE

2012年3月1日(木)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2012年3月2日(金)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:大阪府 心斎橋 BIGCAT

2012年3月4日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:福岡県 福岡 DRUM Be-1

2012年3月6日(火)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:広島県 広島ナミキジャンクション

2012年3月10日(土)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 赤坂BLITZ

出演:
アルカラ
OverTheDogs
クリープハイプ
The SALOVERS

料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

SPACE SHOWER TVでは、『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR 2012』の模様を90分の特別番組にてオンエア予定!


『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2012』

放送日時:2012年4月予定
詳細は後日オフィシャルサイトにて発表



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