『クリエイターのヒミツ基地』

『クリエイターのヒミツ基地』 Volume11 トラフ建築設計事務所

『クリエイターのヒミツ基地』 Volume11 トラフ建築設計事務所

工場のように、共同で仕事をする

閑静な住宅街に突如として現れるトラフ建築設計事務所の入った建物は、まさに「ヒミツ基地」と呼ぶにふさわしい外観です。10人以上のスタッフが働くこの事務所は、工場として利用されていた物件をリノベーションしたもの。三年前に引っ越してくる際、デザイナーの山野英之さんに声を掛け、グラフィックデザイン事務所「高い山」と事務所をシェアしています。

鈴野「下の階には、家具デザイナーのアトリエも入ってるんです。インテリアの仕事をするときなんかは、家具のデザイナーもグラフィックデザイナーも一緒になって仕事をやったりする。そういうの、面白いですよね」

それでは、いよいよトラフ建築設計事務所のヒミツ道具にせまります。

葛西薫デザインのカレンダー

葛西薫デザインのカレンダー

トラフ建築設計事務所の柱には、一本のビスが打たれています。ここに掛けられているのが、葛西薫さんがデザインしたカレンダー。2004年の設立以来、毎年このカレンダーを愛用しているそうです。前年度ぶんを取り外すのではなく、昨年度ぶんの上に今年度のカレンダーをどんどん重ねているため、ビスは毎年、少しずつ緩められているとのこと。

鈴野「葛西さんのカレンダーはすごくシンプルで、大きさもちょうどよくて、皆で書き込んでスケジュール管理するのに便利なんです。今だと、データでスケジュールを管理することもできるとは思うんですけど、このカレンダーを各自がA4に縮小コピーして持ち歩いています。だからアナログな形で全部残ってるんです。ひとつのビスの中にトラフの歴史が詰まっている感じですね」

FABRIANOのフォルダー

FABRIANOのフォルダー

トラフ建築設計事務所が制作し反響を呼んだプロダクト、「空気の器」。紙という二次元の素材から、建築家の視点を持ち込むことで三次元の作品を作り出せないかというアイデアに基づいて制作されたこのプロダクトは、紙でありながらも強度を持って自立し、空気そのものを持っているような感覚を味わえる器です。その制作過程において、試作品やプレゼンの時の持ち運びに役立ったのが、このFABRIANOのフォルダーでした。

鈴野「『空気の器』というプロダクトをつくったときに、それを入れて持ち歩くフォルダーを探していたんです。ミラノに行ったときに、このフォルダーを見つけました。カラフルなタイプもあったんですけど、この茶色いフォルダーが気に入ってます。紙のプロダクトを紙のフォルダーで持ち運べるのがいいですね」

3Mのハンディプロジェクター

3Mのハンディプロジェクター

トラフ建築設計事務所が手がけた作品には、さまざまな賞を獲得した作品も多くあります。そのひとつが、世界最大のデザイン見本市・ミラノサローネで最優秀賞を受賞されたインスタレーション『Light Loom(光の織機)』です。プロジェクターから出る光を、無数に張り巡らされた糸に当てることで、形を持たない光が可視化される――このインスタレーションに不可欠だったのが、3Mのハンディプロジェクターでした。

鈴野「インスタレーションの会場設計を考えるときにも、模型を作って考えてたんです。その模型に対して、このハンディプロジェクターを使って光を当ててみるんです。どういう映像を当てたら面白いのか、どういう物に当てたら面白いのか、このハンディプロジェクターでいろいろと実験しながら、『Light Loom(光の織機)』が完成しました」

ペンタブレット

ペンタブレット

設計からプレゼンまで幅広いシーンで活躍するペンタブレット。海外からオープンデスクでやってきた人が持ち込んだのが、トラフ建築設計事務所で最初のペンタブレットでした。

禿「マウスに比べて、手で描くのに近い曲線が描けますよね。手で線を描くときって、ちょっとずれたりするじゃないですか。機械的にバシッと決まった直線よりも、ちょっとずれたもののほうが面白いんです。そのずれから何かが生まれることもありますから。ペンタブレットだと、そういったアナログ感まで再現できるのが嬉しいですね。製図からプレゼンまで、仕事柄線を引く機会は多いので、いろいろ活用してみたいです」

ベニヤ素材のボックス収納

ベニヤ素材のボックス収納

トラフ建築設計事務所の壁面には、資料や書籍などがずらりと並んでいます。一見、本棚のようにも見えますが、実はこれ、特注で作ってもらった箱なのです。

鈴野「このボックスは、CLASKAに事務所があった頃から使っているものです。建築の画集の中でも大型の『エル・クロッキー』という画集に合わせたサイズで特注したんですけど、家具屋さんに頼んじゃうと5、6,000円しちゃうから、美術品の梱包屋さんにお願いして、一箱2,000円くらいで作ってもらってたんです。この事務所はひとつの工場みたいな感覚なので、プロジェクトによってはもっと大きくならなきゃいけないかもしれないし、あるいは小さくしなくちゃいけないかもしれない。そういうときにも、ボックス収納だから、そのまま引っ越せるという感覚がある。それが便利で、ずっと愛用しています」

トラフ建築設計事務所で使われているアイテムには、アナログな手触りが感じられる道具が数多くありました。アナログであるがゆえに生じるゆがみから、さまざまなアイディアが生まれるようです。あなたの仕事にも、その技術を取り入れてみてはいかがでしょう?

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