『Hotel Art Fair Bangkok』は、バンコク市内のラグジュアリーホテルを会場に、タイ国内外のアートギャラリーやアーティストがギャラリーに仕立て、部屋ごとに作品を展示販売するアートフェア。絵画、写真、彫刻、版画といったジャンルを問わないアート作品を中心に、アートブックやファッショングッズ、雑貨など、ここでしか見つけられないアイテムが集結します。今回で5度目となる『Hotel Art Fair Bangkok 2018』は、6月9日・10日にスクンビット39のホテル『137 Pillars Suites & Residences Bangkok』で開催。回を重ねるごとに活気が増す、イベントの様子をレポートします。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
『Hotel Art Fair Bangkok』とは!?
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2013年にスタートした 『Hotel Art Fair Bangkok』は 、バンコクのデザインコンサルタント会社「Farmgroup design consultancy firm」が主催するアートフェア。『137 Pillars Suites & Residences Bangkok』で開催された今年は、34客室に約500アーティストの作品が集結。1客室ごとに展示が行われ、来場者は数フロアにまたがる会場のフロアマップを手に、部屋を訪ねてまわります。
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出展もバンコク、チェンマイの有名ギャラリーのほか、フィリピン、中国、カンボジア、マレーシアなどの海外勢も多数参加。中でも今回のハイライトは、バンコクで高い人気のスペインのイラストレーターJoan Cornellàと、日本の『Clear Gallery Tokyo』がキュレーションしたアーティスト・古賀学。特にバンコクで初展示となった、写真集「水中ニーソ」で知られる古賀学の作品は、新鮮な驚きとインパクトを与え、来場者にとても好意的に受け入れられていました。
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古賀学「水の中の女の子」 (Room 3101, Clear Gallery Tokyo)
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Joan Cornellà (Room 3203, Joan Cornellà )
バンコクで開催されている他のアートイベントや展覧会と比べて、国籍・年代を問わない幅広い客層の人々が訪れ、実際にアート作品が売買される『Hotel Art Fair Bangkok』。その始まりと、人気の理由について主催者であるFarmgroupの代表Vorathit Kruavanichkitさんに伺うことに。
Vorathit Kruavanichkit:このアートフェアは、知人の新しいホテルをPRするためにイベントを企画・開催したことが始まり。それがホテル側にも来場者にも大好評だったため、継続することになりました。ラグジュアリーホテルとアートはとても親和性が高いし、毎回会場が変わり新鮮なところがバンコクの街のスタイルにとても合っていて、一般の人にも受け入れられているのだと思います。
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『Hotel Art Fair Bangkok』の全体の2割ほどは、公募から厳選された若手アーティストの展示となっている。そんな若い才能とも出会えるのがこのアートフェアの特徴だ。
Vorathit Kruavanichkit:嬉しいことに、昨年ライブペインティングを行なったカンボジアのストリートアーティストLisa Mam は、その後1年間、依頼が途絶えず大忙しだったようで。職業柄もありますが、タイでは質の高いアートは溢れているので、会場をアート作品で埋めることは簡単なこと。だからこそイベントのコンセプトを理解して、パートナーとなってくれるホテル探しが一番大変だったりします。
そんな3日間にわたり開催された『Hotel Art Fair Bangkok 2018』より、タイの若手~中堅アーティストのブースを紹介します。
1.Look Comb a.k.a. Israkran Yingyong 「Combination & the used man」 (Room 2506, S.A.C. Gallery Bangkok, Chiangmai)
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「Kangaroo」by Naruepon Bamrungruan
まず最初に紹介するのは、バンコクとチェンマイにギャラリーを持つ 『S.A.C. Gallery』の部屋。レザーで動物型の巨大ハンドバッグのスカルプチャーを作るNaruepon Bamrungruanや、色覚異常のアーティストNiam Mawornkanongなど数多くのアーティストの作品が並ぶ部屋の一角で、古着を使った鮮やかな色の立体作品とTシャツを展示していたアーティスト・Look Combに話を伺いました。
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Look Comb「Combination & the used man」
Look Comb:タイには欧米から寄付された古着が大量に集まり、販売されています。美大を卒業して画材を買うお金がなかった頃、 色や雰囲気も自分の作風にぴったりな古着に着目したんです。でも、魅力的でない古着は大量に売れ残りが出るので、それ使って作品にすることで欧米人に買われて、その古着が生まれたところに戻っていくというサークルを作りあげようと思ったんです。
国内外で個展を開催してきたLook Combですが、今回は所属ギャラリーから声がかかり初参加。彼の作品は欧米人を中心に、関心を集めていました。
Look Comb:フェアは普段の個展以上に様々な人が訪れてくれるのが面白いですね。僕の作品は資本主義がテーマですが、みんなそれぞれの見解を述べたり、時に討論に発展するのが面白い。それがアートフェアの醍醐味かな。
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Look Comb「Combination & the used man」
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S.A.C. Gallery
URL:https://www.sac.gallery/
2.Kanith「Made by Microwave」 (Room 3004, MKD COLLECTIVE)
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Kanith「Made by Microwave 」(Made by Microwave シリーズ)
次に訪れたのが、ネットで知り合って一緒に参加したという、チェンマイやバンコクのアーティストが集う部屋。そこで出会ったのが、27歳のイラストレーターKanithが中華系タイ人の家庭での食事風景をブラックユーモアたっぷりに描いたシリーズ「Made by Microwave」。3世代に加え、おじ、おば、時にはよく関係もわからない親戚などの大所帯とショップハウスで暮らす、自身の体験を作品にしたものでした。
Kanith: 家族親戚一同で食卓を囲む中華系タイ人の文化は、私にとってはゾッとするもの。大声でとても攻撃的に喋り、いつも彼らに審判されているように感じ、萎縮してしまいます。ただ幸いにも、この作品を見た家族は理解していないようですが。
アート活動を本格的に始めたのは3年前という彼女のとってもパーソナルな作品は、時に議論を呼びつつも、多くの若者の共感を集め注目されています。
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Kanith「Good Girl」(Made by Microwave シリーズ)
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「Dining Conversation」(Made by Microwave シリーズ)
3.Thitinan Pongjaruwat「SCALA」 (Room 2501, Pomme Chan)
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pic by © Spacebar Design Studio
花をモチーフにしたイラストで有名なデザイナーPomme Chanの部屋の一角で見つけたのが、1969年からサイアムスクエアで営業する老舗映画館『Scala Cinema』をテーマにしたZINE。
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このZINEを製作したのはPomme Chanのアシスタントを務めながら、巨大なアートスペース『Changchui』や話題の商業施設『LHONG1919』でも自身のポストカードを販売しているという、23歳のデザイナーThitinan Pongjaruwat。
Thitinan Pongjaruwat:これは『Scala Cinema』の公式ブックでなく、完全に私がいちファンとして作った作品です。私は『Scala Cinema』に7年も通い詰めている、大のスカラファン。最初は卒業制作として作りましたが、のちにZINE専門の出版社Spacebarから発売されることになりました。
本には美しい映画館の建物のイラストと歴史、従業員へのインタビューのページの他、チケットやポイントカードのレプリカが付属。まさに彼女の『Scala Cinema』への愛が詰まった作品となっていました。
4.Chardchakaj Waikawee「RATTANAKOSIN GIRL」 (Room 2507, Chardchakaj Portrait and Antique Photo Studio)
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Chardchakaj Waikawee「Youth」
次に訪れたのは、ファッション~音楽を中心に活躍するタイの広告カメラマンCHARDCHAKAJ WAIKAWEEの部屋。パンクやスケートに傾倒する尖った若者を路上スナップしたシリーズ「Youth」とともに、今回は1850年代の写真技術である湿板写真を用いた新作「RATTANAKOSIN GIRL」を 披露。
RATTANAKOSIN(ラッタナーコシン)とは、現タイ王朝の初期 (1782–1932)の名称であり、王宮を含むエリアの名前。階級の高さの象徴でもあるタイの王冠を被った女性がヌードで佇む本作は、タイにおいてかなり挑発的な意味を持つ作品で、「新しいものと古いものが共存できるということを表したかった」とCHARDCHAKAJ WAIKAWEEは言います。
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Chardchakaj Waikawee「RATTANAKOSIN GIRL」
湿板写真とは、薬品に漬けたガラス板が乾く前に撮影して即座に現像する必要がある、銀塩写真と比べてとても手のかかる技術。屋外では簡易暗室を設け、撮影に挑んだのだそう。自身が運営する写真スタジオ『AIRLAB』の一角では、この湿板写真のポートレート撮影サービスを行なっているので、どなたでも訪れて体験することが可能です。
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CHARDCHAKAJ WAIKAWEE
URL:http://www.chardchakaj.com/
Instagram:https://www.instagram.com/chardchakaj/
Facebook:https://www.facebook.com/chardchakajandboonta/
5.The Uni_form Design Studio 「ABC series」 (Room 2504, The Archivist x Srinlim x The Uni_Form)
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最後に訪れたのは、若手グループがオーガナイズする中で、最も活気のあったThe Archivist x Srinlim x The Uni_form Design Studioの3グループが展示するこちらの部屋。
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ここに参加するThe Uni_form Design Studioは、グラフィックデザイナーのPariwatとWutthipatが5年前に立ち上げたデザインスタジオ。コラージュを多用する作風が特徴で、最近では、BNK48(ビーエヌケー フォーティーエイト)のアートワークといったコマーシャルワークから、50種類の異なる表紙デザインを用意したアートブック「THE UNI_VERSE」 の自費出版といった幅広い活動をしています。
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「普段のクライアント向けの仕事は彼らの問題を解決するためのデザインだけど、アートは自分のためにクリエイティビティを追求すること。今回は、チャトチャック市場などで集めた50年代の雑誌を切り抜いてコラージュしたアミューズメントパークがテーマのシリーズと、The Archivistと共同製作したデジタルコラージュのシルクスクリーン作品を持ってきました」と話すのは、The Uni_form Design Studio のPariwatさん。
お話を伺っている間も、メリーゴーランド、動物園、鳥、模型の街などを題材にした作品は次々に売れるほどの人気。
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The UNI_FORM design studio「Aquatic Animals」(ABC series)
The Uni_form Design Studioの新作である「ABC series」の印刷を担当したThe Archivistは、手作業でスクリーン印刷を行うバンコクのプリントスタジオ。今年2月には国内外のアーティストを招いたエキシビジョン「THE PRINTERS' PRINTS」を『The Jam Factory』で開催するなど、これまでにもアーティストとのコラボレーションを積極的に展開しています。
イギリスに留学中に、プリント過程までこだわるアーティストが多いことに気付き、帰国後に独学でスクリーン印刷を始めたというThe Archivist創業者のMinにこのアートフェアのについて聞くと、「私たちはこのフェアには2度目の参加。海外からやってくる人も多く、ポジティブなフィードバックがたくさん。毎回場所が異なるのも楽しくていいですね」とのこと。
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The Uni_form Design Studio
Facebook:https://www.facebook.com/TheUniFormDesignStudio/
The Archivist
Facebook:https://www.facebook.com/Archivistproject/
2日間にわたり、バンコクのアートへの熱気を肌で感じられた『Hotel Art Fair Bangkok 2018』。今回のイベントは終了しましたが、既に来年の開催も決定しています。次はどんな作品と出会えるのか、是非ご自身の目でチェックしてみてください。
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