ファスト・ファッションの逆を行く、現代の旅人のためにデザインされたパンツ、MATTER とは?

シンガポールを拠点とするブランド『MATTER』は、旅行を楽しむ人たちのために軽量でシワになりにくく、履き心地の良いパンツを提案している。色鮮やかで美しい模様は、東南アジアやインドの職人たちの手によって染色され、ファスト・ファッションの波に逆らうかのごとく、量より質を徹底。多種多様な体型に合うよう、戦略的にデザインされたスタイルを提供しながら、職人たちの生活が安定するよう、持続可能なビジネスモデルを構築している。シンガポールからファッションマーケットにアクションを起こす、MATTER の創立者、レンユン・ホーにインタビューを行った。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

—共同創立者であり、ビジネスパートナーであるイヴォンヌとは、メキシコへの旅行中に出会って意気投合し、そこからいっしょに事業を立ち上げたと伺いましたが、なぜそこでパンツを作ろう、となったのでしょうか。

レンユン・ホー:私たちは当初から、どのような事業を設立し、それがどのような影響を及ぼして、どのようなブランドストーリーを通し、どのようなタイプの人がMATTERを好きになってくれるかというイメージをしっかり持っていました。まず、パンツが一つ目の商品となったのには二つの理由があります。一つ目は、一つの事を一生懸命上手くやりたいと考えていたこと。限られた商品にフォーカスすることで、構造のクオリティーを保ちながら、布地を革新していくことが可能になります。そして二つ目の理由は、旅行者は絶対にパンツが必要だということ。旅の途中、ビーチから、おしゃれなバーにそのまま履いていけるような、履き心地が良くて、着回せて、スタイリッシュなパンツは、みんなが必要としているアイテムです。

—パンツの構造をデザインする際に、特にどのようなことを考えました?

レンユン・ホー:着心地の良さは絶対ですね。そして様々な体型にフィットすることも重要。決まったフィットモデルはないのですが、いろいろな体型の人たちに履いてもらうことで、そのスタイルがどの体型にも美しく見えるように確認をしています。それから、サイズと留め具に関してもこだわっていて。MATTERでは、ジッパーは絶対に使いません。ジッパーを使わないことで、ボタンの位置をずらすなど、履く人自身がフィッティングの最終調整を行えるようにしています。それから、MATTERの1サイズは、通常サイズの2サイズ分の余裕を持って作られています(MATTERのサイズ1=UKサイズの8-10)。そうすることで、試着をせずにオンラインで購入することに対しての恐怖心を軽減しています。

—MATTERのパンツは、どのパンツも、伝統的な職人技が美しく映えるプリント生地が特徴的です。

レンユン・ホー:ありがとう!

—では、各国の職人達と仕事をするということに対して、どのような考えを持っていますか?

レンユン・ホー:職人と仕事をする、ということは、彼らのゆっくりとしたホリスティックなライフスタイルを尊重し、そしてなによりも共に仕事をすることの「意味」を作り出す、ということだと考えています。私がもっとも大切に感じていることは、その土地の生態系や天候、村の職人たちの様々な役割や家族の歴史、物語、それらすべてを職人たちの技能から見いだすことができる、という点です。

—見いだす、というのは?

レンユン・ホー:作り出すものに彼らの生活が反映されているんです。職人たちが昔から直面するような問題というのは、布が仕上がるタイミングの予測だったり、天候によって色にムラができてしまったりとそういったことが多いです。このような要素が、不完全さを生み出すことで、他にない美しさが生まれます。例えばこれまでに手彫りの木版を使ったインドの伝統技法・ブロックプリントと、インドネシアの染色技法であるイカットを採用しています。今はインドのジャムダニ織りと、マレーシア、インドネシアなどに伝わるバティック染めの新製品を開発中です。

—職人たちの文化を尊重しているんですね。各パンツのスタイルは、全部で何着ほど生産しているのでしょうか。

レンユン・ホー:だいたい1つのパンツに関して、50本から150本ほどで、布地やエディションによって異なります。

—大量生産ではない、と。では、シンガポールでこのようにインディペンデントな事業を行うことに、なにか利点はありますか?

レンユン・ホー:もちろん良い点と悪い点はありますが、シンガポールのように小さな市場で成功させることができれば、そこから様々な場所で展開しやすいということはよく聞きますね。自分で生み出した事業が、どのように回るのか、自分で理解するためには最適なテスト・マーケットだと思います。それから、シンガポールは、大きな都市であると同時に、片足を東洋に、もう片方を西洋に、というように文化的な順応性を養える場所であるのは大きな利点ではないでしょうか。

—最後に、このサイトを見ている旅人たちに向けて、あなたの地元、シンガポールのおすすめの場所を教えてください。

レンユン・ホー:もちろん! オーチャード・ロードのモールのような場所でショッピングをするのではなくて、KeepersやKapokのようなインディペンデントなお店をぜひチェックしてほしいですね。もちろんMATTERの商品も置いてもらっています。それから、Fictive Fingersなど地元の職人たちの商品も見ていただきたいです。リトル・インディアのテッカ・マーケットは、朝早めに行くとロティ・プラタやジンジャー・ティーなど、ローカルな朝ご飯を楽しむことができますよ。朝の市場の人混みに紛れてみるのも面白いはずです。

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