Reborn-Art Festival開催の石巻で楽しめる、ローカルな食と体験

東北地方は宮城県の北東部、石巻・牡鹿地区。2017年、このエリアを中心に初開催された『Reborn-Art Festival』は、豊かな自然を舞台に「アート」「音楽」「食」を楽しめる芸術祭だ。第3回目はテーマに「利他と流動性」を掲げ、新型コロナウイルスへの対応も鑑みて、2021年8月11日〜9月26日の夏会期と、2022年4月23日~6月5日の春会期の二回に分けて開催される予定だ。

一方、過去の開催で生まれたアート作品の一部は、会期中以外にも見られる常設作品として一般公開されている。また、2011年の東日本大震災で特に大きな被害を受けた石巻には、復興ボランティアなどをきっかけに移住してきた人も多く、彼らや地元の人々が一緒になって震災後に生み出した新たなスポットやプロジェクトがたくさんある。

今回は、『Reborn-Art Festival』の常設アート作品と合わせて地元のローカルな食や文化をたっぷり堪能できるアクティビティーやスポットを、HereNow編集部が取材してきた。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

ベテラン食猟師のもとで、命をいただくありがたみを学ぶ

石巻駅までは、東京からJR東北新幹線と在来線を乗り継いで約2時間40分。そこから牡鹿半島を含むエリア一帯の移動は、レンタカーが便利だ。

最初に向かったのは、小積エリアに『Reborn-Art Festival』の一環として設立された鹿肉解体処理場『FERMENTO』。ここでは、猟師歴20年以上のベテランであり、元料理人でもある「食猟師」の小野寺望さんが迎えてくれる。小野寺さんの卸す鹿肉は、ミシュランの星つきレストランを含め全国のシェフから絶大な信頼を集めている。

到着すると、まず小野寺さんが普段狩猟をしている山へ案内してくれた。木々が生い茂る山は、『FERMENTO』からすぐそこだ。

「それではいまから5分間、目を閉じて瞑想してみましょう」。山中、少しひらけた場所で小野寺さんが呼びかけた。「決して動かない、音をたてないように」。ハンターは鹿がいるとわかったら、じっと動かずに近づいてくるのを待つ。その間、じつに数十分から一時間におよぶこともあるという。目を閉じると、聴覚や嗅覚など、視覚以外の五感が鋭敏に研ぎ澄まされる。

念のために小野寺さんは実弾入りのライフルを携えていたものの、残念ながら鹿には出会えず。山から戻って鹿の解体作業を見学し、その後は小野寺さんがみずから料理の腕をふるってくれた。

私たちが日々口にする家畜の肉と違い、野生の鹿は四季を通じて味がまるきり変わるという。「さまざまな条件が合致していちばん光っている時季の鹿に出会えたときは、『こんな肉の味ってあるの!?』とびっくりしますよ。一度そんな味に出会ってしまったら、もう家畜の肉ではもの足りなくなってしまう」と小野寺さん。

小野寺さんは、石巻市から受託している「有害鳥獣捕獲」の一環として鹿を狩猟している。弾の当たりどころが悪かったり、鹿の死後すぐの対処を誤ったりすれば、その肉は食用にできなくなる。「猟師の腕によって、ごみにもなるし、食べ物にもなるんです」。一頭でも多くの鹿を、少しでも美味しくいただけるよう、小野寺さんは徹底的に心を砕く。そんな仕事ぶりに触れることは、都会では決してできない経験だ。

自然と一体化した宿泊施設『もものうらビレッジ』

『FERMENTO』から北へ車を10分ほど走らせると、宿泊施設『もものうらビレッジ』がある。かつては段々畑として利用されていた山の裾野に、管理棟を含めて3棟のコテージが建ち、持ち込んだテントを張って宿泊できるテントサイトもある。自然と一体化したような素朴な宿泊施設だ。

『もものうらビレッジ』は、2011年の東日本大震災後、急激に人口の減った桃浦エリアに人々の交流のハブとなるような場所をつくろうと計画が始まり、2017年にオープン。『Reborn-Art Festival』を訪れる観光客の拠点としても大いに活用されている。

漁師さんの船に乗って『White Deer (Oshika)』を鑑賞

『もものうらビレッジ』では、沿岸漁業体験やクルージングなどさまざまな体験プログラムも実施しており、宿泊者でなくとも予約できる。

今回は、『もものうらビレッジ』管理人の土橋剛伸さんがみずからの漁船を使って案内してくれるミニツアーに参加させてもらった。ビレッジからすぐの桃浦漁港をスタートし、『Reborn-Art Festival』のアイコン的作品である『White Deer (Oshika)』(名和晃平作)を海側から鑑賞するというものだ。

片道の乗船時間は約15分。普段はなかなか乗る機会のない小柄な船で、波の動きをダイレクトに感じながら、太平洋と牡鹿半島のリアス式海岸が織りなす美しい風景を横目に進んでゆく。波の荒いところでは多少しぶきも浴びつつ、さながら天然のウォーターコースターだ。

鹿は古くから「神獣」として、日本のアニミズムや神道などの信仰のなかで親しまれてきた動物だ。海岸沿いに凛々しく立つ白い姿は、太陽の光を受けて神々しさを感じさせる。

この日は残念ながら波が荒く体験できなかったが、土橋さんのツアーでは、海中に仕掛けてあるカゴを引き上げる「カゴ漁」などの体験もできる。

石巻発の家具ブランド「石巻工房」が手がける『Ishinomaki Home Base』

『もものうらビレッジ』をあとにして、西方面へ車で約15分。JR石巻駅前エリアと牡鹿半島の入口のちょうど中間点あたりに、2020年10月にオープンしたばかりの複合施設『Ishinomaki Home Base』がある。

この場所を運営する「石巻工房」は、震災後に仮設住宅で暮らす人々のためのものづくりワークショップから始まったという、一風変わったルーツを持つ家具メーカーだ。「壊れてしまった家の一部や家具を自分たちで直すことができれば、復興が早まるのではないかと思いました」と語るのは、代表の千葉隆博さん。

『Ishinomaki Home Base』のコンセプトは、「使えるショールーム」。石巻工房の机や椅子を実際に使ってみることのできるカフェと宿泊施設が基本機能だ。

石巻工房の家具の特徴は、とにかくシンプルであること。使われているのはツーバイ材と呼ばれる標準規格の木材のみで、ホームセンターで売っている工具のみで完成させられる。家具は通常、ビスを見せるのはご法度だが、あえてそれも気にしない。単純なつくりにしておけば、買った人が自分で直せるからだという。

「かといって、ただ単純にしただけではダサくなる。そこでデザインというスパイスがものをいいます」と千葉さん。現在20名ほどの国内外のデザイナーが商品づくりに携わっているという。

ここでは、鳥・コアラのかたちをした置物がつくれる「ISHINOMAKI BIRD KIT」「ISHINOMAKI KOALA KIT」の制作体験をさせてもらった。商品の説明書には、詳細なつくり方は載っていない。つくる人に創造的に考えてほしいという思いからだという。自由に自分なりの方法を模索しながら、すっかり童心に返ってしまう体験だった。

日本各地から食通が訪れる懐石料理店『いまむら』

『Ishinomaki Home Base』をあとにして、さらに車で10分ほど西へ。JR石巻駅周辺の市街地エリアに、日本各地の食通たちがこぞって訪れる懐石料理の名店『いまむら』がある。

東京の和食店などで腕を磨いたのちに『いまむら』を開いた店主の今村正輝さんは、震災ボランティアを機に石巻を訪れた。その際に、石巻で暮らす人や、港に揚がる種類豊富な魚介、仙台牛、米、野菜などの食材に惚れ込んだという。「この町のために何かしたい」と、ここに自分の店を開くことを決意した。

この日にいただいたのは、デザートも含め全11品のコース。一つひとつ、食材のいわれを解説しながら料理を提供してくれた。コロナ禍により時間ができたという今村さんは、みずから漁師さんの船に乗せてもらって漁に出るなど、積極的に生産現場へ赴いているという。

「どんな方がどんな思いでつくっているのかわかると、料理がより美味しくなると思うんです」。そんな気持ちから、生産者のもとで撮影した動画をYouTubeにアップしたりもしている。シェフとして現場で学ぶことも多いといい、たとえば魚の締め方ひとつとっても、種類や食べ方によって適した方法があるそうだ。「まだまだ勉強中ですけどね」と謙虚に笑う。

盛りつけは、妻で女将の由紀さんの持ち場だという。味はもちろん、目にも美しく、まるでアート作品をいただいているかのような心持ちにさせられる料理の数々に、お腹も心もすっかり満たされた。

東日本大震災の記憶に触れる資料館

ここまでの内容からもわかるように、石巻には震災後、移住してきた人々や地元の人々が生み出したプロジェクトやスポットがたくさんある。そうした試みに触れ、この街の震災の記憶と復興の足跡についてもっと知りたくなった人は、震災に関する資料館もぜひ訪れてみてほしい。ここでは、いずれも石巻駅から徒歩圏内にある2つのスポットを紹介する。

ひとつ目は、『復興まちづくり情報交流館 中央館』。石巻での震災の被害状況や復興計画などを写真やジオラマを使って展示している。イギリス出身の館長・リチャード・ハルバーシュタットさんは、1993年から石巻に住み、2011年の震災当日も石巻で過ごした。その後英国大使館から帰国を勧められたものの、この街に住む人への想いからとどまることを決めたそう。そんなリチャードさん個人としての経験もぜひ尋ねてみてほしい。

ふたつ目は、石巻の地域新聞社である石巻日日新聞社が運営する『石巻ニューゼ』。「ニュース」と、フランス語で「博物館」を表す「ミュゼ」を合わせた「ニュース博物館」たるこの場所は、震災直後に新聞の印刷機が機能しないなか、同社が手書きでつくり貼り出した「壁新聞」を展示する施設である。

印刷機が使えないなかでも、「地域の人が不安を感じている非常時に、情報を届けないわけにいかない」という使命感からつくられた壁新聞。そのジャーナリズムの精神は後に高く評価され、国内外のさまざまな賞を受賞した。館長であり石巻日日新聞社の常務である平井美智子さんは、震災当日も取材にあたった記者のひとりだ。平井さんが語るその日のリアルに、ぜひ耳を傾けてほしい。

FERMENTO
住所:宮城県石巻市小積浜字谷川道44
ウェブサイト:https://antlercrafts.jp/

もものうらビレッジ

住所:宮城県石巻市桃浦字ウトキ
ウェブサイト:http://www.momonouravillage.com/

Ishinomaki Home Base

営業時間:11:00〜17:00(土曜、日曜は10:00〜)
定休日:火曜
住所:宮城県石巻市渡波栄田91
ウェブサイト:https://ishinomaki-hb.com/

四季彩食 いまむら

営業時間:18:00~24:00
定休日:日曜
住所:宮城県石巻市中央2-7-2
ウェブサイト:https://www.facebook.com/ishinomakiIMAMURA/

復興まちづくり情報交流館 中央館

開館時間:9:30〜18:00
休館日:火曜(休日にあたる場合その翌日)、12月29日〜1月3日
住所:宮城県石巻市中央2-8-11

石巻ニューゼ

開館時間:11:00〜16:00
休館日:月曜、木曜
住所:宮城県石巻市中央2-8-2
ウェブサイト:https://hibishinbun.com/newsee/
『Reborn-Art Festival』公式ガイドツアー
『Reborn-Art Festival』の常設アート作品鑑賞をはじめ、当記事で紹介したアクティビティーを実際に体験できる公式ツアー。新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、近く発売できるよう準備中です。詳細は『Reborn-Art Festival』の公式ウェブサイトをご確認ください。
Reborn-Art Festival 2021-2022
会期:2021年8月11日(水・祝)~9月26日(日)
   2022年4月23日(土)〜6月5日(日)
   ※会期中メンテナンス日(休祭日)を設けます
会場:(2021年)石巻市中心市街地、牡鹿半島
   (2022年)石巻地域 ※1月より開催中の、オンラインでのプレイベントとなる『Reborn-Art ONLINE』では、アーティストによる映像作品やパフォーマンスを配信中。詳細は『Reborn-Art Festival』の公式ウェブサイトをご確認ください。


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