新鋭「個性派俳優」 山本剛史インタビュー

私たちは、日々数え切れないほどの映像作品に接している。テレビをつけたり映画館におもむけば、そこには恋愛ものや冒険活劇、家族ものや学園ものなど、さまざまなジャンルの作品に触れることができる。ふと立ち止まって、それら溢れんばかりの映像作品を振り返ってみる。すると、なにが印象に残っているだろうか? 魅力的なストーリー、心を奪われる映像美、ドキッとするセリフ…もちろんそういった要素もあるだろうが、それはしばしば俳優たちの「顔」であったりする。あの女性の別れ際の意味深な表情や、あの男が死に際にカッコイイセリフを吐いたときの表情など…。われわれは、俳優たちが最もイキイキと、真剣に感情表現をする、その表情にこそ胸を打たれる。

山本剛史氏は、いま最もエキサイティングな演技をする「個性派俳優」と言えるが、その奇抜なセリフや身体表現もさることながら、じつに魅力的な表情で演技をしてくれる。これまでの活躍こそ「知る人ぞ知る存在」だったものの、そのウサンくさくて強烈な演技は一度見たら忘れられない。このたび、最新出演作『青空ポンチ』が公開されるのを記念し、山本氏にじっくりとお話を伺った。このインタビューをきっかけに、より多くの方々が「山本剛史ワールド」へと深く分け入り、その無類の「表情」を目撃する端緒になれば幸いである。

俳優としての原点「舟木テツヲ」役

―まずは、9月13日に渋谷ユーロスペースにて公開される、最新出演作『青空ポンチ』での役どころについてお伺いしたいと思います。山本さんが演じていらっしゃるのは、元エリートサラリーマンで、超絶技巧の持ち主というギタリスト「舟木テツヲ」です。過去にやはり「舟木」役で出演された作品がいくつかありますね。この一連の「舟木」シリーズは、山本さんの魅力が最大限に発揮された素晴らしい演技ですが、役作りはどのようにされているんでしょうか?

『青空ポンチ』より

山本:そうですね…これまでに「舟木」という役を演じたときは、プロットだけ渡されてセリフはアドリブ、というケースもありましたが、今回は全部シナリオに書いてある通りのことをやりました。監督の柴田剛さんとは初めてお仕事をしたんですが、大阪芸大出身で山下(敦弘監督)の同期だし、彼の作品に出演していた僕の演技を見ていたので、シナリオはほとんどあて書き(山本剛史さんがこの役を演じると想定して脚本を書くこと)です。なので、これまでと同じような、ウサンくさいキャラクターの「舟木」像が求められていたので、特に役作りという点では苦労しなかったですね。ただ今回は、設定がギターのスペシャリストだったのですが、完成作品では全くギターを弾いているようには見えないです(笑)。

―山本さんのデビュー作は2002年の『ばかのハコ船』(監督:山下敦弘)という作品ですね。この映画で演じられた「尾崎充」役が、「舟木」の原点で、今回の『青空ポンチ』もこの役の延長上にあると言えそうですね。

山本:はい。高校を卒業して、5年ほど経ったときですね。あの役は、現場で山下と二人で作り上げたという感じでした。『ばかのハコ船』のスタッフは仲間うちばかりでとても少なく、自主映画の中の自主映画という感じでしたね。あの時僕は、まだ東京でアクセサリーの卸しの営業をしていたので、休日しか現場に行くことができず、土日役者って呼ばれてたんです(笑)。朝8時くらいに、撮影終わってからすぐに会社行ったりしていましたから、かなりつらい時もありました。そういった関わり方ができたのも、自主映画ならではの良いところだと思いますね。

―そうした「尾崎充」や「舟木テツヲ」といった山本さんの役作りに、影響を与えた役者さんはいらっしゃるのでしょうか?

山本剛史インタビュー

山本:影響を与えた、というほど大げさなものはないですが…そうですね、好きな役者さんということで言えば、伊丹十三監督の『マルサの女』の山崎努さんです。あの、足が悪い男役が、もう本当に好きですね。それから、ビートたけしさんの3億円事件を扱ったテレビシリーズに『恐怖の24時間』という番組(『実録犯罪史 恐怖の24時間~連続殺人鬼 西口彰の最後』)があるんですが、犯人役を役所広司さんがやっていて、非常に良かったんです。海外ではジーン・ハックマンや、ロバート・デ・ニーロなんかといった4,50台のおっさんは、見ててカッコイイなというか、憧れを感じます。質問を受けて気づきましたが、男らしいシブさが感じられる演技に惹かれるのかもしれないですね。今回の映画で言えば、板倉くんの演技のような。渋くて、かつ哀愁が漂っており、存在感があるんです。

―それから今おっしゃった方々には、何か「異常な男たち」のシブみというか、いまおっしゃった山崎努さんも役所広司さんの役どころも、普通ではなく、どこか異常なところがありますよね。山本さん自身、『その男狂棒に突き』という作品では、AV男優でありかつ刑事という、異常かつ男らしい(笑)印象的な役を演じられていますね。山本さんの場合、ある種パロディ的に「男らしさ」を演じることで、笑いに持っていくところが秀逸だと思います。

山本:ありがとうございます。今後は、これまでとは全くちがった役どころにも挑戦してみたい、という思いもあるんですけどね。

高校時代の遊びが、映画を作る出発点

―山本さんが役者を志したきっかけはなんだったのでしょうか?

『青空ポンチ』より

山本:なんでしょうね…。もともと親父の影響で映画は見ていて。ロバート・デ・ニーロとかアル・パチーノが若いときの映画ばっかり見てました。で、高校時代に山下を含め自分たちで撮りだして、作るのが楽しくなってきたという感じですかね。高校卒業してから、すぐにアメリカに行きました。洋画をよく見ていたので、一度アメリカを見ておきたかったんですね。語学の専門学校に通っていたんですけど、すぐに帰ってきてしまいまして…その後、東京に出てきました。

―山本さんのデビュー作を監督された山下敦弘監督は、中学3年生の時からのお友達だということですが、どのような思いを持ってらっしゃるんですか?

山本:どうしても「監督」「役者」という関係にはなれず、友達という感じになってしまいます。印象に残っている出来事としては、中3の時に一緒にレンタルビデオ屋に行ったんですが、普通「この役者が」とか「このアイドルが」って言って探すじゃないですか。彼は「この監督が」って言っていたんですよ。「気になった監督の映画があったら教えて!」なんて言われて。当時、スピルバーグくらいしか監督を知らなくて。山下の家にはマーティン・スコセッシとか、デ・ニーロやクリストファー・ウォーケンなど、僕がまったく知らなかった映画スターたちの本があって、かなりの映画マニアだと思いましたね。

役者をやるからには、舞台を経験しないことには、と

―ところで、9月13日という同じ公開日に、元木隆史監督の『ロックンロール☆ダイエット!』という作品にも出演されていますね。こちらはどんな役どころなんですか?

山本:ザ・業界人! という感じの、うさんくさい男の役ですね(笑)。元木さんはちゃんと場を仕切ってくれる、気のいいあんちゃんという感じで、すごくやりやすいんです。

―では、最後に『青空ポンチ』をご覧になる方々に、メッセージをいただければと思います。

山本剛史インタビュー

山本:四国のきれいな風景がたくさん映っているのが見どころですね。それから、僕らが演奏するジッタリン・ジンさんの「夏祭り」はとてもいいので、ぜひ注目してください。小池里奈ちゃんや戸田比呂子さんも、とてもかわいらしく演じていますよ。

―山本さんご自身の今後のスケジュールはどういった感じなんですか?

山本:来年の1月に、初めて舞台に出させていただくんですよ。『しとやかな獣』という、川島雄三監督・新藤兼人さん脚本の昔の映画がありまして、映画『グミ・チョコレート・パイン』なんかでご一緒させていただいたケラリーノ・サンドロヴィッチさんが演出を担当されます。年末から稽古が始まるんですけど、それがすごく楽しみですね。ある部屋にいろいろな珍客が集まってくるというようなストーリーなんですが、その内の一人を演じることになると思います。

―初の演劇作品での演技も、きっと素晴らしいものになると思います。今後のご活躍を期待しております。

作品情報
『青空ポンチ』

2008年9月13日(土)~10月3日(金)渋谷・ユーロスペースにて公開
監督:柴田剛
原作・脚本:いこま
キャスト:
石田真人
板倉善之
小池里奈
山本剛志
戸田比呂子
内堀義之
蛭子能収
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:ジッタリン・ジン“恋のルアー”
挿入歌:ジッタリン・ジン“夏祭り”
配給・制作:月眠

プロフィール
山本剛史 (やまもと たけし)

1977年、愛知県生まれ。山下敦弘監督とは高校時代からの友人で、『ばかのハコ船』('02)『リアリズムの宿』('03)『その男狂棒に突き』('03)『不詳の人』('04)『リンダ リンダ リンダ』('05)など数々の作品に出演、山下作品には欠かせない存在となっている。その他の代表作に元木隆史監督作『ピーカン夫婦』('05)など。近作としてタナダユキ監督作『百万円と苦虫女』('08)、『ロックンロール・ダイエット』('08)。また、『グミ・チョコレート・パイン』('07)で組んだケラリーノ・サンドロヴィッチ演出、新藤兼人原作の新作舞台『しとやかな獣』(09年1月29日~2月8日 紀伊国屋ホール)が待機中。



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