SAWA インタビュー

クラブ・ミュージックにベースを置きつつも、抜群にポップなメロディーとスウィートな歌声で、ジャンルを超えた注目を浴びているSAWAが、初のフル・アルバム『Welcome to Sa-World』を完成させた。福富幸宏、半沢武志(FreeTEMPO)、☆Taku Takahashi(m-flo)、瀧澤賢太郎といった重要人物たちが惜しみなく楽曲を提供したことも大きなトピックとなっている本作だが、ひとたび彼女の世界観に気付いてしまったが最後、キラッキラのポップスから何度となく顔を見せるシュールなSAWAの妄想から抜け出せなること間違いナシ。筆者に「あさはかですね〜」と暴言を吐いた、ぶっ飛びまくりなインタビューをどうぞ。

(インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作)

SPEEDに入りたいと思ってました。いまはFolderに入りたいんですけど。

―音楽を始めた経緯からお聞きしたいんですけど、もともとバイオリンとピアノをやられてたそうですね。クラシック系ですか?

SAWA:そうですね。バイオリンはクラシックですけど、反抗期だったので…。

―反抗期!? 何歳くらいの話ですか?

SAWA:4歳くらいから。

SAWA インタビュー
SAWA

―4歳で反抗期って!

SAWA:バイオリンやってるのに、電車の中にバイオリンをわざと置いてきたりとか、練習にバイオリンを持っていかなかったりとか。

―それは悪いですねぇ(笑)。ピアノはいつくらいから?

SAWA:ピアノは見せしめのために始めたというか。

―見せしめ?

SAWA:お母さんがバイオリンをやれやれ言うから、「ピアノやるし」みたいな。

―「見せしめ」じゃなくて、「当てつけ」じゃないですか?

SAWA:あっ、それだ!(笑)

―バイオリンをやめてピアノを?

SAWA:並行してやっていました。バイオリンはやめちゃダメだと言われたので、ちきしょーと思って、ピアノをがんばってるフリをしてたんですけど、実際のところはそんなにがんばってなかったですよね。

―やりたいって言ったくせに(笑)。SPEEDをライバルだと思っていたという話を聞いたんですけど。

SAWA:あー、ありましたねー。SPEEDに入りたいと思ってました。いまはFolderに入りたいんですけど。

―いま入りたいんですか!?

SAWA:無理ですよねぇ〜(笑)。

―何でFolderに入りたいんですか?

SAWA:当時も好きだったんですけど、最近またFolderを聴いたら、素晴らしい! と思って。Folderフリークがガーンって上がっちゃったんですよね。だから最近はFolderのことばっかり考えてますね。

―はぁ…。バイオリンやピアノでクラシックなことをやりながら、J-POPも普通に聴いてたんですか?

SAWA:そうですね。モノマネしてレコーディングしたりとか。

―モノマネ!?

SAWA:岡本真夜さんのモノマネとか。それを交換日記みたいに友達に渡すんです。「聴いてきてね」みたいな。で、友達が次の日に「すごいよかったよ」みたいな。

―友達もモノマネして返してくるんですか?

SAWA:向こうもなんかやったと思うんですよ。なんだっけなぁ。…あ、すごい思い出した! 何かをやってました。

―それ、全然思い出せてないです(笑)。歌うきっかけはなんだったんですか?

SAWA:中学生くらいから、ダンスと歌の学校みたいなところに入ったんですよ。大学生くらいになると、ライブもちょっとやったりして。歌って踊るひとりユニットみたいな。

大学を卒業してから、高校の先生になってしまって。すっかり落ち着いてました(笑)。

―大学では超常現象研究会に入ってたという情報があるんですけど(笑)。

SAWA:あー、サークルですね。それに入ったらみんなDJだったんですよ。その人たちがやってるイベントが4つ打ち系だったっていうだけで。

―超常現象は好きだったんですか?

SAWA:全然好きじゃないです。部員も研究してる様子はなかったですし。部室に行けばゲームとかできたんですよ。でも、学内では禁止されているスケボーをやったがために、廃部になっちゃって。その後「講演部」っていう名前に変わったんです。

―なんでもよかったんですね(笑)。要は、たまたま入ったサークルにDJをやってる人が多くて、4つ打ちに目覚めたと。

SAWA:はい。そのときにFreeTEMPOとかJazztronikとかを聴いて、自分はこういう感じが好きだったんだと思いまして。でも、大学を卒業してから、高校の先生になってしまって。すっかり落ち着いてました(笑)。

SAWA インタビュー

―先生はどのくらいやったんですか?

SAWA:療養中の先生がいて、臨時の非常勤だったんです。1学期だけやって、夏休みになったらその先生が出てきたので、その後はバイトをして、とりあえず音楽でもやろうと思って。

―おっ、ようやく核心に迫ってきましたね。

SAWA:せっかくだから、教師と生徒みたいなステージを組み立てたんですよ。当時、ライブをサポートしてくれる若いダンサーの女の子が2人いたんですけど、私が「女教師と生徒」みたいな企画書を作って、「次はこれをやるから」って言ったら、「え〜っ! 普通でいきましょうよ、SAWAさん。なんでこんなイロモノみたいなことをするんですか!」と猛反対されて。そこを「いやいや、甘いよ君たち」と言い聞かせ、ソニーのオーディションに出たんです。

―あっ、ソニーのオーディションだったんですか(笑)。

SAWA:格好はボケてるんですけど、歌うのは普通のR&Bで。去り際に捨てゼリフを言うくらい。「遅刻するなよ」とか。なので女教師と生徒っていう関係性は垣間見える程度っていう。

―SAWAさんが女教師コスプレをしながら、ダンサーは生徒の格好を?

SAWA:はい。女の子なんですけど、男子生徒の格好をするんです。そこがまたミソなんですけど。

―曲の内容も先生と生徒?

SAWA:まぁ、学校っぽい感じといいますか。同級生の学内恋愛ストーリーでしたね。そんなに奇抜な内容でもなく、いたってシンプルな。「もうすぐ卒業だね!」みたいな曲でした。

―それをソニーのプレゼンでやったら受かっちゃったんですか?

SAWA:はい。それでデビューに向けて準備して。その頃また学校から、その先生がまたお休みに入るから、もう一回やってほしいって、電話がかかってきたんですよ。でも、すいませんって断って、いまに至るみたいな。

私、エスケープ傾向が強くて、「どこでもないどこかへ行こう」みたいなところがあるんです。

―デビューまでの話がだいぶ長くなっちゃいましたけど、ファースト・アルバムの『Welcome to Sa-World』は、どういう作品にしようと?

SAWA:なんとなく遊園地みたいな感じになったらいいなって。私、エスケープ傾向が強くて、「どこでもないどこかへ行こう」みたいなところがあるんですけど、それはどこかって考えたときに、Sa-Worldだと。そのSa-Worldはどんな感じなのかといったら、今回のアルバムみたいな感じかなぁと。

―Sa-Worldは、どんなワールドなんですか?

SAWA:遊園地と国の中間くらいですね。遊園地だと、お金を払えば何をしてもよいっていう自由な感じがあるじゃないですか。そうではなくて、遊園地のつもりで来たのに、オープニング・セレモニーに参加しなきゃいけなかったり。『アリス・イン・ワンダーランド』に入り込んじゃったアリス的な。こっちのペースにどんどん引き込まれてしまって、外の世界に出れないかもしれないっていう、そんなアルバムです。

―恋愛的な歌とか、胸がキュンキュンする歌とか、すごく想像力豊かなアルバムだと思うんですけど、全体として、信じれば叶うみたいな感じが出てる気がします。

SAWA:あー、そうですね。自分にはあまりそういう部分がないんですよ。だから出してるんじゃないかなって。もっと願ったりしたい! みたいな。

SAWA インタビュー

―“I'm a President”とか、そういう部分が特に出てるんじゃないですか?

SAWA:うん。願ってます。私、映画の『アルマゲドン』を見てないんですけど、見てないからこそある、自分の『アルマゲドン』っていうのがあるじゃないですか。この曲はそれを書いたつもりなんですね。

―だから歌詞に「さらば世界よ」とか、「もしも世界を変えられるなら」とか出てくるんですね。

SAWA:そうですね。Sa-Worldは(アルバム中盤の)“I'm a President”あたりから破綻を始めて、次の“Danger Zone 〜逃げろ!危うしSa-World!〜”で一回潰れちゃうんですよ。

―はぁ…。

SAWA:物事には終わりがありますからね。それで、みんな移動用の宇宙船に乗り込んだんですけど、自分はプレジデントなんで、「大丈夫です」って言って、うわぁ〜って地球とともに消滅するんですよ。その姿を宇宙船から見た人々が涙するっていう。

―その曲が“I'm a President”なんですか?

SAWA:そうですね。ここでは「Sa-World=地球」なんですけど、一回地球が滅亡して、また新しい地球が生まれるんです。

―はぁ…。あんまり理解できないんですけど(苦笑)。

SAWA:それで、次の“Swimming Dancing”で立ち向かう人が出てくるんですよ。アルバムも後半になると遊びたい気持ちとかも出てきて、だんだん明るい曲が多くなってくるんです。人々の願いとか、ライブの力とかで、新しいSa-Worldが修復されていって、(14曲目の)“I Can Fly”あたりで完全に再生するんですけど。

―はぁ…。アルバムの流れをまとめると、最初にSa-Worldに迷い込んじゃって、楽しい時間を過ごしてたんだけど、“I'm a President”でSa-Worldが破綻を始めて、“Danger Zone”で完全に破綻して、だんだん再生してきて、楽しい世界が戻ってくるみたいな?

SAWA:そうですね。今度はもうちょっと安全なSa-Worldができたよって。だから、後半の“I Can Fly”とか、“あいにいくよ”とか、あたたかみのある曲は、「いやぁ〜、ヤバかったねぇ!」みたいな。破綻して、すごい辛かったけれども、よかったよかったっていう、めでたしゾーンなんですよねぇ。

いいと思います。騙されたほうが幸せになれると思うので。

―これまでも英語のハウス曲とかは流行りましたけど、ちょっと敷居が高い部分もあったじゃないですか。でも、SAWAさんの曲は日本語で、もっとJ-POPっぽいですよね。そういうところは意識してます?

SAWA:それはありますね。やっぱり自分の好きなものが少なかったんですよ。JazztronikとかFreeTEMPOみたいな音楽性で、歌詞が前にきてる音楽が。それをやりたいと思いまして。

―SAWAさんの曲はカラオケで普通に歌えそうですよね。

SAWA:あー。それは目指してますね。

―僕は“あいにいくよ”をカラオケで歌ってる女の子がいたら、ちょっと好きになるかもしれないです。

SAWA:あ〜。あさはかですね〜。

―えぇー!

SAWA:いいと思います。騙されたほうが幸せになれると思うので。

―“Dream about...”も胸がキュンキュンしちゃう感じなんですけど。

SAWA:ほぉ〜。それはそんなにあさはかじゃないです。

―その違いはなんなんですか?

SAWA:“あいにいくよ”は女の子のキュンキュンを丸出しにしてるから。それを真に受けるところは、ちょっとまぁ…、ピースフルで(笑)。そういう方がいるから世界は…っていうところです。

―まんまとSAWAさんのもくろみにハマったんですね。

SAWA:そうですね。ちょっと思うつぼな感じもしつつ(笑)。

―他にもそういう曲はあります?

SAWA:“MerryGoRound”は学生胸キュンなテイストなので、そこで昔を思い出しちゃったら思うつぼです。「あの頃!」みたいになったら、してやったりっていう。

―そういう確信犯的な要素は、ところどころに詰め込まれてるんですか?

SAWA:ありますね。やっぱり、「ただ会いたい」とか、「ただ切ない」っていうよりは、「切ないと思わせるような何か」みたいな部分が多いですね。

―思うつぼになったほうが楽しんで聴けるアルバムなんですね。

SAWA:そうですね。Sa-World用語では、そういう状態を「Sa-Wonderlandしてる」って言うんです。アリス・イン・ワンダーランドしちゃったみたいな。Sa-Worldに入って、イエーイ!みたいになっちゃったら、こっち側の住人になったということなので、気を付けてください。

リリース情報
SAWA
『Welcome to Sa-World』(初回限定盤)

2010年7月7日発売
価格:3,465円(税込)
EPIC Records ESCL-3475

1. Opening Ceremony 〜Sa-Worldへようこそ〜
2. MerryGoRound
3. Stars
4. NightBus
5. Chocolate Zone 〜野生のSAWA〜
6. Throw him away!
7. ManyColors
8. I'm a President
9. Danger Zone 〜逃げろ!危うしSa-World! 〜
10. Swimming Dancing
11. Friday Night
12. Planet-T
13. Eat It All 〜Live in Sa-World〜
14. I Can Fly
15. あいにいくよ
16. Dream about...
17. Thank you for visiting 〜My name is... 〜
[DVD収録内容]
“I Can Fly”、“Swimming Dancing”、“あいにいくよ”のミュージックビデオ
アルバム制作ドキュメンタリー映像「Sa-Worldの作り方(表ver.)」、「Sa-Worldの作り方(裏ver.)」

SAWA
『Welcome to Sa-World』(通常盤)

2010年7月7日発売
価格:3,059円(税込)
EPIC Records ESCL-3477

1. Opening Ceremony 〜Sa-Worldへようこそ〜
2. MerryGoRound
3. Stars
4. NightBus
5. Chocolate Zone 〜野生のSAWA〜
6. Throw him away!
7. ManyColors
8. I'm a President
9. Danger Zone 〜逃げろ!危うしSa-World!〜
10. Swimming Dancing
11. Friday Night
12. Planet-T
13. Eat It All 〜Live in Sa-World〜
14. I Can Fly
15. あいにいくよ
16. Dream about...
17. Thank you for visiting 〜My name is...〜

プロフィール
SAWA

08年6月、半沢武志(FreeTEMPO)プロデューサーに迎えたミニアルバム『COLORS』でデビュー。10年7月7日リリースの1stフルアルバム『Welcome to Sa-World』では、作詞・作曲、プログラミング、バイオリン演奏からスキットのプロデュースまでも自ら手がける多才ぶりを発揮。ミラーボールをアイコンにシュールなファンタジーを表現するアートワークでも、独自のSAWAワールド=「サワールド」な世界観を追求している。



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