ファンタジックなストーリー Pip & Popインタビュー

子供の頃、グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』に登場するお菓子の家やシルバニアファミリーの世界に憧れた人は多いだろう。絵本に描かれた甘くて可愛いお菓子の家をずっと眺め、シルバニアファミリーの人形を動かしながら自分の姿を重ね、「いつか、こんな家、世界に住みたいな」と夢見た人も多いことだろう。そんなファンタジックな世界を作品として発表しているアーティストがいる。2007年に結成されたアートユニットPip & Pop(ピップ&ポップ)の二人だ。彼女たちのインスタレーションをじっと眺めていると、軽快な音楽が流れ、その音楽に合わせて作品の一部である多種多様な動物のオブジェやカラーボール、折り紙たちが一斉に動き出しそうな錯覚すら感じる。8月21日に開幕したばかりのあいちトリエンナーレ2010が、大規模な国際展のデビューとなるPip & Pop。「カワイイ」作品の奥底には、彼女たちが感じた日本の歴史や伝統が投影されている。今後ますます活躍が注目されるお二人に話を伺った。

(インタビュー・テキスト:小山ひとみ)

色とりどりの顔料や砂糖、折り紙などが材料

─開幕したばかりのあいちトリエンナーレ2010に出展された新作『Happy Sky Dream』のお話から伺いたいのですが、これまでの作品同様、新作もとてもカラフルでポップな世界ですね。思わず「うわ〜」と声をあげたくなります。よく見てみると、日本人の私たちにも馴染みのあるものが作品に使われているようですが、使用された素材を教えて下さい。

Pip & Pop:色とりどりの顔料や砂糖、また、ミニチュアの人形や折り紙といった身近にある小さなオブジェなどを多数取り入れています。

ファンタジックなストーリー Pip & Popインタビュー
Happy Sky Dream (detail), 2010
Pip & Pop (Tanya Schultz and Nicole Andrijevic)

─お菓子のおまけについてくるようなミニチュアの人形たちには、本当に心が踊らされます。今回、トリエンナーレという大舞台への参加は、お二人にとってきっと大きな意味があったのではないでしょうか?

Pip & Pop:ええ、私たち二人にとって、初の大規模な国際展ですからね。それに、日本国内からだけでなく、世界各地から多数の来場者がみえるので、より多くの方たちに私たちの存在と作品を知ってもらえるすばらしい場だと思っています。本当に嬉しいです。

あらゆる創造の神「イザナミ」を新作に反映

─新作『Happy Sky Dream』を制作するにあたり、まず日本の伝統や歴史を理解することからスタートしたそうですね。

Pip & Pop:そうなんです。私たちは毎回、作品を制作する際、発表する地域ごとにコンセプトを立ててきました。このことは、Pip & Popの作品の特徴ともいえます。今回は、日本の神話に注目したんです。色々調べていくうちに、創造の神「イザナミ」に大変興味を持ちました。そして、早速、新作のコンセプトに反映させたんです。あらゆる創造の神である「イザナミ」の存在を知ることができ、これも大変意味のあることだと感じています。

─日本の神話、そして「イザナミ」ですか。「イザナミ」が反映されていたとは意外でした。ところでお二人は、鑑賞者に作品をどのように感じて欲しいと思っていますか?

Pip & Pop:私たちの作品を見て「カワイイ」と言ってくれる人が圧倒的に多いのですが、観た人それぞれ、感じ方は様々だと思っています。私たちの作品にはストーリーがあるので、鑑賞者が個々に感じ取り、さらにそのストーリーを展開してくれたら嬉しいです。

ファンタジックなストーリー Pip & Popインタビュー
Happy Sky Dream (detail), 2010
Pip & Pop (Tanya Schultz and Nicole Andrijevic)

─Pip & Popの世界からは、本当に様々なストーリーが生まれそうですよね。目の前の世界は、確かに美しいのだけれど、すぐに消えてなくなりそうな儚さを秘めていたり、また、あまりにシュールすぎる世界なので恐怖を感じてしまったり……。そして何より、ひとつひとつを手作業で完成させていくという骨の折れる制作作業です。今回、制作にはどれくらい時間がかかりましたか?

Pip & Pop:まず、素材である折り紙やミニチュアのオブジェなどは、名古屋に来る一ヶ月前からオーストラリアで少しずつ制作していました。そして、このオブジェたちと一緒に来日したんです。名古屋では、二週間くらいかけて作品を完成させました。ですから、制作期間は、トータルで約一ヶ月から二ヶ月でしょうか。

─本当に気の遠くなるような作業だと思うのですが、静寂の中、黙々と手を動かしていたんですか?

Pip & Pop:実は最近アイヌに興味があるので、今回はアイヌ音楽を聞きながら作業していました。

キャッチボールを経てより発展していける、それがユニットの魅力

─続いて作品から離れ、お二人自身のことを聞かせて下さい。お二人とも大の日本好きと伺っていますが、具体的に影響を受けた物や人などはありますか?

Pip & Pop:草間彌生さんですね。とてもすばらしいアーティストだと思います。今回、草間さんもトリエンナーレに参加されていますので、同じ舞台に立つことができて嬉しいの一言です。

─なぜ、ユニットとして活動しようと思われたのでしょうか? また、お二人の出会いも聞かせて下さい。

Pip & Pop:私たちはもともと、個々にアーティストとして活動していたんです。2007年にパースで開催された展覧会に個々で参加し、そこで初めて知り合いました。出展した私たち二人のドローイングには、どちらが描いたのか見間違えるほどの共通点があって、感じるものが一緒なんだって思ったんですよね。それでユニットを組むことに決めたんです。個々での活動ももちろん大切ですが、ユニットとして活動していると、制作過程において二人でキャッチボールすることでより発展していけるんです。とても魅力的なことだと思っています。

─まさに運命の出会いですね。それでは、アーティストの道を選んだのは何故ですか?

Pip & Pop:私たちは二人とも、幼いころから物作りが好きだったんです。それで自然と美大に入学し、卒業後もごく自然にアーティストへの道を選びました。

─そして、やはり気になるのが、ユニット名Pip & Popです。とても元気があって、ニコルさんとタニヤさん、そして作品にぴったりなユニット名だと思うのですが、由来を教えて下さい。

Pip & Pop:ユニット名は、本当に悩みましたね。どんな名前がいいか考えていた時、以前見たPip & Popという名前がついた紫色のカワウソのぬいぐるみショーを思い出したんです。そのショーの中で、ぬいぐるみたちは互いに「愛しているよ」「僕もだよ」と言い合っていたんです。私たち二人も、相手の作品や感覚が好きなので、Pip & Popと同じだねって。それでPip & Popというユニット名に決めました。

─先ほどアイヌに興味があるとおっしゃっていましたが、その他に今、特に関心をもっていることはありますか?

Pip & Pop:今回日本に滞在して、制作以外の多くの時間を書店巡りにあて、日本の古美術や浮世絵の画集などたくさんの書籍に触れました。どれもすばらしくて感銘を受けました。日本の美術をもっと深く知りたいと思うようになりました。

─それでは最後に、今後の予定を教えて下さい。

Pip & Pop:来年は、イギリスやドイツで展覧会を開催するなど、ヨーロッパでの活動の場も増えそうです。ぜひ日本の皆さんにもご覧いただきたいです。

イベント情報
『あいちトリエンナーレ2010 / Aichi Triennale 2010』<

Pip & Pop作品展示
2010年8月21日(土)〜10月31日(日)
展示場所:中央広小路ビル

プロフィール
Pip & Pop (ピップ&ポップ)

ニコル・アンドリヤヴィチとタニヤ・シュルツによる女性のアートユニット。西オーストラリア州パースをベースに活動。作品は、インスタレーション、ドローイング、写真、ウォールアートと多岐にわたる。



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