服を作るパンクな音楽家 PLASTICZOOMSインタビュー

パンクの攻撃性とゴシックの耽美なムードを備えたエッジーな音楽性はもちろん、そのサウンドと符合するような洗練されたビジュアルでも注目を集めるバンド、PLASTICZOOMS。彼らの前作『STARBOW』からおよそ2年半ぶりとなるアルバム『CRITICAL FACTOR』が届いた。作詞作曲を手がけるフロントマンSHO ASAKAWAの美的感覚をダイレクトに反映しつつ、新作はこれまでよりもバンドアンサンブルの有機的なグルーヴにフォーカスした内容で、メンバー個々の手によるフレージングも際立って聴こえてくる。彼らが一枚岩のバンドとして実力を磨いてきたことがうかがえる会心のサードアルバムだ。

さて、その新作についての話はもちろん気になるところだが、今回のインタビューはそことはまた違ったアングルからもこのバンドに迫ってみることにした。というのも、繰り返しになってしまうが、彼らにとってはサウンド面だけでなく、SHOの手がけるビジュアル面がとても重要なのだ。実際、彼は自ら運営するブランド「VENUS ECCENTRIC」でハンドメイドのアクセサリーなどを展開しているほか、気鋭のデザイナーが牽引するブランド「Shinya yamaguchi」とのコラボレーションを実現させるなど、SHOの才能はファッションの方面でも輝きを放っている。果たして彼のセンスとバイタリティーはどんなところから生まれたのか。彼が多感な時期を迎えていた10代の頃から、ゆっくりと紐解いていきたい。

ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンが仕掛けたパンクは、音楽とビジュアルのインパクトが対等だった。

―今日はSHOさんというアーティスト個人に迫りたいと思っています。そもそもSHOさんが最初に感化されたものは何だったのでしょう?

SHO:僕のスタイルの基盤ができたのは、中学1年の頃です。パンクロックに初めて触れたのがその頃なので。

SHO ASAKAWA(PLASTICZOOMS)
SHO ASAKAWA(PLASTICZOOMS)

―それは初期パンクのことですか? それともリアルタイムで出会ったもの?

SHO:70年代パンクですね。ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンが仕掛けた世界観に触れてから(二人はパンクをコンセプトにしたファッションを発表し、Sex Pistolsをプロデュースした)、もうそれがすべてになったというか。僕が作る世界観のお手本。あの頃のパンクは、音楽とビジュアルのインパクトが対等だったと思うんです。

―SHOさんにとってパンクは、音楽と同じくらいにビジュアル面が重要だったんですね。

SHO:もはやそれ以外には興味がないくらいに重要ですね。例えば、僕は音楽しか感じられないアーティストには全然惹かれないんです。ファッションだけのアーティストも同じ。


―なるほど。では、何をきっかけにして70年代パンクと出会ったんですか。

SHO:きっかけはデニス・モリスが撮ったSex Pistolsの写真です。『BOON』という雑誌にこのくらいのサイズ(直径2〜3センチの四角を指先で作って)で載っていて。

―ファッション誌ですね。僕もよく読んでました。

SHO:小学生の頃はヒップホップが大好きで、『BOON』にはそのあたりのストリートカルチャーがよく載ってたんですけど、あるときガーゼシャツを着てドクロマイクで叫んでいるボーカルのジョニー・ロットンの写真が白黒で載っていて。100字もないくらいの小さな記事だったんですけど、Sex Pistolsと書いてあって、「何だこれは?」と思ったんですよね。そこからブート盤を借りて、中に入ってたインナースリーブのコピーを見て、「かっこいい! これだ!」と思って。それまでのダボダボの服は全部捨てて、すぐに髪の毛を短く切って、次の休みにボンテージパンツを買いに行ってました(笑)。

―1枚の小さな写真に触発されて、すぐに服装も変えたんですね。

SHO:今となってはヒップホップも大好きなんですけど、そのときはもう、「今までやってきたことはぜんぶダサかったんだ」と思いましたから(笑)。The Beatlesもダサいと思っちゃうくらいでした。それくらい自分の感覚的にフィットしたというか、そのときに欲しかった刺激がすべて、そこにあったんだと思います。

僕は昔からずっとそうなんですよ。いいものはいいし、ダサいものはダサいっていう。

―でも、特に初期のヒップホップって、パンクと同じくスタイルがすごく重要でしたよね。

SHO:それこそBeastie Boysなんかはもともとパンクですしね。でも、さすがに当時はそんなこと知らずに聴いてました。そもそもヒップホップが好きになったのはバスケットボールをやっていたからなんですよね。NBAやマイケル・ジョーダンに興味を持って、シカゴ・ブルズの大ファンだったんですけど、会場やビデオでかかっている音楽がヒップホップだったっていう。そこからオムニバスを買いながらルーツを探っていきました。

―SHOさんは小さい頃から、いわゆる研究家体質だったんですね。

SHO:オタクです(笑)。先輩よりもいい靴が履きたくて、ナイキのエアマックスを並んで買ったり(笑)。

―ああ、その世代なんですね。学校にいい靴を履いてくると、誰かに盗まれるっていう(笑)。たしかにあの頃って、今振り返ってみても、それがオシャレだったかどうかは別として、みんなが着飾ることに夢中だった感じはありましたね。

SHO:エアマックスの値段がどんどん上がる感じとかすごかったですよね。でも僕は昔からずっとそうなんですよ。いいものはいいし、ダサいものはダサいっていう。僕、バスケの県大会にアイラインを引いてスタメンで出てたんですよ。

SHO ASAKAWA(PLASTICZOOMS)

―ええ! 改めて確認しますけど、それ、中学生の頃の話ですよね?

SHO:はい(笑)。小学生の頃は全身ナイキでかっこつけてたんですけど、中学生になると、バスケやりながらすっかりパンクに目覚めちゃってたので、どうしようって感じでした(笑)。オシャレしたくてたまらなかったんです。

―その時期からファッションに夢中だったんですね。ちなみに制服はどうしてましたか。

SHO:ピタピタのモッズスーツみたいに着てました。ド田舎だったので、周りはダボダボのボンタンが多かったですけど。

―そうすると、学校内でもどんどんマイノリティーになっていきませんでしたか? もしかするとものすごく孤独だったんじゃないかなと思って。

SHO:完全に孤独でしたよ(笑)。ずっと変人扱いされてました。それがきっかけで、高校1年から一人暮らしを始めたんです。もう、いられなくなっちゃって。

―それは家族からもファッションが受け入れられなかったってこと?

SHO:いや、家族はむしろ大賛成でした。母親が着物の先生で、ファッションに理解があったので、僕がパンクの話をしたら「今度はああいうのが好きになったの?」と言いながら、シド・ヴィシャスのことを話してくれました(笑)。僕が「この服欲しい!」と言うと、「どこに売ってるんだろうねえ」と言いながら、SEDITIONARIES(マルコムとヴィヴィアンがデザインしたブランド)の服を参考にして、手作りしてくれたり。メイクにも理解がありました。

―家族の中で居場所がなくなったわけじゃないんですね。

SHO:近所です(笑)。ヤンキーばっかりだったので、中学1、2年の頃はよくバイクに追っかけられたり、ボコボコにされてましたね。30人くらいに囲まれたこともありましたね……。

中学校のときに初めてアイラインを引いたときからずっと、メイクしている男性がなぜか好きです。

―つらい時期ですね。では、服を着るだけじゃなく、作ることにも興味を持つようになったのはいつからなんですか?

SHO:高校はバスケの特待で行ったんですけど、中学生の頃にはすでに東京モード学園に行くと決めていたんです。自分がやりたいことは、パンクに出会った頃も、モード学園でファッションデザインを学んでた頃も、今もずっと同じです。服を作って何かを表現すること。音楽とつながったファッションを形にすること。それさえできればいいと思ってました。だから、僕の場合は楽器よりも先に服があったんですよね。

―服装のスタイルは、当時からそこまで変わってない?

SHO:興味を持つ時代は少しずつ変わっていきました。70年代パンクに出会った頃は、チェックが好きだったし髪の毛もチクチクさせてた。高校で一人暮らしを始めた頃になると、BuzzcocksやStiff Little Fingers、The Boysみたいに、シャツにネクタイを締めて、足元はコンバースでサングラスでした。モード学園に通い出した頃は、80年代のパンク、ハードコアにハマって、DIYで鋲を打ってましたね。それで80年代の流れでニューウェイヴやゴシックに触れて、そのあたりから今につながる自分のオリジナルスタイルとして、黒を基調としたパンクファッションを意識するようになったんです。でも精神的なところは変わっていないと思いますよ。

SHO ASAKAWA(PLASTICZOOMS)

―と言うと?

SHO:全部つながっていると思ったんですよね。例えば海外の70年代パンク、日本のスターリンなんかはみんな男性がメイクしていましたよね。僕も20歳を過ぎてゴシックをかじった頃には、何の違和感もなくメイクしようと思ってましたし、中学校のときに初めてアイラインを引いたときからずっと、メイクしている男性がなぜか好きです。

―メイクしている男性のどんなところに惹かれるんですか。

SHO:わからない(笑)。女性のような男性が好きでゲイのファッションや美的感覚に惹かれるんです。たぶん恋愛はストレートなんですけどね。中学校の頃からずっと『i-D Magazine』(イギリスのカルチャー雑誌)を読んでたし。クラブミュージックに興味を持ったのも『i-D Magazine』の影響です。

―早熟すぎる(笑)。そのようにさまざまな時代の音楽とファッションを通過してきた中で一貫しているものは、メイクのほかにも何かありますか。

SHO:コンプレックスかな。ファッションも音楽も、僕が作るものはすべてコンプレックスからきているんです。僕は服やメイクって、着飾るより先に隠すものとして存在しているような気がしていて。それにやっぱり日本人なので、サンローランの服を9頭身のモデルのように着こなすことはできない。でも、日本人だからこそ似合うスタイルも絶対にあるんです。例えばYohji YamamotoやCOMME des GARÇONSなんかは、手足が短く小さい体型をカバーできるビッグシルエットの服が多いですよね。僕が作るものも、そういう部分を意識してます。

―つまり、日本人であるというアイデンティティーが、SHOさんの創作活動には欠かせないものだということ?

SHO:まさにそうです。僕は英語で歌っているので、海外コンプレックスだと言われることもあるんですよ。でもそれは逆で、僕は日本人であることに誇りを持っているし、日本人だからやれることをフラットに見せたいんです。

最近は「大切な人が死んじゃったらいやだな」と普通に思うようになったんですよね。

―前回のインタビューでSHOさんの作品には死生観が強く反映されているという話がありましたよね。それは音楽だけじゃなく、ファッションの面にも反映されているのでしょうか。

SHO:そうですね。でも、最近ちょっと変わってきたというか、以前より自分がポジティブ思考になってきている気がしていて。しかもそれは周りが変えてくれたんです。ちょっとだけ人に頼れるようになってきたというか。「人は絶対に死ぬから、死ぬものを優先しない」っていうのが僕の考え方だったんですけどね。

―今までは人に委ねられなかったんですね。

SHO:絶対に無理でした。何一つ任せなかったし、誰も信じてなかった。「なんなら一人で死んでやる」くらいの気持ちだったし、そうでもしないと究極のものなんて作れないと思っていたから。誰が死のうが悲しくないと思ってたんですけど、最近は「大切な人が死んじゃったらいやだな」と普通に思うようになったんですよね。それこそ『STARBOW』を作った後からなんじゃないかな。それはとても大きな変化ですね。

―つまり、『STARBOW』と新作はまったく別の感覚で作られた作品ということですか。

SHO:もはや別の人間が作ったものですよ。前作の歌詞なんて、今読むと「これ、悲しすぎるだろ」って(笑)。逃げ場がなかったんですよね。

―人との関わり合いがSHOさんを変えていったんですね。特にどなたとの出会いが大きかったんでしょうか。

SHO:今僕の周りに居る人たちです。メンバーやスタッフ。今までの僕は「どうせ誰も僕のことを理解してくれない。そういうもんだ」と思って人と付き合ってたんです。でも、ある人から「もうちょっと楽に生きなよ」という言葉をかけられて。その意味をすごく考えちゃったんですけど、恐らく「もっと頼っていいんだよ」ということなんですよね。初めてレーベルから声をかけてもらえたときなんて、ちょっと信じられなかったですもん。「誰が聴くんだ」って(笑)。もちろん自分では最高だと思ってるんですよ? でもそう思うのは自分だけだろうなって。

―作品を重ねていくと、自分の作品へのリアクションも返ってきますよね。それについては今どう捉えていますか。

SHO:単純にすごく嬉しい。ものすごく感謝していますね。今までは「信じられない」っていう気持ちがいつも先にきていたので。ライブなんていつも最悪な気持ちでしたよ。

―(笑)。ライブは好きじゃなかったんですか。

SHO:大っ嫌いでした(笑)。何も楽しくなかった。そもそも人前で歌うために作ったわけでもなかったし。でも、今回のアルバムでは初めて人前で演奏することを想定しながら曲を作りました。それに今までは作った曲に対してメンバーを構成していくやり方だったんですけど、今回は、このメンバーで演奏する姿を思いながらフレーズや音色を作ったんです。

僕はみんながなりたい様になってほしいと思ってるし、自分がやっていることを愛してあげてほしい。

―同じく他者との関わり合いという意味で、PLASTICZOOMSはファッションブランドとのコラボレーションなどもされていますよね。

SHO:はい。今回は「Shinya yamaguchi」と一緒に靴を作りました。彼の服にはニューウェイブはもちろん、それこそオールディーズなどの音楽が感じられて、だからこそ実現したコラボだと思ってます。それは前回コラボしたファッションブランド「Discovered」にも言えることですね。彼らも音楽をすごく大切にしていて。

―靴のデザインにも、先ほどお話されていたようなコンプレックスはやはり反映されているんですか。

SHO:もちろん。ヒールブーツを作ったんですけど、人って膝下がきれいに長く見えると、急に服が似合うようになるんですよね。それを男性にも知ってほしいし、そこで僕がSex Pistolsを見たときに受け取ったユニセックスな感覚や音楽的な衝撃を感じてほしいと思ってるんです。僕の尊敬している人の言葉で「コンプレックスを強みに変えられる人間が一番美しい」というものがあるんですけど、僕はずっとそうなりたいと思っているし、それを実行できている人間がすごく好きなんです。

―今のSHOさんは、それを具現化できる状況を着実に築きつつあるようですね。

SHO:がんばります(笑)。僕が作ってる「VENUS ECCENTRIC」のアクセサリーも全部ハンドメイドなんですよ。オーダーをもらってから材料を取り寄せて作るから、レコーディング中とかにオーダーが入ると本当に大変で。でも、僕自身がそうなんですけど、欲しいと思った服をオーダーするときって、本当にドキドキするんですよね。

「VENUS ECCENTRIC」のハンドメイドのアクセサリー
「VENUS ECCENTRIC」のハンドメイドのアクセサリー

―しかも、オーダーした人はSHOさんの作ったものにそのドキドキを感じてるということですもんね。

SHO:愛をこめて作るしかないですよ。僕はみんながなりたいようになってほしいと思ってるし、自分がやっていることを愛してあげてほしい。実際に僕が服を選ぶときはそう。なりたいようになるためにその服を買うし、着たいから着るんですよね。音楽も聴きたいから聴く。一緒にいたいからいる。そうやってまっすぐに行動したいし、みんなにもそうあってほしくて。愛すということは責任を持つということ。

―理性的になりすぎる必要はないと。

SHO:僕はそういう人が美しいと思う。我慢はよくないですよ。僕は絶対に我慢しない。寝たけりゃ寝るし、食べたけりゃ食べる。あ、炭水化物とかはなるべく控えるけど(笑)。とにかく、ダサいことはしたくないんです。かっこいいことをしたら、絶対にかっこいい人がついてきてくれる。僕はそう思っています。

イベント情報
『PLASTICZOOMS × Lillies and Remains presents BODY -PLASTICZOOMS「CRITICAL FACTOR」Release Tour-』

2013年12月8日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 enn 2nd

2013年12月15日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 APOLLO THEATER

2013年12月16日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪府 大阪 CONPASS

2013年12月19日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 clubasia

料金:各公演 前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

PLASTICZOOMS PRESENTS『DIE KUSSE #4』

2014年1月26日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 代官山 UNIT
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

リリース情報
PLASTICZOOMS
『CRITICAL FACTOR』(CD)

2013年10月2日発売
価格:2,500円(税込)
felicity / cap-183 / PECF-1080

1. MONOCHROME
2. RAVEN
3. MANIAC
4. P A R A D E
5. SAKURA
6. RUBBERS
7. A V△W
8. CRACK
9. LIVE IN THE MIDDLE OF SADNESS
10. BYE.BYE. (feat. MASUHISA NAKAMURA PIANO VERSION)

プロフィール
PLASTICZOOMS(ぷらすてぃっくずーむす)

音楽業界のみならずファッション界からも人気を集め、海外にもコアなファンを持つPLASTICZOOMS。前作2cdアルバム『STARBOW』発売以降、自身のブランドからフレグランス、ネックレス等のファッションアイテム、そして音楽=ファッションの価値観でリリースされた3枚のライブ会場限定CDシングル、7inchシングルを経て、新体制による3rdアルバム『CRITICAL FACTOR』をリリース。



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