amazarashi、生肉を食べ続ける衝撃的映像で表現した命の意味

amazarashiが自身初となるシングル『季節は次々死んでいく』を発表した。この曲はアニメ『東京喰種√A』のエンディグテーマとして既に話題を呼んでいるが、アニメの世界観ともリンクしたインパクト大のミュージックビデオもまた、実に大きな反響を巻き起こしている。そこで今回は、amazarashiの秋田ひろむ、そして、“穴を掘っている”に引き続き、ビデオのクリエイティブディレクターを務めたSIXの本山敬一、二人の言葉を基にして、楽曲やビデオに込められた想いを解き明かすと同時に、現代におけるアニメや漫画、そして音楽の在り方を探った。

女の子が血まみれで生肉を食べ続ける、衝撃のミュージックビデオ

アニメ『東京喰種√A』のエンディングテーマに起用されているamazarashiの新曲“季節は次々死んでいく”のミュージックビデオは、またしても衝撃的な仕上がりだ。その内容は、「レーザーカッターによって歌詞の形に切り取られた生肉を、1人の女性がひたすら食べ続ける」というもの。白を基調とした無機質な背景と生肉の鮮やかな赤、レーザーカッターによる近未来的なイメージと「食べる」という原始的な行為との対比が鮮やかで、終盤に向けて血まみれになりながら貪るように肉に食らいつく姿が、強烈なインパクトを残す。


秋田:『東京喰種√A』からエンディングのお話をいただいて、幾つか世界観が合いそうな曲を石田さん(石田スイ。『東京喰種』の作者)に聴いてもらって、選んでいただきました。この曲は前からあって、早くみなさんに聴いてもらいたいという気持ちはありつつ、『夕日信仰ヒガシズム』(2014年10月にリリースしたアルバム)に収録するにはちょっと毛色が違うかなと思って、どういう形で発表するかを悩んでいたんです。

『東京喰種』とは、『週刊ヤングジャンプ』に連載中の大人気漫画。人間を食べることでしか生きられない「喰種(グール)」と、人間との対立を軸に、元は人間でありながら、喰種の臓器を移植されたことにより、半喰種となってしまった主人公の葛藤を描いていく。昨年7月からアニメシリーズがスタートし、『東京喰種√A』は今年1月からスタートした第二期。“穴を掘っている”に続き、今回再びamazarashiのミュージックビデオを手掛けたSIXの本山敬一は、作者の石田スイがもともとamazarashiのファンであったこと、秋田がアニメの世界観に合わせて曲を提供したことを踏まえて、楽曲とアニメの世界観の融合を試みたのだという。

本山:“季節は次々死んでいく”は、「時間は私たちの人生におかまいなくどんどん過ぎて行ってしまい、人は輪廻の輪に帰って行く。だから今が最低だろうと、自分というものが曖昧でも、嘆いていないで、ただ前に進め」という歌だと解釈しました。なので、歌詞にもある<輪廻の輪に還る命>がミュージックビデオの軸となるストーリーになっています。時間が過ぎた果てに、登場人物の女の子は消えて(=輪廻の輪に帰って)、蓮の花だけが残る。蓮は、仏教的に「死後」「よき行いをした人が生まれ変わるもの」とされています。舌の上、掌の上で、繰り返し「命」という漢字を強調しているのは、この考えからきたものです。

『季節は次々死んでいく』PVより
『季節は次々死んでいく』PVより

「イノチはイノチを食べて生きています」。人間にとって食事という行為の意味

ミュージックビデオの冒頭には、「イノチはイノチを食べて生きています イノチを食べた私はいつかイノチに食べられる 私が美味しいといいのだけれど」という谷川俊太郎の詩(『恐竜人間』PARCO出版)を引用。「輪廻の輪に還る命」という曲のテーマと、「食べる」という喰種のモチーフとの融合が、端的に美しく表現されている。

本山:「食べ続ける」というモチーフは、喰種という存在だけではなく、「過ぎて行く時間」も意味しています。呼吸は、一生でその回数が決まっていますが、食事も同じです。狂ったように食事をすることで、時間の急速な経過と、人が生き急ぐさまを表現しました。ちなみに、企画段階では、『2001年宇宙の旅』(1968年に公開された、アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックが脚本を手掛けたSF映画)の最後のように、どんどん老化していくというアイデアもありました。

「肉を食べる」というシンプルな内容にアクセントをつけているのは、間違いなくレーザーカッターの存在。“穴を掘っている”のときは「インターネットの可視化」という理念の下、プリンターからTwitter上の「死にたい」という言葉が次々とプリントされていくというアイデアが用いられていたが、今回も先端の技術を見事作品に取り入れている。


本山:歌詞はamazarashi最大の魅力のひとつ。そして言葉こそ、人間を人間たらしめるもの。生肉の言葉を食べることで、amazarashiの歌詞が「生きた言葉」であることを印象付けると同時に、人間を食べる喰種を表現したかったんです。生肉で言葉を作るには、フォントまで再現できるレーザーカッターが最適だと考えました。レーザーカッターで生肉から歌詞を切り出して食べるという映像は、私が知っている範囲では過去になかったので、インパクトがあるかなと。

6分間飽きずに見続けられる映像を作り上げるための試行錯誤

プリンターが延々「死にたい」を吐き出し続ける“穴を掘っている”と、女性が延々肉を食べ続ける“季節は次々死んでいく”。ここには対比が存在しているようにも思うが、ある種のミニマリズム、シンプルな反復表現というのは、ふたつの作品の共通点である。まるで、「生きる」とはそういうことなのだとでも言っているかのように。

本山:食べる。それだけのミニマルなビデオで、いかに6分間見る人を惹きつけるかが問題でした。そこで、まずはこれまでに自分がグッときた「食べる」映像を検証してみました。アンディ・ウォーホルのハンバーガーを食べるだけのドキュメンタリーと映画『eat』(1963年)、映画『家族ゲーム』(1983年公開、森田芳光監督)の食事シーンと、ショーケン(荻原健一)主演のドラマ『傷だらけの天使』(1974~1975年)のオープニング、ジョニー・トー(香港出身の映画監督)の映画など。そうしてわかったことは2つ。1つ目は、食べている人間のキャラが立っていること。そして、食べ方が粗暴になると、本能的な凄まじいダイナミズムを感じるということ。これらのポイントを踏まえれば、食べるだけのミニマムな表現でも、飽きないはずだと勝手な理論を組み立てました。そのため、キャラを立たせるために、PVの中で食べる子は喰種の登場人物の1人をイメージして構築。そして、最初は静かに食べながら、だんだん粗暴になっていくという大きな流れを作りました。

『東京喰種』の中で「大喰い」と呼ばれるリゼを連想させる女性がひたすら肉を食べ続ける、その画だけでもついつい見続けてしまう迫力があるが、もちろんレーザーカッターによって見事に切り抜かれていく生肉のビジュアルも、非常に見応えがある。この突飛なアイデアを実現するためには、かなりの試行錯誤もあったようだ。

本山:生肉に筋があると、文字が綺麗に切り抜けないし、脂身はレーザーで溶けてしまうんですよね。肉の高級度やレーザーの出力の仕方など、試行錯誤しながら何度も検証して、最終的にはある程度薄い牛肉がベストだということがわかりました。レーザーカッターは、会社にあったものを使おうとしたら、「肉の加工に使うのは本来の目的と違う」と許可が下りなかったのですが、無理を言って借りました(笑)。単語が連結されていたりと、きっちりデザインされているのは、映像監督の(稲葉)右京くんのアイデアです。彼のビジュアルセンスが見応えを作っています。

映像監督の稲葉右京は、実写映像、アニメ、モーショングラフィック、インタラクティブコンテンツなど幅広い表現者たちを毎年100人紹介している映像作家年鑑『映像作家100人2013』に掲載され、実写や3DCG、プログラミング、作画アニメなどを幅広く手掛ける気鋭のクリエイター。そしてもう一人、本作に欠かせない人物が、女優の松永かなみ。彼女は12時間をかけて、生の牛肉で紡がれた歌詞200文字を口に入れていったそうだ。

本山:(撮影で使ったのは)もちろん、食用の肉ではあるんですが、レーザーで切ると謎の異臭がするんですね。口にし続けけるのはかなりきつかったはずですが、12時間の撮影を完遂してくれました。しかも、彼女はダンサーなので(3歳からクラシックバレエを習っている)、ラスト近くのかぶりついているカットの動きは、現代舞踏のようで美しかったですね。

『季節は次々死んでいく』PVより
『季節は次々死んでいく』PVより

負を正に浄化する、隠されたメッセージを見つけられるか?

今回のミュージックビデオについて、秋田ひろむ自身はこのように語っている。

秋田:amazarashiがやってきた手法に寄り添ってくれたように感じて、とても嬉しかったです。表面的にはショッキングで、ネガティブな感情を生みそうな作品なんですが、負を正に浄化するラストが素晴らしいと思いました。ミュージックビデオに関しては、いつも僕からは特に要望を出さずに、クリエイターの方に曲を解釈してもらって自由に作っていただいてます。なぜなら、僕は曲を作って歌うこと以外、例えばamazarashiをどう世間に見てもらおうかとか、そういうことを考える才能がないと思っているからです。ミュージックビデオが上がってくる度、僕自身がドキドキするし、とても刺激を受けています。なので、amazarashiのミュージックビデオは楽曲を聴いてもらう手段というよりは、ひとつの独立した作品として楽しんでもらえるといいのかなと思います。

なお、ミュージックビデオの中には、原作でも多用されている隠し文字の手法で、あるメッセージが入っている。ヒントは、ラストカット。そこには本山の(そして、おそらくは秋田や石田とも共振するであろう)、作品に対する想いが込められている。

秋田:僕はラストカットの生肉で作られた花を、「あの女性自身が次は食べられる番なんだ」と受け取ったのですが、色んな受け取り方ができると思います。そうやって考えさせられる部分も含めて、意味のある作品だと思いますね。

終末感漂う世界をエンターテイメントに昇華したアニメ、ゲーム、音楽が支持される現代

amazarashiといえば、そのビジュアルイメージから、アニメーションとの関連を抜きには語れない。しかし秋田自身は、コラム原稿を描くほど熱狂的なファンであるゲームに比べれば、アニメや漫画に対してはそこまで造詣が深いわけではないという。その上で、『東京喰種』に対する印象を、次のように語ってくれた。

秋田:漫画、アニメという文化はとても成熟していて、進歩的な表現をしている反面、表現の記号化というか、お約束みたいなものが一見さんには忌避されがちなのかなと思います。それが漫画やアニメに疎い僕の印象です。その中で『東京喰種』はフィクションの世界ですが、起こる事件や登場人物が取る行動に丁寧に説明があって、読み手の知識に頼らないで伝えようという姿勢がとても真摯だなと思いました。あと、浮世離れした世界観ながら、僕らの日常にも通じるような普遍的な喜怒哀楽が存在するのも、物語に引き込まれる要素ではないでしょうか。

amazarashi
amazarashi

「浮世離れした世界観ながら、僕らの日常にも通じるような普遍的な喜怒哀楽が存在する」。これはまさに、現在若い世代を中心に熱狂的な支持を獲得している漫画やアニメの共通項だと言っていいだろう。『進撃の巨人』『寄生獣』『GANTZ』、そして、秋田も大好きな作品だとして挙げている『アイアムアヒーロー』もそう。これらはあくまで現実とリンクした上で、「もうひとつの世界」を描くダークファンタジーである。人間と、そうではないものの狭間で、善悪の不確かさを問い直そうとするような内容は、amazarashiの楽曲とも通じる部分があると言えるのではないだろうか。

秋田:(上記のような作品が支持を得ている理由として)「世界がこのまま行ったらこうなっちゃうかも」という不安がみんなあるんだと思います。僕はゲームオタクですが、ゲームでもポストアポカリプス的(人類文明が壊滅した後を舞台としたフィクション)な荒廃した世界でサバイバルするゲームが流行ってますし、戦争ゲームがこれだけ全世界で売れてるのも、ただ単に面白いから以上の理由がある気がします。ただ、その恐いもの見たさの様な感情をエンターテイメントとして昇華している分には健全だと思いますけどね。

ポストアポカリプス、つまりは終末的な雰囲気を誰もがどこかで感じているからこそ、こうしたゲーム、漫画、アニメが流行る。改めて考えると、それは少なからずゾッとしてしまう事実ではある。秋田の書く歌詞にも、こうしたリアリティーが反映されているからこそ、生々しく、胸に突き刺さるわけだが、amazarashiはそれを見事にエンターテイメントに昇華している、日本で数少ないアーティストの1組だと言っていいだろう。

amazarashiのライブより
amazarashiのライブより

ただただ言葉を並べられても説教臭いし、かといって、日本のロックのクリシェとも言うべき「君と僕」の世界観ばかりではなく、歌詞にはもっと違う可能性もあるはず。そこを追求しているのがamazarashiというアーティストなのであり、スクリーンを使ったライブはもちろん、ミュージックビデオの存在も、楽曲に対してさまざまな解釈を付け加えることで、エンターテイメントとしての密度を上げることにこそ意味がある。amazarashiの楽曲は、こうしてさまざまなアートと結びつき、この世界で生きることをエンターテイメント化することで、人生の厳しさと喜びを同時に伝えてくれる。amazarashiが多くの人に支持されている理由は、まさにここにあると言えよう。

リリース情報
amazarashi
『季節は次々死んでいく』初回限定盤(CD+DVD)

2015年2月18日(水)発売
価格:1,944円(税込)
AICL-2819/20

[CD]
1. 季節は次々死んでいく
2. 或る輝き
3. 自虐家のアリー
4. 季節は次々死んでいく acoustic Version.
[DVD]
1. ドブネズミ Acousitic LIVE
2. 風に流離い Acousitic LIVE
3. 奇跡 Acousitic LIVE
4. ひろ Acousitic LIVE
5. 穴を掘っている Acousitic LIVE
6. もう一度 Acousitic LIVE

amazarashi
『季節は次々死んでいく』通常盤(CD)

2015年2月18日(水)発売
価格:1,296円(税込)
AICL-2821

1. 季節は次々死んでいく
2. 或る輝き
3. 自虐家のアリー
4. 季節は次々死んでいく acoustic Version.

amazarashi
『季節は次々死んでいく』期間限定盤(CD)

2015年2月18日(水)発売
価格:1,404円(税込)
AICL-2822

1. 季節は次々死んでいく
2. 或る輝き
3. 自虐家のアリー
4. 季節は次々死んでいく -東京喰種トーキョーグール√A Edit-

amazarashi 5th anniversaryライブ『APOLOGIES』

2015年6月9日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 WWW
料金:前売5,000円 当日6,000円(共にドリンク別)

プロフィール
amazarashi (あまざらし)

青森県在住の秋田ひろむを中心とするバンド。日常に降りかかる悲しみや苦しみを雨に例え、僕らは雨曝だが「それでも」というところから名づけられたこのバンドは、「アンチニヒリズム」をコンセプトに掲げ、絶望の中から希望を見出す辛辣な詩世界を持ち、前編スクリーンをステージ前に張ったままタイポグラフィーと映像を映し出し行われる独自のライブを展開する。3DCGアニメーションを使ったMVは文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞するなど国内外で高く評価されている。全く本人の露出なしに口コミで支持層を増やす孤高のアーティスト。

本山敬一 (もとやま けいいち)

1977年倉敷生まれ。クリエイティブディレクター。SIX所属。"A Fusion of Technology with Humanity"をテーマに、メディアを問わず人の心に残る体験をつくるのが課題。代表作にGoogle Maps ポケモンチャレンジ、PS4日本ローンチ、Google Chrome 初音ミクなど。



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