日本の音楽に中指立てて成り上がる SANABAGUN.インタビュー

ソウルやファンクの世界的なリバイバル、新世代ジャズの盛り上がりなどを受けて、ここ日本でもブラックミュージックがメインストリームの位置へと手をかけつつあるが、その決定打となりそうなのがこの平成生まれ、渋谷ストリート発の8人組ヒップホップチームSANABAGUN.である。音大出身のメンバーを多く擁し、確かなスキルと知識に裏打ちされたジャズベースのヒップホップはコアな音楽ファンを唸らせつつ、実はメンバー全員体育会系出身でもあり、エンターテイメント性抜群のライブもすでに高い完成度を誇る。メジャーデビューアルバム『メジャー』は、彼らから日本の音楽シーンに打ち込まれる一発目の銃弾というところだろう。

今回取材に応えてくれたのは、カリスマ性のあるボーカリストの高岩遼と、音楽的な中軸であるベーシストの小杉隼太。対照的なキャラクターながら、二人とも歯に衣着せぬ発言を次々繰り出すと同時に、確かなエモーションも感じられるのが実に頼もしい。さあ、どこまで行けるか?

僕の原動力は悔しさというか、成り上がってやろうという一心でやってますね。(高岩)

―SANABAGUN.にとって、メジャーデビューにはどんな意味がありますか?

高岩(Vo):メイクマネーというか。「20代のうちに高級車に乗る」みたいなビジョンがもともとあったので、メジャーデビューの話が来たときは、「うぇーい、行こうぜ!」って盛り上がりました。

小杉(Ba):とりあえず、「給料もらえるんすか?」みたいなね。

高岩:あとは、「やっと路上ライブやめれるわ」って。

―これまで渋谷を中心に全国で路上ライブを重ねていたのは、好きでやっていたというよりも、上に行くための手段だったと。そもそも音楽の原体験はいつ頃なんですか?

高岩:うちの両親は出会ったのもディスコだったというくらい、二人ともブラックミュージックが好きで、車でソウルとかR&Bがかかってたんですよ。で、僕が小3のときにスティーヴィー・ワンダーの“涙をとどけて”を聴いて、すごい号泣して。「これ歌いたい」って母親に言って、歌詞を全部カタカナで書いてもらって歌い始めたんです。

―なんでそこまでグッと来たんでしょうね?

高岩:スティーヴィーが声をからして歌ってて、すごいソウルフルだったんですよね。僕は岩手県の宮古市で生まれたんですけど、小さい頃から小2までは横浜に住んでいて、両親が離婚したタイミングで母親と一緒に宮古に戻ったんです。そこでまたゼロからの生活を始めるときに、外では親分みたいにふるまいつつ、家に帰ると一人で象さんの人形と一緒に寝るみたいな感じの生き方をしていて……その寂しさを埋めてくれたのがソウルの名曲だったのかもしれない。

左から:小杉隼太、高岩遼
左から:小杉隼太、高岩遼

―当時感じたソウルの価値が、今高岩くんが音楽活動をしている原動力にも繋がっていますか?

高岩:僕の原動力は悔しさというか、成り上がってやろうという一心でやってますね。小1からピアノをやってた一方で、小学校から高校までずっと体育会系で、小学校で合気道と野球、中学校で柔道、高校でラグビーをやっていたんです。それも、舐められたくない、強くなりたいという気持ちが大きかった。大学はラグビーの推薦で入学できる話もあったんですけど、僕は音大に行きたかったから、母に土下座して東京に出てきて。なので、「超有名になって、母をこっちに呼んでやるぞ」という気持ちでいます。

―小杉くんはどうですか?

小杉:俺は幼稚園でクラシックギターを始めたんですけど、基本的に何も考えずにこれまでの人生を生きてきていて、気付いたら音楽でお金をもらえるようになった感じですね。俺は音大を途中でやめちゃったんですけど、音大時代の友達が今どうしてるかをFacebookとかで見ると、みんなものすごいアンダーグラウンドで音楽をやってるんですよ。それがもったいないと思っていて、俺たちがオーバーグラウンドに出ることで、力のあるミュージシャンにスポットが当たればいいなって。

小杉隼太

―いいミュージシャンがちゃんと評価されないのはおかしいと。

小杉:そう、日本の音楽業界に物申したいという気持ちはずっとあって、でもなかなかいいフロントマンに巡り合えなかったんです。俺は自分のことは最強だって信じてたんですけど、ステージの真ん中に立つ人間ではないから、真ん中に立つやばいやつさえいれば、絶対に上に行けると思ってて。そういう中で(高岩)遼と出会って、「あ、こいつとなら上に行けるかもしれない」って思ったんです。

とにかく、支えてくれた母と姉に「札束ドン!」って渡してやるのが今のモチベーションです。(高岩)

―高岩くんはThe Throttleというバンドもやってたり、ワンマンショーをやったりもしていますよね。パフォーマーとしての自我はいつ芽生えたのでしょうか?

高岩:俺、かっこいいと思ったことは全部やりたくなっちゃうんですよ。運動もやれば、ピアノもやってたし、勉強はできなかったですけど(笑)、ガキなりにブラックミュージックをディグりつつ、街の兄ちゃんたちとスケボーもやって、中学校からはダンスもやってました。

小杉:ダンスもやってたんだ?

高岩:俺、自分のことを黒人だと思ってたから(笑)。高校のときはレイ・チャールズのコピーバンドもやってたし。超下手クソだったけど。

―でも、さっき話してくれたように、その裏側には臆病な自分もいて、だからこそ、強くなろうとしていた。もう少し言えば、「お母さんを守るのは自分だ」っていうような、そういう感覚もあったのかなって。

高岩:それはありましたね。姉もいるんですけど、おじいちゃんおばあちゃんは歳いってたし、「俺が守る」って気持ちはずっとありました。実際、小学校のときは枕元に凶器を忍ばせてたんですよ。エアガンとトンカチとカッター買ってきて(笑)。その頃は友達もいなかったから、音楽が友達みたいな感覚もありましたね。

高岩遼

―音楽が支えになっていたと。

高岩:そうですね。もっと言うと、やっぱり親父の存在がでかいんですよ。すごいプレイボーイだったから、母が地元の宮古に帰ってきたときは、親戚から「ほらやっぱり」みたいな目で見られて。だから、そういうやつらをぎゃふんと言わせたい気持ちもあります。でも、尖ってるだけだとスーパースターにはなれないと思うから、感謝の気持ちを持つのも大事だとは思ってます。とにかく、支えてくれた母と姉に「札束ドン!」って渡してやるのが今のモチベーションです。まあ、この想いは死ぬまで続くのかもしれないけど。

SANABAGUN.はみんな体育会系の縦社会で生きてきて、殴り殴られのバチバチのとこでやってきたやつらが多いんです(高岩)

―高岩くんが絶対的なフロントマンである一方で、小杉くんはバンドの音楽的な中心と言えるのでしょうか?

小杉:最初の頃は「俺が引っ張る」という意識もありましたけど、最近は特に考えてないですね。ただ、俺はみんなより1才年上なので、全体をまとめることをなんとなく意識してるのかもしれない。基本的には、歳は関係ないんですけど。

高岩:SANABAGUN.はみんな体育会系の縦社会で生きてきて、殴り殴られのバチバチのとこでやってきたやつらが多いんですけど、(小杉)隼太はそういった縦の関係を崩してくれる滑らかさがあるんです。悪く言えば適当なんですけど(笑)。『ワンピース』でいうと、俺がルフィだったら、サンジみたいな存在ですね。陰でしっかりみんなのことを見てくれていて、隼太が何か意見を言うと、みんながそれに「うん」ってなる。

小杉:遼には遼の長所と短所があって、俺には俺の長所と短所があって、それをいいバランスで補い合ってるメンバーなのかなと思います。『ウイイレ』(ウイニングイレヴン。サッカーのビデオゲーム)のバロメーターってわかりますか? 特性のバランスを表す六角形のやつ。あれでメンバー全員の性格を表したら、絶対みんなどこかめっちゃへこんでるところがあるんですよ。どこかクソダメなところがあるんですけど、逆にそこがめっちゃ長けてるやつがいるんです。

左から:小杉隼太、高岩遼

―『ワンピース』のたとえも『ウイイレ』のたとえもわかりやすい(笑)。でも、SANABAGUN.は音楽的なスキルが長けている分、学生時代に体育会系だったというのは少し意外でした。

小杉:俺もバスケ部だったし、みんな運動部でしばかれてきてるんですよ。全員運動部だから、路上ライブもクソだるいけど、ここまで続けてこられたんだと思います。「もう嫌だよ」って、俺は結構思ってたんですけど。

高岩:俺も嫌だったよ。

小杉:みんな嫌だったけど、「とりあえずやるっしょ」って全員のモチベーションがまとまるのは、運動部だったからじゃないかな。確かに全員運動部って珍しいのかもしれないですけど、SANABAGUN.は体育会系バンドですね。

―でも、音楽自体はメロコアとかパンクみたいな体育会系ではなくて、インテリジェンスを感じさせるジャズだっていうのがいいですよね。インテリやくざが一番怖いみたいな(笑)。

小杉:いいっすね、その怖さのライン。

―その衣装で8人が並ぶと、威圧感ありますからね。ちょっとマフィアっぽいというか(笑)。

SANABAGUN.
SANABAGUN.

高岩:早くこれが似合うようになりたいっすね。これ(金)的に。

小杉:これ着てコンビニのパン食ってますからね(笑)。「お金じゃねえ」って言うやついるけど、「嘘だ」って思いますよね。

高岩:間違いない。絶対嘘。

―その気持ちはアルバムの2曲目“カネー”でもぶちまけてますもんね。

小杉:そう。音楽をやる体を保つためには、絶対に金が必要なんですよ。飯食わないと風邪ひいちゃうし、現に今俺風邪ひいてるし(笑)。お金のことって全然素直に言っていいと思うんですよね。なんなら月いくらもらってるのか公表してやりたいくらい。「やっぱりメンバー8人で割らなきゃいけないから、1人分の収入少ねえんだな」みたいなことがわかりますよ(笑)。

日本は好きだけど、日本の音楽はクソだと思ってるんで、そこを変えるにはまずは俺らがちゃんと上にいかなきゃいけない。(小杉)

―メジャーデビュー発表の直前には、ライブ限定で販売されていた『緑盤』からメンバー全員でラップする“もう実家に帰りなよ”のミュージックビデオが公開されていました。あれはSANABAGUN.なりの決意表明だったと言えるのでしょうか?


高岩:決意表明でもありますけど、それよりもあれはユーモアなので。「ラップクルー、ディスって来いよ」ぐらいの。

小杉:まず俺らラッパーじぇねえし(笑)。俺らのクソみたいなラップに対して、「は?」って思うやつはいると思うから、それが狙いっていうか。

高岩:メジャー発表前にあれを出して、メジャーに所属してるアーティストへのディスリスペクトソングと見せかけて、「お前らがメジャー行くんかい!」っていう。

―では、実際のメジャーデビュー盤である『メジャー』を作るにあたっては、どんな青写真がありましたか?

高岩:それが全然なかったんですよ。

小杉:『緑盤』を作るときに12~13曲作って、その一部が『緑盤』に入り、残りが赤色の『メジャー』盤になっただけなので、「メジャーっぽい曲を作ろう」とかは1ミリも考えてないんです。

―なるほど、だから同じデザインの色違いなんですね。とはいえ、今年からメンバーの表記が本名になったり、“J・S・P”や“在日日本人”といった現在の日本に言及した曲が入っていたりと、メジャーに来たからこそのバンドの見せ方は意識したんじゃないかと思ったのですが、そこはいかがですか?

高岩:ヒップホップ、ジャズ、ブルースみたいなアメリカから来た音楽をやってると、たまに葛藤が芽生えたりするんですよね。ホントに日本のものと言えるのは、能や狂言とかじゃないですか? それをやっている人たちは超かっこいいと思うけど、俺はこういう育ちで、ブラックミュージックをやっている。それってダサいんじゃないかと思ったときもあるけど、日本人としてのプライドを持って、単純に「日本男児としてかっこよく生きようぜ」って今は思ってますね。

高岩遼

―小杉くんはそのあたりどう考えていますか?

小杉:俺は……結構どうでもいいかもしれない(笑)。俺、日本の音楽をほとんど聴かないんですよ。日本が野球強いのって、国内で盛んで、競技人口が多いからじゃないですか? 音楽の世界でいうと、CDが売れてるのは日本らしいけど、ホントに音楽に親しんでいる人の数は少ないというか……。

―日本の音楽文化の成熟度の問題ですよね。最初に話してくれたような、いい音楽がちゃんと認められないのがおかしいっていう。

小杉:そうっすね。で、SANABAGUN.はわりといい塩梅なんじゃないかと思うんですよ。日本人らしさと、外来の音楽をやってる感じが。日本は好きだけど、日本の音楽はクソだと思ってるんで、そこを変えるにはまずは俺らがちゃんと上にいかなきゃいけない。

SANABAGUN.

心の奥底ではこういう(中指を立てる)感じです。(高岩)

―今って国内でもブラックミュージックの波が来ていて、SANABAGUN.がこのタイミングでメジャーデビューすることの意味はとても大きいと思っています。ファンクやソウルのリバイバル、新世代ジャズの盛り上がりなどもある中、SANABAGUN.としてはどんな音楽を提示していきたいと考えていますか?

小杉:そこに関しては1個問題があって、そもそもジャズをサンプリングしてヒップホップ風のアレンジにするのがSANABAGUN.の強みだったんですよ。去年出た『Son of a Gun』に入ってた“Hsu What”って曲は、マイルス・デイヴィスの“So What”にわけわかんない歌詞をつけて歌ってて、あれはパクリじゃなくてサンプリングとしてやってたんです。でも、メジャーだと権利の問題でそれができなくて、正直「参ったな」って思ってるんですよね。「それがSANABAGUN.だ」くらいに若干思ってたので。だから、これからそこをどう打開していくかが課題ですね。まあ、そういうメジャーという場で戦っていくことがすごく楽しみなので、飲まれないようにしたいです。

―一方で、海外に向ける意識も強いと言えますか?

小杉:大嫌いな路上ライブをやっていて、外国人にも絶対届くということは痛感して。外国人はしょうもない演奏をやってても寄ってこないけど、俺らのパッションには寄ってきてくれるから。

高岩:映画でもなんでも、日本人ってくだらないキャラじゃないですか? あれ、悔しいんですよね。

小杉:基本的に漫画おたくみたいに描かれてたりするよね。でも、渡辺謙さんとかはすごいよね。

高岩:(北野)武さんとかね。

小杉:黒澤明さんとか。音楽であれくらい世界的に認められている人はまだいないですよね。黒人が演歌を歌うのは面白いと思いますけど、日本人なのにアメリカの音楽をやってる俺らはそれに近いことをやってるわけで、それを色物じゃなく、どれくらいガチで見せられるかっていうところですね。

―そこを見据えつつ、まずはぜひ国内で大暴れしてください。アンダーグラウンドにかっこいいヒップホップのチームはいっぱいいるけど、メジャーではずっと上の世代が強い印象があるので、ぜひ新しい風を吹かせてほしいなって。

高岩:(上の世代も)普通に倒しますよ。とかいって、俺たち体育会系なんで、そういう人に会ったら「おはようございます!」ってきっちり挨拶をするっていう(笑)。でも、心の奥底ではこういう(中指を立てる)感じです。

小杉:俺は前から「俺の才能に早く気づけよ」って思ってたんで、今いい感じですね。俺たちより売れてるやつらが「SANABAGUN.かっこいいね」とか言ってきても、「俺らのほうがお前らより優れてるんですけど」ってずっと思ってたし、「俺らにあやかろうとしてんじゃねえよ」って思うんで。これからは自分や仲間たちをスタンダードにしていきたい……まあ、変わらずにやってくんで、見ててくださいって感じです。

リリース情報
SANABAGUN.
『メジャー』(CD)

2015年10月21日(水)発売
価格:2,200円(税込)
CONNECTONE / VICL-6440

1.SANABAGUN Theme
2.カネー
3.J・S・P
4.デパ地下
5.渋谷ジョーク
6.居酒屋JAZZ
7.在日日本人
8.まさに今、この瞬間。
9.人間

イベント情報
『1st Major Album 「メジャー」Release Party 「渋谷ジョーク」』

2015年12月11日(金)OPEN 18:45 / START 19:30
会場:大阪府 心斎橋CONPASS

2015年12月16日(水)OPEN 18:45 / START 19:30
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

料金:前売 378(サナバ)円(ドリンク代別)

プロフィール
SANABAGUN. (さなばがん)

管楽器2名を含む6人の楽器隊とMC、ラッパーからなる8人組の生HIP-HOPチーム。毎週渋谷駅周辺の路上でライブを繰り広げ、沢山の人だかりを集めている、文字通りストリート発のグループ。メンバー全員が平成生まれながら、JAZZの影響を色濃く感じさせる驚異的に高い演奏力を誇り、それでいて通りすがりのOLをも熱狂させる高いエンターテイメント性も併せ持っている。昨年リリースしたインディーアルバム『Son of a Gun』かタワーレコード渋谷店4FでのJ/Hip-Hop年間ベストに選出される等、これまで渋谷を中心に高い人気を集めてきたSANABAGUN.。渋谷のストリートから飛び出た8人がどのように全国へと活動の足場を拡げていくのか、今後の活躍に乞うご期待。



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