★STAR GUiTARが問う「どこにいたって、変わんなくない?」

今年の8月にfox capture planらが参加する『Wherever I am』を発表した★STAR GUiTARが、それからわずか4か月というスパンで新作『Wherever You are』を完成させた。しかもこの間には、1時間で1曲分の作曲~打ち込み~アレンジ~ミックス~マスタリングまで全てを自分一人で行うという無茶振り企画の集大成として、『ONE HOUR TRAVEL』という作品も発表していて、つまりは2015年の下半期だけで3枚のアルバムをリリースしたということになる。

★STAR GUiTARはよくインタビューで「制約の中でこそ自由を感じられる」という発言をしていて、ストイックに自分を追い込むタイプのアーティストというイメージがあるかもしれない。しかし、30歳を過ぎ、音楽家として脂の乗った状態にある今の★STAR GUiTARにはむしろそのイメージとは真逆の変化が起こっていた。『Wherever You are』から、そんな★STAR GUiTARの現在地をぜひ感じてみてほしい。

音楽家として成長してきて、そろそろ人の力を借りずに、自分単独でやりたいことが増えたんです。

―『Wherever You are』は前作『Wherever I am』からわずか4か月というスパンのリリースで、タイトルからして連作をイメージして作られているわけですよね?

★STAR GUiTAR(以下★STAR):そうですね。『I am』の曲も『You are』の曲もデモ自体は去年の年末にはできてたんですけど、『You are』の曲はちょっと置いておいて、まずは『I am』を仕上げて、それから詰めていった感じです。

―★STAR GUiTARさんはこれまでも毎年のように作品を発表されていて、多作なイメージがありましたが、先日は『ONE HOUR TRAVEL』も発表されていますし、今年は特に多作モードですよね。

★STAR:単純に、やりたいことがどんどん増えてきちゃったんですよ。なので、自分からスタッフに「2015年は2枚出さない?」って言いました。まあ、『ONE HOUR TRAVEL』をやるとは自分でも思っていなかったんですけど(笑)。

★STAR GUiTAR
★STAR GUiTAR

―2014年に発表した『Schrodinger's Scale』でこれまでやってこなかったピアノをフィーチャーした楽曲を作ったことによって、新たな扉が開いたという感じでしょうか?

★STAR:それもありますし、音楽家として成長してきて、そろそろ独り立ちというか、人の力を借りずに、自分単独でやりたいことが増えたんです。それでスタッフに相談したら、「じゃあ、やりたいこと全部やりましょう」と。『Schrodinger's Scale』に関しては、ピアニストをたくさんフィーチャリングしたという側面もあるんですけど、全曲インストのアルバムを作るのも初めてだったから、インストをもっとやってみたいと思ったんです。

―それで、やるならアルバム2枚出しちゃおうと。

★STAR:その後にfox capture plan(『Schrodinger's Scale』『Where I am』にゲスト参加しているバンド)の「1年で3枚出す」というニュースを見て、「マジかよ」って思ったんですけど(笑)。

―fox capture planは今の時代のスピード感を考えて、ある種戦略的にハイペースでリリースしている面もあると思うんですけど、★STAR GUiTARさんはいかがですか?

★STAR:それがすごいなって思うんですけど、僕はそれはないです。単純に、作りたいから作って、出したいから出すっていう。あとは性格の問題というか、多少飽き性なところがあるので、どんどん次をやりたくなっちゃうんですよね。

★STAR GUiTAR

―★STAR GUiTARさんはよく「制約の中でこそ自由を感じられる」ということをおっしゃってるじゃないですか?

★STAR:口癖みたいに言ってるみたいですね(笑)。

―これまで必ず1年に1枚出されているのも、ある種自分に課してる制約なのかなって。

★STAR:ああ、そう言われるとそうかもしれない。意識はしてなかったですけど、そういう方がやる気が起きますね。1時間で1曲作った『ONE HOUR TRAVEL』はその制約の極みでしたけど……ドMなんですかね(笑)。

―いつ頃からそういう考え方だったんですか?

★STAR:だいぶ前からそう考えていると思います。それこそ、20歳になる前とか。

―学生だと、自由を謳歌してそうですけど(笑)。

★STAR:「テストがないと勉強しない」みたいな話かもしれないですね。何かを決めておかないと何もやらないというか、そういうのが好きなんだと思います。締め切りがないのとか嫌ですもん。「いつでもいいよ」って言われちゃうと、やらないと思います(笑)。そういうのも含めて、制約が好きなんですかね。

―そういう性格だからこそ、コンスタントにリリースができている。

★STAR:まあ、音楽業界がダメになってると言われるこのご時世に、僕のリリースペースは前より上がっているという、よくわかんない状況にはなっていますね(笑)。

―結果的に、そのスピード感は時代にもマッチしているように思います。

★STAR:『ONE HOUR TRAVEL』も加わって、fox capture planと同じ1年に3枚になっちゃいましたしね(笑)。

イメージとしては、『Wherever I am』は新しい1日目のサウンドトラックで、『Wherever You are』は歩み始めた先、という位置付けで作りました。

―『Wherever I am』が『Schrodinger's Scale』の流れを引き継いで、★STAR GUiTARさん自身が改めてピアノに向き合った作品だったのに対して、『Wherever You are』はそこも引き継ぎつつ、もう少し広くというか、もともとの★STAR GUiTARらしさも含めて表現されたアルバムだと思いました。

★STAR:まさにその通りで、『I am』が自分を変えるアルバムだったのに対して、『You are』は変わった上で、前までの自分と融合させるアルバムなんです。イメージとしては、『I am』は新しい1日目のサウンドトラックで、『You are』は歩み始めた先、という位置付けで作りました。だから、『You are』の1曲目は“Only The Beginning”という曲で、「ただ始まっただけだよ」と伝えているんです。

―タイトルからはいろんなつながりが見えて、前作の“Be The Change You Wish”に対して、本作に“Changing The Same”という曲があるのも、今おっしゃった対比が明確に表れていますよね。“Changing The Same”はこれまでの★STAR GUiTARを彷彿とさせるダンストラックに、近年のピアノの要素が加わって、非常にかっこいい仕上がりだなと。

★STAR:「えげつないことをえげつなく聴かせない」というのが裏テーマです(笑)。演奏するとめちゃくちゃめんどくさいことをやりまくってるんですけど、そこは関係なしに、聴いた人にはサラッと「かっこいいよね」って言ってもらいたいなって。

―まさに、そういう楽曲になっていると思います。もともとはどんなイメージで作り始めたんですか?

★STAR:最初はイントロのシンセのリフだけあってテクノっぽい感じだったんですけど、そこで一回止めてしばらく置いておいたんです。その後に『I am』を仕上げたことで、この曲はとんでもない展開にしてやろうと思って。ただ、それを小難しく聴かせるのは本末転倒だと思うから、新しいことを含みつつ、ダンスミュージックのベースでシンプルに聴かせるっていう、それが自分の中の「変わり続けるけど変わらないもの」に通じるんじゃないかって。

―この曲に限らず、音楽的に新しいことをしつつ、それをシンプルに聴かせるっていうのは、★STAR GUiTARらしさだと言えますか?

★STAR:そうですね。ポピュラリティーとマニアックさを共存させたいということはずっと思ってます。何も考えずに聴いて「いい曲だね」とも思ってほしいし、マニアックな人が聴いても、ニヤッとできる箇所があるっていう。わかりやすいところだと、前回fox capture planとやった曲(“The Curtain Rises”)の中に、fox capture planの“Rising”のフレーズをわざと挟んでるのは、知らない人は気にならないけど、知ってる人からすると「お?」ってなる。そういう味付けはどこかしらに忍ばせたいって、いつも思ってます。

―遊びの部分の大事さというか。

★STAR:ホントに隠し味なので、それに気づくか気づかないかっていうのはまた別の話なんですけど、それがあるかないかで曲の深みとか重さは変わってくると思うんですよね。

前は「自分らしさ」に対して悩んだこともあったけど、何も意識しなくても「自分らしい」と言われるようになったのは、ちゃんと積み上げてきたおかげなのかなって。

―「遊び」や「隠し味」という話で言うと、“Changing The Same”のMVは……。

★STAR:あれもわかりやすい遊びが入ってますよね(笑)。

―The Chemical Brothersの“STAR GUITAR”のMVのオマージュですよね?

★STAR:そういうことです。あれは監督の小倉さんが最初から入れてくれて、遊びとして素晴らしいと思いました。ああいうのは積極的に入れるべきだと思います(笑)。

―“Changing The Same”は曲自体にも“STAR GUITAR”に通じるトランシーさがあるし、自分の原点を意識して作られた曲だったりするのでしょうか?

★STAR:最近そこはそんなに意識しなくても出てくれるようになったから、もう自分の中に染みこんでるのかなって思います。「自分らしさとは何か」って言われると、「僕が作ることです」って感じです。自分が作ればちゃんと「自分らしさ」が醸し出されるようになってきたのは、興味深いなって思います。前は「自分らしさ」に対して悩んだこともあったんですけど、何も意識しなくても「自分らしい」と言われるようになったのは、ちゃんと積み上げてきたもののおかげなのかなって。

★STAR GUiTAR

―「自分らしさ」で言うと、“Changing The Same”のMVは「旅」がモチーフになっていましたが、過去には『Traveller』という作品もあり、今年は『ONE HOUR TRAVEL』も出しているように、「旅」というのも★STAR GUiTARらしいモチーフだと言えると思うのですが、ご本人としては意識されていますか?

★STAR:そうですよね……『ONE HOUR TRAVEL』に関しては、部屋に「ONE WORLD TRAVEL」っていうウォールステッカーが貼ってあって、「これでいいじゃん」ってノリ一発で決めたタイトルなんですけど(笑)、確かに「TRAVEL」好きですよね……。でも、実際の旅はそんなに好きじゃないんですよ(笑)。海外旅行はハワイに1回行っただけだし、正直海外怖くて。

―飛行機が苦手とか?

★STAR:苦手っていうか、僕三半規管が弱くて、2回乗るとほとんど耳が聴こえなくなっちゃうんです。前に沖縄から石垣島に乗り継いだときに、耳が痛くなって全然楽しめなかったことがあったりして。

―だからこそ、音楽で旅をしている?

★STAR:憧れなんでしょうね。コンプレックスというか、羨ましいんだと思います。いろんなところに行って楽しんでる人が。その分音楽で別の体験をしてるというか……ホントはもうちょっと旅が楽しめる人になりたいんですけどね(笑)。

昔は何でもガチガチでしたけど、最近はもっとラフになったというか、ゆるくなったというか……これが歳を取るってことなんですかね?(笑)

―“Child's replay”には『Schrodinger's Scale』に続いて、再びH ZETT Mさんが参加されていますね。

★STAR:安心安定のH ZETT Mさん(笑)。

―プレイは安定じゃなくて奔放ですけどね(笑)。

★STAR:あの奔放さを安定させてるのがすごいんですよ(笑)。

―確かに(笑)。なぜ今回再びH ZETT Mさんをゲストとして招いたのでしょうか?

★STAR:「ぶっ壊してくれそう」というイメージがすごく強いんです。ぶっ壊すんだけど、破綻しないで美しい、絶妙なバランスの人だと思うんですね。もともと僕の音楽は「きれい」とか「美しい」って言われることが多かったので、それを踏まえた上で、ちゃんと破壊してくれるんじゃないかっていう。

―楽曲自体はどんなイメージで作ったのでしょう?

★STAR:「超高速で幼少時代からやり直す」みたいなイメージで、最初の打ち合わせで「ものすごい早回しのRPGゲームだと思ってください」と伝えました。『ドラクエ』でも『FF』でもいいんですけど、RPGをものすごく速くやって、すぐ大人になって、全部経験した上でもう1回やり直して経験し直すということを表現したくて。そう伝えて上がってきた音が、最初からほぼ完成形でしたね。

―アルバム全体のテーマともつながるイメージですね。ただ、★STAR GUiTARさんはもともと生楽器がお好きじゃなかったそうですね?

★STAR:大っ嫌いでした(笑)。とにかく、打ち込みとずれるのが嫌だったんです。「潔癖症なのかな?」っていうくらい。

―完璧主義とも言えますか?

★STAR:昔の方がそうでしたね。でも、プロになってから柔らかくなっていったというか、ちゃんと上手い人たちを見て、「ずれるとこういうグルーヴが生まれるんだな」とか、だんだん面白味がわかってきました。最近は、聴いてて気持ちよければどっちでもいいというか、打ち込みだろうが、生演奏だろうが、良けりゃいいって感じになりましたね。単純に食わず嫌いで、食べてみたら美味しかったっていう(笑)。

―音楽家としてだけではなく、人間的にも柔らかくなってきました?

★STAR:昔は何でもガチガチでしたけど、最近はもっとラフになったというか、ゆるくなったというか……これが歳を取るってことなんですかね?(笑) 僕は思い込むとガーッと行っちゃうタイプで、今でも多少その傾向はあるんですけど、「そんなに無理しなくてもいいんだな」って思えるようになりました。ガーッと行ったところで何が変わるわけじゃないので、もうちょっと落ち着きなよっていうか、その落ち着きを覚えたのかな。

―途中で「制約」っていう話をしたように、ストイックな側面もあるにはあるんだけど、今は追い込んで曲をたくさん作ってるわけではなく、むしろ肩の荷を下ろしたからこそ、自然とたくさん曲が生まれるようになったということかもしれないですね。

★STAR:そうですね。去年だったら『ONE HOUR TRVEL』とか絶対やってないと思います。でも、今はすごくスタンスが軽くなって、だからこそいろいろやりたいと思うようになったんですよね。

★STAR GUiTAR

「★STAR GUiTARが大好きで何回もリピートする」っていうよりは、その人の日常のBGMとしてサラッともぐりこみたい。

―『Wherever I am』と『Wherever You are』というタイトルに絡めてお伺いすると、★STAR GUiTARさんは曲を自分のために作ってるのか、誰かに聴いてもらうために作ってるのか、もちろんどちらの要素もあると思いますが、どちらが強いと言えますか?

★STAR:僕は昔「誰かに聴いてもらうため」の方が強過ぎて、見えない人に対して気を使うみたいなことになってたんです。でも最近はそれがほぼ逆転して、何より「僕はこれが好きなんです」というのが強くあった上で、それを誰かに聴いてもらう方が自然なんだろうなって気づき始めました。それで今の僕は、すごく自由に楽しく曲が作れています。人のことは特別意識しなくなった分、「僕と同じような人は絶対にいる」という根拠をもとに動いているところもあって、自分に向けて作ることが、結果的にもっと遠くに届けることにもなるんじゃないかなって。

―最後の曲のタイトルが“Wherever We Are”なのは、その考えとも関わりがありそうですね。

★STAR:「僕のことを言ってるんだけど、みんな一緒でしょ?」っていう、僕からの問いかけですね。「どこにいたって、僕ら変わんなくない?」って。

―そうやって自分から生まれたものが、聴き手にはどんな風に伝わってほしいと思いますか?

★STAR:僕が一番望むのは、BGMになってほしいというか、サラッと聴き流せる音楽でありたいんです。「★STAR GUiTARが大好きで何回もリピートする」というよりは、その人の日常のBGMとしてサラッともぐりこみたい。曲の方が強くなるんじゃなくて、あくまでその人の人生のサウンドトラックになってほしいなって。映画とかって、音楽が主役じゃなくて、場面を盛り上げるための手助けとして音楽があるわけじゃないですか? 誰かにとってのそういう音楽でいたいんです。過剰にはなりたくないというか、その人に寄り添う音楽になれたら嬉しいですね。

―“Wherever We Are”には、自分も含め、みんなの生活が音楽によって彩られてほしいという願いが込められているように思いました。

★STAR:僕の音楽がそうなってくれれば、すごく嬉しいです。

リリース情報
★STAR GUiTAR
『Wherever You are』(CD)

2015年12月9日(水)発売
価格:2,160円(税込)
CSMC-026

1. Only The Begining
2. Changing The Same
3. Child's replay feat. H ZETT M
4. forgive feat. re:plus
5. drop me
6. Cross Our Path
7. My Classic
8. remedy
9. There is...
10. Trace back feat. Lotas Land
11. To the moon and back
12. Wherever We Are

プロフィール
★STAR GUiTAR
★STAR GUiTAR (すたー ぎたー)

プロデューサー / アレンジャーのSiZKによるソロプロジェクト。2010年8月「Brain Function feat. Azumi from yolica」でデビューし、2011年1月には1stアルバム「Carbon Copy」でiTunes Storeダンスチャート1位を記録。テクノを基軸にハウス、エレクトロ、ドラムンベースやエレクトロニカなどの多彩なダンスミュージックを昇華したサウンドを展開する。2014.9月には、「ダンスミュージック」×「ピアノ」を融合させた、コラボレーションアルバム『Schrödinger's Scale』をリリース。90年代のテクノ・ミュージックをベースに、fox capture planのキーボードとしても大ブレイク中の「MELTEN」、PE'Zのキーボードとして時代を築き、現在はソロ名義での活動も盛んな「H ZETT M」、孤高の世界観を奏でる「Schroeder-Headz」等、豪華なピアノスト達との共演を実現し、ある種のセッション的なプロセスによって作り上げたその音像は大きな反響をよんでいる。

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