三浦大知×Seiho 保守化する日本のダンスミュージックへの提言

昨年ソロデビュー10周年を迎え、いまや日本を代表する実力派シンガーの一人となった三浦大知。一方、関西のアンダーグラウンドシーンでの活動を経て、昨年Sugar's Campaignとしてメジャーデビューを果たし、5月にはソロでの海外リリースも控えるビートメイカーのSeiho。ここに三浦の長年のパートナーであり、国内有数のヒットメイカーであるUTAを加え、日本のアンダーグラウンドシーンからオーバーグラウンドシーンを一気につなぐ、異例のコラボレーションが実現した。三人による共作で生まれた『Cry & Fight』は、日本の音楽シーンに新たな風を吹き込み、リスナーとクリエイターの双方を刺激するであろう重要作。三浦とSeihoの対談からも、「純国産ダンスミュージック」の新たな季節のはじまりがたしかに感じられた。

「三浦大知くんとなら、シーンをガラッと変えられそうだ」と思っていて、いつかちゃんと伝えたいと考えていた。(Seiho)

―まずはお二人のコラボレーションが実現した経緯を教えてください。

三浦:「一緒にやってみませんか?」ってお話をいただいて、そこから動き出した感じです。はじめてお会いしたのは、昨年の『FEVER TOUR』の東京公演を観に来ていただいたときですね。

Seiho:ぼくは以前から「三浦大知くんとなら、シーンをガラッと変えられそうだ」と思っていて、いつかちゃんと伝えたいと考えていたんです。日本のR&Bシーンというか、J-POPのダンスミュージックシーンみたいなのが、1990年代から止まっている印象があって、そこに風穴を開けられるのは三浦大知くんしかいないって。それは、ぼくが音楽活動をはじめた頃から思っていたことで。

Seiho
Seiho

―Seihoさんからのオファーをどのように感じましたか?

三浦:ものすごく嬉しかったです。音を聴かせていただいたときに自分を恨んだというか、「なんでいままでちゃんと聴いてなかったんだ?」って悔やむくらい、めちゃくちゃカッコよくて。Seihoさんでしか出せない音世界が広がっていたので、自分のスタイルとコラボレーションしてもらえるなら、日本にないものというよりは、世界にないものが作れる気がしました。「ぜひ!」って感じでしたね。

―大知さんは、いまのJ-POPのダンスミュージックシーンをどのように見ているのでしょうか。

三浦:ぼくは日本って吸収する国だと思っているんです。いろんな文化を吸収して、ここまで成長してきたし、ダンスミュージックも同じだと思うんですけど、たしかに最近止まっている部分も感じていて、一音楽ファンとして、もっといろんな刺激があったらいいのにとは思っています。

三浦大知
三浦大知

―そういったシーンのなかで、ご自身の活動としては、どのようなことを大事にされていますか?

三浦:自分には「歌って踊る」スタイルがあって、それがあればどんな曲でも自分らしいダンスミュージックになると思っているので、ジャンルを問わず、積極的に影響を受けていきたいと考えています。一番の目標は、日本語の曲が世界で普通に聴かれるようになったらいいなって。

―お二人は同い年ですが、三浦さんは小さい頃からオーバーグラウンドのど真ん中で活動されてきて、Seihoさんは関西のアンダーグラウンドシーンで活動をされてきました。今回のコラボレーションにはそういった背景の違う二人ならではの面白さもありますよね。

三浦:「世代」というのは、やっぱりある気がするんです。ルーツミュージックといわれる名曲も大好きなんですけど、自分が生まれ育った時代のなかで聴いてきた音楽のほうが思い入れがあったりする。Seihoさんも世代で聴いてきた音楽の重要さというか、それによって自分たちの音楽ができているんじゃないか? とおっしゃっていて、音楽に対しての考え方が近いなと思いましたね。

Seiho:音楽って「世代を超えるからいい」部分と、「世代でしかない」部分と、両方あるじゃないですか? たとえば、大知くんがいま40歳だったとしても一緒に作っていただろうし、一方で、同い年だからこそ作っているいまの現実もある。その両方の可能性があるから面白いんですよね。この二人だったら世代を超えてでもできただろうし、だからこそ、同世代ってことも意味を成してくると思うんです。

コラボレーションって、二人の間にしか存在しないものを確認し合って、自分や相手を理解することなんです。(Seiho)

―Seihoさんは、最近メジャーのフィールドでも注目を集めていますが、これまでオーバーグラウンドのシーンに興味がなかったのか、それとも興味はありながらも、結果的にアンダーグラウンドのシーンに身を置いていたのか、どちらが近いですか?

Seiho:アンダーグラウンドとオーバーグラウンドって、場所じゃなくて、時期の話だと思っているんです。去年、矢野顕子さんの作品に参加させてもらったときに、「音楽シーンって灯台みたいだよね」という話をしたことがあって。

―灯台ですか?

Seiho:灯台の光がグルグル回っていて、その光が当たっているときもあれば、そうじゃないときもある。その光のスピードに合わせて歩ける人もいれば、光を追い続けて、ずっと暗いところにいる人もいるみたいな。ぼくが、アンダーグラウンドシーンが好きなのって、光が当たっていない状態でも、同じ場所に立ち続けて、自分がここにいることを証明するためっていうか。光が当たったり当たらなかったりすることで、自分の立ち位置がわかってくるんですよね。だから、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの違いっていうのは、場所というより、回ってくる光の周期みたいなイメージがあるんです。

左から:三浦大知、Seiho

―面白い考え方ですね。逆に、大知さんはアンダーグラウンドのシーンをどのように見ているのでしょうか?

三浦:ぼくは、自分がオーバーグラウンドなのかアンダーグラウンドなのかっていうこと自体、正直あんまりわからないというか。もちろん会社やレーベルのことはありますけど、そういうのって、周りが決めることのような気がして。自分がずっとやってきたことは、オーバーグラウンド、アンダーグラウンド関係なく、グッドミュージックを作りたいだけで、「いいものはいい」ってことじゃないかと思いますね。

―では、実際に“Cry & Fight”は、どのように制作が行われていったのでしょうか?

三浦:自分としては、今年がソロデビュー11年目なので、次の一歩に進みたい気持ちがあって、三浦大知のスタイル「歌って踊る」の現時点での最高峰を作らないといけないと思っていました。なので、とにかく踊れるものにしたいっていうことだけがありましたね。あと今回わがままを言って、この曲のためにトラックメイカー二人(UTA、Seiho)に参加してもらったのは、異例のことだと思うんです。でも、一音楽ファンとして、どうしても混ざってみてほしくて、その面白さを今回出せたと思いますし、また別のかたちでSeihoさんと三浦大知の楽曲も作れたらいいなって思ってます。

Seiho:UTAさんとトラックをやり取りしながら制作したんですけど、今回は、三者のバランスがとてもうまく取れたと思いました。「こうなったらよくないな」って最初に思ったのが、「三人がイメージできる安全な場所に行ってしまう」こと。「自分は違うけど、こういうのがお客さんに求められているよね」とか、もちろんしたくないんだけど、三人ともなんだかんだ優しいし、気使いなところもあるのが心配で。でも、三人が納得できて、お客さんにも納得してもらえる、ちゃんと三人のコラボレーションができたので、勉強になりました。なによりUTAさんが大人でよかった(笑)。

―メロディーとビート、どちらを先に作りはじめたんですか?

三浦:まず、メロディー先行でやってみようという話になって、UTAさんとぼくでメロディーとコードを決めて、アカペラを録ったんです。その素材をSeihoさんに渡して、トラックを作り直すところからはじまり、BPMとか展開とか、いろんなアイデアをキャッチボールしつつ、一緒にスタジオに入って作り上げていった感じですね。

左から:三浦大知、Seiho

Seiho:ぼくは人と話すことが好きなんですが、話すとその人を理解できるだけじゃなく、自分のことが理解できるじゃないですか。曲を作るときって、自分との対話なんですけど、ホントに自分が作りたいものを作るときって、何人かと一緒に作ったほうが、意外と明確になるんですよね。コラボレーションって、二人の間にしか存在しないものを確認し合って、自分や相手を理解することなんです。だから作ったときは気づかなかったけど、あらためて聴いたときに、「あのときこんなこと思ってたんだ」とか「大知くんこういうこと考えてたのかな?」ってことを、曲から教えてもらえる。こういう体験って、自分の曲だとあまりできないんで、それもすごく良かったです。

「日本語はダンスミュージックに向いていない」とは思えない。言いたいことがちゃんと言えたほうが、強い表現になると思うんです。(三浦)

―先ほど三浦さんが、日本語で歌うことへのこだわりを話されていましたが、今回のシングルにも「全世界に向けて提示する、純国産ダンスミュージック」というコピーが打たれています。

三浦:ぼくは日本語のリズムがすごく好きなんです。「日本語はダンスミュージックに向いていない」って言われがちなんですけど、ぼくはそんなこと思ってなくて。もちろん符割りとか言葉の乗せ方で工夫する部分はありますが、それよりも言いたいことがちゃんと言えたほうが、強い表現になると思っているんです。

三浦大知

Seiho:ぼくも意識はしませんでした。「日本語だったらこうなるよね」とか「英語だったらスムーズにいける」とかはあるけど、マイナスではなく、強みとしても捉えられると思うし。

三浦:日本語って、0と1の間にあるような、あいまいな感情を表現できる言語だと思っていて。そういう言葉が音楽に乗って、普通に認知されたらいいなって。子どもの頃に意味がわからないまま英語の曲を聴いていたように、それが日本語の曲であってもいいと思うんです。「世界に向けた純国産」っていうのは、「MADE IN JAPAN」でありながら、どこにもない音楽を作るということですね。

―Seihoさんも「J-POPのダンスミュージックシーンに風穴を開ける」とおっしゃられていましたね。

Seiho:そういったダンスミュージックシーンの状態って、少し前までは自分とは切り離して考えていたんですよ。でも、若いシンガーやダンサーたちと話をしているうちに、いたたまれない気持ちになることもあって。そこで自分がなにかを背負う気持ちはないですけど、ぼくがこれまでクラブの現場でやってきたことを、日本のダンスミュージックシーンに応用すれば、少しは状況が変わるんじゃないかって、それをこの2、3年でうっすら感じてたんです。

―日本のダンスミュージックシーンの問題というのは、音楽的に新しいもの、面白いものが生まれてこないということですか?

Seiho:ダンスミュージックには、アナーキーな魅力があるはずなのに、いまのヒップホップもR&Bも、すごく保守的になっていると思うんです。曲を作る前から「こういう曲にしたい」とか「こういう人に認められたい」とか、そういう部分が先行しちゃって、曲が前に出てこないんですよ。

―たしかに、マーケットの要請もあって、ターゲットに合わせて作るような状況もありますね。

Seiho:さっきも言ったように、後から曲を聴き直して自分の考えていたことがわかるくらい、音楽って先に行けるものなのに、頭が先に行ってしまう。最初に設計図を書いて作るなんてもったいないし、あんまり前向きじゃないですよね? こういうことがいまの状況の原因なんじゃないかなって。

Seiho

―大知さんは、ターゲットに合わせて作られた曲が多い現状をどのように見ていますか?

三浦:最初から限定してしまうのはもったいないですよね。なんでもそうですけど、狙ってやったからって実際にそうはならないし。自分はすごく影響を受けやすいタイプなんですけど、ぼくがマイケル・ジャクソンを好きなのは、あの人も影響を受けやすいタイプなのに、それでもオリジナルだったところなんです。感受性がすごく豊かで、社会的なことにも揺さぶられる人だけど、そうやって受けた影響からオリジナルをちゃんと作ってる。自分もそういう音楽との向き合い方をしたいと思っているんです。

―“Cry & Fight”も、Seihoさんからの影響を受けつつ、ちゃんと大知さんのオリジナルになっていると思いました。

三浦:音楽業界的にも、「この二人が一緒にやったんだ」ってことも含めて、すごく面白がってもらえると思うんです。Seihoさんがおっしゃった風穴がどういうものかはわからないですけど、「自分たちも挑戦しなきゃ」って思ってくれた人が少なからずいるような気がしてて、そうであったらいいなって勝手に思ってます。

―ケンドリック・ラマーの作品にFlying Lotusが参加していたように、アメリカではシーンの垣根を超えた意欲的なチャレンジが行われていますよね。日本ではそこがまだ足りないように思うので、その意味でも、今回の“Cry & Fight”は重要だと思っています。

Seiho:アンダーグラウンドだけで活動しているほうが、じつは保守的になりやすいんですよね。どうしても世界が狭いので。逆に、オーバーグラウンドの世界って、1回くらいヘマしてもいいっていうか(笑)、それくらいの余裕が新しいものを作るためには必要なんです。今回の曲を任せてくれた三浦大知くんのプロダクションチームに感謝しています。

左から:三浦大知、Seiho

三浦:“Cry & Fight”を作れたことで、次はもっとすごいのができる気がするんですよ。もちろん今回も一つの完成形なんですけど、もし次の曲ができたら、「“Cry & Fight”はこのためにあったんだ」って、なるのかもしれない(笑)。まあ、それはぼくたちにもわからないけど、そういう曲をまた一緒に作れたら幸せです。

Seiho:今日の話を聞いていても思ったけど、やっぱり三浦大知くんは誰よりも音楽が大好きなんですよ。音楽が好きな人にしか音楽は変えられないんで、またぜひ一緒にやりたいです。

リリース情報
三浦大知
『Cry & Fight』Music Video盤(CD+DVD)

2016年3月30日(水)発売
価格:1,944円(税込)
AVCD-16630/B

[CD]
1. Cry & Fight
2. Yes & No
3. Forever & Always
[DVD]
・Cry & Fight -Music Video-
・Cry & Fight -Live Session with Seiho-

三浦大知
『Cry & Fight』Choreo Video盤(CD+DVD)

2016年3月30日(水)発売
価格:1,944円(税込)
AVCD-16631/B

[CD]
1. Cry & Fight
2. Yes & No
3. Forever & Always
[DVD]
・Yes & No, Forever & Always -Choreo Video-
・Cry & Fight -Dance Edit Video-

リリース情報
三浦大知
『Cry & Fight』CD Only盤(CD)

2016年3月30日(水)発売
価格:1,296円(税込)
AVCD-16632

1. Cry & Fight
2. Yes & No
3. Forever & Always

リリース情報
Seiho
『Collapse』日本盤(CD)

2016年5月18日(水)発売
価格:2,376円(税込)
BEAT RECORDS / LEAVING RECORDS / BRC-509

1. COLLAPSE(Demoware)
2. Plastic
3. Edible Chrysanthemum
4. Deep House
5. Exhibition
6. The Dish
7. Rubber
8. Peach and Pomegranate
9. The Vase
10. DO NOT LEAVE WET
11. Ballet No.6(ボーナストラック)

プロフィール
三浦大知
三浦大知 (みうら だいち)

1987年生まれ、沖縄県出身。Folderのメインボーカルとして1997年にデビュー。2005年3月にシングル『Keep It Goin' On』でソロデビュー。抜群の歌唱力と世界水準のダンスによるパフォーマンスが注目を集め、2012年には初の日本武道館が10分でSOLD OUT。ヨーロッパ最大の音楽授賞式『2014 MTV EMA』にて『ベスト・ジャパン・アクト』に選出されるなど、国内外で高く評価されている。2015年9月にリリースした最新アルバム『FEVER』はオリコン週間アルバムチャートで3位を記録。全国17か所、21公演、自身最多動員数となる45000人を動員した全国ツアーも話題を呼んだ。

Seiho (せいほー)

アシッドジャズが鳴りまくっていた大阪の寿司屋の長男にして、2013年、中田ヤスタカらと並び、MTV注目のプロデューサー7人に選出され、『Sonar Sound Tokyo』に国内アーティストとしては初の2年連続出演(2012 / 2013年)、2 Many DJ’s、Capital Cities、Flying Lotusらの日本ツアーオープニング、または共演、そしてSugar’s Campaignでも注目度アップのビートメイカー兼DJ兼プロデューサー。他アーティストへのプロデュースや、リミックスワークとして、YUKI、矢野顕子、パスピエ、さらうんど、三浦大知などを手掛けている。2016年5月20日、最新アルバム『Collapse』を米・Leaving Records / Stones Throwよりリリース。国内盤はボーナストラックを追加収録し、Beat Recordsより5月18日、日本先行発売。



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