生粋のシンガーChouChoが、今ソングライティングを手がけた理由

「透明感のある歌」と形容されるアーティストは数多くいるが、ChouChoほどそれを体現しているシンガーは希有ではないだろうか。楽曲によって様々に歌と表現を変え、自身を曲に密接に寄り沿わせていくChouChoのアプローチとスタンスは、彼女がメインフィールドにしている「圧倒的な個性がモノをいう」アニメソングというカテゴリーの中でも、特別な存在感と輝きを放っている。

そんなChouChoが、ニューシングル『kaleidoscope / 薄紅の月』で初めて、主題歌の作詞だけでなく作曲にも取り組んだ。「でも私はシンガー・ソングライターじゃない。シンガーなんです」と言うChouCho。そんな彼女が、いまソングライティングを手がけた理由とは? ChouChoが「歌うこと」に込めた想いを語ってもらった。

私が彼女を見守ってきた5年間の道のりが、書かせてくれた歌詞だと思います。

—今年2月、“Elemental World”のリリース時に初めてお話を聞いたとき(洋楽育ちのChouChoが語るアニソンとの出会いで拓けた歌手人生)、これからは作詞だけじゃなく作曲もやりたいとおっしゃっていたのが印象的でした。そして、今回のニューシングルは“kaleidoscope”“薄紅の月”のダブルA面、しかも2曲ともChouChoさんの作詞・作曲。おおっ、ついに! と思いました。

ChouCho:はい、有言実行しました(笑)。

—最初から、次のシングルはそうしようという計画で?

ChouCho:いえ、制作会議で「私に書かせてください!」と自分から手を挙げたんです。今回のシングルは、私が今まで主題歌や挿入歌を4曲歌わせていただいているアニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』シリーズ初の劇場版(『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』 / 8月26日公開)の主題歌になることが決まっていて。

私にとって思い入れの深い、大切な作品の曲なので、せめて1曲だけでも自分で作詞・作曲させて欲しいとお願いしたら……なんと2曲、任せていただけることになったんです。

ChouCho
ChouCho

—ChouChoさんから立候補したんですね!

ChouCho:はい。『プリズマ☆イリヤ』とは、私がTVシリーズ第1期(2013年)のOPテーマ“starlog”を歌わせてもらってからの長いお付き合い。だから、この作品では表現したいことがたくさんあって、今までのように歌詞を書くだけでは気持ちが収まらなかったんです。曲も自分で書いて全部を出し切りたい! という想いがあふれて、止まらなかったですね。

—それはどういう想いだったんでしょう?

ChouCho:やはり主人公の女の子、イリヤ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)への想いですね。『プリズマ☆イリヤ』は、普通の小学生だったイリヤが、いろいろな出会いを経験し、困難を乗り越えてどんどん強くなっていくお話。最初はとても頼りなかった彼女を、物語を通じてずっと見守ってきたんです。

自分の生き方について、私たちには想像できないような選択をして成長していく姿がすごく魅力的だし、イリヤは私にとって、ものすごく頑張ってる妹のような存在。その彼女に対する想いを、自分の作った歌でまるごと支えたいなと思ったんです。

—シンガーがソングライティングを手がける意味は、自分の内側から湧き出た想いの丈の「自己表現」であることが前提だと思うんですが、ChouChoさんにとっては作品ありき。そこが他のシンガーソングライターとは違う、特別なポイントに感じられます。

ChouCho:そうですね。この作品がなかったら絶対に出てこなかったような言葉も歌詞に入っていますし、そこが主題歌を歌う立場での作詞・作曲の面白いところだと思います。

例えば、“kaleidoscope”のサビの<涙も痛みも運命さえも超えていく>というフレーズ。私は去年、今回の劇場版のお話に繋がるTVシリーズ第4期のオープニングテーマ“Asterism”でも歌詞を書いたんですけど、そのお話からさらにイリヤは成長しているんです。

—だから、苦難を前に涙や痛みだけでなく、もっと大きな運命すら超えていく存在に、今のイリヤはなっていると。

ChouCho:はい。私が彼女を見守ってきた5年間の道のりが、書かせてくれた歌詞だと思います。私自身の中に「運命を超える」なんて言葉は全くなかったし、自分からは絶対に出てこないです(笑)。イリヤ自身と、彼女が存在している私たちの日常とは違う世界観があるからこそ、出てきた。私自身とイリヤの間に立って歌詞を書いている感じがしました。

ChouCho

—初挑戦となった主題歌の作曲には、どんな風に取り組みましたか?

ChouCho:思いついたメロディーをスマホに録音しておいて、あとからパソコンでDAWアプリのLogicを使ってデモ音源に仕上げていきました。

—プロの手口をあっさり説明されましたが(笑)、作曲、初めてなんですよね?

ChouCho:主題歌の作曲は初めてなんですけど、アルバムの表題曲や収録曲の作曲はこれまでに何度かやらせていただきました。DTMソフトは前から使っていましたし、子どもの頃、エレクトーン教室に通っていたんですね。その時に、まずワンフレーズだけ曲があって、その後の部分を自分で作って1曲に仕上げるというような課題を、よくやっていたんです。

シンガーになってからも作曲にはチャレンジしていたので、曲を書くことは、今初めてというわけでもないかなって(笑)。

—なるほど。そのアプローチもChouChoさんならではかもしれないですね。

ChouCho:そうかもしれません(笑)。

シンガーソングライターさんのように、どうしても自分で作った曲だけを、歌いたいわけじゃないんです。

—曲を作るとき、メロディーが浮かぶのはどんなときが多いんですか?

ChouCho:ひとりで道を歩いてるときが多いですね、最寄り駅から自宅までの間とか。

—頭に浮かんだら、すぐスマホに録音するんですか?

ChouCho:はい、忘れないうちに。でも外なので、けっこう周りがうるさいし、いきなり道の真ん中で歌い出すわけにもいかないじゃないですか。なので、建物の裏とかなるべく静かな場所を探して、物陰に入り込んでスマホを手で覆って、指でスマホをカツカツ叩いてリズムを取りながら、こっそり歌うんです(笑)。短いフレーズで終わればいいけど、けっこうそこから発展してワンコーラス分出来ちゃうこともありますね。

あと私の場合、頭の中には漠然とメロディーだけじゃなく、コードも一緒に鳴っていて。「これだ!」という音楽が閃いていて、そのメロディーやバッキングを、家に帰ってから、パソコンで音源を組み合わせたり、キーボードを弾いて探り出していく感じですね。

ChouCho

—最初からChouChoさんの頭の中では、ある程度、明確な音像として鳴っているんですね。よくクリエイターで「降りてくる」という言い方をされる方がいますが、そういう感じ?

ChouCho:うーん……ちょっと違う気が。というか……「降りてくる」って何ですか?

—そう言われてみると、「閃く」とも違うイメージかな?

ChouCho:「降りてくる」っていう感じではないですね。曲を作ることも、楽しいからやってるだけで、すごく自由。なので、どうしても自分で作った曲だけを、歌いたいわけじゃないんです。素敵な作曲家さん、作詞家さんに出会えるのなら、その人たちの曲も歌いたいです。

—例えば、バンドマンや、シンガーソングライターの方にお話を伺うと、「世の中に自分が聴きたい音楽がないから自分が作るんだ」という方もいらっしゃいますが、ChouChoさんはそういう感覚ではない?

ChouCho:へぇ、そうなんですか! 私は全然違いますね。きっと世界中にはたくさんの、私の知らない音楽があると思うんです。そんなたくさんの楽曲の選択肢の中のひとつに、私の作った曲もある。そういう感じです。

—曲を作ることが、自己表現の全てではない。

ChouCho:そうですね。むしろ他の方に提供していただいた曲を歌うと、知らない言葉にも出会えるし、違う自分になれるんですね。自分で作曲した時には出てこないテクニカルな表現があったり、音域が広がったり、シンガーとして成長できるんです。

ChouCho

—つまり、ChouChoさんの「表現」というのは、「歌うこと」そのものにあると。

ChouCho:そうだと思います。それを歌うことで、今までの自分になかった表現が生まれる瞬間が、何度もあったから。そんな新しい「表現」に出会うために、常に挑戦していたいですね。私が歌い続けるのは、そのためじゃないかなって思います。

—でも、ChouChoさんが作曲した“kaleidoscope”も、実際聴いてみるとかなりテクニカルに感じます。転調もあり、旋律の跳躍も多くフレーズの息が長いので、ブレスのタイミングも見極めにくい。一筋縄ではいかない曲だと感じましたよ。

ChouCho:そうなんですよ。耳に残るメロディーにしたいと思って書いていったら、自然とそうなってしまって。作ってるときは難しい曲だってことに気づかなかったんです(笑)。レコーディングのときに歌って初めて、これは難しい曲だなぁと気づきました。

—そういうところも含め、ChouChoさんはかなりの自然体ですね(笑)。

ChouCho:そうですね。計算して出来上がったわけではなく、自然と出て来たものを表現した感じです。

—プロのコンポーザーに伺うと、みなさん、あえてフックを入れるために、わざとセオリーを外したり、テクニックを計算して作られるようなので、そんなにナチュラルに言われちゃうと……拍子抜けです(笑)。

ChouCho:あはは! それは、曲作りに対してこうでないといけない、みたいな固定観念がないからかもしれませんね。自由に楽しみながら曲を書いています。

やはり「ここでこう伝えたい」と思った言葉じゃないと、心を込めて歌えない。

—ChouChoさんは、ひたすらにいい歌を歌いたい、生粋のシンガーなんですが、その核が、ちゃんと自分の中にナチュラルに存在していることが、すごいことだなと思うんです。曲を作れないわけじゃない、むしろ“kaleidoscope”も“薄紅の月”も、非常に完成度の高い曲ですから。

ChouCho:すごく嬉しいです。やはり、私の根本にあるのは「いい曲と出会いたい」ということだけなので、自分の作った曲が「いい曲」の仲間に入れるのは嬉しいです。

デビューから今年で6年目になりますけど、そういうのもあって、昔より歌うことが楽しくなっています。これまでにいろいろな曲を歌わせていただいてきたことで、シンガーとして成長してる自分を、1曲ごとに感じられるんです。やれることが増えるって、本当に楽しいんだなって。

ChouCho

—その「やれること」のひとつ、自分が成長する糧のひとつに、ソングライティングが加わったということなんですかね?

ChouCho:はい、そう思います。作家さんが提供してくださったいろいろな曲を聴いて、歌ってきたからこそ、自分でも曲を作れるようになった。だからもっともっと、歌えるようになりたいです。自分でも、「成長欲」は強い方だと思っていますね。

—なんとなく、子育てに似ていますね。ChouChoさんは、日々の生活の中で自然に新しいものに出会って成長を続けていく子どもであり、そんな子どもを育てることで、一緒に成長していく親のようでもあります。そこでひとつお聞きしますが、「もっと歌えるようになる」というのは「歌が上手くなりたい」ということですか?

ChouCho:はい、上手くなりたいです。とくに私が携わっているアニソンのジャンルは、テクニカルな楽曲が多いので、歌い手も歌唱力の高い方がとても多いですし。

—ChouChoさんが思う「歌が上手い人」って、どんな人なんでしょう?

ChouCho:楽曲の魅力を最大限に引き出す歌が歌える人ですね。これも前のインタビューでお話したと思うんですが、私の歌は、「これはChouChoの声だね」とすぐ分かるタイプじゃない。何を歌ってもすぐに誰の歌なのか分かる歌い手に憧れはありますが、私はそうじゃないから、楽曲によって、その曲がいちばん素敵に聴こえるように歌いたい。それが私にとっての「上手い歌」なんです。

—でも、自分で書いた曲だと、その魅力をいちばん分かっているのも自分自身ですね。“kaleidoscope”と“薄紅の月”では、楽曲の魅力をいちばん引き出せる歌を実現するために意識したことは、何でしたか?

ChouCho『kaleidoscope / 薄紅の月』ジャケット
ChouCho『kaleidoscope / 薄紅の月』ジャケット(Amazonで見る

ChouCho:この2曲は、曲調が全く違うので、対比はすごく意識しました。

—“kaleidoscope”は明るく伸びやか、元気で爽やかな曲調、一方の“薄紅の月”は優しくて静かなアコースティックバラードですね。

ChouCho:違う曲調で同じ作品の世界観を別の表現にしたかったので、それに合わせて歌声も変化させています。シンプルに言ってしまうと、“kaleidoscope”は強さで、“薄紅の月”は優しさ。強さを表現するには、リズムと子音を強調しますし、同じ子音の入った言葉でも、アタックを弱くして、音と言葉の繋ぎ方を滑らかにすると優しく聴こえるとか。

曲調や歌詞の言葉から導かれるものもありますし、その上でさらに歌唱テクニックとして意識して歌うことで、表現を変えることができるんです。

—歌詞の言葉を選ぶときも、歌い方を意識してセレクトするんですか?

ChouCho:いえ、それはないです。メロディーを聴き込むことによって、いい言葉が浮かぶこともあるので、大切なのは曲と素直に向き合うことかなって。メロディーと言葉のイントネーションが合わない歌詞には絶対しないようにしていますけど、やはり「ここでこう伝えたい」と思った言葉じゃないと、心を込めて歌えないですから。

—「歌心」だけは、どんなにテクニックがあっても繕えないものですからね。そんなChouChoさんの心を込めた歌は、やはりライブで本領発揮されるのかな? とも思います。9月17日にはChouChoさんが連続出演を果たしているライブイベント『深窓音楽演奏会 其ノ四』も開催されるので、楽しみです。

ChouCho:ライブは私にとって大事な場です。とくに『深窓音楽演奏会』は、レーベルメイトのfhánaさん、TRUEさんからもすごく刺激をもらえるし、今回はバンドセットなので、CDとは違う雰囲気も味わっていただけるかなと。ライブで歌うことで、歌自身も育っていくし、歌う私も成長できる。これからも、私らしい歌を、大切に育てていきたいですね。

ChouCho

リリース情報
ChouCho
『kaleidoscope / 薄紅の月』(CD)

2017年8月26日(土)発売
価格:1,296円(税込)
LACM-14656

1. kaleidoscope
2. 薄紅の月
3. kaleidoscope(off vocal)
4. 薄紅の月(off vocal)

イベント情報
『Lantispresents深窓音楽演奏会其ノ四』

2017年9月17日(日)
会場:東京都 新宿 BLAZE
出演:
ChouCho
TRUE
fhána
MiaREGINA(オープニングアクト)
料金:5,400円

プロフィール
ChouCho
ChouCho (ちょうちょ)

2011年夏、TVアニメ『神様のメモ帳』OP主題歌『カワルミライ』でメジャーデビュー。『ましろ色シンフォニー』『氷菓』『ガールズ&パンツァー』など、話題のアニメ主題歌を次々に担当。2015年11月25日公開の『ガールズ&パンツァー劇場版』の主題歌を担当し、デビュー5周年の2016年、5月に自身初のベストアルバムをリリース、10月には全国5箇所をまわるツアーを開催し大盛況に幕を閉じた。ジャンルを問わないナチュラルで艶のある歌声が高く評価され、海外のアニメイベントの出演や、ハイレゾ配信等、今後も幅広い音楽シーンで活躍が期待されている。



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