Young Juvenile Youthに時代は味方する。5年の集大成を語る

2012年にシンガーのゆう姫とトラックメイカーのJEMAPURがタッグを組み始まったYoung Juvenile Youthが、満を持して1stフルアルバム『mirror』を完成させた。どこまでも先鋭的で、静謐かつ深淵なJEMAPURのトラック。クールな声色のなかでさまざまな感情の動きと色を表現する、ゆう姫のボーカル。本作では、その音と歌が濃密に溶け合う音楽世界を全13曲にわたって、つぶさに触れることができる。

ラッパーのCampanellaをフィーチャーした“When feat. Campanella”やAphex TwinのビジュアルコラボレーターであるWEIRDCOREがミュージックビデオを手がけた“Slapback”などの新曲群と、古くは4年前にリリースした既発曲が等しい求心力を伴って編まれていることにも驚かされる。ゆう姫とJEMAPURにYoung Juvenile Youthと『mirror』の真髄を語ってもらった。

自分と向き合って「自分自身を知る」ための時間を経て、音楽が自分に近いものになった。(ゆう姫)

—どうですか、Young Juvenile Youth(以下、YJY)にとっても待望の1stフルアルバムだと思うんですけど。

ゆう姫:「うれしい」の一言です。ただ、こうやってプロダクトになると一段落ついた感もありますけど、私的には「ライフ・ゴーズ・オン」というか、早く次の作品ことを考えたいという気持ちもあります。

—作品の内容的にはどうですか?

ゆう姫:このアルバムの制作中、自分と向き合って「自分自身を知る」ための時間がたくさんあったんです。その時間のなかで「もっとこうしたい」とか「私はこうなんじゃないか?」という意思がどんどん芽生えてきて。

やりたくないことを突き詰めることの無意味さを感じたし、自分が思ったことに突っ走る素晴らしさも知りました。そういう時間を経て、音楽が自分に近いものになったし、楽曲に自分という人間を映し出すことができたと思います。

ゆう姫
ゆう姫

—ご自身のボーカルについてはどうですか? 独立した求心力があると思うのですが。

ゆう姫:自分を知ることの一環として、私の声がどの音程だったら一番カッコいいとか、美しく響くのか、そういうことは考えました。歌い方やテンションで私の声って全然違う響き方をするんですよ。同じメロディーを歌っていても、子どもっぽく聴こえるときもあるし、大人っぽく聴こえるときもあるので。

—色っぽい気分にさせられるボーカルだと思います。サウンド同様、深淵でクールな感触は通底してるんだけど,あるときはソウルフルに、あるときはブルージーに、あるときはポップな高揚感を覚えるときもある。

ゆう姫:ありがとうございます。「バーボンを飲みたくなる」とかよく言われますね(笑)。

自分で音を作って、そこに自分の声を乗せること以外に自信を感じられることがなかったんです。(ゆう姫)

—JEMAPURさんは、ゆう姫さんのボーカルに初めて触れたときにどんなことを感じました?

JEMAPUR:楽器的に見ちゃっているんですけど、倍音がすごく豊かですね。こればかりはトレーニングしても変わらない天性のものです、体格だったり、声帯に影響される、生まれ持ったものなので。そこにはとても惹かれましたね。

—ゆう姫さんどうですか、そんなことを言われて。

ゆう姫:「うん、そうでしょ」(笑)。私、自分が歌が上手いとは思ったことないですけど、自分の声は好きなんです。録音した自分の声を聴いてカッコいいなって思う。

—いや、それは相当珍しいですよ。だいたい人って、最初に自分の声を客観的に聴いたときに絶望するじゃないですか。

JEMAPUR:そうですよね。

ゆう姫:自分でもカッコいいと思えたから、歌い始めたところもあるんです。曲を作って、録音して、それをずっと聴くことで、自分の曲と自分の声に包まれる感じがすごく好きなんです。

—ゆう姫さんにとって、音楽は自分を表現する場所を見つけられたという感じだったんですか?

ゆう姫:そうですね。うーん、自分の声とか自分が作る音楽くらいしか自分のことを好きになれるポイントがなかったというか。そこ以外に自信を感じられることがなかったんです。

コンプレックスの塊みたいな感じです。家族が家族だからというのもあるし。(ゆう姫)

—自信を感じられるというのは人として?

ゆう姫:そう、人として。

—むしろコンプレックスのほうが多いですか?

ゆう姫:そうですね。コンプレックスの塊みたいな感じです。家族が家族だからというのもあるし、自分のいる環境自体がコンプレックスみたいなところもありますね。

—自分と家族を比べられたり?

ゆう姫:やっぱり自分でも比べちゃいますからね(ゆう姫は松田優作の娘であり、松田龍平と松田翔太を兄に持つ)。

ゆう姫

—そこはこちらの想像が及ばないところもありますけど、ゆう姫さんにはきっと、表現をしながら自分のアイデンティティーが何なのかを知ろうとしているところがありますよね。

ゆう姫:まさにそれは私の人生の課題だなと思うんですよ。

—このアルバムのリリックにおいても、往々にしてご自身のアイデンティティーについて自問自答してますよね。それがラブソングであっても、ご自身のアイデンティティーについて歌っていると感じる。

ゆう姫:ほんとにそうですね。

—だから、サウンドもボーカルも歌詞の筆致も静謐なんだけど、青い炎が燃えているような熱量があって。それは、ゆう姫さんがアイデンティティーを自問自答している強度なのかなと思います。

ゆう姫:インタビュアーさんもしかして心理学者?(笑) その指摘はバッチリ合ってます。

ラストの3か月、血の滲むような作業をして。「人間ってこんなに作業を続けられるんだ」と思いました。(JEMAPUR)

—トラックを作っているJEMAPURさんから見た今作はいかがですか?

JEMAPUR:ちょっと時間をかけすぎたところもありますど、結果的に時間をかけたことによって到達できた完成度があると思います。自分のなかで、どこが制作の終わりかわからないというか、終われないんです(笑)。

ソロ活動のほうでも、もう4~5年くらい作品を出してなくて、未完成の曲が100曲くらい溜まっている。なぜかというと、作っている途中で、「技術的に未熟だな」と思って止まっちゃうんです。

2015年10月に行われたライブの模様

JEMAPUR:今回、僕自身にとって初めてのプロデュース作品ということもあって、本当の意味でもう一度ちゃんとエンジニアリングを学び直したんです。ゆう姫の声の魅力がしっかり伝わるようにというのと、音楽における「音の顔」と言えるようなところを突き詰めるために、ラストの3か月くらいで血の滲むような作業をして。「人間ってこんなに作業を続けられるんだ」と自分でも思いました。

ゆう姫:作業変態(笑)。

JEMAPUR:曲を作りながら、自分でも深淵さを把握できないくらい広がりを持っているものもあって。たとえば“A Way Out”とか。

—まさに。さっきブルースって言いましたけど、この曲はものすごく深淵なサウンドスケープが広がっていますね。

ゆう姫:そう、この曲ヤバいんですよ。

JEMAPUR:鳴っているのは全部電子音なんですけど、手を入れれば入れるほどどんどん有機的になって生モノっぽくなっていく行程がすごく面白かったです。触れば触るほど、グリッド的なコンピューターっぽいところから離れて人間味が出るので。このアルバムに特殊な響きがあるのは、それが理由だと思いますね。

「まだ違う、まだ強度がない、まだできる」って思って、リリースに踏み切れなかった。(JEMAPUR)

—4年前に生まれた曲と最新の曲を、一枚のアルバムに編めた意義も大きいと思います。要は、時差を感じさせない音楽的な説得力に富んでいる。

JEMAPUR:そうですね。何と言うべきなのかな……ソロだと特にそうなんですけど、基本的に僕は常に変態的なリサーチをしてるんですね。

—たとえば?

JEMAPUR:たとえば、「BOOMKAT」(クラブミュージックから実験的な音楽まで幅広く扱うレコードストア / オンラインショップ)にある音源を全部聴いたりってことなんですけど、それって僕のなかでは基本で。そこからじゃないと始められないというか、前提として、今の時代の最先端をちゃんと把握したいんです。誰がどこまで行き着いているのかをまず知りたい。

そういう人たちに対抗し、超えるものを打ち出すにはどうすればよいかを常に考えているんです。ただ、そういう意識だけでYJYをやろうとすると、人に伝わりにくいものになるところもあるんです。

ゆう姫

—それはYJYが歌モノのプロジェクトである影響も大きいですか?

JEMAPUR:歌モノだと特に難しいですね。というのは、先鋭的な音が向かっている方向って、質感やテクスチャーとか、インフラに対するハッキングの方法論みたいなところで。そうすると歌じゃなくて、現代美術みたいになってくるというか。

—サウンドアート然としてくると。

JEMAPUR:そう、サウンドアートになっていくので、リズムやテンポという概念のない領域に入っていっちゃうんです。そういう感性と、YJYのような歌モノの音楽をどう結び合わせられるかという領域をずっと探っていた時期もありました。「まだ違う、まだ強度がない、まだできる」って思って、リリースに踏み切れなくて結果的に時間がかかっちゃいましたね。

ゆう姫:私は、「もうやめて! 今の時点で最高だから!」って言ってね(笑)。まあ、「じゃあこれでOK」とも言いはしないんだけど、ストッパーをかけないと無限に作業を続けますから。私が意見を言うことで、お互いの軸を確認しているんです。

ゆう姫

自分の脳みそをAIみたいに使ってるんです。そうなると、最終的に求めるのは「気持ちのいい音」だけで。(JEMAPUR)

—トラックメイクにおいても、ゆう姫さんという客観的視点があることがJEMAPURさんにとっては大事になっている。

JEMAPUR:そうですね。エンジニアリング的な話でいうと、全13曲あって、1曲あたりだいたい60~80トラックあるんですね。そうすると、アルバム全体で900くらいのトラックあって、1トラックあたりエフェクトの数も10個ある。

そういう膨大な数のパラメーターのバランスを完璧にしないと作業が終われないんです。今回はそれをやり切りました。この話をしていてもアドレナリンが出るというか(笑)。自分でもやっていることがヤバいなと思います。

—たとえば、ビートの面で一貫してこだわったところはありますか?

JEMAPUR:どう言っていいか難しいですね。さっき言ったように、尋常じゃない音楽を聴きながら、自分の脳みそをAIみたいに使ってるんです。そうなると、最終的に求めるのは「気持ちのいい音」だけで。快楽主義ではないですけど、響きが美しいことが重要というか。だから、時代的な背景よりも響きにどんどんフォーカスしていくんです。

監督はAphex TwinのビジュアルコラボレーターであるWEIRDCORE

—そもそもJEMAPURさんの一番の音楽的なルーツはどこにあるんですか?

JEMAPUR:一番のルーツは……初期衝動として自分がルーツに感じているのは、もともとクラシックをやっていたところから電子音楽やノイズにバッと興味が移った瞬間なんですね。枠の外に飛び出す衝動を覚えたときに、その概念が自分のルーツです。「枠に収まらない生き方をする」という選択をしたときの衝動というか。

—音楽的な方法論としてヒップホップの影響もありますよね?

JEMAPUR:ヒップホップの影響というより、サンプリングという発明の影響ですね。

—なるほど。

JEMAPUR:そこからの影響は大きいですね。

自分を知ることで、初めて唯一無二のものが生まれると思うんです。(ゆう姫)

—YJYは海外に対してはどういうスタンスですか? 当初からこのユニットはユニバーサルな音楽を作っている自負があるんじゃないかと思うのですが。

JEMAPUR:僕は日本の音楽をあまり聴かないということもあって、最初から日本のマーケットについては特に意識していなくて。世界に照準を合わせることが当たり前の感覚なんですよね。そもそも日本にいるという感覚もそんなに重要じゃないと思っていて。「どこ出身ですか?」って訊かれたら「インターネット出身です」と答える感覚なんです(笑)。

—(笑)。

JEMAPUR:だから「日本人の音楽家としてこうあるべき」という感覚も特にありません。

ゆう姫:私は海外に住んでいたこともあるし、海外が遠い場所だと思ってないんですよ。海外の人たちに対して特別壁を感じないです。私も場所に執着がないんですよね。

ゆう姫:でも、オリジナルであることはすごく重要で。たとえば日本人が海外アーティストの真似をしているような音楽を作ったとして、「それだったら本家のほうを聴くけど?」ってなりますよね? 「英語を話せないなら英詞で書くのはどうなんだろう」とも思うし。

自分のアイデンティティーにないものを真似ても、オリジネーターにはなれない。だから、音楽だったら曲のなかで自分を見つけること、曲のなかに自分がいることが一番大事で。でも、それってものすごく大変なことだし、無視しがちですよね。だって、自分のことを知るのって怖いから。

—痛いしね。

ゆう姫:うん、痛いし、恥ずかしいし、避けがちなんですけどね。でも自分を知ることで、初めて唯一無二のものが生まれると思うんですよ。それがあればどこにいても大丈夫。日本でも海外でも。

ゆう姫

『mirror』は禁断の入口でもあると思っていて。(ゆう姫)

—『mirror』というタイトルが意味しているのもそういうことですよね。

ゆう姫:まさに。

JEMAPUR:よくできてますね、このタイトルは。ゆう姫も言ってるように、音楽を聴くことも自分と向き合うことだと思うから。

ゆう姫:『mirror』は禁断の入口でもあると思っていて。人間の目って自分を見るようには作られていないじゃないですか。鏡というものを見た瞬間に初めて自分がどういう姿なのかを知り、いろんな感情を覚える。

鏡のなかの自分は本当の世界ではないんだけど、鏡を見ることで「自分のここは好きだな」「ここはイヤだな」って欲望や嫉みが生まれてくる。でもその分、世界も広がっていくんですよね。

ゆう姫

ゆう姫:だから、鏡って禁断の扉のような要素を持ってると思うんですよ。このアルバムも聴く人にとってそういうものであってほしいなと思って『mirror』というタイトルをつけました。このアルバムを聴いて、世界を広げてほしいし、自分を見つめるきっかけにもなってほしい。

—よく言いますよね。鏡に向かって毎日「お前は誰だ」って自分に問いかけるとわりとすぐに気が狂うって。ゆう姫さんの言うとおり、鏡はまさに「禁断の扉」だと。最後に、11月30日に六本木SuperDeluxeで開催される本作のリリースパーティーについて語ってもらえたら。この日はゆう姫さんの誕生日でもあるんですよね。

ゆう姫:私の誕生日だし、みんな来てねって感じです(笑)。DJには真鍋大度さんとLicaxxxが参加してくれます。あと、ティム・ギャロという数々の著名人を撮っているロシア人の写真家がいるんですけど、彼が「ゆう姫を撮りたい」と言ってくれていて。彼が撮影してくれた私の写真も展示する予定です。

JEMAPUR:かなりタイトかつスペシャルなパーティーになると思います。

Young Juvenile Youth『mirror』初回生産限定盤ジャケット
Young Juvenile Youth『mirror』初回生産限定盤ジャケット(Amazonで見る

リリース情報
Young Juvenile Youth
『mirror』初回生産限定盤(CD+DVD)

2017年11月22日(水)発売
価格:3,888円(税込)
UMA-9100/1

[CD]
1. Her
2. Keys
3. In Blue
4. When feat. Campanella
5. R.E.M.
6. Girlfriend
7. Gossip
8. Slapback
9. Youth
10. Hive
11. Anti Everything
12. A Way Out
13. Roman
[DVD]
1. Slapback
2. Her
3. Youth
4. Animation
※7インチサイズ紙ジャケット仕様、16Pブックレット付き

Young Juvenile Youth
『mirror』通常盤(CD)

2017年11月22日(水)発売
価格:2,700円(税込)
UMA-1100

1. Her
2. Keys
3. In Blue
4. When feat. Campanella
5. R.E.M.
6. Girlfriend
7. Gossip
8. Slapback
9. Youth
10. Hive
11. Anti Everything
12. A Way Out
13. Roman

イベント情報
『birth of mirror』

2017年11月30日(木)
会場:東京都 六本木SuperDeluxe
ライブ:Young Juvenile Youth
DJ:
Daito Manabe (Rhizomatiks)
Licaxxx
Lighting:
HGRN
光線クラブ
Photo Exhibition:ティム・ギャロ

プロフィール
Young Juvenile Youth (やんぐ じゅゔぃないる ゆーす)

ヴォーカルゆう姫と電子音楽家JEMAPURによるエレクトロニック・ミュージック・ユニット。2012年より活動を開始。2015年、iTunesが世界中のニューカマーの中から選ぶ「NEW ARTIST スポットライト」に選出される。同年Beat Recordsよりミニ・アルバム「Animation」をリリース。iTunesエレクトロニック・チャートにおいて最高7週連続1位を獲得。映像作家・関根光才監督が手がけたMV「Animation」が海外を中心に話題を呼ぶ。U/M/A/Aに移籍後、2016年5月、「Hive / In Blue」を配信限定でリリース。同年、ショウダユキヒロ監督による新感覚体感型アート・フィルム『KAMUY』で村上虹郎と共にゆう姫が主演を務め話題を呼ぶ。この映画の中で重要な役割を担った楽曲「A Way Out」を「Youth」と共に配信と数量限定カセット・テープにてリリース。2017年11月、デビュー・アルバム『mirror』をリリースする。Taicoclub、朝霧JAM、EMAF TOKYO、Boiler Room、MUTEK.JPといった音楽イベントのみならず、YSL、sacai / UNDERCOVER PARTY、ERDEM x H&Mなどファッション界からも大きな注目を集める。



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