高校を卒業しても自由にはなれなかった。みきなつみの葛藤と成長

埼玉出身、19歳のシンガーソングライター・みきなつみが、初の全国流通音源『きみとわたしとメロンソーダ』を3月14日にリリースする。

CINRA.NETでは、約1年半ぶりのインタビュー。1年半前の彼女は、まだ18歳の高校生で、夢や理想はあるが、自分がこの先どうなっていくのか想像もできない……そんな、とても衝動的な状態だった。今回、久しぶりに話を聞かせてくれたみきなつみは、18歳の頃にはなかった凛とした力強さを兼ね備えて、私たちの前に表れた。その力強さとは言うなれば、揺れ動くこと、悩み続けること、変わり続けることを肯定する強さだ。

『きみとわたしとメロンソーダ』は、「きみとわたし」で完結された作品でなく、あくまでも「メロンソーダ」という3つ目の視点の存在が重要な作品だ。二人の間に置かれたメロンソーダは、まるで砂時計のように、じわじわと刻まれる時間の経過を露にする。だが、ひっくり返せばまた砂が元に戻る砂時計とは違い、メロンソーダの抜けた炭酸は、もう簡単には、元に戻らない。

大人になりたいけどなれないし、子供でいたいしっていう……この気持ちは今しか書けないもの。

—みきさんにインタビューさせていただくのは、約1年半ぶりです。あの頃はまだ、18歳の高校生だったんですよね。(参考記事:女子高生のみきなつみ、音楽業界のオトナたちの言葉に困惑する

みき:前回の取材のとき、雨降っていましたよね。しかも私、取材場所に行く途中で迷子になって……。

—そう、割と大胆に遅刻されましたよね(笑)。

みき:あの日、お母さんに泣きながら電話したんですよ! でも、あれから1年半経って……あぁ、すごいなぁ。

—なにがすごいですか?

みき:だって今日、ここまで迷子にならずに来ることができたから(笑)。

みきなつみ
みきなつみ

—(笑)。あのときはまだ音源のリリースもしていなくて、プロのミュージシャンになるにはどうすればいいのか? という点で、いろんな迷いがあった時期だったと思うんですけど、遂に、作品の全国流通が決まりました。

みき:はい。「買ってもらえるかなぁ?」とか、「どんなふうに思われるんだろう?」とか、不安もいっぱいあるんですけど、「楽しみだな」っていう気持ちの方が大きいです。初めてのちゃんとしたレコーディングも楽しかったし、「こういう人たちに聴いてほしい」ということを想像しながら作れたので。そうやって作った音楽を、いろんな人たちに渡せるのが楽しみです。

みきなつみ『きみとわたしとメロンソーダ』ジャケット
みきなつみ『きみとわたしとメロンソーダ』ジャケット(Amazonで見る

—どんな人たちに聴いてほしいと思いますか?

みき:同じ世代の人たちですね。そこに一番刺さるんじゃないかなって思っています。やっぱり、そのときに感じたことしか歌にできないし、その瞬間を残すのが好きだから。

—瞬間を歌にして切り取る、というスタンスは、1年半前から一貫していますね。

みき:そうですね。でも、だからこそ、今回の作品は上の世代の人が聴いても「こういう時期があったな」と思ってもらえるんじゃないか、とも思うんです。たとえば、『きみとわたしとメロンソーダ』の2曲目の“神様も知らない”は、1番では高校生だった17歳の頃の自分の気持ちを歌って、2番では現在の19歳の自分の気持ちを歌っているんですね。

大人になりたいけどなれないし、子供でいたいしっていう……この気持ちは今しか書けないものだけど、上の世代の人が聴いても、「こういう時期があったなぁ」って思ってもらえるんじゃないかなぁ。

自由になれると思って、髪を染めたりピアスを開けたりしたけど、そんなことをしている自分が誰よりもダサかった。

—常に「いま」に向き合い続けてきたみきさんご自身のなかに、過去を振り返る視点が生まれてきたということですよね。実際、17歳だった頃から19歳の現在で、自分自身はどのように変わったと思います?

みき:そうですね……17歳のときは、変に大人になろうとしていたなって思います。こういうインタビューの場でも、着飾っていたし、かっこつけてしまっていたというか。だから、初めてインタビューしてもらったときに比べて、私、いろんな意味で子供になった気がするんですよ。

みきなつみ

みきなつみ

—面白いですね。「大人になること」は「子供になること」でもあった?

みき:高校生の頃って、ある程度縛られた環境にいたから、「自由」というものにすごく惹かれていたと思うんです。だから、高校を卒業したあと、髪を染めたり、ピアスを開けたり、高校生の頃にダメだと言われていたことは全部やったんです。でも、なにも変わらなかった。当時の自分、本当にダサかったなって思うんですけど……そういう瞬間、ありませんでした?

—わかります。服装を変えたり、住む場所を変えたりしても、結局、そこにいるのは高校時代から地続きの自分自身なんだって気づく……その瞬間の虚無感みたいなものは、僕も大学に進学した頃に感じました。

みき:私も、虚しくなったんですよ。自由になれると思って、髪を染めたりピアスを開けたりしたけど、そんなことをしている自分が誰よりもダサかった。それに気づいた瞬間、「自由になりたい」って、なんだ? って……孤独になった、というか。

—高校を卒業したあとは、進学の道などは考えなかったんですか?

みき:前のインタビューのときが、ちょうど悩んでいた時期だったと思うんですけど、結局、進学はしなかったです。

—きっと、音楽を辞めるという選択もあったと思うんですけど、音楽を手放すことはしなかったわけですよね。

みき:それは無理ですね。音楽は、私が唯一、ずっと続けてくることができたものだから。離れることができないと思います。

あの頃、東京は戦場だったんですよ。

—学校という束縛された場所で、自由を追い求めるなかで手にした音楽と、「自由」という言葉の虚しさを知ったいま、手にしている音楽と……みきさんのなかで、音楽に対するモチベーションは、どのように変わりましたか?

みき:17歳の頃は、単純に、歌っている自分がかっこいいから歌っていたし、都内に出てライブをしている自分がかっこいいと思っていた。私、住んでいるのは埼玉なんですけど、あの頃、東京は戦場だったんですよ。まぁ、迷子になっちゃっていたんですけど……(笑)。

—(笑)。……でも、迷子になってでも闘いたかった?

みき:ライブは楽しかったし、そこにある新しい出会いは刺激的だったけど……でも、やっぱり、遊ぶ場所ではなかった。

—東京で、なにと闘っていたんだと思います?

みき:……自分を探していたんです。「どうしたら周りとの違いを出せるんだろう?」って考えていたし、「勝たなきゃ!」と思っていた。

でも、いまは「東京って楽しいな」と思います。MCひとつとっても、かっこいいことは言わなくても、普通に昨日あったことを話していいし、本当の「みきなつみ」というものを、もっと好きになってもらえばいいんだなって素直に思えるようになったというか。

みきなつみ

—そう思えるようになったことで、音楽の生まれ方が変わったりもしましたか?

みき:う~ん……音楽は日記のように自分の瞬間を残すものっていうことは、やっぱり変わらないです。でも、前よりも「もっと多くの人に聴いてもらう」ということを考えるようになったと思います。

「自分の考えたことをそのまま書く」っていうスタンスは変わらないけど、そのなかで、みんなの心を掴む言葉も取り入れたい。私個人の瞬間がありつつ、偶然でもいいから、聴いた人がリンクできるようなものがあればいいなって考えるようになったのは、変わったところかもしれないです。

今回、歌詞を元チャットモンチーの高橋(久美子)さんに見てもらえる機会があったんですよ。

—いまの話に繋がる気がするんですけど、僕は、今作のみきさんの固有名詞の使われ方がすごく好きなんですよ。たとえば“your song”の<渋谷タワレコで一押しのアーティスト>とか、“朝よ、こないで”の<スピーカーからクリープハイプ / 今日もかっこよくて泣けてくるね>とか。

「タワレコ」も「クリープハイプ」も、具体的かつ大衆性のあるワードだと思うんです。こういう単語を歌詞に入れることで、みきさんが見ている情景がすごくリアルに伝わってくるし、同時に、その単語を通じて、それぞれの聴き手が自分たちの生活に想いを馳せることができる。

みき:……実は今回、制作中に、歌詞を元チャットモンチーの高橋(久美子)さんに見てもらえる機会があったんですよ。

—へぇ!

みき:前に他の人に歌詞を見てもらったとき、「これだと言葉を足しすぎているから、よくないんじゃない?」って言われたことがあって。そこから、どう歌詞を書けばいいのか、わからなくなっていた時期があったんですよ。

そんななかで、高橋さんは「ええんよ。こういうのはもっと足していき」って言ってくださって。あの徳島弁で話してくださる感じが、すごく柔らかくて、優しくて。そう言われたとき、「いままでの感覚で曲を書き続けていいんだ」って、ほっとしたんですよね。

『きみとわたしとメロンソーダ』収録曲

—それはすごく貴重な機会でしたね。

みき:はい。やっぱり高橋さんはアーティストの気持ちを考えてくださる方だし、女性だし、一言一言が「わかる~」っていう感じで。自分の書きたい歌詞をわかってくれるのも嬉しかったです。初めて自分の言葉が受け入れられた気がしたし、自分でも納得できる感じがあって。

—本当に、よき理解者に出会えたという感じだったんですね。

みき:自分の成長にもなりました。やっぱり、言葉のチョイスは人それぞれ違うんだし、私にしか書けない言葉を書いたらいいんだって。私が「光り輝く未来へ!」とか書いても、しょうがないから。

ずっと、自分にしか書けない歌詞を書きたいと思い続けてきたけど、どこまでリアルな自分を出していいのか、すごく悩んでいたんですよ。たとえば、“朝よ、こないで”の<早朝のファミレス / マグロ丼にメロンソーダを>っていうラインとか、「こんなこと書いていいのかな?」と思っていたんですけど、高橋さんに「これ、すっごくいいよ!」って言われて、「よかったぁ~」と思って。

みきなつみ

—確かに、<マグロ丼にメロンソーダ>も、すごく秀逸なラインですよね。みきさんの音楽は、こういった描写の一つひとつがすごくダイレクトで、心地いいです。

みき:嬉しいです。……こういうのって、みんなが一度は経験するシチュエーションなんじゃないかと思うんです。そのとき、食べているものがマグロ丼ではなかったり、流れている音楽がクリープハイプではないかもしれないけど、でも、私がそこで感じたのと似た感情って、経験している人は多いんじゃないかと思う。だからこそ届くんじゃないかなって。

—ただ、裏を返すと、ここまで具体的な歌詞って、歌うのが怖くなったりもしませんか? ある意味で、自分のプライベートを、歌を通して開陳しているわけだから。

みき:確かに、最初は「歌っていいものか?」って考えるものもあるんですけど、それより「歌いたい!」っていう気持ちの方が強いです。

—“your song”の歌詞とか、<あなた>の存在が誰なのかわかっちゃいそうなぐらい描写が具体的で、ちょっとギリギリな感じもしますけど……。

みき:でも、そこがいいですよね……へへへ(笑)。

めっちゃ美人が私の曲を歌っても響かないと思う。

—これまで、みきさんは『未確認フェス』に出られたこともあって、「10代」や「学生」といったワードが、ある種のブランドのように付きまとっていたことも事実だと思うんです。ただ、そういったものが取り払われてきたいま、自己紹介をするとしたら、みきさんは自分自身をどんなアーティストだといいますか?

みき:う~ん……「普通の女の子ですよ」って感じですね。私は特別に可愛いわけじゃないし、頭がいいわけでもないし、音楽も、なにかが長けているわけではなくて。

根本は、本当に普通のひとりの人間だから。でも、だからこそ書ける曲があると思うんです。めっちゃ美人が私の曲を歌っても響かないと思う。「あの娘も同じような気持ちを抱えているんだな」とか、「私も、頑張ったら夢を叶えられるんじゃないか」って思ってもらえる存在になりたいんですよね。

みきなつみ

—聴き手一人ひとりのなかにある「叫び」に気づかせる、というか。

みき:はい。「みんな、そういうものあるでしょう?」って思います。それをどこまで出せるかが、いま、自分がやりたいことなんです。これができるから、ミュージシャンはかっこいいんだと思う。

高校生だった頃は、「高校生」であるだけで強かったなって思う。

—みきさんは、成長することや変わっていくことを恐れない、ドンドン前に進んでいく人ですよね。変わっていくことは、イヤじゃないでしょう?

みき:そうですね。受け入れるしかないから。たとえば恋愛の歌詞を書いていても、「永遠」ってなんだろう? って、すごく思うんです。「永遠なんてないのかもなぁ」って思ったり。

—うん……。

みき:男の人って、すぐに「結婚しよう」とか言いません?

—えぇ~!(笑)。僕は簡単には言えないですね……。

みき:私の周りだけかなぁ?(笑)。でも、女の人って現実的なんですよ。「もちろんあなたとずっと一緒にいたいよ。でもね……」っていう。そういう現実的な自分のことも、曲にしていきたいなって思います。

なので、恋愛の歌詞の書き方も変わってきましたね。17歳の頃は、ただただ恋をしていたけど、いまは「これから」を見つめて恋をしたり、愛について考えていくんだろうなって。

みきなつみ

—今作の最後を締める“朝よ、こないで”も、別れの歌ですもんね。

みき:アルバムのタイトルの『きみとわたしとメロンソーダ』も、「きみとわたしのこれからのこと」みたいなニュアンスなんです。あと、私、メロンソーダが好きなんですよね。“朝よ、こないで”以外の曲でも、歌詞に使っていたりするんです。炭酸が消えて、甘さだけが残っちゃう感じとか……。

—消えてしまうことと、変わっていくことと、残されていくことと。「メロンソーダ」という単語からは、いろんな想いが連想されますね。

みき:そうですよね。私自身、こうやって久しぶりにインタビューを受けて、渋谷で迷子にならなくたった自分が、実は、ちょっと寂しかったりもするんですよ(笑)。高校生だった頃は、「高校生」であるだけで強かったなって思う。……でも、きっと忘れちゃうから。

—うん。

みき:瞬間を大切にできないんですよ、私は。「瞬間を歌っています!」なんて言って、こんな歌を歌っているから、その瞬間瞬間を大切にしている人だと思われるかもしれないけど、本当は違って。私は瞬間を大切にできない。すぐに忘れちゃう。だから、音楽にしているんだと思うんです。

『Eggs』

アーティストが自身の楽曲やプロフィール、活動情報、ライブ映像などを自由に登録・公開し、また、リスナーも登録された楽曲を聴き、プレビューや「いいね」等を行うことができる、アーティストとリスナーをつなぐ新しい音楽の無料プラットフォーム。登録アーティストの楽曲視聴や情報は、「Eggsアプリ」(無料)をダウンロードすると、いつでもお手もとでお楽しみいただけます。

料金:無料

リリース情報
みきなつみ
『きみとわたしとメロンソーダ』

2018年3月14日(水)発売
1,700円(税込)
EGGS-029

1. Dear
2. 神様も知らない
3. your song
4. 本気を魅せてやれ
5. 君へ送る唄
6. 朝よ、こないで

プロジェクト情報
『みきなつみ史上最大の挑戦、47都道府県ツアー応援プロジェクト!』

プロジェクト受付期間:2018年3月31日(土)23:59まで

プロフィール
みきなつみ
みきなつみ

19歳 埼玉県出身、身長150cm。2015年高校2年生の春からライブ活動を始める。夏にはTOKYO FM(他JFN全国38局で放送)の看板番組「SCHOOL OF LOCK!」による10代アーティスト限定のエントリー型音楽フェス『未確認フェスティバル2015』に出演し、3000通を越える応募の中からファイナリスト8組の最後の1枠に選ばれる。2016年にはイナズマロックフェス出演。またZEPP TOKYOのステージも経験。2017年8月には初のワンマンライブをO-crestで実施。また同年、インディーズバンド音楽配信サイト:Eggsで年間ランキングのアーティスト部門で1位に輝く。2018年には世界最大規模の楽器ショーNAMM SHOWでライブを行う。3月14日に初の全国流通のCDをリリース、また3月29日にはレコ発ワンマンと今まで以上に精力的な活動をしていく。



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