Maison book girlがアイドル界を俯瞰して語る、自らの立ち位置

変拍子、不協和音などアバンギャルンドな要素を取り入れた楽曲、コンテンポラリーダンスにも通じる振付けによるパフォーマンス、芸術性を高めたアートワーク。アイドルシーンに収まらずポップカルチャーシーンにおいて際立った存在感を示しているMaison book girl(以下、ブクガ)が、6月20日にレーベル移籍第1弾となるシングル『elude』をリリースする。

さまざまなアイドルグループが次々と生まれては、メンバーの卒業や解散などを経て、過渡期にあるように思うアイドルシーン。そんななかで、バンドやミュージシャンと対バンを行うなど、より音楽シーンから近い立ち位置にいるように見えるブクガの4人へインタビューを行った。結成から3年以上経ち、アイドル界を隅のほうから見てきたようにも思う彼女たちは現状をどう捉えているのか? 現状における自らの立ち位置、ブクガの世界観の捉え方、グループの現状と将来像などについて語ってもらった。

(アイドルフェスは)最初の頃は場違いなんじゃないかと感じることもあったし、自信もなくて。(コショージ)

—AKB48を起点にしたアイドル戦国時代が一段落して、いまアイドルシーンは過渡期にあるように見えます。そんななかブクガは独自の立ち位置を得ているように思いますが、みなさんは現在のアイドルシーンをどう捉えていますか?

コショージ:私はアイドルの友達も多いし、そういう子たちからいろいろな話を聞いてるんですけど、アイドルってファンの皆さんに応援し続けてもらうには「そんなことまでしないといけないよね」ということもいっぱいあって、すごくがんばってると思うんです。でも、確かにブクガはそういう場所から少し外れているんですよね。最近は、アイドルグループの解散やメンバーの脱退も多いですけど、私たちのところにそういう波は来ていなくて。

Maison book girl 左から:井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ
Maison book girl 左から:井上唯、和田輪、矢川葵、コショージメグミ

—そういった状況は、一歩引いて冷静に見ている? それとも同じシーンの一員という感覚?

コショージ:共存してますね。最近でいうと、アイドルネッサンスが解散したときは自分事のようでした。自分のグループがなくなったような気がして。同じ世代で同じ舞台に立っていたという感じがあったから、仲間がいなくなってしまう寂しさがありました。

コショージメグミ
コショージメグミ

井上:アイドルネッサンスとはイベントで一緒になることも多かったからね。解散もそうだし、「あの子が辞めた(脱退した)んだ」ということに、他のアイドルの子は影響を受けることもあると思うんですけど、私たちはまた違うところにいるというか。

井上唯
井上唯

コショージ:うん。「その場所に自分たちはいない」と客観的に見ている感じもあるんですよ。何なんだろう?

和田:私たちが他のアイドルグループとまったく同じ括りで見られているか? と言えば、そうではない気がするというか。不思議な場所にいるという自覚はありますね。

—それは、他のグループとは異なる個性を確立できている、みたいな実感があるんでしょうか?

矢川:確立できているかはわからないですけど、この前、家で“bath room”(2015年)という私たちの1stアルバムの収録曲を聴き直してみたんですよ。そのときに「アイドルがデビューして、初めて歌う曲がこれか。私たち、最初からおかしかったんだな」と思って(笑)。

コショージ井上和田:ハハハハハ!

矢川:私がそれまで聴いてきた音楽と比べても完全に異質だったし、他のグループだったらこの曲はやってないと思うんです。それでも3年くらい続けてこられたのは良かったなって、改めて思いました。

矢川葵
矢川葵

コショージ:アイドルフェスに出させてもらっても、周りは笑顔で明るいイメージだし、自分たちのようなグループはいないですよね。最初の頃は場違いなんじゃないかと感じることもあったし、自信もなくて。でも、最近ようやくファンの方や周りの方から「Maison book girlはMaison book girlしかいなくて、それが強味なんだよ」って言ってもらえるようになって。それでやっと自信を持てるようになってきた感じですね。そういう言葉を素直に受け入れられないこともあるんですけど(笑)。

最初の頃は自分たちと似たようなグループがまったくいなくて。(和田)

—ブクガは音楽的にも非常に面白いですし、アイドル好きな人たちだけではなくて、コアな音楽ファンに届いている印象もあります。

コショージ:そうなのかな? 「じつはブクガの曲が好きなんですよ」って言われることもあって。そこは声を大にして言ってほしい(笑)。

井上:「じつは」ってなんだよ! って(笑)。

和田:最初の頃は自分たちと似たようなグループがまったくいなくて、「どうやって上を目指せばいいんだろう?」「この曲と私たちでできることって何だろう?」ってすごく困ってたんです。暗中模索しながら、けもの道をかき分けるようにして(笑)、少しずつ道が見えてきたというか。

和田輪
和田輪

矢川:ライブのたびにキャパが増えていたりするので、そういうところでも「成長できてるのかも」と思います。曲もどんどん高度になって、振付けも難しくなっていて。それに食らいつくことで少しずつ良くなっているのかなって。

—ブクガは振付けも、他のグループとはちょっと異質というか。

井上:「振付け、変わってるね」ってよく言われます(笑)。

和田:はじめたときはほとんど初心者だったし、ダンスのルーツもなかったから、相当大変でした。与えられた振付けに対して「どうすればカッコ良くなるか」をみんなで話したり。

井上:当時の映像を観ると「よくこれで人前に出てたな」という感じです(笑)。

コショージ:まだド下手ですけどね。

和田:マイナスがゼロになっただけかも。

井上:振付けはずっとミキティ—本物さんがやってくれていて。いままでの流れもわかってくれたうえで、「こういうふうに見せたらいいんじゃない?」って提案してくれるのも大きいですね。

写真を撮るそばから顔を塗りつぶされたり。「私たち、そんなに顏ダメですか?」って(笑)。(コショージ)

—アートワーク関してはどうですか? メンバーの表情をはっきり見せるというより、写真、ビジュアルとしてのクオリティーを追求している印象もありますが。

矢川:顔が見えないこともあるので、アーティスト写真として機能しているのかな? とは思います(笑)。取材してもらってるときに「この写真は誰ですか?」って言われることもあるので。写真はプロデューサーのサクライケンタさんが撮ってくれてるんですが、1回、首から上を消そうしたことがあったんですよ。さすがに「それはやり過ぎじゃ……」と言って、止めました(笑)。

左から:コショージメグミ、矢川葵
左から:コショージメグミ、矢川葵

コショージ:写真を撮るそばから顔を塗りつぶしはじめたり。「私たち、そんなに顏ダメですか?」って(笑)。でき上がったビジュアルも顔は真っ黒でしたけど……。

真っ黒なコショージメグミのアーティスト写真
真っ黒なコショージメグミのアーティスト写真

和田:「今回は顔が出てるほうだね」とか(笑)。4人が金髪(コショージ)、ショートボブ、(矢川)、ロング(和田)、ミディアム(井上)だから成り立ってるんだと思います。

—なるほど、ヘアスタイルのシルエットで判別できますね。

矢川:あと、ミュージックビデオ(以下、MV)はずっと同じ方に撮ってもらってたんですけど、前回の“十六歳”のMVは東佳苗さん、今回の“レインコートと首の無い鳥”はsuzzkenさんにお願いしました。

和田:味方になって手伝ってくれる方が増えているのは嬉しいです。

—クリエイターを引き寄せる磁力があるんでしょうね。ブクガと一緒に何か作ってみたいと思うクリエイターは多いと思います。

和田:ホントですか?

井上:そうだったら嬉しいです。私、クリエイティブな世界のことに疎すぎて、音楽とかもぜんぜんわからなくて。音楽に詳しいファンの方から「あの曲のここの部分が……」みたいなことを言ってもらうんですけど、さっぱりわからなくて(笑)。「それでよくブクガやってるね」って言われます(笑)。

左から:井上唯、和田輪
左から:井上唯、和田輪

矢川:私も自分の趣味とブクガでやっていることはぜんぜん違いますね。ふだんは、どっちかというとファンシーでカワイイものが好きなんです。だから、友達から「本当はフリフリの衣装を着たいだろうに、よくこんなシュッとした格好してるよね。意外」みたいに言われました(笑)。いまは「こっちのほうがいい」と思ってますけど。

—フリフリの衣装は諦めた?

矢川:「回ったときにスカートをフワッとさせたいです」くらいは言います(笑)。あと、他のアイドルさんを見ていて「性格的に、ああいう感じにはなれないな」とも思うんですよ。素はこっち(ブクガ)だなって。じつは合ってたのかも(笑)。

矢川葵
矢川葵

コショージ:私の場合は、もともと好きな音楽や映像がブクガの世界観に近いんです。そういう面ではサクライさんと意見が合うんですよね。ただ、めちゃくちゃポップなものも好きなので、そこは葵(矢川)と話が合って。

矢川:サンリオのキャラクターとか好きだよね。

コショージ:あと、ライブでイギリスに行ったとき、すごくかわいいカップケーキがあったんですよ。そういうのも好きなので一緒に食べました(笑)。

矢川:かわいかったよね。あとは、かわいいアイドルさんも好きです。

—他のアイドルと自分たちとの違う部分って、他にも感じたりしますか?

コショージ:アイドルって、ライブ中に「メンバー同士で顔を見合わせてニコッ」みたいなのが多いじゃないですか。私たちはそれがぜんぜんないんです。

コショージメグミ
コショージメグミ

和田:葵ちゃん、ぜんぜん目を合わせてくれないんです。

矢川:えー(笑)。

コショージ:目が合うと笑っちゃうからじゃない?

矢川:ブクガは基本、ライブ中に笑っちゃいけないんです。だからと言って真剣な顔を見られるのもイヤだし、見るのもイヤなので(笑)。

私たちの曲がテレビCMなんかで流れる世界になったらいろいろと変わると思う。(コショージ)

—新作についても聞かせてください。ニューシングル『elude』はブクガの独創的な世界観をさらにアップデートさせた作品だと思います。今回はどんなコンセプトがあるんですか?

コショージ:「elude」は「逃れる」「忘れる」という意味なんです。

Maison book girl『elude』ジャケット
Maison book girl『elude』ジャケット(Amazonで見る

矢川:前回はサクライさんの歌詞をAIに覚えさせてたんですけど(5thシングル『cotoeri』のリード曲“言選り”はサクライケンタとAIの共同制作。これまでに手がけてきた歌詞をAIに学習させ、新たな歌詞を作成した)、今回はわざわざ忘れさせるっていう。そういうヒネくれたところがサクライさんっぽいなって思いますね。ちょっと歪んだ世界観というか。

井上:今回の“レインコートと首の無い鳥”は5拍子なんですよ。かなり難しかったんですけど、たくさん練習してレコーディングに臨んで。

井上唯
井上唯

—アルバム『image』(2017年)の発売、UKツアー、フェス参加などを経て、レコード会社を移籍してニューシングルをリリース。ブクガ自体が新しいフェーズに突入している印象もあります。

コショージ:5月は壁がたくさんあったんです。キネマ倶楽部でワンマンがあって、『ビバラポップ!』に出演させてもらって、海外でライブをやって、その直後に日本でアルバムのツアーがあって。そのたびに強度を増している実感があるし、今回の作品は最後の壁をバーン! と倒す感じというか。

井上:ラスボスだね(笑)。

コショージ:私たちが壁を作っているのではなくて、出てくる壁に立ち向かうような感覚なんですよね。それを倒して、壊していくことで、私たち自身も強くなれるというか。

和田:壁がどんどん現れるのは、とてもありがたいことだと思います。この波を上手に乗りこなして、完璧に超えることで先が見えてくるんじゃないかなって。そのなかで実力を伸ばしていかねばという意識もあるし、少しずつ自信もつけられているんじゃないかなと。海外のライブでも「ちゃんと音楽を受け止めてもらえている」という実感があったし、このままダレることなく、日本青年館の最終公演までいきたいですね。

和田輪
和田輪

矢川:前回のワンマンツアーでは完売できなかった会場もあって。そういう悔しさを一つひとつ失くしていくことが目標です。

—大きな目標は掲げず、目の前のことに全力で臨むと。

コショージ:大きな目標で言えば、やっぱりブクガが売れたらすごいことになると思うんですよ。私たちの曲がテレビCMなんかで流れる世界になったらいろいろと変わると思うし、「そんなわかりづらい曲、売れないよ」と言ってた人たちに「ドヤ!」してやりたいですよね(笑)。

リリース情報
Maison book girl
『elude』

2018年6月20日(水)発売
価格:1,300円(税込)
PCCA.04692

1.レインコートと首の無い鳥
2.おかえりさよなら
3.教室
4.レインコートと首の無い鳥(instrumental)
5.おかえりさよなら(instrumental)
6.教室(instrumental)

イベント情報
『Maison book girl tour 2018』

2018年5月26日(土)
会場:福岡DRUM SON

2018年6月3日(日)
会場:宮城県 仙台 CLUB JUNK BOX

2018年6月10日(日)
会場:愛知県 名古屋 Electric Lady Land

2018年6月17日(日)
会場:大阪 梅田バナナホール

2018年6月23日(土)
会場:東京 日本青年館ホール

プロフィール
Maison book girl
Maison book girl (めぞん ぶっく がーる)

矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミ、による4人組グループ。通称ブクガ。音楽家サクライケンタが楽曲から世界観構築まで全面プロデュースを行い、独自の音楽性やブランディングが施された世界観が話題を呼び、2016年11月メジャーデビュー。2017年4月5日には待望のメジャー1stアルバム「image」を発売。2018年5月17日~5月19日にイギリス・ブライトンで行われる国際音楽フェス『THE GREAT ESCAPE FESTIVAL2018』に日本代表として出演。2018年5月4日を皮切りに、全国5ヶ所で行われるワンマンツアー「Maison book girl tour2018」を決行。ツアーファイナル「Solitude HOTEL 5F」は6月23日に日本青年館にて開催。



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