K-POPアイドルINFINITE、その栄光の影には多くの失敗もあった

このCINRA.NETを見ている人は、K-POPに対してどんなイメージを持っているだろうか。洗練された楽曲とパフォーマンスという肯定的なイメージを持つ人もいれば、似たような楽曲やお遊戯会のようなパフォーマンスだと否定的に捉える人もいるかもしれない。一見、相反する意見のように思えるかもしれないが、そのどちらも間違いではないと思う。なぜなら、K-POPは何かひとつヒットが生まれると、コピーしたような作品が雨後の筍のように生み出されるシーン。熾烈な競争のなかで洗練を重ねるものもあれば、ただ単に真似しただけでクオリティーの低いものもある。

ここで紹介するINFINITEは、異常なまでにダンスを磨き上げ、普遍的なメロディーと最新のサウンドを融合させた楽曲で、韓国、日本、そしてアジア各国でも人気を拡大している旬なグループだ。しかしその成功の影には、数多くの失敗と挫折、そして苦労もあった。その苦労が、彼らのパフォーマンスを支える力にもなっているのだ。彼らがなぜ注目を集められるのか、若きトップグループの本音を探った。

他のグループと絶対的な差別化に成功したINFINITE圧巻のダンス

INFINITEは韓国の7人組ボーイズグループ。いまさら韓流アイドルかよ……とは思わないでほしいのだが、2012年に『SUMMER SONIC』に出演したグループと言えば、興味を持ってもらえるだろうか。

そもそも彼らはパフォーマンスと楽曲の良さでのし上がってきたグループだ。現在は新曲を出せば韓国内の各種チャートで1位を席巻し、日本でもアリーナクラスのツアーができるほどの人気を誇るが、2010年のデビュー当初は決してルックスの良いグループという評価を得ていたわけではなく(日本のドラマにも出演したエルは男から見てもイケメンだと思うが……)、デビュー作『First Invasion』も韓国の大衆チャート「ガオン」では10位止まり。日本の感覚からすると健闘したと感じるかもしれないが、デビュー作から1位を狙うことも珍しくない韓国では、決して成功とは言えない滑り出しだった。

基本的に韓国のシーンでは、パフォーマンスの悪いグループはネットで叩かれて生き残れないため、たいていはアイドルでも数年の練習期間を経て、それなりのスキルを持ちあわせた状態でデビューする。INFINITEも2年の練習期間を経てデビューしているが、他のグループと絶対的な差別化に成功した要因が、一糸乱れぬ動きと鋭いキレを持ち、「シンクロ率99.9%」と喧伝されるほどのダンスだ。


ウヒョン:僕たちは7人が一つひとつの動作をピッタリ合わせることにとても重きを置いていて、常日頃から意識を合わせて練習を積み重ね、その成果をステージでも出せるように気をつけています。

ホヤ:練習生時代から1日に何時間も鏡の前でダンスをしてきました。いつも練習時間が終わる少し前にカメラで撮影をするんですけど、その撮影した映像を1秒ごとに止めて、みんなの動作が揃っているかチェックするんです。もしズレている人がいたら、みんなで指摘しあって、直していく。それをいままでずっと繰り返してきました。

左から:ホヤ、ウヒョン
左から:ホヤ、ウヒョン

ファンの間では既によく知られたエピソードだが、ときには1日18時間にもおよんだという練習で身につけたダンスは芸術品。ミュージックビデオやステージ映像も素晴らしいが、できればYouTubeで公開されている固定カメラで撮影した練習室での映像を見てほしい。以下は「サソリダンス」で話題になった“BTD”という楽曲の映像。そのクオリティーの高さに驚くに違いない。


しかし、これまで飽きるほど質問を受けているからだろうか、本人たちは「シンクロ率」ばかりに注目が集まるのはあまり好きではないようだ。

ソンギュ:もちろんシンクロ率が高ければ高いほどいいんですけど、必ずしもピッタリ合わせなきゃいけないということに執着しているわけではありません。みんなが自然と合わせようと考えて動くだけで、強迫観念的なものがあるわけではないんです。

ホヤ:角度やラインを揃えることも当然大切なんですけど、それ以上に音楽を聴いたときに受ける感情を全身で表現することが大切だと思っています。

もはやシンクロ率を高めるということは、彼らにとって当たり前のこと。『ロミオとジュリエット』を想起させる最新曲“Last Romeo ~君がいればいい~”では、美しく揃った振りや7人組ならではのシンメトリーなフォーメーションだけでなく、切なくも情熱的なパフォーマンスも印象的だ。


ウヒョン:“Last Romeo ~君がいればいい~”は、タイトルにもなっているロミオの切ない気持ちがよく現れた曲だと思います。「君がいればいい」というフレーズが何度も繰り返し出てくるんですが、そこがいちばん感情を入れ込むところで、振り付けも特徴的な部分なので、目と耳と両方で楽しんでほしいですね。

ホヤ:今回のダンスは、いままでこんなに動かしたことがあるかなというくらいに骨盤を使うんです。きっと多くの女性にアピールできるんじゃないかなと思います(笑)。

実はダンスだけじゃない、大学では音楽や演技を学び、作曲も手がけるINFINITE

もうひとつ注目してほしいのが、早くからK-POP愛好家以外からも高い評価を受けていた楽曲だ。当時、欧米のダンスミュージックの影響が色濃いエレクトロサウンドがあふれていたなかで、彼らのデビュー作『First Invasion』からリード曲に選ばれたのは、シャープなギターリフが鳴り響く“TO-RA-WA”(原題:“다시돌아와”)。エレクトロサウンドにビンテージなロックを融合した「ロカトロニック」を掲げた楽曲で、少女時代などの楽曲も数多く手がけ、韓国随一のヒットメーカーであるジヌ(Hitchhiker)が作曲したものだった。


そして、彼らの楽曲を語るうえで欠かせないのが「Sweetune」の存在だ。Sweetuneとは、ハン・ジェホとキム・スンスの2人を中心としたプロデュースチームで、KARAをはじめ韓国で数々のヒット曲を手がけているほか、日本でもSMAPやアイドリング!!!などに楽曲を提供。前述の『First Invasion』からINFINITEのほとんどの作品でプロデュースに関わっており、爽やかなメロディーで1980年代のポップスを思わせる“She’s Back”や“Nothing’s Over”、初めて韓国の音楽番組で1位を獲得した“Be Mine”などはSweetune作曲によるもの。ここ数作はエレクトロな要素が強い作品がリード曲となっているが、どこか懐かしさを匂わせながらもキャッチーに響くメロディーは健在。なお、最新シングル『Last Romeo ~君がいればいい~』のカップリングには、“Nothing’s Over”の日本語版も収録されている。


作家やプロデュース陣だけでなく、メンバーの音楽面での貢献も触れないわけにはいかないだろう。ダンスにスポットが当たることの多い彼らだが、メンバーはそれぞれ大学で音楽や演技を専攻。7人それぞれが得意分野を持って活動していることもグループとしての強みとなっている。

ソンギュ:僕は実用音楽科で歌唱を専攻していて、音楽に関する理論、発音や発声、ディレクションなどの勉強をしています。基本的な知識を学んだことが、レコーディングやステージでのパフォーマンスに役立っていると思います。

ウヒョン:忙しいスケジュールで喉を酷使しなければならないことも多いんですけど、学校で身につけた歌唱やウォーミングアップに関する知識は、ケアする際の助けになっています。

リーダーのソンギュはレコーディング前のガイドボーカル役も担当しており、楽曲制作の段階からグループを牽引。もともとロックを嗜好しており、2012年にはソロアルバム『Another Me』も発表している。ウヒョンは自身で作曲もしており、最新アルバム『Season 2』でも“눈을 감으면(目を閉じれば)”が彼のソロ曲として収録。今年3月には「Toheart」というユニットでも活動を開始し、早速複数のチャートで1位を獲得している。

ラップを担当するドンウとホヤも、曲中のラップパートを自身で制作。2人によるグループ内ユニット「INFINITE H」としても活動しており、昨年1月にはさまざまなヒップホップやR&Bアーティストとコラボしたアルバム『Fly High』もリリースした。

左から:ドンウ、ソンギュ
左から:ドンウ、ソンギュ

「僕たちはいろんな感情を表現する職業なので、普段生きていて感じること、体験することすべてが役に立っていると思います」(ホヤ)

また、所属するウリムエンターテインメントには、韓国内では実力派として知られるロックバンド「Nell」が在籍し、ソンギュのソロアルバムにも楽曲提供。デビュー当時には韓国屈指のヒップホップグループ「Epik High」も在籍しており(現在は移籍)、特にドンウとホヤはラップスキルやミュージシャンとしての気構えの面で薫陶を受けたという。しかし、彼らに話を聞いていて頼もしかったのは、恵まれた環境で身につけたスキルを大切にしながらも、日々の経験から感性を磨く姿勢だ。

ホヤ:もちろん学校で音楽について学ぶことも役に立ちますけど、やっぱり僕たちはいろんな感情を表現する職業なので、普段生きていて感じること、体験することすべてが役に立っていると思います。悲しいことがあったり、幸せなことがあったり、誰かと恋をしてまた別れがあったり、そういったことが経験できてこそ、感性というものが出てくると思うんです。だから、何か辛いことがあったとしても、これは後々なんらかの形で必ず活きてくると考えるようにしています。音楽というのは、ただ勉強しながら学ぶだけのことではないと思うので。

ソンギュ:本当にいまホヤが言った通りで、すべてがいまにつながっていると思います。僕は地方からソウルにやってきて、働きながら歌手を夢見て、いろんなオーディションを受けました。その当時に失敗もたくさん経験しましたけど、失敗したからこそ得られた感情もあると思うんです。

右肩上がりに規模が拡大するINFINITEと、そのために必要だったいくつもの失敗

話を聞いていると、彼らは決してエリートではないことがわかる。ボーイズグループという体面上、どうしても誤解を招きがちだが、彼らはスカウトされたわけでもなく、誰かに促されたわけでもなく、それぞれが強い意志のもとで、この世界を目指してきた。ソンギュの話を契機に、他のメンバーにもオーディション歴について聞いてみると、苦労人としての面が浮かび上がってきた。

ホヤ:僕も20回くらいオーディションを受けました。

ウヒョン:僕もオーディションは4回くらい受けているんですけど、素人時代にテレビに出たことがきっかけになって、いまの事務所に入りました。

エル:いろんなオーディションを受けましたけど、最終的には紹介を受けてこの事務所に入りました。

ソンヨル:もともと演技にも関心を持っていたので、エキストラとしてドラマや映画、どんな役でも選り好みすることなく、一生懸命取り組んできました。

左から:エル、ソンヨル
左から:エル、ソンヨル

ドンウ:僕も8回くらいはオーディションを受けてきた経験があります。

ソンジョン
ソンジョン

ソンジョン:僕は運がいいことに、1回目のオーディションがいまの事務所で(笑)。

ソンギュ:彼だけ宝くじに当たったんです(笑)。僕は事務所に入るまでは、焼肉屋やコーヒーショップでアルバイトをしながらオーディションを受けに行くという日々を続けていました。いまは歌手になれましたけど、コーヒーも美味しく入れられるし、肉も上手に焼けるので、生きていくうえでも助かったなと思います。


ソンジョン以外の6人は、全員が幾度にもわたる挫折を経験し、ウヒョンに至っては詐欺まがいの事務所に引っかかった経験もあるという。そもそもホヤのように20回もオーディションに落ちたら心が折れるのが普通だろうが、なぜ諦めなかったのかと訊いてみると、とても興味深い返答をしてくれた。

ホヤ:自分でも妙なことだなと思うんですが、オーディションに落ちても悲しいと思っていませんでした。早くから歌手になりたいという夢を持っていたので、いつか必ずなるんだとどこか信じている部分があったと思います。オーディションに落ちたときも、その事務所は自分と合わなかったんだと思って、それを何度も繰り返していまの事務所に入りました。仮にいまの事務所のオーディションに落ちていたとしても、僕はずっとオーディションを受け続けていたと思います。振り返ってみると、そうやって何度も失敗して、苦渋を飲んだことによって、より深く根が張れたと思うので、そう簡単に倒れることはないかなと思っています。

ウヒョン:ソンジョンは1回で入ってきたので、簡単に倒れるかもしれないですけど(笑)。

一時のブームが沈静化して以降、勢いを落とすK-POPグループも少なくないが、韓国デビューから5年目となったINFINITEが着実に右肩上がりの成長を遂げているのは、ホヤが言ったとおり深い根が張れているからなのだろう。

INFINITEの所属事務所であるウリムは、昨年8月に東方神起や少女時代を有する韓国最大の音楽事務所「S.M.Culture&Contents」と合併。さらに日本でのリリース元も、今作『Last Romeo ~君がいればいい~』からユニバーサルミュージック(日本国内)、Virgin Music(日本国外)内のDelicious Deli Records(Lady GaGa、ケイティ・ペリー、テイラー・スウィフト、U2なども所属)に移籍。昨年はアジアのみならず、アメリカ、ヨーロッパを含む14か国21か所でのワールドツアーも行っており、その規模は拡大するばかりだ。

しかし、木は高くなればなるほど強い風を受けるもの。この先、根を揺さぶられるような困難もあるに違いないが、彼らなら風に負けない根を張れるまで、何度でもチャレンジし続けるだろう。そして、ソンギュが「失敗したからこそ得られた感情もある」と話したように、その過程は必ずや音楽にも深みを与えるはず。グループの未来について、「もうしんどくてできないと思えるまでは、INFINITEを続けたいと思っています」とウヒョンは話してくれたが、この日彼らに話を聞いて、むしろそうなったときのINFINITEも見てみたくなった(といっても、最年長のソンギュでまだ25歳だが)。これからのINFINITEが生み出す作品も楽しみに待ちたいと思う。

リリース情報
INFINITE
『Last Romeo ~君がいればいい~』初回限定盤A(CD+DVD)

2014年7月2日(水)発売
価格:2,100円(税込)
Delicious Deli Records / UICV-9058

[CD]
1. Last Romeo ~君がいればいい~
2. 僕という人
3. Nothing's Over(Japanese Version)
[DVD]
・Last Romeo ~君がいればいい~ Music Video
・Last Romeo ~君がいればいい~ Making Movie
※デジパック仕様、16ページのブックレット付き

INFINITE
『Last Romeo ~君がいればいい~』初回限定盤B(CD)

2014年7月2日(水)発売
価格:2,800円(税込)
Delicious Deli Records / UICV-9059

1. Last Romeo ~君がいればいい~
2. 僕という人
3. Nothing's Over(Japanese Version)
※紙ジャケ仕様、52ページのブックレット付き(A4相当)

INFINITE
『Last Romeo ~君がいればいい~』通常盤初回プレス分(CD+16Pブック)

2014年7月2日(水)発売
価格:1,800円(税込)
Delicious Deli Records / UICV-9060

1. Last Romeo ~君がいればいい~
2. 僕という人
3. Nothing's Over(Japanese Version)
※スリーブケース、16ページのブックレットランダム8種フォトカード1枚(通常3Pケース)付き

プロフィール
INFINITE(いんふぃにっと)

(株)ウリムエンターテインメントから誕生したボーイズグループ。2010年6月9日にデビューアルバム「First Invasion」を発表。リード曲の「タシトラワ」でアイドルという枠を超えた音楽性と一糸乱れぬダンスで鮮烈なデビューを飾る。シンクロ率99.9%の代名詞でトップアイドルの仲間入りを果たした。日本でも2011年7月に開催されたショーケース「It's the INFINITE!」、続けて9月に開催された1st LIVE「Leaping Over」、2012年2月の「SECOND INVASION 日本公演」そしてSUMMER SONIC(サマーソニック)2012への出演、また同年開催した初のアリーナツアーでは全国5大都市で74,000人を動員するという大人気ぶりで、他のアイドル達とは一線を画す実力派グループとしての地位を確固たるものとした。



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