トランプ以降の分断社会で、Sofi Tukkerが音楽に託す大事なこと

デビュー曲“Drinkee”が、いきなり『第59回グラミー賞』「ベストダンス・レコーディング」部門にノミネートされたことをきっかけに、瞬く間に世界中で注目を集めるようになったニューヨーク発の男女デュオ、Sofi Tukker。彼女たちの魅力は、その音楽が打ち放つポジティブなバイブスにある。

ポニーテールにジャンプスーツという姿で、ときにはギターを弾きながら艶やかな歌声を響かせ、魅惑的なダンスを披露するソフィー・ホーリー・ウェルド。そして、身長2m超えの長身でありながら、軽やかにステージ上を駆け回り、機材を操りながら、ときには歌まで披露するタッカー・ハルパーン。個性的で鮮烈な風貌の男女が並び立つライブパフォーマンスは、文字どおり「楽しさ」に溢れている。

果たして、彼女たちは何者なのだろうか。見た目も生い立ちも異なる2人が、「Sofi Tukker」としてやろうとしていることは何なのか。その秘密は、どうやら彼女たち自身のメンタリティーにあるようだ。デビューアルバム『Treehouse』の日本盤のリリースに伴い来日、一夜限りのライブステージを前日に終えた2人に話を訊いた。

自分の直感が正しいのか、あるいはクレイジーなのか、それをどうしても見極めたいと思ったんだ。(タッカー)

—いまから約1年前、2人は「BACARDI」主催イベントに出演するため初来日を果たしましたが、その後、“Best Friend feat. NERVO, The Knocks & Alisa Ueno”が世界26か国のiTunesダンスチャートで1位を獲得、さらには同曲が「iPhone X」のテレビCMに起用されて大量オンエアされるなど、この1年の間の躍進は、本当にものすごいものがありましたね。

ソフィー:本当に(笑)。この1年っていうのは、間違いなくクレイジーだった。ただ、その間に私たち自身、すごく成長することができたし、たくさんのことを学ぶことができたと思う。何よりも、世界中のいろんなところに行くことができたのが、すごく嬉しかった。

タッカー:うん、自分たちでも想像してなかったぐらい、世界のたくさんの場所に行って、たくさん演奏することができて……ライブをやるごとに、ステージの居心地がどんどんよくなっていったし、オーディエンスとの繋がり方も、すごくうまくなってきたような気がするよ。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド
左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

—そもそも2人は、アメリカのブラウン大学在学中に出会ったそうですね。

タッカー:大学のそばにあるアートギャラリーでイベントがあって、そこに僕はDJとして出演していたんだ。僕の出番の前に、ソフィーが弾き語りでボサノバっぽい曲を歌っていたんだけど、その姿を見て、ピンときたんだよね。彼女と一緒に音楽をやったら、何かスペシャルなことができるんじゃないかって。

だから、本当にシンプルな話なんだよ。そこでピンときた自分の直感みたいなものが正しいのか、あるいはクレイジーなのか、それをどうしても見極めたいと思ったんだ。まあ、彼女は最初、まともに取り合ってくれなかったんだけど(笑)。

ソフィー:そうね(笑)。現場でいきなりそう言われたときは、「いいわね! やりましょう!」って盛り上がったけど、それから数日経って、同じことをタッカーから言われたときは、「うん、いいと思う。でも、いま私には、他にやることがあって……」とか、そういう感じだったかもしれない(笑)。

タッカー:本当だよ! 僕は、「2人で音楽をやることが、何よりも大切なことなんだ!」って思っていたのに、彼女はあんまりそう思ってくれなかったみたいで。だから、バンドとして本格的に動きはじめるのは、僕が大学を卒業して、ニューヨークに移住してから。「音楽の道に進もう」と思って、卒業式の当日にニューヨークに引っ越してからは、ソフィーに「僕は本気なんだ!」って言い続けたよ……最終的には、僕のしぶとさが勝った感じだね(笑)。

ソフィー:うーん、あんまり覚えてないわ(笑)。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

—(笑)。タッカーはDJをやる前、かなり本格的にバスケットボールをやっていたり、パンクバンドでドラムを叩いたりしていたんですよね。一方、ソフィーは、ボサノバのバンドで歌っていたり、ブラジルの文化に興味があって、ポルトガル語の勉強をしていたり……つまり、かなり違うタイプの人間だったように思うのですが、タッカーはなぜ、ソフィーと一緒にやることに、そこまでこだわったんでしょう?

タッカー:まさに、その「違い」が大切だったんだ。だからこそ、彼女とのコラボレーションは、きっと特別なものになるんじゃないかって思ったんだよね。僕たちは、音楽的なバックグラウンドはもちろん、それに関する知識もあまりにも違うから。

人間こそが最大のリソースだと思っているの。それを交わらせることによって、お互いが輝けるようになるというか。(ソフィー)

—「違い」が大切だったというのは興味深いですね。

タッカー:そもそも、ヨーロッパやアメリカを転々としていたソフィーと僕とでは、生まれ育った環境だって全然違うからね。普通だったら友だちにもならないような2人が、一緒に音楽をやったらどうなるか。僕はその実験みたいなものに囚われてしまったんだ。2人のコラボレーションの成果を何としても見てみたくてね。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

—その実験の成果というか、2人が好き放題やっている感じを含め、見た目から何から全然違う2人が一緒になって楽しんでいるところが、Sofi Tukkerの音楽やパフォーマンスの何よりの魅力という気がするんですよね。

タッカー:まったくそのとおりだと思うよ。僕たちは、心の底から「違い」を楽しんでいるんだ。

—そうやって異なるものを積極的に楽しもうという心意気が、Sofi Tukkerの音楽の中心にあるのかなと。

ソフィー:その指摘は嬉しいわ。世の中には、まだ私たちが出会ってない興味深い人々や場所がたくさんあって……そういうものに一つひとつ出会っていくことが、私たちにとっては、とてもエキサイティングなことで。

タッカー:Sofi Tukkerの活動っていうのは、いい音楽を作るっていうのはもちろんいちばん大事だけど、それと同時に「友だち作り」みたいなところもあるんだよ。リスペクトできるアーティストやクリエイターと出会って、お互いのエネルギーを高め合うみたいな。

僕たちは、アートやパーソナリティーの可能性みたいなものを、ものすごく信じているんだよ。だから、これからもっとたくさん友だちを作って、もっとたくさんの楽しいものをみんなで一緒に作っていきたいなって思っているんだ。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

—音楽性のみならず、気持ち的にも最初から外に向かって開いているところが、Sofi Tukkerの面白いところですよね。

タッカー:わかってもらえて嬉しいよ(笑)。僕らは、僕とソフィーとの出会いがそうであったように、お互いを高め合うことのできる人たちと、これからもどんどん会っていきたいんだ。高め合い、なおかつ支え合いながら、インスピレーションを与え合って、よりよい自分たちになっていけるような人たちとね。そういうことができたらとにかく素晴らしいし、僕たち自身も、よりハッピーになれると思っているんだ。

ソフィー:そう、私たちは、人間こそが最大のリソースだと思っているの。いわば無限のリソースね。それを交わらせることによって、お互いが輝けるようになるというか。そういうことがしたいのかもしれない。

タッカー:誰か1人が輝いたからといって、自分が輝けないわけじゃないんだよ。誰かが輝いているならば、その人によって自分も輝けるかもしれない。そんなふうに僕たちは考えているし、そうやって生きていきたいんだよ。だから、僕たちの音楽が、他の誰かと繋がるきっかけになったり、その人が輝くきっかけになったらいいなっていうのも、いつも思っていることなんだ。

タッカー・ハルパーン

ソフィーとやりはじめた頃は、「2人でどれだけいい曲が作れるか」みたいなことしか考えてなかった。(タッカー)

—6月にはデビューアルバム『Treehouse』が日本でもリリースされましたが、一緒にやりはじめて最初に作った曲である“Drinkee”で、いきなり『グラミー賞』にノミネートされてしまうのも、かなりすごい話ですよね。Sofi Tukkerでは、最初からダンスミュージックをやろうと決めていたんですか?

ソフィー:いや、私に関して言えば、そこまで意識はしていなかったと思う。そもそも私はダンスミュージックについて、タッカーから教わったようなものであまり詳しくなかったし……ただ、踊ること自体は、昔から大好きだったし、クラブで踊るのも大好きだったの。それこそ、学生時代は、ダンスグループに入って踊っていたこともあるしね。

だから、もしかしたら、そういうところで何か繋がりを感じたのかも。出会った頃、タッカーはよくパーティーでDJをやっていて、彼が選曲する音楽で踊ることが、私は大好きだったし。改めて考えると、タッカーと一緒にやろうって最終的に決めた理由は、そこだったのかもしれない。

ソフィー・ホーリー・ウェルド

Sofi Tukker『Treehouse』を聴く(Apple Musicはこちら

—タッカーはもともとDJとしてトラックを作っていたんですよね。それがどうして、いまのような形になっていったのでしょう?

タッカー:僕としては、バンドを組んでキャリアを築いていきたいっていうビジョンがあったんだけど、ソフィーとやりはじめた頃は、「2人でどれだけいい曲が作れるか」みたいなことしか考えてなかった。だからその曲を、どんなふうにパフォーマンスするかなんて、まったく考えてなかったんだよ。

仲のいい友だちと、ステージ上で音楽を楽しみまくっているような、そんな感じ。(ソフィー)

—ここまでの話をまとめると、「ボーカリストであるソフィーを、DJであるタッカーがプロデュースする」みたいな形に思えなくもないですが、現在の2人の感じは、それとは全然違うものになっていますよね。ライブやミュージックビデオを見ても、タッカーがかなり前面に出ていて、ほとんどバンドのような形になっています。いつ頃から、そういうスタイルになっていったのでしょう?

タッカー:いい質問だね(笑)。正直言って、そういう図みたいなものは、僕の頭のなかに、ずっとあったのかもしれない。というのも、音楽に本格的にのめり込むようになって自分もステージに立つようになったとき、バスケットボールをやっていた頃と同じように、アドレナリンがほとばしる自分を感じていたから。昔から人前に出て、注目を集めるのが好きなんだよ(笑)。

だから、どこかで自分が表に立つ姿を想像していたのかもしれない。プロデューサーみたいな感じで裏方の仕事をするのではなく、とにかくステージ上で注目を集めたかったんだ。そっちのほうが、よっぽど僕らしいなと思って(笑)。

6月におこなわれた来日公演の模様 / 撮影:Kayoko❤Yamamoto
6月におこなわれた来日公演の模様 / 撮影:Kayoko❤Yamamoto

—最初はドラムだったのに、その後DJとなり、いつしかベースやドラムスティックを持ってソフィーと一緒にステージの前面に立つようになったって、ちょっと面白いですよね。どんどん前に出てきているっていう(笑)。

タッカー:そうだね(笑)。でも、いまのようなやり方が僕にはすごく合っているし、僕自身、すごく楽しんでいるんだ。これは最近自分たちでもわかってきたことなんだけど、このユニットは僕たち2人のパーソナリティーがあってこそのものなんだよ。だから、ステージ上で、僕たちの片方だけが前に出るっていうのは、やっぱりちょっと違う気がするんだよね。

—たしかに、ライブパフォーマンスなどを見ると、2人がフロントに立って、一緒に楽しそうにしているところが、Sofi Tukkerの何よりの魅力という感じがします。

タッカー:そう思ってもらえるのは、すごく嬉しいね(笑)。

ソフィー:うん、タッカーと2人並んでステージに立つことが、ものすごく楽しいのは間違いない。いまとなっては、ソロアーティストとしてステージに立つなんて全然想像つかないから。だって、それって他の人とステージ上でエンジョイできないってことでしょ?

本当にそれぐらい、タッカーとステージに立つことは常に楽しいし、お互いのよさみたいなものも、それによって引き出されていると思う。私たちが観客に向けて何かを表現すること以上に、仲のいい友だちと、ステージ上で音楽を楽しみまくっているような、そんな感じがあるの。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

みんなウェルカム……どんなルックスだろうが、誰を愛してようが関係ない。(タッカー)

—「友だち」ということでは、まさに昨秋にリリースしたシングル“Best Friend feat. NERVO, The Knocks & Alisa Ueno”は2人の考え方やスタイルを体現しているようにも思います。

タッカー:そうだね。The Knocksの2人は僕らの親友でニューヨーク在住だけど、NERVOの2人はオーストラリアだし、アリサは日本でしょ? アリサはNERVOに紹介してもらったんだけど、レコーディングはみんなバラバラにやって、顔を合わせてないんだ。

ソフィー:あの曲のミュージックビデオをイビザ島で撮ったんだけど、そのとき初めて全員で会ったの(笑)。みんなで共同生活をしながらミュージックビデオを撮って……あれは、ものすごく楽しい経験だったわ!

—植野有砂さんとは、今回の来日公演でも共演していましたよね。本当にみんな見事にバラバラな個性を持った人たちで、そんな人たちが一緒になって楽しそうに音楽をやっているところが素晴らしいですよね。

タッカー:それが僕たちのスタンスなんだよ。みんなウェルカム……どんなルックスだろうが、誰を愛してようが関係ない。とにかく、コミュニティーをよりよくすること、気持ちを高められること、そしてそれぞれが自分らしくあって、自分たちに自信を持っていることが、何よりも大切なんだ。

6月の来日公演より。中央が植野有砂 / 撮影:Kayoko❤Yamamoto
6月の来日公演より。中央が植野有砂 / 撮影:Kayoko❤Yamamoto

—現在アメリカでは、人々の間に分断を促すような大統領が政権の座についていますが、Sofi Tukkerがやろうとしていることは、それとは真逆のことであるように思います。

ソフィー:そうね。むしろ私たちが、もっと声を上げることを促されているような気がする。ただ、そうやって分断を促すような雰囲気って、アメリカだけの話ではないと思う。世界の至るところで、そういった分断が標準になってしまっているような気がしていて。

だからこそ、「多様性こそがパワーである」という声が、もっと必要なのかもしれないし……そういう意味で、いまの世界の状況は、私たちの音楽に、パワーとインスピレーションを与えてくれているのかもしれない。ものすごく皮肉な言い方だけど。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

—こうして話していて、音楽的なことはもちろん、Sofi Tukkerという存在が、この1年の間に世界各国で急速に求められていった理由が、よくわかったような気がします。

タッカー:みんな違うからこそ、面白いんだよ。それは僕とソフィーのステージを見れば、すぐにわかるよね(笑)。

ソフィー:うん。多様性こそがパワーであり、違いこそが、ともに高め合い、輝き合うための無限のリソースなのよ。私たちの音楽やステージを通じてそれが伝わっているならば、そんなに嬉しいことはないわ。

左から:タッカー・ハルパーン、ソフィー・ホーリー・ウェルド

Sofi Tukker『Treehouse』ジャケット
Sofi Tukker『Treehouse』ジャケット(Amazonで見る

リリース情報
Sofi Tukker 『Treehouse』(CD)

2018年6月6日(水)発売
価格:2.160円(税込)
SICP-5666︎

1. Best Friend feat. NERVO, The Knocks & Alisa Ueno
2. Fuck They
3. Energia
4. Benadryl
5. Batshit
6. Good Time Girl feat. Charlie Barker
7. Johny
8. My Body Hurts
9. The Dare
10. Baby I'm A Queen
11. Drinkee
12. Awoo feat. Betta Lemme 13. Best Friend (Oliver Heldens Remix)

プロフィール
Sofi Tukker
Sofi Tukker (そふぃー たっかー)

世界最高峰のダンス・レーベル「Ultra」に所属する、ソフィー・ホーリー・ウェルドとタッカー・ハルペルンの二人からなるニューヨークを拠点に活動中の新人デュオ、ソフィー・タッカー。米国のブラウン大学在学中にアートギャラリーで出会い、すぐさま一緒に音楽作り始め結成。2016年7月にリリースしたデビューEP『Soft Animals』に収録されている「Dreinkee」が、2017年『第59回グラミー賞』で「ベストダンス・レコーディング賞」にノミネートされたことで一躍世界中から注目を集める。また、「Drinkee」は2017年1月に公開されたラブ・コメディー映画『The Incredible Jessica James』に挿入歌として起用されたことでも話題を呼んだ。さらに、同年1月にリリースされたシングル「Johny」が、米ゲームメーカーEA スポーツの人気作品『FIFA 17』内でも起用。6月にはBACARDI主催イベント『BACARDÍ “Over The Border” Launch Party』に出演し初来日を果たした。同年10月には26か国のiTunesダンスチャートで1位(国内ダンスチャート2位)を獲得したシングル「Best Friend feat. NERVO, The Knocks & Alisa Ueno」がiPhone XのテレビCMに起用。国内でも同CMが大量O.A.されると、日本でも音楽認識アプリShazamのチャートで1位を獲得し、2018年1月には全米シングルチャート「ビルボード・ホット100」入りを果たす。また、4月にリリースした最新シングル「Batshit」が新たに現在オンエア中のiPhone 8 (PRODUCT) RED™のTVCMに起用され、早くもShazamチャートでは2度目の1位を獲得しているなど、現在国内外で人気急上昇中のダンス・デュオである。2018年6月、彼らの日本限定初CD化となる記念すべきデビューフルアルバム『Treehouse』国内盤が発売。

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