miletインタビュー 関和亮、山岸聖太らからのラブレターとともに

milet(ミレイ)という名前を知らなくても、その歌声を聴いたことがある人はきっと多いだろう。1月より放映中のドラマ『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』と『JOKER×FACE』の楽曲を担当し、大きな話題を集めているシンガーソングライターだ。彼女のデビュー作『inside you EP』が3月6日、ついにリリースされた。

生楽器とエレクトロを融合した重厚なサウンドと、その上で縦横無尽に飛翔するメロディ。そしてなにより印象的なのが、ハスキーで存在感のある彼女の歌声だ。

そんな彼女の「声」に惚れ込んだのが、星野源やPerfume、サカナクションなどの仕事でも知られる映像作家・関和亮率いるクリエイティブチーム「コエ」だ。関は『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』のチーフ演出を、山岸聖太は『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』『JOKER×FACE』の演出も担当しているが、彼ら「コエ」がmiletのミュージックビデオ3本やジャケットを手掛けるなど、彼女を全面的にサポートしている。

「コエ」が選んだ「声」の持ち主、miletとは一体何者なのだろうか。まだ隠されている部分も多い彼女のことを探るべく、関と山岸から預かった手紙を渡すところから今回のインタビューはスタートした。

大学の最初の授業で取り上げたのが、関和亮さんの作品だったんですよ。

—今日は、関和亮監督と山岸聖太監督からお手紙を預かっているんですよ。

milet:楽しみにしてました!(関からの手紙を読む)

関和亮からのお手紙

milet:「物怖じしない性格」だって……(笑)。確かに、結構言いたいことをズバズバ言っちゃうほうかもしれない。あまりしゃべるのは得意じゃないけど、言わないと伝わらないから、自分の考えとか気持ちかは言うようにしていますね。

—それは、中学・高校の頃に、カナダで過ごされた経験も大きいですか?

milet:大きいと思います。英語圏へ行くと、「イエス」「ノー」の意思表示ってすごく大切じゃないですか。

別に「ノー」って言うことは、相手を全否定するわけでもないのに、日本人の感覚だと「ノーって言うと相手を傷つけるかな、嫌な気持ちにさせたくないな」と思ってしまいますよね。でも、逆にちゃんと「ノー」を言えないことで、相手を困らせることも往々にしてあることに気づいて。「なにを考えているかわからない」みたいな感じで、かえって不信感を抱かせてしまうんですよね。

「イエス」「ノー」をはっきり言うようにしたら、そのほうがずっと楽に生きられるようになりました。ただ、日本では「キツイ」って思われることも、たまにあるんですけどね(笑)。

milet

—関さんとの現場でも「物怖じしない性格」が役に立ったのですね。

milet:そう思います。すべてお任せするというよりは、「一緒に作っていく」という形がベストだなと思って、思いつくアイデアを色々と提案させていただきました。関さんも「それいいね!」という感じでどんどん採用してくださるので、とても言いやすかったです。

—具体的にmiletさんからはどんなアイデアを提案したのですか?

milet:“inside you”という曲では、人の内面からの視点を入れたくて。それで、「鏡像段階」(鏡に映る自分の姿を見て、自我の輪郭を形成する時期のこと)の瞬間を描写してもらったんです。

冒頭、女の子が倒れているところから始まり、鏡を見て初めて自分を認識するというシーケンスを入れたいと話したところ、そのまま採用してもらいました。

—このビデオの重要なシーンですよね。

milet:それと、これが自分にとって最初のミュージックビデオだったので、なにかインパクトが欲しくて。「体からなにかがバーッと飛び出るような映像が欲しい」と、ちょっと大雑把なアイデアをお伝えしたところ、関さんから「赤い羽根でも出してみる?」という提案が(笑)。それがクライマックスのインパクトあるシーンになりました。

—確かにあのシーンは、強烈なインパクトがありました。あと、画面が切り替わると人が入れ替わっていたりするのは、どうやって撮っているんですか?

milet:あれは「BOLT」という巨大な撮影システムを使っています。まだ日本では台数も少なくレアなカメラなんですよ。

動きをプログラムすると、寸分違わず様々な動きを何度でもしてくれるんです。たとえば、黄色いパーカーを着ている男の子が私に入れ替わるシーンは、男の子と私がまったく同じ動きをして、それで撮影した映像を後から合成している。

あと、男女のカップルがベッドに横たわっていて、一度カメラがシーツに寄った後、再び元の位置に戻ると私1人に入れ替わってるというシーンも同じように撮影しました。ものすごく細かい作業なので、何度もやり直すわけにはいかず、失敗しないようにしなきゃっていうプレッシャーはすごかったですね。

—Perfumeの“VOICE”もサカナクション“アルクアラウンド”もそうでしたが、関さんの映像って最新技術とアナログな手間暇が同居しているところがユニークだなといつも思います。

milet:そうなんですよ。本当に、チーム全員の情熱でできたような映像でした。

左から:milet、関和亮。後ろに写っているのが「BOLT」

—miletさんは、大学で映像を専攻していたそうですね。

milet:そうなんです。大学の最初の授業で取り上げたのが、関さんの作品だったんですよ。ミュージックビデオの授業で、OK Goの“I Won't Let You Down”やサカナクションの作品を取り上げていたので、プロフィールからなにから一方的にすごく知っていました(笑)。

だから、まさか自分の最初のミュージックビデオを関さんに撮っていただけるなんて……「え、レジュメの人!」っていう感じで(笑)。決まったときは「畏れ多いな」と思っていたのですが、実際にお会いしたら本当に気さくな方で、すべてが楽しかったです。

「誰しも心に孤独を抱えている」というメッセージを伝えたいと、山岸聖太さんよりお話しいただきました。

—他に大学の授業ではどんなことを学んでいたのですか?

milet:主に映画です。私は子どもの頃からずっとフルートをやっていたので、音大に行くかどうしようか迷っていたんですけど、映画音楽への興味から「映像も学べるところへ行こう」と。映画のなかでの音楽の役割だとか、効果音だとかを研究していました。

たとえばスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968年公開)では、音楽や音の使い方がとても効果的なんですよ。リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』や、ヨハン・シュトラウス2世『美しき青きドナウ』のようなクラシックを使うシーンもあれば、まったくの無音状態のシーンもある。あえて無音な宇宙空間のなかで「実音」を用いるなど、ルールが破られるところがあるんです。そこにどんな意味があるのか? みたいなことを研究していたら、どんどん面白くなっていきましたね。

—今日は、山岸聖太監督からもお手紙を預かっています。

山岸聖太からのお手紙

milet:すばしっこい恐竜ってなんでしょうね(笑)。どの恐竜だろう……『ジュラシック・パーク』に出てくるラプトルみたいなイメージかな(笑)。

—山岸さんと作った“Again and Again”のミュージックビデオは、どんなイメージでしたか?

milet:渋谷を舞台に松本穂香さん(ドラマ『JOKER×FACE』の主演でもある)が登場する場面と、郊外を舞台にした私が登場する舞台、2つの世界を描くというものでした。

夜なのにたくさんの人と光で溢れた渋谷の雑踏で「孤独」を感じている松本さんと、ひと気のない郊外で、孤独を感じながらも強い意志を持っている私、2人を対照的に描くことで「誰しも心に孤独を抱えている」というメッセージを伝えたいと、山岸さんよりお話いただきました。大満足の映像になりましたね。松本さんが演じてくださったのも嬉しかったです。

—松本さんのシーンは、雑踏のなかの孤独という意味では“inside you”の映像にも通じますよね。一方でmiletさんは、人から隔離された場所にいるのに、どこか開放的で自由を感じます。

milet:この曲のテーマが「孤独のなかの強さ」で。孤独というのは、寂しいことでも弱いことでもなくて、孤独でも強くいることができるんだと言いたかったんです。それを映像が強調してくれたと思います。

—ちなみに、miletさんのいる場所って日本ぽくないというか。アメリカ郊外のガソリンスタンドみたいだなと。

milet:そう! そういうイメージです。深夜に撮影したんですけど、車が爆発するシーンはものすごい音だったんですよ。爆発は一度しかできなくて、撮影の前に山岸さんから「このくらいの音が出るよ?」っていうのをシミュレーションしてもらったんですけど、それが想像の100倍くらい大きな音で(笑)。思わず身をすくめてしまったんですけど、本番では平然としていなきゃいけなかったから、もう緊張しましたね。ドキドキしながら撮影に挑んだということを踏まえて見てもらえたらと思います(笑)。

左から:milet、山岸聖太、須貝日東史(コエ所属。プロデューサー)

「ああ、そんな解釈もできるんだ!」というギャップが、曲に広がりを与えてくれる。

—市川稜監督による“I Gotta Go”のミュージックビデオは、どんな感じになりそうですか(取材の時点では撮影前)?

milet:2つの世界を描くという意味では、“Again and Again”に通じるものがあるかもしれないです。

最初に市川さんがこの曲に抱いたイメージと、私自身が曲を作りながら思い描いていたイメージが、かなり違っていて。でもそれは、「ああ、そんな解釈もできるんだ!」という驚きもあったし、そのギャップがこの曲に広がりを与えてくれると思ったので、それを映像にしていただくことにしました。どんなものに仕上がるのか、今から楽しみですね。

市川稜からのお手紙

小さい頃から私は、知っている人がその人に見えない瞬間がある。

—もともとは、どんなきっかけで音楽をやるようになったんですか?

milet:両親がクラシック好きだったのもあって、私も気づいたときには聴いていて、自然とフルートを習っていました。クラシックのなかでもベートーヴェンのようなドラマティックな作家さんが好きで、広がるような、漂うような音楽、あとちょっと暗かったりするのが好きだったと思います。

小学生の頃からはロックを聴くようになって、一気に世界が広がりましたね。今やっているような音楽は、2年くらい前から聴くようになりました。

—確かに、miletさんの作るメロディラインにはインディーロックの影響を感じさせますよね。

milet:好きだったのは1990年代のロック、KULA SHAKERやRADIOHEAD、SIGUR ROS、ビョークなどです。日本のアーティストはあまり聴いてこなかったのですが、くるりさんは大好きです。あとチューリップ。和声にTHE BEATLESを感じるんですよ。

—今日話を聞いて改めて思ったのですが、miletさんの創作のモチベーションとして「孤独」というのは大切な要素なのかなと。

milet:私は、孤独に対してまったくマイナスなイメージがなくて、むしろ孤独はすごく大事な落ち着く場所なんです。それを排除しようとは思わないし、いつでも孤独のスペースを空けておいて、帰れるようにしておきたいんですよね。

もともと自分が持っていた世界に立ち返ることで、自分はどういう人間であるかを再確認することって、とても大切だと思うんです。孤独というと、「寂しい」「みじめ」とよく言われるけど、私のなかでは、寂しくてもそれを含めて「自分の大切な感情」だと思う。孤独って、全然悪いものじゃないんですよ。

—“inside you”は、どういった感情や考えから生まれた曲だと言えますか?

milet:この曲はONE OK ROCKのToruさんとスタジオに入っているとき、偶然できあがったんですよ。もともとは英語の歌詞だったんですけど、関さんが気に入ってくださったことでドラマのオープニングになることが決まり、それで急いで歌詞を日本語に書き換えました。

歌詞については、小さい頃から私は、知っている人がその人に見えない瞬間があって。たとえば、目の前にいるのはお母さんなんだけど、お母さんに見えない瞬間というか。「ゲシュタルト崩壊」に近いのかも知れないんですけど、「なにを考えているかわからない」っていう感覚になるんです。その人のなかに、私の知らないもう1人の誰かがいるような。その気持ちを歌った曲ですね。“Tell me what is inside you, inside you now”(あなたのなかにはなにがあるの?)って。それをわかりやすく、男女の関係にも聞こえるような普遍的な内容に落とし込んでいきました。

—「自分はこの人のことを本当に理解しているのだろうか」「人と人とが100%わかり合うことなどできるのだろうか」ということも考えさせられる歌詞ですよね。“Again and Again”はいかがですか?

milet:この曲は、ドラマの主題歌になることが先に決まっていたので、台本を2話分いただいてから作りました。これは作家のTomoLowさんと一緒にセッションしながら作ったのですが、ドラマの舞台の渋谷と、時間帯は夜で、できれば疾走感のある曲にしようと。

改めて歌詞を見ると、そのときの自分の心境そのものっていう感じになっていますね。私自身、そんなに明るい人間ではないし、明るい場所もそこまで好きじゃない。人といるのも楽しいけど、やっぱり自分の世界に閉じこもる時間も必要で。それと主人公の孤独感が重なっているかなと思います。

—誰も入り込めない、自分だけの領域は確保しておきたいというか。

milet:うん、それはありますね。自分にしかわからないところを大事にしないと、自分が誰なのかわからなくなってしまうから。

不特定多数の人に向けるのではなく、顔は見えなくても必ずそこにいる1人に向けて歌いたい。

—自分の声が特別だと気づいたのはいつ頃ですか?

milet:もともとはこういう歌い方じゃなかったんですけど、デモを作って聴き返すといつも、「なんか違うなあ」と思っていて。それで色々試していくうちに、こういう歌い方になりました。自分でも「あ、これなら心地いいかも」と。

歌っていても苦しくないし、聴いていても気持ちいい声を、「作った」というより「発見した」という感じでしたね。自分の声、好きといえば好きだけど(笑)、そんなに特徴があるとは思ってなかったです。

—こうして完成した楽曲と自分の声を、どんな人に届けたいと思いますか?

milet:コエのみなさんと初めてお会いしたとき、私のことを知ってもらうためにレコーディングスタジオで何曲か歌っているところを見てもらったんです。それはもう、ハンパなく緊張したんですけど、そのときに感動していただいて。

“I Gotta Go”を歌ったときにユキマユコさん(コエ所属。グラフィックデザイナー。『JOKER×FACE』『QUEEN』のポスタービジュアルや、『inside you EP』のジャケットデザインなどを担当)が泣いていたんですよね。「この曲は……やばい!」って。私、自分の歌で泣いてくださる人を初めて見たので、すごく感激してしまって。ちゃんと人に伝わる歌が歌えているのかも、という自信にも繋がりました。

私、たくさんの人に聴いてもらうことって、あまり想像できなくて。私は常に人を「個人」としか見えないので、大勢に向かって歌うよりは、誰か1人に向けて歌うというその繋がりがたくさんある、というイメージなんです。不特定多数の人に向けるのではなく、顔は見えなくても必ずそこにいる1人に向けて歌いたい。その人がどこにいようが、孤独だろうが、そうじゃなかろうが、響いてくれたらいいなと思います。

リリース情報
milet
『inside you EP』初回生産限定盤(CD+DVD)

2019年3月6日(水)発売
価格:1,620円(税込)
SECL-2398

[CD]
1.inside you
2.Again and Again
3.Waterfall
4.I Gotta Go

[DVD]
・“inside you” MUSIC VIDEO

milet
『inside you EP』通常盤(CD)

2019年3月6日(水)発売
価格:1.350円(税込)
SECL-2400

1.inside you
2.Again and Again
3.Waterfall
4.I Gotta Go

プロフィール
milet
milet (みれい)

ハスキーかつ重厚感のある独特の唄声と、グローバルな存在感を放つソングライティングを兼ね揃えた女性シンガーソングライター。思春期をカナダで過ごし、現在は東京都内に在住。2018年より本格的に音楽活動をスタート。2018年10月には、パリ、NY、ソウルをはじめ世界各国で開催されたイヴ・サンローランのグローバルイベント『YSL BEAUTY HOTEL』の東京・表参道ヒルズ会場にて、イヴ・サンローラン・ボーテがピックアップするアップカミングなアーティストとして大抜擢、ライブ出演を果たす。2019年3月6日に1st EP『inside you EP』をリリースする。

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