木村カエラが語る、変化することに全てを注ぎ挑戦してきた5年間

今年で活動15周年を迎える木村カエラが、7月31日にニューアルバム『いちご』をリリースした。

「スクラップ&ビルド」をコンセプトに制作された本作には、これが初の共作となるCharaを始め、あいみょんやAAAMYYY、ノルウェー出身のアートロックバンドPom Pokoといった、一筋縄ではいかないアーティストによる楽曲が並ぶ。なかでも、作詞作曲を手がけたあいみょんによる“Continue”の歌詞にある、<増えたシワの数>や<おばさんになった>というフレーズは、強烈なインパクトを与えてくる。

これまで積み上げてきたものを破壊(スクラップ)し、新たに建て直す(ビルド)。言葉でいうのは簡単だが、これまでのイメージを大きく変えてしまいかねない楽曲にさえ、果敢に挑戦する木村のアティチュードは、一体どのように培われてきたのだろうか。

「現状維持ではなく、つねに変化し続けることで駆け抜けてきた」と語る、音楽家人生の15年を振り返ってもらった。

25歳を過ぎたころに「あれ、私、大人になってきちゃった」と感じ始めたんです。

―先日の日比谷野音でのライブ『KAELA presents GO! GO! KAELAND 2019 -15years anniversary-』、拝見しました。MCで話していましたが、デビューしてすぐに「大人たち」から、「女性アーティストが10年続けるのは大変だよ」と言われたことが、カエラさんの原動力になったそうですね。

木村:はい。「男性アーティストが10年続けることはたくさんあるけど、女性アーティストが続けるのは難しい」と言われました。デビューしても、女性アーティストはとにかく移り変わりが早い。本当に必死になってやらないと、続けていけないからね? って。

それでデビュー曲“Level42”(2004年)の歌詞に<See yourself in 10 years(10年後の私を見て)>というフレーズを入れて、それをずっと歌ってやるって決意したんですよね。なので、10周年を迎えることは自分にとってかなり大きな目標でしたし、そこまではとにかく突っ走らないといけないなと思っていました。

木村カエラ(きむら かえら)
2004年6月にシングル『Level 42』でメジャーデビュー。2013年、自身が代表を務めるプライベートレーベルELAを設立。2014年、メジャーデビュー10周年を迎え、ベストアルバム『10years』、8枚目となるオリジナルアルバム『MIETA』をリリース。2019年には15周年を迎え、日比谷野外音楽堂で『KAELA presents GO! GO! KAELAND 2019 -15years anniversary-』を開催した。

―ライブのMCで「とにかく突っ走るために、変わり続けようと決意した」と話していたのも印象的でした。

木村:私は19歳でデビューしたんですけど、若いころって自分のことしか考えられないじゃないですか。当時は自分のなかだけで変わっていけばいいと思っていて。

デビューまでの19年間に自分のなかで蓄えてきた言葉や出来事、嬉しいことや悲しいことを小出しにしていけば、ある程度は表現し続けられるんですよね。あとは、自分がその世界観に合わせて姿形やキャラクターを変えながら、どんどん違う自分を見せていけばいいって思ってたんです。

だけど、25歳を過ぎたころに「あれ、私、大人になってきちゃった」と感じ始めて。それまでは無邪気に自分のことだけ考えていられたのに、他人のことも気になるし、スタッフやファンに対する責任感も出てきて、「これはヤバいかもしれない」と思ったんです。「やんちゃできなくなってきた」と。

―やんちゃができなくなることが、作品にも影響するのではないか、と。

木村:そうなんです。「優しさ」みたいなものが増えてくるということは、要するに「エッジ」がなくなってくるわけですよね。文字通り「丸くなってしまう」。それをどう対処すればいいのか分からなくて。それって仕方がないことなのだけど、受け入れるまでに時間がかかって苦しみました。

しかも、歌詞を書いたり作品を生み出したりしていくに従って、今話したような自分が19歳でデビューするまでに積み上げてきた蓄えが、どんどん削られていっていて。

―『ゼクシィ』のCMソングとして一斉を風靡した“Butterfly”(2009年)も、ご自身の転機になったとおっしゃっていましたよね。

木村:そう。“Butterfly”を出したことで、それまでエッジの強いものを作っていた自分が、優しい楽曲で世の中に受け入れられていくことに困惑してしまったんです。

―それは「困惑」だったんですね。

木村:最初はなかなか受け入れられなかったです。でも、“Butterfly”のおかげで「変わらなきゃ」っていうモードになったんですよね。それで“Ring a Ding Dong”(2010年)や“A winter fairy is melting a snowman”(2010年)のような、優しい歌にも挑戦し始めるんです。それが5周年を過ぎたころですね。

とにかく新しいことしかやらないという状況に、ずっと自分を置き続けてきたんです。

木村:ただ、10周年を迎えたところで、全部を出しつくした感じになっちゃったんです。やりたいこと全部やっちゃって「欲」がなくなったというか。ここからの5年間が、実は一番大変だったかもしれない。

―モチベーションを保ち続ける必要があったと。

木村:そこで思ったのは、「自分を安心できる状態に置かない」「危機感をつねに与える」ということでした。この15周年を迎えるまで、とにかく新しいことしかやらないという状況にずっと自分を置き続けてきたんです。

デビューからずっと一緒にやってきたバンドメンバーとも離れ、ライブは全て打ち込みアレンジにしてみたり、ストリングスセクションをバックに歌ったり、逆にピアノ1台の伴奏で歌ったり。歌もうまくなりたかったし、誰かに頼らずひとりで立っていられる強さがほしかった。たとえば、「今すぐ外で、ひとりで歌ってきてください!」って言われても歌える状況を、自分で作れるようにしてきたんですよね。

―それって、よほど強靭な意志がないとできないことですよね。

木村:いやもう、本当にずっと泣きっぱなしでしたよ、弱虫だから。「えーん、できないー(泣)」って弱音を吐きながら、それでもずっと挑戦し続けていました。

そうこうしているうちに、いつの間にか15周年になっていましたね。それで振り返ってみたとき、あの辛い時期があって本当によかったなと。「変化し続ける」ということに全てを注ぎ、挑戦してきた5年間があったからこそ、今はもうなにも怖くないというか。いい意味で「どうでもいい!」って思えるようになったんです。新しいアルバム『いちご』のテーマを「積み上げたものを壊して前に進む」にしたのも、そうやって変わり続けたからだと思いますね。

―変化していくことに対する、自分自身の戸惑いはありました?

木村:変わること自体は好きなんです。飽きっぽい性格なので(笑)、同じことは繰り返したくない。しかも人と同じことが大嫌いだから、戸惑いもなく変わっていくことはできました。ただ、ネタが尽きてくるんですよね。好きなものはずっと一緒だから、ついつい同じことの繰り返しになってしまいがち。「あれ? これってこの間もやったな」みたいなことになってくるんですよ。だから、その先へ行くのはすごく難しかったです。大抵、5年ごとにそういう転機が訪れていたように思います。

―迷ったり、ブレたりすることはなかったんですか?

木村:ありました。それが10周年だったんですよ。いろんなことをやり過ぎてワケわからなくなってしまったというか。次のこと、次のこと……と探しているうちに、自分はなにが好きだったのかを見失ってしまって。それもあって「修行」に出ることにしたんです。

そのひとつが、今までずっとやりたかった絵本の制作でした。自分で下絵を描いて、その白黒の世界のなかで直感を鍛える作業。たとえば風船の絵を見た瞬間に「これは赤!」と閃いたら、とにかくその直感に従う。そこで「あれ、こっちの色にした方がオシャレかな……」みたいに、他の作品などに影響されて揺らいじゃうと、でき上がったときに全然納得がいかないんですよ。そうやって自分の直感と向き合う作業をしていましたね。「自分らしさ」ってなんだろう? をテーマにアルバム(『『¿WHO?』』2018年)を1枚作ったことも、「修行」の一環です。

頭の固い人を見ると「そんなことにこだわっていたら、視野が狭くなるよ」と思います。もったいないって。

―変化していくことで、ファンから「今までのカエラさんが好きだったのに」といった声もあったんじゃないですか?

木村:めっちゃ言われましたね。10年間ずっと一緒にやってきた「カエラバンド」のファンもいたので、ライブの形態を変えたことでファン層も多少変わりました。

だけど、もし今までのバンドメンバーでライブを続けていたとしたら、きっと私自身が納得いかなかっただろうし、いいものを見せられなくなると思って。そこはもう戦いですよね。「なにを思われても、今は進んでいくしかない」と思ってやっていました。

―現状維持のなかで「不満」を抱えているよりは、変化するために「不安」のなかに飛び込んでいく方が、充実感もあるというか。

木村:そうそう! 大人になっていくにつれてどんどん頭が固くなって、めちゃくちゃつまらなくなっていくじゃないですか。頭の固い人を見ると、「そんなことにこだわっていたら、視野が狭くなるよ」と思います。もったいないって。もっと輝いているものが世の中にたくさんあるのに、「こうでなくちゃいけない!」ってなった瞬間見えなくなるから。そうはなりたくないんですよね。

―現状維持を打破するのってとても勇気がいることじゃないですか。

木村:とてつもなく大変ですよね、口では簡単に言えるけど。でも、「変わる」と言っても、大きく変わる必要はないと思うんですよ。ほんのちょっとしたことでもいい。朝起きたら必ず窓を開けて空気を入れ替えるようにするとか。トイレの蓋は必ず閉めるとか(笑)。玄関の靴は、つま先を外に向けるとかね。今言ってること、家で私がやってることなんですけど。

―たしかに、「習慣」を変えることから始まりますよね。変化をし続けることで、逆にずっと変わらない「カエラさんらしさ」みたいなものも浮き彫りになりましたか?

木村:なんだろう。やっぱり、ずっと「ヘンなもの」が好きですね。「なにこれ、見たことない」っていうものにすごく惹かれるし、どこか毒々しいものが好きだし。

―考え方も、昔と変わらない部分はありますか?

木村:やると決めたらやるところかな(笑)。

―これまでのお話からも、その決断力や意思の強さはすごく感じました。その決断力ゆえ、やってみて失敗したこともあるんじゃないでしょうか?

木村:それはないです。失敗する前に気づくんですよね、「これやってるとヤバいことになるな」みたいなことって(笑)。虫の知らせというか。スケジュールがどうにもうまく合わなかったり、天気がよくなかったり。でも逆に、全てのことがスムーズに決まっていくこともあって、そういうときは大抵うまくいくんです。

―先日の野音でのライブも、奇跡的にデビュー日に会場が当たったり、あんなに雨予報が出ていたのに、ライブの時間だけは一度も降らなかったり。

木村:ねえ! びっくりしました。みんなから「すごいね、持ってるね」って言われて、超テンション上がっています(笑)。

あとは、思っていることを言葉に出すって大事だなって思いますね。「言霊」じゃないですけど、口で言ってしまえばやるしかないから。心に秘めていたら、自分しか知らないわけじゃないですか。自分の願望ややりたいことをどんどん口に出して、実行していくと、いろんなものを引き寄せると思うんですよね。

Charaさんといえば「女性らしさ」の象徴という印象があります。

―『いちご』に収録された“セレンディピティ”はまさにそんなことを歌った曲ですよね。

木村カエラ『いちご』を聴く(Apple Musicはこちら

木村:まさにね。ちょうどそういうことを考えていた時期だったんです。運を味方につけるには、自分のモチベーションがすごく大事だなって。“セレンディピティ”や“戦闘的ファンタジー”は、自分を先に進めるために、どんなモチベーションでいることが大事なのかを歌った曲になりましたね。

―Charaさんとは曲作りでは初のコラボだったそうですが、どうでしたか?

木村:めちゃめちゃ楽しかったです。もともと大好きなんだけど、会うたびに「最強だな」って思う。精神的なものもそうだし、出すものもそう。一緒にいると救われるというか、全てが楽しくなるんですよね。

“ミモザ”は、Charaさんにお願いして曲を書いてもらえることが決まったときからこのタイトルにすると決めていたんです。Charaさんといえば「女性らしさ」の象徴という印象があるんですけど、花に喩えるとミモザなんですよね。Charaさんのお家にもミモザの木があって。ミモザってイタリアでは3月8日の「国際女性デー」のシンボルなんですよ。ミモザのサラダやミモザのケーキなどを作って、女性に感謝を伝えるんです。

私、今まであまり女性アーティストと一緒に曲を作ってないんですよ。なので、今回みたいに女性アーティストがたくさん入っていること自体がけっこうすごいことなんです。もしかしたら、時代が変わってきているというのもあるかもしれないですね。

「超かっこいいおばさんになってやろう」と覚悟を決めました。

―あいみょんが作詞作曲を手がけた“Continue”は、どのように作りましたか?

木村:あいみょんちゃんは、今までソロの女性アーティストに曲を提供したことがなかったらしいんですけど、「カエラさんなら書きます」と言ってくれて。それで実現しました。デビューして15年、これまで私自身が歌詞にしたくてもできなかったこと……私にだって弱いところがあるし、迷うときもある。そういう部分を曲にしてほしかったので、まずはあいみょんちゃんといろんな話をして、そこで私が話した言葉が歌詞になっているんですよね。

―<おばさんになった>というフレーズは強烈なインパクトがありました。自分を<おばさん>と歌うことへの戸惑いや躊躇はありましたか?

木村:「本当に歌ってもいいのかな」って、最初は悩みました。でもやっぱり、今回のアルバムのテーマが「積み上げたものを壊して前に進む」だったし、やるしかないと。あいみょんちゃんも、「これをカエラさんが歌ったらかっこいい」って言ってくれたので、「よし、だったらかっこよく歌ってやろう」「超かっこいいおばさんになってやろう」と覚悟を決めました。逆に、どう思いましたか?

―最高だと思いました。森高千里さんの“私がオバさんになっても”は、未来についての歌だったじゃないですか。でも、それを現在の状態として受け入れて歌うカエラさんに、勇気をもらう人は多いと思います。自分の「老い」を受け入れられず、生きづらさを感じている人って男女関係なく多いじゃないですか。

木村:たしかに。ちょっと変な顔になった映像をキャプチャーしてネットに上げたりとか、みんなやられてるじゃない? そういう状況だと余計に「歳を重ねていくこと」を受け入れられないですよね。そんななかで、この曲が少しでも誰かを勇気づけられたらいいなって思います。

―歳を重ねてもかっこいいと思える、カエラさんにとっての「超かっこいいおばさん」というと誰が思い浮かびますか?

木村:私、ずっとツイッギーが大好きで。自分のなかで本当に大事な存在なんですよ。疲れたときとか1960年代当時の写真集を見たりしてるんだけど、今も彼女はInstagramをやっていて、もちろん、もうおばあちゃんなんだけど、相変わらずめっちゃ可愛くて。1960年代からずっと可愛くて素敵なままなのってすごいですよね。

―そういう、歳を重ねての「新しい美しさ」を我々も受け入れられると、少し生きづらさから解放されるのかなとも思いますね。15周年を迎えて、これからまた20周年、25周年と歩んでいくなかで、目標にしていることはありますか?

木村:「20周年に個展はやりたい」という話はしています。これまでの衣装とか作品、やってきたことを展示するような。絵を描くのも好きなので、奇抜なアーティストを集めてコラボ作品を作り、それをチャリティーに出すとかもしてみたいです。

―最初におっしゃっていたみたいに、自分への興味がどんどん周りへの関心に広がっているのですね。

木村:あ、そうかもしれないですね。それが「大人になる」ってことなのかな(笑)。

リリース情報
木村カエラ
『いちご』初回限定盤(CD+DVD)

2019年7月31日(水)発売
価格:3,996円(税込)
VIZL-1610

[CD]
1. Continue
2. セレンディピティ
3. BREAKER
4. MUSIC ON, WORLD OFF
5. 曖昧 me
6. clione
7. ミモザ
8. ストレスポンジー
9. 戦闘的ファンタジー
10. ハイドとシーク
11. いちご

[DVD]
Continue(Music Video)
カエラのドキドキ☆ドッキリ大作戦

木村カエラ
『いちご』通常盤(CD)

2019年7月31日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VICL-65218

1. Continue
2. セレンディピティ
3. BREAKER
4. MUSIC ON, WORLD OFF
5. 曖昧 me
6. clione
7. ミモザ
8. ストレスポンジー
9. 戦闘的ファンタジー
10. ハイドとシーク
11. いちご

プロフィール
木村カエラ
木村カエラ (きむら かえら)

2004年6月にシングル「Level 42」でメジャーデビュー。2013年、自身が代表を務めるプライベートレーベルELAを設立。2014年、メジャーデビュー10周年を迎え、ベストアルバム「10years」、8枚目となるオリジナルアルバム「MIETA」をリリース。同年10月、横浜アリーナ2days公演を成功させた。2017年5月、JRA『HOT HOLIDAYS!』のCMソングとなっているシングル「HOLIDAYS」をリリース。2018年4月初の絵本「ねむとココロ」を出版。2019年6月23日にデビュー15周年を迎え、日比谷野外大音楽堂でアニバーサリー公演を開催した。10月から木村カエラLIVE 2019全国『いちご狩り』ツアーで全国8都市でライブを開催する。

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