VIDEOTAPEMUSICが「教えて」と歌った背景。問題意識も語る

VIDEOTAPEMUSICの4作目のフルアルバム『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』は、全11曲中9曲にゲストボーカルを招いた「歌」のアルバム。横山剣や高城晶平、折坂悠太といった国内のシンガーたちを始め、韓国、台湾、フィリピンといった日本国外で活動するシンガーたちも参加した、世代も国境も言語も超えた重層的な作品に仕上がっている。本作に関してVIDEOTAPEMUSIC自身が発表したコメントには、「自分がまだ知らないことへの好奇心(と恐怖と謙虚さ)を胸に、ただひたすら真面目に作り上げた」という言葉があったが、「好奇心(と恐怖と謙虚さ)」という言葉がまさに、彼がどのようにして他者の「歌」に向き合ったのかを物語っているといえるだろう。

詳しくは本文にゆずるが、本作におけるテーマのひとつに「身体性」があったという。「身体」というのはつまり、人の「孤独」そのものなのだと僕は思う。なぜなら、身体とはひとりがひとつしか持つことができないもので、他者と決してわかちあうことができないものだから。この『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』には、数多の孤独が集まっている。そしてそれらの孤独が、とても美しく、凛と響き合っている。過去最高に魅惑的な「謎」をはらんだこの傑作について、本人にじっくりと話を聞いた。

第三者と一緒に作品を作ることで、自分にはない考え方、他者のなかにある謎の部分に向き合おうとした。

―新作『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』は、これまでのVIDEOさんの作品のなかで最も「謎に満ちた作品」という印象を僕は受けました。これまでの作品はコンセプトを受け止めることによって理解できる部分が多かったですが、今作は、どれだけ聴いてもわからないものがあるというか。

VIDEO:それ自体が、このアルバムの重要なテーマではありましたね。「わからないもの」へどう向き合っていくのか、「知らないもの」をどう取り入れていくのか。「知っていること」ではなく「わからないこと」を共有していく。それは、このアルバム全体を作るうえで考えていたことです。

VIDEOTAPEMUSIC(びでおてーぷみゅーじっく)
地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。2019年7月、アルバム『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』を発表。同作には、横山剣(クレイジーケンバンド)や高城晶平(cero)、折坂悠太といった国内のシンガーたちをはじめ、韓国、台湾、フィリピンといった日本国外で活動するシンガーたちが参加している。

―「わからない」ということを決して悲観するのではなく、むしろポジティブに受け止めたうえで作られた作品ということだと思うんですけど、そうしたテーマが生まれたきっかけは、なにがあったのでしょうか?

VIDEO:自分にとってわからないもの、未知のもの……言うなれば、他者、異文化、異世代ですよね。そういったものに対して音楽や映像を通してどう向き合っていくのか? というのは、自分の一貫したテーマではあるんです。

今までもVHSやレコードのような記録メディアのなかから自分と違うものを見つけてきて、それに向き合いながら作品を作ってきたし、前作『ON THE AIR』(2017年)は「土地」という観点から、自分にとって未知のものや異文化を抽出した作品だったので。

VIDEOTAPEMUSIC『ON THE AIR』を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:今回は、その対象が「人」になったっていう感覚なんです。ゲストボーカルという第三者と一緒に作品を作ることで、自分ではコントロール不可能なことや、自分にはない考え方、他者のなかにある謎の部分に向き合おうとした、というか。

―前作以降、VIDEOさんが見つめる対象が「人」に至った流れはどのようなものだったのでしょうか?

VIDEO:前作をリリースしてから、海外でライブをやったり作品をリリースする機会もあったし、クレイジーケンバンドのライブでVJをやらせてもらったり、自分のバンドにエマーソン北村さんが加わってくれたりもして、国や世代が違う人たちと共同作業をすることが増えてきたんです。

もともと僕にとっての音楽制作は「個人的なもの」っていう意味合いが強かったけど、音楽を通じて、普通に生活していたらコミュニケーションをとれなかったような人たちとコミュニケーションをとることができるようになってきた。そういう実感が、前作以降の自分にはあって。

VIDEOTAPEMUSIC“南国電影(feat. 横山剣)”を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:前作ではグッとパーソナルな部分にフォーカスしたぶん、「次は思いきり、音楽という言語を使って様々な人と、共同作業してみよう」っていうモードになっていったんです。それこそ海外でライブしたときとかに、音楽という言語を使うことで、言葉が通じない相手とも会話できることがあるんだっていうことを、身をもって知った……こういう言い方をすると非常に恥ずかしいんですけど(笑)。

―いやいや(笑)。

VIDEO:国境間や世代間でも、もっと単純に他人同士でも、どうしても超えられない壁があったときに、音楽が先回りして仲よくなってくれているなっていう実感が僕にはあって。そういう体験から得たもので、作品を作ってみようと思ったんですよね。

人の体というのは、映像や音楽以上に記憶が蓄積される場所でもあると思うんです。

―これまでのVIDEOさんは、「歌」にどのように向き合ってきたと、ご自身では思われますか?

VIDEO:そもそも僕自身、学校であった歌のテストが苦手で。一度、先生に音痴って言われたことがあったんですけど、そもそも「音が外れる」ということがどういうことか、わからなかったんですよ。

―子どもの頃からVIDEOさんにとって、歌はある種の「わからないもの」として存在していた。

VIDEO:そういえると思います。VIDEOTAPEMUSICとして作品を作りはじめてからも、毎回、アルバムのなかにゲストボーカルの曲はちょっとずつ入れてきたんですけど、その都度、歌は僕の知識の外にあるものっていう感じで。歌ってくれた人が持つ身体性や、聴いてきた音楽、その人固有の経験を「わけてもらう」という感覚だったんですよね。特に、『世界各国の夜』(2015年)の“Hong Kong Night View”で山田参助さんに歌ってもらったときは、それが如実でしたね。

VIDEO:歌に向き合うことは言葉に向き合うことにもなりますけど、僕だけでは思いつかない言葉を参助さんは使われていて。今回のアルバムの1曲目は“教えて”っていうタイトルですけど、本当に「教えて」っていう気持ちで歌に向き合ってきたような気がします。その人の体に染みついたものを教えてほしいっていう。

―VIDEOさんにとって、それだけ歌が内包するものは大きく、豊かなものなんですね。

VIDEO:自分の作品で歌ってもらうということの意味は、決して技術を借りることだけではなくて。過去のVHSやレコードに、僕が経験してこなかった時代の空気を教えてもらうのと同じように、それぞれの人の身体を通して、僕とは全く違う経験をしてきた人のことを教えてもらうような感覚なんです。

人の体というのは、映像や音楽以上に記憶が蓄積される場所でもあると思うんです。そんな他者の身体を借りることで、音楽を、僕の頭のなかでは作りきれなかった場所にまで進化させることができるんですよね。

最近の高城くんを見ていると、すごく身体性が豊かだなって思うんです。歌っているときの肉体の扱いが研ぎ澄まされている。

―今作の歌詞クレジットには、それぞれの曲のゲストボーカリストの名前が記されていますけど、アルバム全体を通して、一貫した世界観があるように思えて。歌詞に関して、VIDEOさんからはどのようなディレクションが行われたのでしょうか?

VIDEO:それぞれのボーカリストに別々のお題を投げているんですけど、通底しているのは「僕が知らない、あなたが過ごしている街や、あなたが見ている景色について教えてください」っていうことですね。それを、各々のボーカリストに言い方のニュアンスを変えて伝えていきました。1曲目“教えて”の歌詞が、みんなにオファーしたメールの内容をまとめて、自分で歌ったものっていう感じです。

VIDEOTAPEMUSIC“教えて”を聴く(Apple Musicはこちら

―VIDEOさんの「教えて」という問いかけからはじまり、各々のボーカリストがそれに答えていくというアルバムの構造そのものが、本作の制作過程でもある。

VIDEO:そうですね。特に海外のボーカリストたちにはそういう問いかけから歌詞を書いてもらっていて。たとえば“Cocktail Moon”ではフィリピンのMellow Fellowというシンガーに歌ってもらっていますけど、僕はフィリピンには行ったことがなくて。

VIDEOTAPEMUSIC“Cocktail Moon(feat. Mellow Fellow)”を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:フィリピンの景色はインターネットで検索すれば画像としては見ることができるけど、実際にその場所で暮らすことの空気感を、僕は味わったことがない。それを、歌を通して教えてほしいってお願いしました。もちろん例外もあって、たとえばロボ宙さんは、真逆のお願いの仕方をしているんです。「知り合いがひとりもいない街を、ひとりで歩いている感じを描いてほしい」っていう。

―たしかに、ロボ宙さんが歌っている“連絡船”は、幻想的な風景と、そのなかに佇むような孤独感を感じさせます。

VIDEOTAPEMUSIC“連絡船(feat. ロボ宙)”を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:あと、高城くんには制作の早い段階でお願いしたんですけど、彼に関しても少し例外的でした。さっきの話にもつながりますけど、今回は「人の肉体を通じて見えてくる景色」という裏テーマがあって。最近の高城くんを見ていると、すごく身体性が豊かだなって思うんです。歌っているときの肉体の扱いが研ぎ澄まされている。

VIDEOTAPEMUSIC“PINBALL(feat. 高城晶平)”を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:高城くんが歌ってくれた“PINBALL”のサンプリングネタは、僕の父親が1980年代くらいにVHSに録画していた医療系のテレビ番組なんですけど、それは「人体の仕組みは、都市の交通網のようである」っていう感じで、人の体の機能を街にたとえながら説明していく番組で。そこから着想を得たイメージを、高城くんには伝えました。自分の意思とは関係なく、体内を血液が流れている……そんな人間の肉体の話に、都市交通網や、延々と繰り返されるピンボールゲームのイメージを重ねていくような。

―この曲の<ピンボールの永劫性 この僕の一回性>というラインなどは、とてもグサッときました。いくつものレイヤーが重なった、非常に奥行きのある歌詞ですよね。

VIDEO:高城くんは、僕が提示したテーマに自動車の自動運転が当たり前になった近未来SF的な世界観をさらに付け加えてくれたんですよね。「もっと尺があれば、もっと長く書きたかった」って、彼は言っていましたけど(笑)。

社会的な側面は、こっちが意識しなくても立ちはだかってくる。それをどうスマートに超えていけるか? っていうのは、音楽をやっていくうえで常々考えている。

―「身体性」という話でいうと、3曲目“Stork”でボーカルを務めている折坂悠太さんはとても身体性の豊かな方だなと思います。

VIDEO:そうですね。「身体性と、そこに記録される記憶」ということを考えたとき、いま一番それを感じさせるシンガーが折坂さんだと思いました。彼は、身体に様々な歌の歴史を宿しながら、それを自分の言葉に変えて、身ひとつで表現している人ですよね。

VIDEOTAPEMUSIC“Stork(feat. 折坂悠太)”を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:“Stork”に関しては、「テオ・アンゲロプロス監督の『こうのとり、たちずさんで』(1991年)という映画を意識しながら、この曲を作りました」っていうことを折坂さんに伝えていて。

―『こうのとり、たちずさんで』は、どんな映画なんですか?

VIDEO:ギリシャの国境の街を舞台にした映画で、その街には、ギリシャへの亡命がうまくできず立ち往生してしまった人たちが暮らしているんです。この映画を見た自分が抱いた感覚を共有しつつ、折坂さんと曲を作ってみたいなって思って。

折坂さんと話をしたとき、「僕らは音楽をやっているおかげで、いろんな土地に行って、いろんな経験をさせてもらえているよね」っていう話になったんです。僕らは音楽をやりながら楽しく、いろんな土地に行かせてもらっているけど……そうはいかないものも、やっぱりたくさんあるじゃないですか。

―今のお話……というか、今日語っていただいている今作のテーマに関するお話は、あらゆる場面で「分断」が進行している、現在の社会のあり様を前提にしているというか、そこに対する問題意識を感じさせます。

VIDEO:そうですね。そういう社会的な側面というのは、こっちが意識しなくても、向こうから立ちはだかってくるものでもあります。それをどうスマートに超えていけるか? っていうのは、音楽をやっていくうえで常々考えていることで。

『こうのとり、たちずさんで』も、グッとくる映画ですけど、絶望してしまうような場面もあるんですよ。国境が人を隔てるだけではなくて、街のなかで同じ民族同士が殺し合うシーンもあったりして。そういう断絶はどこにでもあるし、僕も生活をしていくなかで、そういう問題にぶち当たることはたくさんある。どうしても意識せざるを得ませんよね。

音としての言葉の響きの面白さとして、「いろんな言語を入れたい」という思いはありました。

―先ほど名前が挙がったフィリピンのMellow Fellowさんに加えて、韓国のキム・ナウンさんに台湾の周穆(Murky Ghost)さんと、今作には3人、日本以外のアジア圏で活動されているシンガーの方が参加されていますよね。「アジア」というのは、今作において重要な要素になっていると思いますか?

VIDEO:いや、それは偶然ですね。もし僕がフランスにライブに行って現地のミュージシャンと仲よくなっていたら、フランスの人と曲を作っていただろうし。たまたま自分が今作の制作過程のなかで出会った人たちが、アジア圏の人たちだっただけの話です。

もちろんキム・ナウンと作ったことも、Murky Ghostと作ったことも、それぞれ意図はあるんですけど、それを「アジア」という括りにしようとは思っていなかったですね。音としての言葉の響きの面白さとして、「いろんな言語を入れたい」という思いはありましたけど。

―地域の問題ではなく、あくまでも「個人」に歌を委ねたということですね。

VIDEO:そうですね。ナウンが歌詞を書いてくれた“ilmol”も、すごく寂しい感じの歌詞なんですけど、彼女には「あなたが知っているソウルの街のことを書いてほしい」ってお願いしていて。でも、結果的に彼女がこの曲で歌ってくれたのは、直接的な表現こそないものの、彼女にとってとてもプライベートなことだったんですよ。

VIDEOTAPEMUSIC“ilmol(feat. Kim Na Eun)”を聴く(Apple Musicはこちら

―土地のことを語るときに、その土地の情報をリリカルに描くのではなく、あくまでも「個人」の視点の話になっていくというのは、この作品の歌の素晴らしさだなと思います。

VIDEO:うん、そう思います。ガイドブック的なことではなく、その人の身体を通して土地が語られるというのは、ゲストボーカルを招いて作った意味がありましたね。Murky Ghostが書いてくれた“You Drive Me Crazy”の台湾の雑踏の街の描写も、彼女はすごく物語性豊かに書いてくれましたけど、それも彼女が見ているものとして書かれているのがすごくいいなって思うんです。

VIDEOTAPEMUSIC“You Drive Me Crazy(feat. Murky Ghost)”を聴く(Apple Musicはこちら

音楽が言語以上の言語になって、みんないろいろと感じてくれたのかもしれない。

―さっきも少し言いましたけど、VIDEOさんの「教えて」という問いかけに対して、世代も国境も違う様々なアーティストが歌と言葉で応えた……その返答のあり様には、どこか通底したものを感じて。それは「悲しみ」とか「孤独感」、「居処のなさ」みたいな言葉で表現しうるもののような気がするんですよね。

VIDEO:そうですよね……たしかに、悲しさや寂しさのようなものはありますよね。もしそう感じていただけたのだとしたら、そこは、僕にもコントロールできなかった部分なんですよ。なぜそうなったのかは、これから僕自身、いろんな人たちの感想を聴きながら自分で考えていくことなのかもしれないです。

―それもまた、VIDEOさんにとっては「わからない」ことである。

VIDEO:今回は「まとまらないこと」を前提として作っていたんです。個人対個人で作っている以上、全体の筋を事前に決めたり、それぞれのゲストボーカルを自分の理想通りの型に押し込めることはしたくなくて。

ただ、僕自身が決してアッパーな人間ではないですし、みんなの歌詞に寂しさのようなものがあるのは、それぞれのボーカリストが僕の曲を聴いてそういうものを感じとってくれたっていうことかもしれないですね。音楽が言語以上の言語になって、みんないろいろと感じてくれたのかもしれない。

―ご自身で聴き返すことで、VIDEOさんが自分自身を発見していくという側面も、本作にはありますよね?

VIDEO:そういう部分は大いにありますね。他人に自分を定義してもらう、というか。自分で「自分はこうだ」と思っていても、他人の目から見たら、それは全然違うものだったりしますから。

VIDEO:自分の身体のことっていうのは、わかった気になっていても、全然わかっていないもので。今回、みんなが書いてくれた歌詞は、自分にとってもすごくしっくりくるものだったんですよ。そう思うと、僕の性格や音楽は……やっぱり、暗いのかなぁなんて思いますけど(笑)。

音楽をやっていると、「どんな場所でも生きていけるんじゃないか?」っていう錯覚をしてしまうこともあって。

―今回、5曲目の“ネペンテス”だけはインスト曲ですけど、ブックレットにはテキストが添えられていますよね。この曲が本作に必要だった理由を、VIDEOさんはどのように捉えていますか?

VIDEO:“ネペンテス”だけは、歌ってもらいたい人が思い浮かばなかったんです。おそらく、この曲だけは僕の想いが強すぎたんじゃないかな。他の曲には余白を作ることができていたけど、“ネペンテス”だけは、僕が最初から抱いていたイメージが強すぎるから、他の人が入ってくる余白を作ることができなかった。

―前作の取材のときも植物の話は出ましたけど、やはり「植物」はVIDEOさんの作品における一貫したモチーフになっていますよね(参考記事:VIDEOTAPEMUSICの鋭い感覚 日常に異文化を見出す視点の音楽家)。

VIDEO:植物は自分のテーマだと思います。道を歩いていて高い木とかを見ると、感情移入しちゃうんですよ。「僕がいろんな場所に行っている間も、この木はずっとここにいて、同じ景色を見ていたんだなぁ」って。

VIDEOTAPEMUSIC“ネペンテス”を聴く(Apple Musicはこちら

VIDEO:さっきも言ったように、音楽はいろんな壁を飛び越えることができるけど、植物はひとつの場所に根を張って、その環境に合った生体に進化していきますよね。ネペンテスは「ウツボカズラ」ともいわれる食虫植物なんですけど、あれも、その土地で動かずに生きていくために成長した姿だと思うんです。

音楽を通じていろいろな土地に行ったり、そこで受け入れてもらったりしていると、「どんな場所でも生きていけるんじゃないか?」っていう錯覚をしてしまうこともあって。でも、植物のようにひとつの土地に根を生やして、そこで育ち続ける生き方も美しいと思うんです。音楽によって自由に土地を飛び回れることの対比として、ひとつの場所に居続けることの美しさも描きたかったし、そのために植物をモチーフとした曲は必要だったと思うんですよね。

―他の曲がVIDEOさんの「教えて」という問いかけに他者が応える形で生まれているのに対して、唯一のインスト曲である“ネペンテス”は、そこにまた別の視点を投げかけるものでもある。

VIDEO:僕自身、根本的には植物のような性格の人間だと思うんですよ。ネペンテスって湿地帯に生える植物で、日の当たらない場所にいながら、飛んでいる虫を捕まえて栄養をとっているんです。

僕も、今でこそいろんな場所に行かせてもらえていますけど、こうなる前は簡単に別の土地に行けるわけでもなかったし、実家の周りにあるもので、どうにか刺激を得ることはできないかと模索していたわけで。そうやって音楽をはじめた過去があるからか、食虫植物を見ると感動しちゃうし、今、実際に家で育ててもいるんですよ。なんか、食虫植物を見ていると友達みたいな気持ちになってくるんですよね(笑)。

日々、いろんなものにぶち当たることで、どんどんと「知らないこと」や「わからないこと」に対して謙虚に、それに好奇心旺盛になっていく感覚がある。

―お話を聞くと、より本作における“ネペンテス”の必要性が理解できました。

VIDEO:これまでの自分自身も裏切らない形にはしたかったんです。……それに最近、子どもの頃みたいな気持ちに戻ってきている感じもあって(笑)。知識を得れば得るほど、知らないものって増えていくものじゃないですか。音楽なんてまさにそうですよね。新しい音楽を知れば知るほど、知らないことも増えていく。

VIDEO:僕も昔は、自分の知っていることを過信していた頃もあったかもしれないけど、日々、いろんなものにぶち当たることで、どんどんと「知らないこと」や「わからないこと」に対して謙虚に、そして好奇心旺盛になっていく感覚があるんです。30代半ばを過ぎて、人生も折り返しなのかなって思うと、これからもう一度、赤ちゃんに戻っていくのかもしれないです(笑)。

―そうやって若返っていくVIDEOさんは、とても素敵だと思います(笑)。最後に、本作のタイトルを『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』とした理由を教えてください。

VIDEO:理由はいろいろあるんですけど、僕の大好きなThe Flying Lizardsというアーティストに『The Secret Dub Life of The Flying Lizards』(1995年)というアルバムがあったり、あと、スティービー・ワンダーの『Journey through the Secret Life of Plants』(1979年)というアルバムも大好きで。

このアルバムは植物に関する同名のドキュメンタリー映画のサントラなんです。でも、この映画は結局、未公開に終わってしまって、サントラだけが存在している。この映画のように、世の中には作られたけど公開されなかった映画や、録音されたけど誰の耳にも触れなかった音楽があったりするもので。

―そうですよね。

VIDEO:同様に、呑み込まれたまま表に出ることがなかった、いわば「未公開の気持ち」というものも、人それぞれ無数にあると思うんです。さっき話した、キム・ナウンが“ilmol”で書いてくれたパーソナルな言葉も、僕が「教えて」と頼んだことで、瞬間的に「歌」という形になった感情かもしれない。そういう「未公開の気持ち」や「まだ世の中に存在しなかった言葉たち」が、僕が「教えて」と問うことによって、参加してくれたボーカリストの数だけ出てきたらいいなと思って。

もしかしたらこのアルバムに収録されている曲たちは、「The Secret Life of 横山剣」かもしれないし、「The Secret Life of キム・ナウン」かもしれない。そういう曲たちが集まればいいなという思いや、スティービー・ワンダーの作品に対する想い……いろんな想いを込めて、タイトルは『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』にしました。

VIDEOTAPEMUSIC『The Secret Life Of VIDEOTAPEMUSIC』を聴く(Apple Musicはこちら
リリース情報
VIDEOTAPEMUSIC
『The Secret Life Of VIDEOTAPEMUSIC』(CD)

2019年7月24日(水)発売
価格:3,024円(税込)
DDCK-1061

1. 教えて
2. 南国電影(feat. 横山剣)
3. Stork(feat. 折坂悠太)
4. ilmol(feat. Kim Na Eun)
5. ネペンテス
6. 連絡船(feat. ロボ宙)
7. PINBALL(feat. 髙城晶平)
8. You Drive Me Crazy(feat. Murky Ghost)
9. Faster Than The Sun(feat. カベヤシュウト)
10. Cocktail Moon(feat. Mellow Fellow)
11. Summer We Know(feat. mmm)

イベント情報
『“The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC” Release Tour』

2019年8月24日(土)
会場:大阪府 246ライブハウスGABU
ゲスト:折坂悠太

2019年8月25日(日)
会場:愛知県 名古屋 CLUB QUATTRO
ゲスト:折坂悠太

2019年8月31日(土)
会場:東京都 キネマ倶楽部

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