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VIDEOTAPEMUSICの鋭い感覚 日常に異文化を見出す視点の音楽家

VIDEOTAPEMUSICの鋭い感覚 日常に異文化を見出す視点の音楽家

VIDEOTAPEMUSIC『ON THE AIR』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:馬込将充 編集:山元翔一
2017/10/24

前作『世界各国の夜』から2年ぶり、VIDEOTAPEMUSICが、3rdフルアルバム『ON THE AIR』を完成させた。この『ON THE AIR』というタイトルの由来のひとつには、1992年に放送された、マーク・フロストとデヴィッド・リンチが企画・製作総指揮を務めたアメリカのシットコム『On The Air』の影響があるという。テレビ局を舞台にしたこのドラマに登場する、「25.62」という驚異的な視力を持つ音響技師の存在を見て、若き日のVIDEOTAPEMUSICはこう思ったのだそうだ――「人はみな、見ている景色が同じとは限らない」。

近年は、盟友ceroとコラボで『FUJI ROCK FESTIVAL』などに出演、坂本慎太郎との共作EPのリリース、さらには映像作家としても多方面で活動するVIDEOTAPEMUSIC。『ON THE AIR』は、そんな彼が「今」、見て、感じている景色が如実に音になっている作品だ。前作同様、快楽的な大衆音楽でありながら、前作以上に言語化することが難しいアンビエンスを宿すこのアルバム。ここでは過去と現在が、生と死が、ぐるぐると回りながら、そっと未来を連れてくる。

ライブハウスやクラブではない現場……それこそ、街のなかで鳴っている音にリアリティーを感じる。

—少し前の話なのですが、去年の暮れに、ウェブメディア『FNMNL』の企画で、VIDEOTAPEMUSICさん(以下、VIDEO)が2016年を象徴する1曲としてリアーナの“Work”を挙げていらっしゃったじゃないですか。あれを読んで、すごくVIDEOさんらしいなと思って。

VIDEO:あぁ、ありましたね。去年、福生の横田基地で年に1回やっているお祭りに行ったんですよ。そこで、出し物のライブやブラスバンドの演奏とは関係なく、会場の隅っこで、アメリカ人の女の子たちが小さなコンポで音楽をかけながら踊っていて。そのときに女の子たちが流していたのが、リアーナとかDrakeの、去年の大ヒット曲だったんですよね。ほんと、「ファック!」とか言いながらギャアギャア騒いでいるだけだったんだけど(笑)。

VIDEOTAPEMUSIC
VIDEOTAPEMUSIC

VIDEO:でも、その光景に妙に感動して。僕は、「海外では今これがトレンドです」と言われても、自分とは無関係の音楽として楽しむときもありますけど、根本的にそこまでのめり込めなくて。もちろん、トレンドを意識的に追っている人にとってはリアルかもしれないけど、そもそも生活文化が違う日本で普通に暮らしているなかでは、ある程度の想像力を働かせないと、距離感はどうしても感じてしまうんですよね。

—たしかに、距離はありますよね。

VIDEO:でも、あの日のお祭り会場のような自分の生活と地続きの場所で、音楽に合わせて踊る女の子たちの姿を見たとき、リアーナやDrakeのような海外のヒット曲が、初めて自分にとってリアルなものに感じられたんです。そもそも僕は、ライブハウスやクラブではない現場……それこそ、街のなかで鳴っている音にリアリティーを感じることが多いんですけどね。

—前作『世界各国の夜』のインタビューのとき、VIDEOさんは「ダンスミュージックを広い解釈で考えたい」とおっしゃっていましたよね(参考記事:VIDEOTAPEMUSICが語る「過去を知ると、未来も想像できる」)。そのエピソードは、前回の発言とも通じる気がします。

VIDEO:うん、一緒ですね。ずっと自分とは接点のないものだと思っていたラテン音楽も、昔の日本映画のダンスシーンで流れているのを見たり、自分の祖父母の世代の人や親戚のおじさんが「昔はラテンで踊っていた」って話すのを聞いたことで、自分と地続きのダンスミュージックに感じられたんです。

VIDEO:いわゆる「クラブミュージック」のようなものだけではなくて、「人が踊っている瞬間」っていうものを、もっと大きく捉えたいんですよね。実は、そのお祭りのときの女の子たちのガヤをサンプリングしたのが、『ON THE AIR』の9曲目(“Her Favorite Moments feat. NOPPAL”)なんです。

—まさにこの曲を聴いたとき、「VIDEOさん、リアーナのこと言っていたな」って思い出したんですよ。

VIDEO:「最新のトレンド」ではなく、「2016年の福生の街で女の子たちが踊っていたリズム」っていう意味で、あのリズムを取り入れることに意味があるなと思って、この曲を作ったんです。その感覚は、今回のアルバム全体につながっていると思います。

VIDEOTAPEMUSIC

—新作『ON THE AIR』を聴いて感じたことは、VIDEOさんの視点が、これまでの「過去を通して未来を見る」というものとは違って、すごく「今」に重点を置いているということでした。

VIDEO:そうですね。それは、今回フィールドレコーディングを取り入れたのが大きいかと思います。これまではVHSをサンプリングする手法を中心にやってきたので、「過去の記録物から何かを見つけてくる」っていう立ち位置だったんですけど、今回は逆に、自分が今の時代を記録したものを作りたいなって思ったんです。

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リリース情報

VIDEOTAPEMUSIC『ON THE AIR』
VIDEOTAPEMUSIC
『ON THE AIR』(CD)

2017年10月25日(水)発売
価格:2,700円(税込)
DDCK-1052

1. On The Air
2. Sultry Night Slow
3. Ushihama
4. ポンティアナ
5. 密林の悪魔
6. 熱い砂のルンバ
7. モータープール
8. Her Favorite Song
9. Her Favorite Moments feat. NOPPAL
10. Fiction Romance
11. 煙突

イベント情報

VIDEOTAPEMUSIC
『“ON THE AIR” Release One Man Show』

2017年11月23日(木・祝)
会場:神奈川県 Motion Blue YOKOHAMA
料金:4,200円(ドリンク別)

2017年12月27日(水)
会場:東京都 鶯谷 キネマ倶楽部
料金:3,200円(ドリンク別)

プロフィール

VIDEOTAPEMUSIC(びでおてーぷみゅーじっく)

地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV制作、VJ、DJ、イベントのオーガナイズなど活動は様々。MVでは盟友ceroを始め坂本慎太郎、小島麻由美、NRQなどジャンルレスに手がける。ほかにもモデル、女優の菊池亜希子のムック本「マッシュ」のCM映像、楽曲も製作。ライブにおいては、クラブシーンからインディペンデントシーンまで幅広く活動。ダンスミュージックとしての下地に、近年盛り上がりを見せつつあるムード音楽やラウンジミュージックの文脈から繰り出すポップでメロウなメロディは絶妙であり、映像のセンス含め、まさに洒脱な音楽を作り出している。昨年秋にリリースした2ndアルバム『世界各国の夜』は全国各地で大好評ロングセールス中。2016年5月に配信限定シングル『Sultry Night Slow』(カクバリズム)リリース、7月にはceroとのコラボレーション編成の「VIDEOTAPEMUSIC×cero」として『FUJI ROCK FESTIVAL』出演、12月に坂本慎太郎との共作LP『バンコクの夜』(em records)、2017年1月に7inchシングル『Kung-Fu Mambo』(雷音レコード)リリースと引き続き精力的に活動中。そして2017年10月、満を持して3rdアルバム『ON THE AIR』をリリース。映像のみならず音楽との双方向でゆらゆら踊れる夜を演出する、そんな素敵な男がVIDEOTAPEMUSICである。

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